先日、脳卒中患者さんのリハビリにおける筋トレについてツイートをしました。

ツイートを紹介します。

このツイートに対してセラピストからも当事者の方からもコメントをいただきました。

私は筋トレ肯定派でも否定派でもなく、単純に、患者さんのためになるのであればやればいいし、ためにならないのであればやらなくていいと思っています。

ただ、患者さんのためになるかどうかを判断する上では筋力トレーニングにどういう効果があるのか、どういう効果がないのか、といったメリット・デメリットを把握しておく必要があります。

筋トレのエビデンスを知らずに、自分の経験だけで「筋トレはいい」とか、反対に「筋トレはよくない」と判断するのは早計かなと思います。

今回は、Veldema J (2020) のシステマティックレビューをもとに、筋力トレーニングの効果について紹介します。

Veldema J (2020) のシステマティックレビューの概要

研究のリサーチクエスチョンは「脳卒中患者さんに対する筋力増強運動は何もしない場合などと比べて歩行能力や筋力などを改善させるか?」でした。

2020年4月30日までに出版されたランダム化比較試験を対象に、複数のデータベースから網羅的な情報収集が行われています。

注意点としては英語で出版された研究に限定されていることです。

昨日までのシリーズで紹介させていただきましたが、システマティックレビューにおいて言語制限が行われると網羅的な情報収集にならない可能性があります。

結果として、30件の研究が取り込まれました。

メタアナリシスも行われていて、「筋トレ vs 何もしない」「筋トレ vs 他の治療」の大きく2種類の解析が行われているのですが、今回は「筋トレ vs 何もしない」の結果について紹介します。

筋トレにより下肢の筋力、バランスが向上

メタアナリシスを行い、次の結果が得られました。

①下肢筋力の向上において有益
②バランス能力の向上において有益
③歩行能力を向上させるとは言えない

2016年の別のシステマティックレビューでWist S(2016)が行ったものがあるのですが、そちらの研究と概ね一致する結果となりました。

Wist S(2016)のシステマティックレビューでは、慢性期脳卒中患者さんに対する筋トレの効果を検証しています。

今回紹介するVeldema J (2020)のシステマティックレビューではバランス能力の向上において筋トレは有効であることが示されましたが、Wist S (2016)のシステマティックレビューではバランスに対して効果があるとは言えないという結果になっているのが相違点です。

また、痙縮についても解析されているのですが、こちらについては筋トレを実施した場合も何もしなかった場合も有意な変化を示すとは言えない結果になっています。

つまり、筋トレをしたからといって痙縮が良くなるとも悪くなるとも言えない、という結果になっています。

ツイートに対するコメントで、筋トレをすることによって痙縮が悪くなることを心配されている方がいらっしゃっいました。

もちろん患者さんの個人差がありますし、このメタアナリシスでも95%信頼区間が0を跨いでいる以上、何もしない場合と比べて痙縮が悪くなるケースもないとは言えないのですが、大きくみたときには筋トレをしたからと言って必ず痙縮が悪くなるとは言えなさそうです。

専門家として筋トレの効果を正しく捉えておこう

以上、Veldema J (2020)のシステマティックレビューをもとに、筋トレの効果を紹介しました。

Wist S (2016)のシステマティックレビューと照らし合わせて考えると、少なくとも筋トレは筋力増強の効果はあると思われます。

一方で、歩行能力を向上させるとは言えなさそうなので、筋トレだけにとどまるのではなく、歩行のためのリハビリをする必要もあるでしょう。

繰り返しになりますが、筋トレの良し悪しを判断するためにはまずエビデンスを押さえておくことが大事です。

経験や直感で判断してしまうと、患者さんにとって結果としてマイナスになることがあります。

エビデンスに基づき、筋トレをやるかどうかを判断できるといいですね。

本日は「脳卒中患者さんに対する筋トレのエビデンス〜2020年のシステマティックレビュー〜」というテーマでお話をさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Veldema J, Jansen P. Resistance training in stroke rehabilitation: systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2020 Sep;34(9):1173-1197.