Evidence Based Practice(以下、EBP)やEvidence Based Medicine(以下、EBM)を進める上では、ガイドラインは欠かせません。

なのでガイドラインは最新のものをキャッチアップしておくことが大事です。

先日、脳卒中治療ガイドライン2021が発行されました。

日本脳卒中学会が出版しているもので、前回は2015年でした。

追補2019というのがあったものの、改訂は6年振りになります。

流石に6年経っていると新しいエビデンスがたくさん生まれているので、私たちリハビリテーション職に関わるところも変わっていました。

そして、昨日、BRAINのオンラインサロンで脳卒中治療ガイドライン2021の勉強会を開催しました。

2015年版と比べて何がどう変わったのか、について整理するという勉強会です。

今回は、脳卒中治療ガイドライン2021を読んだ感想を話します。

※ガイドラインの内容について転載はできないので、あくまでも感想であることをご理解ください。

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脳卒中治療ガイドライン2021の感想

先に、読んでみて気になったことを3つ挙げます。

①根拠にシステマティックレビュー・メタアナリシスが増えた
②推奨される介入方法に最新技術が増えてきている
③要注意な介入方法もあった

それぞれについて話します。

それぞれについて解説

①根拠にシステマティックレビュー・メタアナリシスが増えた

2015年版では、引用文献にランダム化比較試験が多かったです。

一方、2021年版ではシステマティックレビューがとても多くなっています。

システマティックレビューについてざっくり説明すると、システマティックレビューというのは世界中のランダム化比較試験などの研究を集めてきて、特定の介入方法が有効なのかどうか調べる研究です。

なので、ランダム化比較試験が増えてくるとシステマティックレビューが行いやすくなるのですが、6年くらいでランダム化比較試験が増え、それによってシステマティックレビューも増えてきているのかなという印象です。

また、システマティックレビュー研究のひとつで、コクランレビューというものがあります。

これはコクランという団体が公表しているシステマティックレビューで、方法が厳格で、信頼性の高い情報を提供してくれます。

システマティックレビューを読むなら、まずコクランレビューを読む、くらい優先度が高い重要な情報なのですが、今回の2021年版のガイドラインには、各項目でコクランレビューは必ず含まれるようになっていて、推奨にも大きな影響を与えているようです。

逆に言えば、コクランレビューをはじめとするシステマティックレビューを押さえておけば、ある程度、今後の推奨の変化も予想できそうです。

②最新技術が増えてきている

詳細はお伝えできないのですが、ロボットやVirtual Reality(以下、VR)といった最新技術を応用したリハビリが増えているのが目に止まりました。

これらも、システマティックレビューやランダム化比較試験で有効性が徐々に報告されてきています。

国内ではまだまだ病院・施設には置かれていないと思いますが、今回のガイドラインの結果を追い風に、徐々にロボットやVRが浸透してくるかもしれません。

③要注意な介入方法もあった

一方、ガイドラインの中である程度高い推奨を受けているにもかかわらず、根拠が乏しいものもありました。

推奨度だけを見てリハビリプログラムを決めてしまうと、実は効果があるという報告がほとんどされていないリハビリを患者さんに適用することになってしまうかもしれません。

ですので、推奨度に惑わされるのではなく、一旦その根拠となっている引用文献に目を通すことをお勧めします。

理想的には、自分で各種リハビリに対してシステマティックレビューを行っておいて、客観的に判断できるようにしておいた方がいいと思いますが、臨床で働いている先生はお忙しいと思います。

ですので、まずはぜひ引用文献のチェックをしてみてください。

引用文献を読んでいくと、推奨度に対して納得できるものと違和感があるものが出てくると思います。

ガイドラインを評価するAGREE II

ランダム化比較試験のバイアスリスクを評価するツールにCochraneのRisk of BiasツールやPEDro scaleがあります。

また、システマティックレビューの質を評価するツールにAMSTARというツールがあります。

それらと同様に、ガイドラインの質を評価するツールがあります。

AGREE II というツールです。

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/guideline/pdf/AGREE2jpn.pdf

6領域23項目と全体評価2項目、合計25項目から成るガイドライン評価ツールで、日本語版が存在します。

ランダム化比較試験もシステマティックレビューも、研究の中身が大事とよく言われます。

ランダム化比較試験だから信頼していいとか、システマティックレビューだから信頼していい、とかではなく、適切なプロセスに則って進められたかどうかが大事、ということです。

ガイドラインも人の手によって作られるものですから、どうしても作る人や環境などによって質が左右されてしまいます。

ですので、ガイドラインだから全面的に信じてOK、ではなく、中身の質を判断できるようにしておいた方がいいです。

AGREE IIは、ガイドラインの質を評価する上で有効なツールですので、一度、確認してみてください。