脳卒中発症後、日常生活動作の自立度を向上させるとか、そもそも患者さんの主体的な生活を取り戻すためには移動能力が必要不可欠です。

移動するための方法は歩行、車椅子、移乗動作、など色々ありますが基本的には移動する場合は重心の移動が起こり、重心移動をコントロールするためのバランス能力が必要になってきます。

バランス能力向上のためのリハビリは主にPTさんが関わることが多いと思いますが、状況によってはOTさんも関わるのではないでしょうか。

バランスのリハビリをするにあたって、患者さんの希望や目標に向かって前進しているのかどうか、リハビリがうまくいっているのかどうかを効果判定をするために検査を定期的にする必要があります。

バランス障害の検査は色々ありますが、世界的に研究で使用されていることが多いものを紹介します。

脳卒中後のバランス障害で押さえておきたい3つの評価

結論ですが、3つの評価は「Berg Balance Scale(以下、BBS)」、「Dynamic Gait Index(以下、DGI)」、「Timed Up and Go test(以下、TUG)」です。

これらの検査は海外の脳卒中リハビリテーションのエビデンスで頻繁に出てきます。

これらを理解して臨床で検査できるようにしておくと、患者さんのバランスの全体像を捉えることができますし、患者さんの予後予測を行う上でも有用です。

これらの3つの検査について紹介させていただきます。

3つの評価を簡単に紹介

ひとつ目はBBSです。

もはや説明する必要がないくらいメジャーな検査ですね。

BBSは静的バランスを評価する、14項目からなる検査です。

14項目についてそれぞれ0〜4点を付け、最低得点が0点、最高得点が56点になる検査です。

簡単な項目ですと「座位保持」、難しい項目ですと「片足立ち」や「タンデム立位」などがあります。

元々高齢者のバランス能力を評価するために作られたもので、最初は38項目あったそうですが、現在は14項目に絞り込まれ、あらゆる疾患の患者さんに使用されています。

検査の良し悪しを判断する基準に信頼性や妥当性、反応性といったものがあります。

BBSは信頼性や妥当性が優れているとされていますが反応性が中等度、と評されることが多かったり、天井効果や床効果の問題があることが報告されています。

ただし、ランダム化比較試験などの介入研究ではBBSが使われていることが多く、EBPの上で非常に使いやすい検査でもあります。

ふたつ目はDGIです。

DGIは動的なバランスを評価する、8項目からなる検査です。

8項目についてそれぞれ0〜3点を付け、最低得点が0点、最高得点が24点になる検査です。

まっすぐ歩いている途中に左右を見てもらったり、上下を見てもらったり、コーンを回ってもらったりして、歩きの中のバランスを見る検査です。

脳卒中患者さんへの検査の適用については信頼性、妥当性が優れているとされており、反応性もまずまず優れているとされています。

これもBBSやTUGと同様、歩行路とストップウォッチ、コーン、階段があればできる検査です。

なお、BBSと異なり床効果や天井効果の問題も少ないとされています。

みっつ目はTUGです。

こちらもBBS同様、言わずとしれた検査ではありますが、簡単に紹介させていただきます。

患者さんが椅子に座った状態から始まり、椅子から立ち上がり、3メートル歩き、方向転換してまた3メートル歩き、椅子に着座します。

この一連の動作のタイムを測るものです。

椅子とストップウォッチ、歩行路があればできる簡単な検査です。

BBSやDGIと同様、優れた信頼性や妥当性が報告されています。

また、歩行能力(歩行速度や連続歩行距離)との相関関係も報告されています。

過去の配信でお伝えした通りですが、歩行速度や歩行能力は日常生活の自立度などと相関があることが報告されています。

予後予測をする上で簡単に使える

今回、BBS、DGI、TUGを紹介させていただいた理由は、「世界的に多くのエビデンスで頻繁に使用されているから」です。

脳卒中リハビリテーションでは、エビデンスに基づいてリハビリプログラムを決めていきますが、この「世世界的に多くのエビデンスで頻繁に使用されているから」というのはとても便利なポイントになります。

例えばランダム化比較試験が「軽度バランス障害(例えばBBS50点くらい)の患者さんに対する○○療法はバランス向上に効果があった」と報告していたとします。

でも、自分が担当する患者さんが重度バランス障害(例えばBBS25点くらい)だった場合、このランダム化比較試験のエビデンスがうまく適用できないことがあります。

これは軽度バランス障害の患者さんと重度バランス障害の患者さんのバランス障害の病態が違う可能性があるからです。

例えば、軽度バランス障害(BBSで50点くらい)の患者さんは、おそらく(監視下かもしれませんが)ひとりで歩ける人で、麻痺側下肢の支持性もそれなりにある患者さんだと思います。

一方、重度バランス障害(BBSで25点くらい)の患者さんは、おそらく立位保持できるかできないか、立位保持できてもやっと立っていられるくらいの状態で、麻痺側下肢の支持性も低いと思われます。

麻痺側下肢で支持できるけどバランスが悪い患者さんと、麻痺側下肢で支持できなくてバランスが悪い患者さんであれば、バランスが悪い原因は違う可能性がありますよね。

あくまで一例ですが前者の場合はSensory Reweithingの問題、後者の場合は麻痺側下肢の支持性の問題、とか。

このように病態が異なっていればリハビリ効果の再現性も異なってくることが予想されます。

また、重度バランス障害の患者さんに、軽度バランス障害の患者さんへ効果があった○○療法をやろうとしても、内容によってはできない可能性もありますよね。

そうなってくると、効果を得られない可能性も高くなります。

このようにエビデンスのPICOと目の前の患者さんのPICOが一致していないとエビデンスの再現性が低くなり、エビデンスでは効果があったと報告しているリハビリ方法が目の前の患者さんに効果がなかった、というケースが出てきます。

ですので、PICOの一致、というのはひとつのポイントになるわけですが、このとき、エビデンスでよく使用されている検査を自分も使っていると便利です。

例えば、ランダム化比較試験で「BBS 40点の患者さんに対して○○療法をやったときにBBSが45点まで向上した」という報告があった場合、自分の目の前の患者さんもBBS40点であれば、○○療法を行ったときに同じように45点くらいになるという予想がつきます。

一方で、自分の目の前の患者さんがBBSをとっておらず、例えばBrunel Balance AssessmentやFour Square Step Testなどをとっていた場合、エビエンスのアウトカムと目の前の患者さんのアウトカムとの突合が難しくなります。

なので、エビデンスのアウトカムと患者さんのアウトカムが揃っているとリハビリによる予後予測をしやすくなるというメリットがあります。

そして、それにより患者さんに説明しやすくなるので、Shared Decision Makingを円滑に進めやすくなります。

最近はBEStestへ注目が集まっていたり、その他の検査も有用なものがいくつもありますが、上記の視点から、BBS、DGI、TUGを紹介させていただきました。

本日は「脳卒中後のバランス障害で押さえておきたい3つの評価」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!