BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しています。

昨日、上肢の運動障害コースという主に作業療法士の先生が参加してくださっているコースの中で、ミラーセラピーをエビデンスに基づいて臨床でどう使っていくかというテーマで、ディスカッションしました。

今回はそのディスカッションの内容を一部紹介しながら、ミラーセラピーの活用戦略について考えます。

脳卒中リハビリの上肢ミラーセラピー3つの活用戦略

最初に3つの活用戦略について紹介します。

①急性期よりも慢性期で使う
②自主トレーニングとして使う
③重度運動障害の患者さんへ使う

Thieme H (2018) のコクランレビューによると、ミラーセラピーは脳卒中患者さんの運動障害や運動パフォーマンス向上に対して有効であることが報告されています。

ただ、あくまでも全体で見た時に有効である、という話です。

もう少し解像度を上げてみていくと、どういう場面において有効なのか、どういう場面では有効とは言えないのか、というのが見えてきます。

解像度を上げて見ていったときに上記の3つの活用戦略が浮かび上がってきます。

それぞれについて詳しく説明

①急性期よりも慢性期で使う

コクランレビューでは、脳卒中発症3ヶ月未満と脳卒中発症3ヶ月後に分けたサブグループ解析があります。

結果としてはいずれに対しても有効である、つまり3ヶ月未満の患者さんに対しても発症3ヶ月以降の患者さんに対しても有効である、ということが明らかになっています。

でも、患者さんの入院期間から考えると、日本の場合は急性期は発症から1ヶ月程度、回復期は6ヶ月程度、慢性期(生活期)は6ヶ月以降、ですよね(大凡です)。

日本の急性期にあたる発症1ヶ月未満くらいの患者さんを対象にした研究では、ミラーセラピーは有効とは言えないという結果が報告されています(Chan WC, 2018; Antoniotti P, 2019)。

一方、慢性期になればなるほど有効性を報告した研究が増えてきます。

このことから、エビデンスに基づいて考えるのであれば急性期よりも慢性期で使用するべき、と判断できます。

なぜ急性期では有効でなく慢性期では有効なのか、については仮説の域を出ませんが、運動プログラムの影響があるのではないかと考えています。

ミラーセラピーは運動錯覚を利用するリハビリで、「あたかも麻痺手が動いている」という体験がキーポイントになります。

急性期は病前の記憶が強く残っており、麻痺手を動かすのもスムーズに動かすというイメージが残っているので、ミラーセラピーのような運動錯覚を使うリハビリが有効ではないのかもしれません。

一方、慢性期になればなるほど麻痺手をスムーズに動かしていた頃の記憶が薄れ、運動プログラムも麻痺手が前提であるプログラムになっている中、ミラーセラピーにより運動錯覚が起こることで運動プログラムが書き換えられ、効果を発揮するのかもしれません。

あくまでも仮説の話ですので、解釈にはご注意ください。

いずれにせよ、エビデンスとしては急性期よりも慢性期の方が有効であるという報告が多いので、その点は押さえておいた方がいいと思います。

②自主トレーニングとして使う

ミラーセラピーは慢性期の患者さんに対して1on1の個別セラピーで行っても効果的なのですが、ホームエクササイズとして実施しても効果的であることが報告されています(Michielsen ME, 2011; Hsieh YW, 2018)。

また、回復期の患者さんに対しては、追加でミラーセラピーを実施することで高い効果を報告している研究があります(Pervane Vural S, 2016)。

回復期から徐々にミラーセラピーが有効であるという研究が増えてきますが、回復期〜慢性期の患者さんへミラーセラピーを適用する場合は、まず自主トレーニングとして提案することをお勧めします。

セラピストとの個別リハビリの時間は課題指向型訓練など、セラピストがいないと行えないリハビリを行い、病棟や自宅での自主トレとしてミラーセラピーを行うことでさらに高い効果を期待することができます。

自主トレーニングとして活用できる、というのはミラーセラピーの大きな強みです。

③重度運動障害の患者さんへ使う

ミラーセラピーは重度運動障害の患者さんへの有効性が報告されています。

代表的なのはSchick (2017)のランダム化比較試験で、Fugl-Meyer Assessmentが17点以下の患者さんに対して有効だったという結果を報告しています。

