昨日に引き続き、システマティックレビューで結果が異なるとき確認すべきポイントについて取り扱います。

システマティックレビューはエビデンス・ピラミッドの最高峰に位置する研究デザインなので、臨床的な意思決定において参考にされている先生も多いのではないかと思います。

しかし、システマティックレビュー論文を読んでいると、こちらの論文ではこう言っているのに、別の論文では全く違うことを言っている、ということがあります。

例えば、一方の論文では歩行練習は効果があるとは言えない、としているのに対し、もう一方の論文では効果があると言える、としているようなケースです。

こういう場合、歩行練習をすべきなのかどうか悩んでしまうのではないかと思います。

このようなケースは、システマティックレビューに取り込まれた研究が異なるために生じているケースがほとんどなので、取り込まれた研究の違いについて把握すれば大体解決できます。

また、なぜ取り込まれた研究が違うのか、という視点を持つことでより深く理解することが可能です。

昨日はその要因としてPICOSを紹介しましたが、本日は言語バイアスについて紹介します。

システマティックレビューで結果が異なるとき確認すべきポイント

前回でも紹介していますが、おさらいとして4つのポイントを紹介します。

①PICOS
②言語バイアス
③最終検索日
④データベース

システマティックレビューの結果が異なる、と言うのはシステマティックレビューに取り込まれた研究が異なるから、なのですが、基本的に上記の理由によって取り込まれる研究が違ってきます。

繰り返しになりますが、今回は言語バイアスの紹介です。

※そもそもシステマティックレビュー自体がよくわからない、という方は昨日の記事をご覧ください!

言語バイアスについて紹介

言語バイアスというのは、特定の言語に絞って文献を収集することによって、網羅的なエビデンスの収集を行うことができず、むしろ偏った情報になってしまうことを意味します。

主に英語に絞って検索されることが多く、およそ38%のシステマティックレビューで英語に限定した検索が行われていることが示唆されています(2016年に出版されたシステマティックレビューのデータ)。

本来どういう形が理想かというと、特定の言語に限定せず、世界中に存在するエビデンスを収集し、それらの結果をまとめる形です。

例えばPubmedでは英語で出版された論文情報が入手できますが、J-stageや医中誌では日本語で出版された論文情報が手に入ります。

J-stageや医中誌のような母国語の論文のみを扱うデータベースは各国にあるので、システマティックレビューのコンセプトである ”網羅的な” エビデンスの収集を行うのであれば、本来は英語だけでなく、日本語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、など世界各国の言語で出版された論文も収集されるべきです。

ただ、現実的にはなかなか難しいです。

例えば、私たちがイタリア語で出版された論文を読もうと思っても、そもそもイタリアのデータベースを知らないですし、イタリア語の翻訳を正しく行えるかわかりません。

また、論文は無料で公開されているものもありますが、有料で公開されているものもあり、論文の購入費用も必要になります。

英語の論文だけならまだしも、世界各国の言語で出版された論文まで購入するとなると購入費用はさらに膨れ上がります。

このような事情があって、システマティックレビューでは英語で出版された論文のみを対象にするというケースがあります。

言語制限によりシステマティックレビューの結果が変わる

言語制限(特に英語のみに限定される)ことによって、システマティックレビューに取り込まれる研究が変わりますので、結果も変わってきます。

例えば、言語制限を行わなかったシステマティックレビューでは50件の研究が取り込まれたのに対し、言語制限を行った別のシステマティックレビューでは30件しか研究が取り込まれない、ということがあります。

取り込まれた研究の数が違えば結果が変わることもよくあるので、50件を取り込んだシステマティックレビューでは「効果があるとは言えない」という結果・結論を報告していたのに対し、30件を取り込んだシステマティックレビューでは「効果があると言える」という結果・結論を報告している場合もあります。

バイアスの観点から言えば、こういうケースの場合は言語制限のないシステマティックレビューを参考にする方がベターです。

ただし、言語バイアス以外のところで50件を取り込んだシステマティックレビューに問題がある場合もありますので、あくまでもひとつの要素として理解しておくことが大事です。

みなさまの論文選択のお役に立てれば嬉しいです!

本日は「システマティックレビューで結果が異なるとき確認すべきポイント 〜言語バイアス〜」というテーマでお話しさせていただきました。

明日は最終検索日をテーマにお話しさせていただきますので、よかったら明日もチェックしていただけると嬉しいです。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!