BWSTTは、Body Weight Support Treadmill Training、つまり免荷式トレッドミルトレーニングを意味します。

免荷装置を使い、患者さんの身体を真上に引き上げて体重を軽くした状態で、歩く練習を行います。

これにより、歩行が自立していない患者さんも歩行練習を行うことができるようになります。

実際、Mehrholz J (2017) のコクランレビューでも、歩行が自立していない患者さんに対する免荷式トレッドミルトレーニングの有効性が報告されています。

病院や施設にも置かれるようになってきていますが、意外と有効活用できる人は少ないのではないかと思っています。

特に免荷量の設定の仕方がわからない、というケースをよく耳にします。

今回は、BWSTTの免荷量の設定の仕方と、電気刺激を組み合わせることで大きい改善を報告した2013年のLee HJのプログラムを紹介します。

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BWSTT+電気刺激を使った脳卒中後のリハビリプログラム

Lee HJ (2013) のランダム化比較試験を紹介します。

この研究では、発症から4ヶ月くらいの回復期脳卒中患者さん30人を対象にしました。

30人を2つのグループに分けています。

1つ目のグループはBWSTT+電気刺激グループです。

こちらのグループでは、BWSTTに加えて、筋電トリガー式電気刺激が行われました。

筋電トリガー式電気刺激+BWSTT
①筋電トリガー式電気刺激
・電極は麻痺側の前脛骨筋
・周波数やパルス幅、強度、トリガー閾値などのパラメータは個別に設定したが、BWSTT中に足関節背屈が生じるようした
②BWSTT
1週目:40%免荷
2週目:30%免荷
3週目:20%免荷
4週目:10%免荷
・歩行速度は0.4m/sから開始し、被験者が良好な歩行パターンを維持している場合、速度を可能な限り上げた
・体幹のアライメント、ステップの長さ、遊脚相での膝の曲げ伸ばしなどの指示は、対象者の能力に応じて行われた

時間・頻度・期間
30分、週5回、4週間

一方、もうひとつのグループではBWSTTのみを行いました。

BWSTTの実施の仕方は上記の方法と同じです。

BWSTTのポイントは免荷です。

1週目から4週目まで、段階的に免荷量が減らされています。

例えば50kgの体重の人であれば次の通りになります。

1週目は20kg免荷 = 自重を30kgにして歩く
2週目は15kg免荷 = 自重を35kgにして歩く
3週目は10kg免荷 = 自重を40kgにして歩く
4週目は5kg免荷 = 自重を45kgにして歩く

効果な免荷装置であれば何kg免荷されているか表示されるものもありますが、その機能がついていない場合は体重計を使って測定します。

免荷装置で患者さんの身体を吊り上げた後、体重計に乗ってもらうことで自重が何kgになっているか測定できます。

BWSTTのプログラムに悩んでいる方は、Lee HJ (2013)のリハビリプログラムが参考になるのではないかと思います。

BWSTT+電気刺激でより大きい効果を得た

4週間のリハビリ実施後、BWSTTのみを行なったグループは平均歩行速度(cm/s)が38.08 (19.64) → 56.72 (28.81)へ向上しました。

BWSTTを行うだけでも歩行速度が速くなることが示されています。

なお、歩行速度は歩行の自立度と関係の深いアウトカムで、歩行速度が速い人は歩行自立度も高い人が多いです。

一方、BWSTT+筋電トリガー式電気刺激を行なったグループはさらに大きい改善を報告しており、平均歩行速度(cm/s)が35.93 (20.08) → 76.00 (19.96)へ向上しています。

このことから、歩行速度の向上においてはBWSTTだけで実施するよりも、筋電トリガー式電気刺激を組み合わせた方が良いと言えます。

その他、バランスを評価するBerg Balance ScaleやTimed Up and Go testでも同様の結果が報告されています。

免荷量の設定が肝

脳卒中患者さんの歩行リハビリにおいて、考慮しなければならない要素に “推進力” があります。

推進力というのは、ざっくりと説明すると立脚後期における蹴り出し力のことです。

この推進力が得られないせいで代償動作戦略が出現したりするので、本来の歩行を取り戻したい、という患者さんに対しては、推進力が向上するリハビリプログラムを組まないといけません。

▶︎ 推進力の構成要素

その点、BWSTTについては、2020年のAlingh JFのシステマティックレビューによると、推進力向上に対して有効ではないとされています。

▶︎ 推進力向上に対してどのタイプの歩行練習が有効か?

これは “免荷” が良くない方に作用していて、体重が軽くなっているので立脚後期に推進力を発揮しなくても歩けてしまうため、と考えられています。

一方、免荷をしないトレッドミルトレーニングや、歩行練習+電気刺激は推進力向上に有効とされています。

上記の通り、BWSTTを行うことで歩行速度やバランスが向上するという報告があるのは事実ですが、”免荷のし過ぎ” には注意しないといけません。

BWSTTを使うことでひとりで歩くことができない患者さんも歩行練習ができる、というのは大きいメリットですが、こういったデメリットがあることも知っておいた方がいいと思います。

ただでさえ推進力向上に対して不利とされるBWSTTですが、オリジナルのプロトコルを作り、免荷しすぎてしまうとより上手くいかなくなるかもしれないので、まずはLee HJ (2013)のリハビリプログラムを参考にし、免荷設定をしてみてはいかがでしょうか!

まとめます。

● 脳卒中後の歩行リハビリのひとつにBWSTTがあり、有効性が報告されている
● Lee HJ (2013) は毎週10%ずつ免荷量を減らす方法で歩行速度やバランスが向上することを報告
● BWSTTは推進力向上において不利、歩行速度などでは効果を出せるよう、先行研究に則ったプログラム立案を!

参考文献

Mehrholz J, Thomas S, Elsner B. Treadmill training and body weight support for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Aug 17;8

Lee HJ, Cho KH, Lee WH. The effects of body weight support treadmill training with power-assisted functional electrical stimulation on functional movement and gait in stroke patients. Am J Phys Med Rehabil. 2013 Dec;92(12):1051-9.

Alingh JF, Groen BE, Van Asseldonk EHF, Geurts ACH, Weerdesteyn V. Effectiveness of rehabilitation interventions to improve paretic propulsion in individuals with stroke – A systematic review. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2020 Jan;71:176-188.