前回、前々回とバランス練習について触れました。
さらっとおさらいすると、
● 脳卒中患者さんへの理学療法はバランス向上に有効である
● バランス向上のための理学療法にはいくつか種類があり、機能的な課題トレーニングが有効
● 機能的な課題トレーニングにもいくつか種類があり、バランスに特化した練習が有効
でした。
今回は、機能的なトレーニングに含まれる、体幹トレーニングの効果について検証したランダム化比較試験について紹介します。
「実際にバランスを向上させるためのリハビリってどう進めていけばいいの?」という疑問に答える、各論の話です。
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Saeys W (2012) のランダム化比較試験の概要
この研究では、回復期の脳卒中患者さん36人を対象に、体幹トレーニングの効果について検証しています。
まず36人を2つのグループに分けました。
ひとつ目は標準的なリハビリ(理学療法、作業療法)に加えて、体幹トレーニングをするグループ。
もうひとつは標準的なリハビリに加えて、背臥位でのモビライゼーションと電気刺激をするグループです。
体幹トレーニングのプロトコルは次の通りです。
<背臥位> 20分
・ブリッジ姿勢で骨盤を持ち上げる(ブリッジ動作)
・ブリッジ姿勢で骨盤を持ち上げ、右もしくは左にキープする(両側実施する)
・麻痺側と非麻痺側の両方へ寝返り動作練習
<座位> 10分
・骨盤前後傾(Anterior and Posterior Tilting)
・体幹側屈
・骨盤の側方傾斜(Lateral Tilting)
・上部体幹の回旋、下部体幹の回旋
・外的な抵抗に対する上部体幹の回旋
・リーチ動作
・不安定なプラットフォームの上に座る
合計30分、週4回、8週間行っています。
体幹トレーニング群でBBSスコアが大幅に向上
結果として、体幹トレーニング群は、バランス能力を測定するBerg Balance Scale(以下、BBS)の平均スコアが23.78 (15.74)→43.17 (16.74)へ大幅に向上したことを示しました。
一方、背臥位でのモビライゼーションと電気刺激群は、平均スコア17.27 (17.74) →26.47 (17.14)の向上を示しました。
体幹トレーニングの方が大幅に大きく向上していることがお分かりいただけると思います。
グループ間の統計的な有意差も確認されました。
課題の難易度調整も大事
このプロトコルでは、お伝えした運動課題に加えて、患者さんに合わせて難易度調整が行われています。
難易度調整は、足部のサポート、二重課題の負荷、反復回数、視覚フィードバックによって行われました。
よく運動障害へのリハビリ、特に課題指向型訓練やCI療法では難易度調整の重要性が謳われますが、体幹トレーニングでも同様に、難易度調整は大事な要素です。
患者さんの状態に合わせて難易度を調整しながら課題を進めていきましょう!
まとめます。
● 脳卒中患者さんのバランス向上に有効なリハビリとして機能的な課題トレーニングがある
● 機能的な課題トレーニングのひとつに体幹トレーニングがある
● 大幅な平均BBSスコア向上を報告したSaeys W (2012) の体幹トレーニングは背臥位・座位の運動課題を実施
皆様の役に立つ情報になれば嬉しいです。
参考文献
Saeys W, Vereeck L, Truijen S, Lafosse C, Wuyts FP, Heyning PV. Randomized controlled trial of truncal exercises early after stroke to improve balance and mobility. Neurorehabil Neural Repair. 2012 Mar-Apr;26(3):231-8.