ミラーセラピーはみなさんご存知の通りだと思いますが、脳卒中患者さんに行われる鏡を使ったリハビリです。

ミラーセラピーは麻痺側上肢にも下肢・歩行にも使用されるリハビリです。

特に麻痺側上肢においては世界的に有効性についてコンセンサスが得られています。

国内でも、脳卒中治療ガイドライン2015では上肢機能障害に対するリハビリテーションのところで推奨グレードB、つまり「行うよう勧められる」とされています。

ミラーセラピーは特殊な機器が必要なく、鏡さえあれば実施できてしまう手軽さがあります。

ミラーボックスを用意するにしても、100均の道具やホームセンターの木材などで自作することが可能です。

となると、患者さんの自主トレーニングで使用できそうですよね?

昨今の情勢の中、自宅でのリハビリ需要が高まっているように思いますが、自宅でのミラーセラピー は有効なのでしょうか?

世界的にコンセンサスが得られているリハビリを自宅で行うことができるのであれば、自主トレーニングに光明が差しそうです。

今回は、麻痺側上肢のミラーセラピーをホームエクササイズとして実施したランダム化比較試験を紹介します。

Michielsen ME (2011) のランダム化比較試験の概要

まず、この研究のリサーチクエスチョンは「慢性期脳卒中患者さんに対する、ホームエクササイズ でのミラーセラピーは、両手動作練習と比べて、麻痺側上肢の運動パフォーマンスや運動障害、痙縮などに対して有効か」でした。

なお、バイアスリスクは比較的低いです。

この研究はランダム化比較試験なので、介入群にホームエクササイズ でのミラーセラピーを、対照群に両手動作練習を設定しています。

対象者の平均年齢は、介入群の人が55.3歳前後、対照群の人が58.7歳前後となっていました。

日本で言えば、まだ現役世代の方々になるので、定年まで働き、お身体をなるべくよくしたいと思われる方も多い年代ではないでしょうか。

重症度としては、Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下、FMAUE)が介入群が39.7点前後、対照群が36.4点前後でしたので、中等度の運動障害を有する人たちが対象になったことがわかります。

Brunnstrome Recovery StageはⅢ〜Ⅴの人たちが対象になったようです。

ホームエクササイズ のミラーセラピーは、1回あたり60分、週5回、6週間実施されました。

病院リハビリでもこれくらいはやりますので、やはり改善を目指すのであればある程度コンスタントに実施する必要があるのだと思います。

ちなみに、対照群の両手動作練習も、同じように実施されました。

ミラーセラピー は両手を動かす課題が実施されました。

なお、運動の難易度は患者さんごとに設定されており、一律同じ運動課題をやったわけではありませんでした。

担当セラピストから患者さんへ、写真付きの指導用冊子と、ビデオが渡されました。

「ミラーセラピー やってくださいね!」で放置するのではなく、患者さんがきちんと自宅でミラーセラピー を行えるように工夫がなされていたようです。

それでは6週間後、どのような結果になったかをお伝えします。

ホームエクササイズのミラーセラピーによって麻痺側上肢の運動機能が向上

結果として、ミラーセラピー群は、FMAUEスコアが39.7点前後だったのが6週間後に43.5点前後への改善を示しました。

FMAUEは上肢の運動機能をみる検査ですので、上肢の運動機能が向上したという結果になりました。

MCIDを超えるかというとちょっと微妙なところではあるのですが、ホームエクササイズ でこういった改善が認められるのは患者さんにとって良い知らせになるかもしれません。

その他、握力やAction Research Arm Testなどもとっていたのですが、他のアウトカムについては、両手動作練習と比べたときに統計的に有意な改善を示さなかったことに加え、介入前後の変化も少ないという結果でした。

ホームエクササイズ の選択肢として検討してみよう

繰り返しになりますが、ミラーセラピーは手軽に導入できるリハビリです。

ホームエクササイズ でも有効性が示される結果になりました。

慢性期であってもホームエクササイズとしてのミラーセラピー をしっかりやることによって麻痺側上肢の運動機能が向上するというのは、自主トレに悩まれる患者さんにとって貴重な情報かもしれません。

ただ、「ミラーセラピーをやってみたらどうですか?」くらいでは運動機能の向上は期待できないと思います。

この研究でやられているように参考になる冊子や動画の提供をするなどの工夫が必要そうです。

また、どの患者さんでも効果があるかはわかりません。

年齢55歳前後で、FMAUEが39.7点前後の慢性期脳卒中患者さんに対して、かつ1回60分を週5回6週間やれる人であれば同じような効果が期待できると思いますが、超高齢者の人や、しっかりしたリハビリを行えない人であれば今回のような結果は得られないかもしれないので注意が必要です。

ただ、ホームエクササイズ の選択肢としてミラーセラピーを提案できるようにしておくことはセラピストとしての幅を広げることになりますので、頭の片隅に置いておいていただいても良いのではないかと思います。

本日は「ホームエクササイズとしてのミラーセラピーの効果」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Michielsen ME, Selles RW, van der Geest JN, Eckhardt M, Yavuzer G, Stam HJ, Smits M, Ribbers GM, Bussmann JB. Motor recovery and cortical reorganization after mirror therapy in chronic stroke patients: a phase II randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2011 Mar-Apr;25(3):223-33.