昨日は2010年に出版されたTimmermans AA(2010)のシステマティックレビューでまとめられている、課題指向型訓練で運動学習を促すための要素を15こ紹介させていただきました。

でも、これ10年前の情報なんです。

2010年以降、上肢の課題指向型訓練は効果があると報告された研究で、どのような要素が使用されていたか気になりませんか?

本日は、過去10年、2010年以降に出版された、脳卒中患者さんに対する上肢の課題指向型訓練の効果をあると報告したランダム化比較試験の中で、課題指向型訓練のどの要素がよく使われているか、についてお伝えします。

ちなみにランダム化比較試験というのはエビデンスピラミッドで2番目に高いところに位置する、比較の妥当性が高い研究デザインです。

2011年以降、よく使用される6つの要素

さて、結論から言うと、機能的な運動、実際の物品操作、様々な運動、段階的な練習、分散型練習、運動負荷、の6要素については比較的多く使われていました。

特に様々な運動、段階的な練習の2つはこの中でも特に多く使われていました。

2011年以降、上肢の課題指向型訓練で上肢の運動パフォーマンスが改善したというバイアスリスクの低いランダム化比較試験は18件ありました。

バイアスリスクが低い、というのはとても簡単に言い換えれば情報の信憑性が高い、ということです。

これら18件の研究で行われていた課題指向型訓練の内容を読んでいくと、先にお伝えした6要素がよく使われていることがわかりました。

注意点としては、あくまで本文中に明確に記載されていた要素をカウントしているので、もし本文中に記載されていない要素を使っていた場合は、カウントに入れられないという点です。

ですので、あくまでも記載されていた要素の数が多い6項目、という風に認識していただけたらと思います。

6つの要素の説明

さて、この6要素についてどういうものか説明させていただきます。

機能的な動き

日常生活動作の明確な活動に向けられていない課題の実行を伴う動き、です。

たとえば、ある場所から別の場所へのブロックの移動、円錐の上にリングを積み重ねる、ペグボードを使う運動課題、などが当てはまります。

実際の物品操作

通常のADLで使用される物品を利用する操作、です。

コップを持つとか、洋服を着るとか、そういう操作のことです。

段階的な練習

患者さんの能力の向上に合わせて練習の難易度を調整することです。

様々な運動

ひとつの運動課題だけではなく、様々な運動課題を行う、ということです。

患者さんに合わせてカスタマイズしたトレーニング負荷

重錘などを使って運動に抵抗負荷をかけることです。

分散型練習

5分練習して2分休憩、また5分練習して…を繰り返す、などのように、休憩を挟みながら練習することです。

論文によっては隔日(1日おきに実施する)ことも分散型練習としているものもあります。

“個別性” の前の “標準” として6要素を念頭においておく

“多く使われているから大事” というのは短絡的なのですが、これらの要素を使用した課題指向型訓練は脳卒中患者さんの上肢の運動パフォーマンスや歩行能力などの改善を報告しているのも事実です。

患者さんによってお身体の状態や目標・課題は異なりますので一概のこの6要素を入れておけばいいというわけでもないのですが、患者さんの “個別性” の前に “標準” を備えておくことも大事です。

なので、課題指向型訓練のプログラムを組むときは、基本的にはこれらの6要素(機能的な運動、実際の物品操作、様々な運動、段階的な練習、分散型練習、運動負荷)を含めておくと良いのではないでしょうか。

そして、その後患者さんの個別性に合わせてこれらの要素を削ったり、あるいは別の要素を付け加えたりしてカスタマイズしていけば良いのではないかと思います。

あと、課題指向型訓練のプログラムを作ったときは、これらの6要素が含まれているかどうかをチェックできるよう、チェックリストを作っておいても良いのではないかと思います。

後から簡単にチェックできるようにしておけば確認が楽です。

なお、今回は6要素の紹介をさせていただきましたが、Timmermans AA(2010)で紹介されている15の要素が気になるという方は、BRAINのホームページやnote、Facebookページで昨日の台本を公開しておりますので、そちらを覗いてみていただけたらと思います。

本日は「脳卒中後の課題指向型訓練における6つのポイント2021年版」と言うテーマで話をさせていただきました。

参考文献

Timmermans AA, Spooren AI, Kingma H, Seelen HA. Influence of task-oriented training content on skilled arm-hand performance in stroke: a systematic review. Neurorehabil Neural Repair. 2010 Nov-Dec;24(9):858-70.