臨床疑問(Clinical Question: CQ)というものがあります。

これは私たちセラピストが臨床で感じる疑問のことですがこれには後景疑問(Background Question)と前景疑問(Foreground Question)があります。

前景疑問はPICO、PECOという4つの要素に直すことができます。

PはPatient(患者)、IはIntervention(介入)/Exposure(曝露)、CはComparison(比較)、OはOutcome(起結)、です。

私たちセラピストは、この前景疑問の解決をするために、システマティックレビューやランダム化比較試験や観察研究といった研究論文を読みます。

とは言え、研究論文に記載されている情報が必ずしも正しいとは限りません。

論文の情報をもとに患者さんにリハビリを行う以上、やはり論文に書いてある情報の吟味は必要だと思います。

変な話ですが、論文に書いてある情報が誤ったものであった場合、偽の情報をもとに患者さんのリハビリをしてしまうのは患者さんに害を与えてしまう可能性があります。

その情報の信頼性を確認するために、バイアスリスクの評価、というのをします。

今回は研究論文のバイアスリスクの概要と、バイアス評価を行う上で有用なMindsの評価シートを紹介させていただきます。

研究論文のバイアスとは

バイアス、というのはざっくり説明すると、「方法の誤りによって結果が歪んでしまうこと」です。

バイアスは多くの種類があり、選択バイアス、実行バイアス、検出バイアス、症例減少バイアス、出版バイアス、言語バイアス、など色々あります。

研究で行われた方法を確認して、問題がなかったか、問題があるなら結果にどれくらい影響を与えそうか、などを判断するのですが、これをバイアスリスクの評価と言います。

このバイアスリスクの評価をせず、研究論文に書かれた結果や、著者らの結論を鵜呑みにしてしまうと、誤った情報をもとにリハビリをすることになってしまい、患者さんに迷惑をかけてしまうことがあります。

ですので、バイアスリスクの評価をすることはセラピストがリハビリを行う上では必要不可欠です。

バイアス評価に役立つMindsの評価シート

それでは、実際にバイアスリスクをどのように評価すればいいのか?です。

世界的に色々なバイアス評価ツールが使われていますが、日本であればMindsの評価シートがとても使いやすいです。

Mindsというのは正式名称が「EBM普及推進事業」と言い、厚生労働省から公益財団法人日本医療機能評価機構へ委託された事業です。

公益財団法人日本医療機能評価機構、というのは病院機能評価などを行なっているところです。

病院で勤務されている先生なら、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。

そこがMindsという事業を行なっているのですが、そのMindsが公表しているのがMindsの評価シートです。

これは誰でも無料で入手可能になっていて、「Minds システマティックレビュー」で検索すると、システマティックレビューのやり方が記載されたPDFがダウンロードできるようになっています。

そしてその文章の中に評価シートの名前が記載されているのですが、【4-5 評価シート 介入研究】、【4-6 評価シート 観察研究】というのがあります。

リンクを記載しておきます。

【4-5 評価シート 介入研究】
https://jsn.or.jp/guideline/pdf/2016evaluationsheet/CQ9-1-evaluationsheet.pdf

【4-6 評価シート 観察研究】
https://jsn.or.jp/guideline/pdf/2016evaluationsheet/CQ9-2-evaluationsheet.pdf

シートの説明が先ほど説明した「Minds システマティックレビュー」で検索したときに出てくるPDFに書いてあるのですが、説明文が日本語で書かれているのでとてもわかりやすいです。

バイアスリスクの評価をせずともとても勉強になることが書いてあるので、良かったら見てみてください。

バイアス評価をした上で、論文の情報を取り扱おう

英語論文に手軽にアクセスできるようになってきましたし、情報発信もSNSなどで手軽にできるようになりました。

いろいろな情報が飛び交っていますが、情報は玉石混合です。

中には、「この情報からこんなこと言える!?」というものもあります。

こういう時代ですので、情報を受け取る側も情報リテラシーを高め、情報の取捨選択ができるようになった方がいいのではないかと思います。

それが自分の担当患者さんを守るということにもつながります。

その第一歩として、バイアスリスク の評価を勉強したり、今回紹介したバイアスリスクを評価するMindsのツールを使ってみるのはいかがでしょうか!

本日は「研究論文のバイアス評価に役立つMindsの評価シート」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!