痙縮というのは、脳卒中後に生じる症状のひとつで、麻痺側の高い筋緊張を示すものです。

脳卒中患者さんのあらゆる動作において問題になる主要な症状で、世界的にもリハビリ方法が研究されています。

日本国内では、脳卒中治療ガイドライン2015にて、高頻度の経皮的電気刺激(TENS)とストレッチ、関節可動域訓練が推奨グレードB、つまり“行うよう勧められる”とされています。

臨床現場でも、痙縮に対して電気刺激やストレッチを行うことは一般的ではないでしょうか。

今回は、ガイドラインでも推奨されているストレッチについて、もう少し解像度をあげた情報として、システマティックレビュー論文を参考に、下肢のストレッチの効果についてご紹介します。

Bani-Ahmed (2019) のシステマティックレビューの概要

まず、本日紹介するBani-Ahmed (2019) のシステマティックレビューの概要を紹介します。

研究のリサーチクエスチョンは「下肢の痙縮を有する慢性期の脳卒中患者さんに対する下肢への静的ストレッチは、痙縮や関節可動域制限を改善させるか」でした。

1997年3月から2017年12月までに出版されたランダム化比較試験をMEDLINEで網羅的に検索し、結果を統合しています。

注意点としては、電子データベースがひとつしか使われていないというところです。

一般的に、システマティックレビューでは網羅的な検索を行うため、複数の電子データベースを利用します。

MEDLINE以外には、CENTRALやPEDro、EMBASE、CINAHLなどいくつものデータベースがあります。

これらを組み合わせて検索を行うのが一般的なのですが、今回はMEDLINEのみということで網羅的な検索になっていない可能性がある点に注意が必要です。

また、このシステマティックレビューにおいては、下腿三頭筋の痙縮に対する、下腿三頭筋への静的ストレッチの効果を検証しています。

股関節内転筋なども痙縮の影響を受けますが、今回は下腿三頭筋に限局したテーマですのでご注意ください。

ただ、臨床では下腿の痙縮に困ることがとても多いので、役に立つ情報になると思います。

検索された結果、9件の研究が取り込まれました。

9件の研究はランダム化比較試験が7件、非ランダム化比較試験が2件、という結果でした。

この中で痙縮について調べた研究は4件で、ランダム化比較試験が2件、非ランダム化比較試験が2件となっていました。

それでは結果についてお伝えします。

下肢へのストレッチは概ね痙縮への有効性を示した

このシステマティックレビューではメタアナリシスが行われていないのですが、結果として4件の研究中、3件の研究で痙縮への効果があるという報告がされていました。

いずれの研究も1回あたり20分〜30分の静的ストレッチが行われており、ストレッチが介入時間中、継続して同じ刺激を与えられるよう、機器を使ったり、荷重(体重を載せること)を利用したりしていました。

臨床では機器を使うというのは現実的でない施設もあると思いますが、ストレッチングボードを使うなどして一定の伸長を加え、結果を再現していくことは可能ではないかと思います。

また、これはあくまで私見ですが、セラピストの徒手的な静的ストレッチもありかなしかで言えばありなのではないかと思います。

徒手的なストレッチですと、20〜30分一定の伸長刺激を与え続けることが難しくなるので再現性が低くなってしまいますが、セラバンドなど補助してくれる物品を活用しつつ一定の伸長刺激を与えられるよう工夫することで、ストレッチの効果を期待することはできるのではないかと思います。

患者さんに対する足関節のストレッチは、その是非についてよく議論されていますが、1セッションで痙縮(厳密にいうとModified Ashworth Scaleの成績)が低下したという報告もありますし、今回紹介したようにシステマティックレビュー研究で概ね有効性が報告されていますので、こういったエビデンスを踏まえて検討できたらいいのではないかと思います。

しっかりしたストレッチをやろう

今回の研究結果から、下腿三頭筋の痙縮に対する静的なストレッチは痙縮を抑える上で有効である可能性が示唆されました。

脳卒中治療ガイドライン2015では推奨グレードBとしてストレッチが記載されていますが、”ただ伸ばせばいい” というわけではなさそうです。

以前、上肢の静的ストレッチが痙縮に有効であると報告したシステマティックレビューを紹介させていただきました。

メタアナリシスの結果としてストレッチが痙縮に有効であるという結果が示されたのですが、メタアナリシスに取り込まれた研究を見てみると、ストレッチングデバイスを使って20〜40分伸張する、という介入でした。

今回の下肢への静的ストレッチでも同様のことが言え、ストレッチの効果を期待するためには何らかのデバイスを使って持続的に、一定の伸張刺激を与えることが必要であることがわかります。

臨床で5分とか10分とか、セラピストが緩い刺激でストレッチを行うのは意味があるとは言えませんが、デバイスを使ってしっかり伸張刺激を与えるストレッチは意味がありそうです。

リハビリは患者さんの生活の自立を促すという大事な目的があり、ストレッチの是非については議論になることが多いのですが、痙縮が動作障害の原因になっていることも多いです。

なんとなくストレッチをやるのは良くないと思いますが、「この動作をよくするために、ストレッチをしっかりやって痙縮を低下させる」というしっかりした目的のもと、ストレッチをすることは間違いではないと思います。

本日は「脳卒中後の下肢の痙縮に対するストレッチの効果」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Bani-Ahmed A. The evidence for prolonged muscle stretching in ankle joint management in upper motor neuron lesions: considerations for rehabilitation – a systematic review. Top Stroke Rehabil. 2019 Mar;26(2):153-161.