最近、色々な研修会や学会でFugl-Meyer Assessment(以下、FMA)という評価バッテリーをよくきくようになっていないでしょうか。

Evidence Based Practiceの流れが強くなってきてから、よく耳にするようになったのではないかと思います。

ただ、FMAって検査として微妙な側面があるんですよね。

分離運動の程度を把握する上では便利なのですが、動作分析の検査としてあまり使えないんです。

動作分析の検査をする上では筋出力や感覚検査などの方がずっと使えます。

そのため、「FMAってどうやって臨床に活かせばいいの?」と悩む方もいらっしゃるのではないかと思います。

今回は、臨床でFMAを使う2つの理由を紹介します。

Fugl-Meyer Assessmentで評価する2つの理由

最初に結論ですが、FMAで評価する理由の1つ目は「患者さんの全体像をとらえることができる」、2つ目の目的は「リハビリの効果予測をしやすい」、です。

一応、FMAについて簡単に説明します。

FMAは、本来は、上肢の運動機能、下肢の運動機能、バランス、感覚、関節可動域・疼痛から構成される脳卒中の総合評価です。

ただ、一般的にはFMAの上肢項目、下肢項目が抜き取られて一部だけ使用されることが多いです。

上肢項目は満点が66点、下肢項目は満点34点で、運動機能を点数化することができます。

日本では運動障害の評価としてはBrunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)が一般的ですが、世界ではFMAが一般的です。

そして、後述しますが世界基準のエビデンスに基づく脳卒中リハビリテーションを行う上ではFMAは必須になってきます。

▶︎FMA
https://www.gu.se/en/neuroscience-physiology/fugl-meyer-assessment

2つの理由を紹介

それでは、理由をもう少し詳しく紹介します。

まず「患者さんの全体像をとらえることができる」です。

FMAは主に運動機能を点数化することができる検査なのですが、他の検査との相関関係が報告されています。

相関関係というのは、片方の点数が高いともう片方の点数も高い、というような関係のことで、例えばFMAの点数が高いと他の検査項目の点数も高い、ということです。

FMAは、日常生活動作の自立度を調べるBarthel Index(以下、BI)と相関関係があることが報告されていたり、歩行速度と相関関係があったり、上肢の運動パフォーマンスを調べるAction Research Arm Test(以下、ARAT)と相関関係があることが報告されています。

つまり、FMAの評価を行うことで、そのほかの状態、例えば日常生活の自立度や歩行速度、上肢の運動パフォーマンスの状態をざっくりと推測することが可能になります。

2つ目の理由は「リハビリの効果予測をしやすい」です。

エビデンスに基づいて脳卒中リハビリテーションを行う場合、ランダム化比較試験などのエビデンスを参考にします。

ランダム化比較試験を読むことで、「どういう人に、何をどれくらい行えば、何がどれくらい変化する」という情報を得ることができます。

例えば、「70歳くらいのFMAの上肢項目が30点前後の患者さんに対して課題指向型訓練を週3回、4週間実施した場合、FMAの上肢項目が35点になる」という情報を得ることができます。

この情報を得て、自分が担当する患者さんに対して課題指向型訓練を適用すべきかどうか判断するわけですが、このときにFMAを自分の担当患者さんもとっていないと、効果の予測がしにくくなるのですね。

例えば、自分の担当患者さんのFMA上肢項目の点数が30点だった場合、このエビデンスに基づいて課題指向型訓練を行えば、4週間後に35点くらいになることが予想できます。

一方で、自分の担当患者さんの上肢の運動障害の評価でBRSしかとっていなかった場合、4週間の課題指向型訓練を実施した後、BRSが変化するのかどうかわからないのです。

FMAは世界中のランダム化比較試験で使われているので、世界のエビデンスをもとに、カッコよく言えば世界基準の脳卒中リハビリテーションを行う上ではまず世界で一般的に使用されている評価項目を使う必要があります。

標準的な検査としてFMAを使ってみよう

ここまで説明した通りですが、エビデンスに基づく脳卒中リハビリテーションを行う上でFMAはとても有用な検査です。

一方で、動作分析には使用しにくいという欠点もあります。

例えば歩行動作の分析をして、足関節の運動障害が問題点にあがったとします。

足関節の運動障害を定量的に評価する上では、筋力計を使ったり自動関節可動域を使う方が適切だと思います。

FMAは色々な動作を合わせて点数化するものなので、特定の要素(例えば足関節の背屈など)を数値に残せるものではありません。

あくまでも「全体を見る」「リハビリの効果を予測する」という上で有用な検査、ということです。

海外のエビデンスをもとにリハビリを進めようとするのであれば必須の検査になりますので、英語論文、Evidence Based Practiceにチャレンジされる先生はFMAを使うことをぜひ検討してみてください!

本日は「Fugl-Meyer Assessmentで評価する2つの理由」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!