脳卒中の患者さんの日常生活動作の自立を考える上では、歩行能力の向上は欠かせない要素かと思います。
別の記事で、歩行練習であればトレッドミルが望ましいという記事を書きましたが、実際どれくらいトレッドミルトレーニングを行えば良いでしょうか?
トレッドミルは優秀ですが、他のリハビリ方法と比べてより高い効果を期待するためには頻度と期間の設計も大事です。
今回は、2017年に出版されたコクランレビューをもとに、トレッドミル歩行練習の頻度や期間について考えてみます。
脳卒中後の歩行をよくするために推奨される週3回以上の訓練
結論ですが、歩行能力を向上させるためには週3回以上のトレッドミルトレーニングが有効、とされています。
まず歩行能力の定義ですが、ここでは歩行速度と歩行距離、の2つにさせていただきます。
歩行速度は10m歩行試験や5m歩行試験で測定される歩く速さのことです。
歩行距離は6分間歩行試験や2分間歩行試験で測定される、歩ける距離のことです。
10m歩行試験も6分間歩行試験も検査の妥当性や信頼性、反応性については検証されています。
歩行のリハビリの効果を検証した研究ではほとんどこの2つが、少なくともどちらか1つはアウトカムとして採用されている、歩行能力をみる上では中心になる検査項目です。
これがなぜ大事な検査項目かというと、これをとることで患者さんの歩行の全体像を把握できるからです。
というのも、これらの検査は日常生活の自立度やバランスなど、歩行に関わる他の検査成績との相関関係があることが報告されています。
つまり、歩行速度が速かったり、歩行距離が長い患者さんは日常生活の自立度が高かったり、バランス能力が高かったりするのですね。
なので、これらを検査しておくと、ある程度、移動に関わる能力の全体像が見える、ということです。
そのため大事な検査として位置付けられています。
理想的には週5回、4週間以上
2017年のコクランレビューでも、歩行速度と歩行距離をアウトカムにしてメタアナリシスという解析が行われています。
このコクランレビューでは、歩行が自立している脳卒中患者さんに対するトレッドミルトレーニングと免荷式トレッドミルトレーニングは、週3回以上実施した場合は他の治療などと比べて歩行速度を向上させるが、週3回未満の場合は他の治療などと比べて歩行速度を向上させるとは言えない、という結果を報告しています。
回復期リハビリ、あるいは保険外リハビリなどで週3回以上トレッドミルトレーニングを行える環境であれば、週3回以上が望ましいようです。
また、歩行距離をアウトカムにした解析も行われています。
歩行が自立している脳卒中患者さんに対するトレッドミルトレーニングと免荷式トレッドミルトレーニングは、週5回実施した場合は他の治療などと比べて歩行距離を向上させるものの、週5回未満の場合は他の治療などと比べて歩行距離を向上させるとは言えなくなる、という結果を報告しています。
また、期間につきましては4週間では効果があると言い切れなくなりますが、4週間以上であれば効果があると言える結果になっています。
これらをまとめると、トレッドミルトレーニングが他のリハビリと比べて最も効果を発揮し歩行能力を向上させる上では週5回、4週間以上の頻度、期間設定が望ましいと言えます。
ちなみに1回あたりの時間は30分以上が多い
研究によって1回あたりの時間は異なるのですが、基本的に30分以上トレッドミルを行う研究が多いです。
時間が許すのであれば1回あたり30分、週5回、4週間以上実施するのが望ましいと考えています。
もちろん患者さんごとに状況は異なるのですが、回復期リハビリであれば、理学療法は1回60分、週7回実施することが多いと思いますので、トレッドミル歩行練習を30分、週5回実施するのを基本とし、それ以外の時間でバランス練習や課題指向型練習をするなどプログラムをカスタマイズするのが良いのではないでしょうか。
参考文献
Mehrholz J, Thomas S, Elsner B. Treadmill training and body weight support for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Aug 17;8