本日のテーマは「即時効果と長期効果の使い分けと必要性」です。

こんな質問をいただきました。

「理学療法士2年目の者です。

回復期病院に勤めていて、患者さんが担当制なのですが、自分が休みのときは先輩が代理でリハビリに入ります。

毎回ではないのですが先輩がリハビリをすると患者さんが “楽になった” “軽くなった” と感じることが多いようで、患者さんから自分にその話があります。

患者さんからも同じ内容のリハビリを求められるのですが、自分には先輩のような技術がありません。

また、先輩はボバースをやっていて、自分はボバースをやっていません。

自分としてはエビデンスベースでやっていきたいのですが、エビデンスで即時効果があるリハビリはあるのでしょうか?」

今回はこちらの質問に答えていきたいと思います。

即時効果を狙って出せるセラピストになるべき。でもそれだけに囚われない

まず質問に答えますが、即時効果を報告しているリハビリのエビデンスはあります。

リハビリの効果について調べたランダム化比較試験を読んでいると、多くは週○回、○週間、という形で中・長期的な効果を報告しているものが多いです。

一方で、1セッションでの効果を報告しているものももちろんあります。

そう言ったエビデンスを参考にして、狙って即時効果を出していくようなアプローチをすることは可能です。

これが質問者さんのおっしゃる ”エビデンスで即時効果があるリハビリ” になるのではないかと思います。

ただ、このご質問を読んでみて思ったのが、即時効果を必ず出す必要がそもそもあるのか、という点です。

リハビリは1回限りで終わるわけではありません。

急性期であれば1ヶ月くらいは、回復期であれば3〜4ヶ月は同じ患者さんと関わると思います。

なので即時効果を出し続けることよりも、基本的には退院する時の状態がなるべく良い状態になっていただくことが望ましいのではないかと思います。

チャプター2以降でもう少し掘り下げて考えて見ます。

問題点の3つの分け方

Beyaert C (2015) の歩行障害のレビュー論文ですが、動作の問題点を3つに分けています。

個人的には他の動作とか、行為とかにも転用できる考え方だと思うので紹介させていただきますが、その3つが「一次的な問題点」「一次的な問題点に続いて生じる問題点」「一次的な問題点に対する代償戦略」です。

これらのうち1つ目と2つ目を紹介しますが、1つ目の一次的な問題点というは運動麻痺とか感覚障害などのことを指し、2つ目の一次的な問題点に続いて生じる問題点というのは関節可動域制限(以下、ROM制限)とか姿勢の変化とかを指します。

後者の「一次的な問題点に続いて生じる問題点」、つまりROM制限とか姿勢の変化とかは即時的に改善しやすい問題点です。

ただし、この一次的な問題点に続いて生じる問題点、というのは名前の通り、「一次的な問題点」の後に生じる問題点です。

例えば、ROM制限は痙縮に続いて生じることが多いです。

なので、ストレッチなどを行なってROM制限を改善させたとしても、痙縮が残っていればまたROM制限は再発してしまいます。

ストレッチなどでROM制限が改善すれば、「楽になった」「軽くなった」と感じるでしょうし、動作もやりやすくなると思います。

ですが、これを繰り返していても本質的な問題点の解決には至らないので、すぐ元通りになってしまいます。

ということを考えると、本質的な問題点に対してアプローチする必要が出てくるのですが、本質的な問題点、例えば痙縮や運動麻痺、感覚障害などはすぐにはよくなりません。

中・長期的な関わりが必要になってきます。

この中・長期的な関わりを行えるのは担当セラピストだけなので、担当セラピストが、毎回、即時効果を期待するアプローチを行うよりは、中・長期的に見たときに最善であると言えるリハビリを行ったほうが患者さんにとってはメリットが大きいのではないかと思います。

この点、担当セラピストと患者さん、あとはその患者さんの代理リハビリをする可能性があるチームメンバーが共通認識を持っておかないといけないところかなと思います。

そうでないと、患者さんからは「代理の先生にリハビリをしてもらう時はよくなるけれど、担当セラピストにやってもらうとよくならない」といった誤った不審感を抱かれてしまうことになりかねません。

状況に応じて使い分けられるセラピストに

とは言え、やはりセラピストとしては即時効果を狙って出すための知識や技術はあったほうがいいと思います。

中・長期的に見たときの効果を狙うことはとても大事ですが、それだけしか行えないというのも考えものです。

即時効果を出す知識・技術もあるし、中・長期的な効果を出す知識・技術もあり、患者さんや状況に応じて自分のスキルを使い分けられるセラピストになれたらいいのではないかと思います。

本日は「即時効果を狙って出せるセラピストになるべき。でもそれだけに囚われない」というテーマでお話しさせていただきました。

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2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

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それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Beyaert C, Vasa R, Frykberg GE. Gait post-stroke: Pathophysiology and rehabilitation strategies. Neurophysiol Clin. 2015 Nov;45(4-5):335-55.