また、脳卒中患者さんへの上肢リハビリとして、ミラーセラピーと同様にコンセンサスを得ているリハビリに課題指向型訓練やCI療法があります。

脳卒中患者さんの上肢リハビリとしてはこれらのリハビリが選択肢に上がってくるわけですが、CI療法は手関節が背屈できる・手指が伸展できる、といった適応の基準があります。

課題指向型訓練には適応の基準がなく、またある程度、重度の運動障害をもつ患者さんに対しても有効性が報告されていますが、ミラーセラピーはさらに重度の運動障害を持つ患者さんに対して有効性が報告されています(Schick T, 2017; Samuelkamaleshkumar S, 2014; Colomer C, 2016)。

ですので、回復期初期などの重度運動障害がある時はミラーセラピーを行い、運動障害が改善してきたときには課題指向型訓練などの別のリハビリを行う、という戦略が考えられます。

エビデンスに基づいて判断しよう!

まとめます。

● ミラーセラピーは、脳卒中後の上肢リハビリでコンセンサスが得られている
● 2018年のコクランレビューでは、ミラーセラピーは運動障害や運動パフォーマンス向上に有効
● 解像度を上げると①急性期よりも慢性期で使う②自主トレーニングとして使う③重度運動障害の患者さんへ使う、という3つの活用戦略が浮かび上がる

世界的にコンセンサスが得られているリハビリはいくつかあり、その中で何を選択していくか悩むこともあると思います。

そんなとき、直感で判断するのではなく、エビデンスに基づいて判断することで、患者さんのより良い結果につながります。

本日は「脳卒中リハビリのミラーセラピー3つの活用戦略」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Thieme H, Morkisch N, Mehrholz J, Pohl M, Behrens J, Borgetto B, Dohle C. Mirror therapy for improving motor function after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Jul 11;7:CD008449.

Chan WC, Au-Yeung SSY. Recovery in the Severely Impaired Arm Post-Stroke After Mirror Therapy: A Randomized Controlled Study. Am J Phys Med Rehabil. 2018 Aug;97(8):572-577.

Antoniotti P, Veronelli L, Caronni A, Monti A, Aristidou E, Montesano M, Corbo M. No evidence of effectiveness of mirror therapy early after stroke: an assessor-blinded randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2019 May;33(5):885-893.

Schick T, Schlake HP, Kallusky J, Hohlfeld G, Steinmetz M, Tripp F, Krakow K, Pinter M, Dohle C. Synergy effects of combined multichannel EMG-triggered electrical stimulation and mirror therapy in subacute stroke patients with severe or very severe arm/hand paresis. Restor Neurol Neurosci. 2017;35(3):319-332.

Samuelkamaleshkumar S, Reethajanetsureka S, Pauljebaraj P, Benshamir B, Padankatti SM, David JA. Mirror therapy enhances motor performance in the paretic upper limb after stroke: a pilot randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil. 2014 Nov;95(11):2000-5.

Colomer C, NOé E, Llorens R. Mirror therapy in chronic stroke survivors with severely impaired upper limb function: a randomized controlled trial. Eur J Phys Rehabil Med. 2016 Jun;52(3):271-8. Epub 2016 Feb 29.

Hsieh YW, Chang KC, Hung JW, Wu CY, Fu MH, Chen CC. Effects of Home-Based Versus Clinic-Based Rehabilitation Combining Mirror Therapy and Task-Specific Training for Patients With Stroke: A Randomized Crossover Trial. Arch Phys Med Rehabil. 2018 Dec;99(12):2399-2407.

Michielsen ME, Selles RW, van der Geest JN, Eckhardt M, Yavuzer G, Stam HJ, Smits M, Ribbers GM, Bussmann JB. Motor recovery and cortical reorganization after mirror therapy in chronic stroke patients: a phase II randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2011 Mar-Apr;25(3):223-33.

Pervane Vural S, Nakipoglu Yuzer GF, Sezgin Ozcan D, Demir Ozbudak S, Ozgirgin N. Effects of Mirror Therapy in Stroke Patients With Complex Regional Pain Syndrome Type 1: A Randomized Controlled Study. Arch Phys Med Rehabil. 2016 Apr;97(4):575-581.