脳卒中患者さんと一緒にトレッドミルトレーニングやエルゴメーターを行うことはよくあることではないかと思います。

ただ、多くの場合は低強度、つまり低速で歩いたり軽い負荷でエルゴメーターを行うなど、患者さんが楽にできる範囲で運動を行うということが多いのではないでしょうか。

以前も紹介しましたが、近年、特に2010年以降は高強度トレーニングの有効性が報告されてきています。

個人的には、低強度か高強度か選べるのであれば高強度トレーニングの方が望ましいと思っています。

※ご高齢の患者さんとか、心肺機能に問題がある患者さんの場合は違います。

一方、高強度トレーニングにはいくつか種類があります。

まず、普通の高強度トレーニング(high-intensity training)です。

これは、持続的に高強度の運動を繰り返すものを指します。

例えば、20分連続で高い負荷でトレッドミルトレーニングを行うようなものです。

続いて、インターバルを伴う、高強度インターバルトレーニング(High Intensity Interval Training:HIIT)というのもあります。

これは、高強度の運動を5分、低強度の運動を3分、のように高強度・低強度を繰り返し実施するものを指します。

また、これらの高強度トレーニングをトレッドミルで行うか、エルゴメーターで行うか、といった方法の違いもあります。

これらの選択肢の中で何がより良いのか、というのをLuo L (2020)が調査しています。

今回は、Luo L (2020) のシステマティックレビューをもとに、どういった高強度トレーニングがより効果が高いのかを紹介します。

Luo L (2021) のシステマティックレビューの概要

研究のリサーチクエスチョンは「脳卒中患者さんに対する高強度トレーニング(高強度インターバルトレーニングを含む)は、低強度トレーニングなどと比べて心肺機能や歩行能力を向上させるか?」でした。

2019年4月までに公表されたランダム化比較試験と準ランダム化比較試験などの対照臨床試験が含まれています。

結果として17件の研究が見つかりました。

多くの研究で、平均年齢が60歳代の患者さんに提供されていて、また、17件中14件の研究が慢性期の脳卒中患者さんに実施されていました。

そして高強度トレーニングを採用した研究が14件、高強度インターバルトレーニングを採用した研究が3件、でした。

それではメタアナリシスの結果について紹介します。

HITおよびトレッドミルトレーニングが効果的

まず全体で見ると、高強度トレーニングは対照群と比べるとVO2ピーク、6分間歩行試験の成績において良好な結果を報告しました。

ですので、高強度トレーニングは、低強度トレーニングなどと比べるとこれらのアウトカムに対しては有効であると考えられます。

そしてサブグループ解析で、どのような条件で行うべきか検証されています。

VO2ピーク

VO2ピークに対しては、高強度トレーニングと高強度インターバルトレーニングとの間に有意差は認められなかったものの、亜急性期よりも慢性期の方が効果量が大きい、ということが明らかになりました。

もちろん、亜急性期の患者さんにも有効なのですが、慢性期の患者さんを対象にした研究でより大きい結果が報告されていた、ということです。

6分間歩行試験

また、6分間歩行試験においては、高強度トレーニングが高強度インターバルトレーニングよりも大きい効果を報告しました。

ですので、現時点でのエビデンスでは、高強度トレーニングの方が望ましいと言えます。

一方、高強度インターバルトレーニングはまだ研究数が少なく(17件中3件)、これから研究数が増えることによって結果が変わる可能性がある点に要注意です。

また、エルゴメーターよりもトレッドミルを採用した研究の方が大きい効果を報告したことが明らかになりました。

6分間歩行距離というのは日常生活における移動範囲に大きく関わってきますので、エルゴメーターかトレッドミルかを選べるのであれば、基本的にはトレッドミルの方が良さそうです。

有害事象

有害事象というのは、リハビリによる事故や患者さんへの不利益のことです。

例えば、転倒や心臓発作などが挙げられます。

高強度だと心血管系にかかる負荷が大きくなるので、患者さんは心配になるかもしれません。

ですが、有害事象については、高強度トレーニングが低強度などと比べて有意に多いという結果にはなりませんでした。

高強度か低強度か、という選択肢を

以前にも高強度トレーニングの有効性について紹介しましたが、高強度トレーニングは低強度トレーニングと比べると大きい効果を期待できます。

今回のシステマティックレビューでも高強度を支持する結果になっています。

ただ、何でもかんでも高強度一択にしてしまうのは望ましくないと思います。

ご年齢がお若い患者さんやスポーツマンの患者さんであれば高強度の方が好まれるかもしれませんが、ご高齢の患者さんや激しい運動をしたくない患者さんの場合は低強度という選択肢ももちろんありです。

低強度トレーニングであっても、トレッドミルやエルゴメーターは効果が報告されています。

これは私見ですが、セラピストとして大事なのは、低強度と高強度、どちらの選択肢も持っておいて、患者さんのニーズに合わせて提供できるようにしておく、ということです。

本日は「脳卒中後の高強度トレーニング〜2020年のシステマティックレビュー〜」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Luo L, Meng H, Wang Z, Zhu S, Yuan S, Wang Y, Wang Q. Effect of high-
intensity exercise on cardiorespiratory fitness in stroke survivors: A
systematic review and meta-analysis. Ann Phys Rehabil Med. 2020 Jan;63(1):59-68.