「麻痺している側の手や足は、本当に動くようになるのだろうか」――脳卒中のあと、鏡を使って動いているように”見せる”だけのリハビリで、本当に回復するのかと疑問に思う方は多いはずです。このリハビリ、名前を「ミラーセラピー」と言います。

ミラーセラピーは1995年に発表されて以来、研究が続けられ、2018年に公開された62の研究をまとめた国際的な分析で有効性が示されました(Thieme, 2018)。そして2026年にも新しい分析が公開され、片側型が有効で、両側型は効果が限定的」という新しい知見が加わりました(Boening, 2026)。

この記事では、ミラーセラピーが本当に効くのか、どう取り組めばいいのかを、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、2026年時点の最新研究に基づいて解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。

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⚠ 今すぐ医療機関への相談を検討してください
以下の症状が突然出た場合は、様子を見ずに救急要請(119番)を検討してください。
・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)

また、ミラーセラピーを始める前に、以下の症状がある場合は医師に必ず相談してください。
・鏡を見ていると強いめまい・吐き気が起こる
・視覚情報で混乱したり不安が強く出る(半側空間無視がある場合など)
・麻痺側に強い腫れ・変色・痛みがある(複合性局所疼痛症候群=CRPSの可能性)
目次
  1. ミラーセラピーとは?|仕組みをわかりやすく解説
    1. 鏡の”錯覚”で脳を動かす仕組み
    2. 基本的なやり方(上肢の場合)
  2. 腕・手への効果|2026年最新のエビデンス
    1. 腕の動きやすさ(運動機能)への効果
    2. 日常動作・ADLへの効果
    3. 片側型と両側型――どちらを選ぶべきか(2026年新知見)
  3. 脚・歩行への効果|下肢にも使えるミラーセラピー
    1. 歩行速度・歩行距離への効果
    2. バランス・下肢の運動機能への効果
    3. 痙縮(筋肉のつっぱり)への影響
  4. 発症時期・重症度別に見るミラーセラピーの効果
    1. 発症時期別の効果
    2. 重度の麻痺でも効果があるのか
  5. 他のリハビリと組み合わせるとどうなるか(2026年最新)
    1. 運動イメージとの併用(プライミング効果)
    2. 電気刺激(NMES)との併用
    3. 経頭蓋磁気刺激(TMS)・tDCSとの併用
    4. ロボット・VR(バーチャルリアリティ)との併用
  6. 自宅で続けるためのポイント
    1. 推奨される頻度・時間の目安
    2. 安全に続けるための注意点
  7. ミラーセラピーのメリットとデメリット
  8. ミラーセラピーはどこで受けられるか
  9. BRAINでのミラーセラピーの使い方
  10. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 鏡さえあれば、自分ひとりで始めてもいいですか?
    2. Q. 片側型と両側型、どちらを選べばいいですか?
    3. Q. 自宅ではどのくらいの頻度でやればいいですか?
    4. Q. ミラーセラピーだけで回復しますか?
    5. Q. 効果を感じられない場合はどうすればいいですか?
  11. まとめ
  12. 参考文献

ミラーセラピーとは?|仕組みをわかりやすく解説

ミラーセラピーは、鏡を使って「麻痺していない側の手や足が動いている様子」を麻痺側に映すことで、まるで麻痺側が動いているかのような錯覚を脳に起こさせるリハビリです。英語ではMirror Therapy(MT)、Mirror Visual Feedback(MVF)とも呼ばれます。

鏡の”錯覚”で脳を動かす仕組み

麻痺側と体の正中線(胸の真ん中)のあいだに鏡を立てます。そして、麻痺していない側の手や足を鏡に映しながら動かすと、鏡の中には麻痺側がなめらかに動いているように見えます。

脳はこの映像を「麻痺側が動いた」と受け取り、運動にかかわる脳の領域(運動野)が活性化します。2011年に公開された研究では、麻痺側の脳の活動が実際に高まり、神経の回路が再び使われるように変化することが確認されていますMichielsen, 2011)。

基本的なやり方(上肢の場合)

上肢(腕や手)の場合、以下の手順で行います。

  1. テーブルに座り、体の正中線(胸の真ん中)に鏡を立てる(鏡の向きは麻痺していない側を映すように)
  2. 麻痺側の手は鏡の裏側(見えない位置)に置く
  3. 麻痺していない側の手を鏡の前に出し、鏡を見ながらゆっくり動かす(手を開く・閉じる、指を1本ずつ動かす、ものをつかむ、など)
  4. 「鏡の中で動いているのは、麻痺側の自分の手だ」と意識を向けながら続ける
  5. 1回15〜30分、週3〜5回を目安に行う

下肢(脚)の場合も考え方は同じで、床に鏡を立て、麻痺していない側の脚を映しながら足首や膝を動かします。

BRAINでも初めての方には、まず動かしやすい動作(手の開閉、足首の曲げ伸ばし)から始めるようにお伝えしています。鏡に集中しやすく、”動いている”という感覚を得やすいからです。

腕・手への効果|2026年最新のエビデンス

結論から言うと、ミラーセラピーは腕や手の動きを取り戻すリハビリとして、世界的にもっとも研究が進んでいる方法のひとつです。2026年に公開された19の研究をまとめた分析では、ミラーセラピーによって腕の運動機能が全66点中およそ5点改善し、中等度の効果があると示されましたBoening, 2026)。

事実:
2026年に公開された19の研究をまとめた分析では、ミラーセラピーは腕・手の運動機能に対して中等度の改善効果を示し、効果量は SMD 0.48(95%信頼区間 0.14〜0.82)と報告されました(Boening, 2026)。

腕の動きやすさ(運動機能)への効果

2018年に公開された62の研究をまとめた国際的な分析では、ミラーセラピーは腕の運動機能を有意に改善し、効果量は SMD 0.47(95%信頼区間 0.27〜0.67)と報告されています(Thieme, 2018)。またアジア圏の研究を集めた2018年の別の分析でも、上肢運動機能(Fugl-Meyer)に有意な改善が確認されています(Zeng, 2018)。これらの結果は、2025年に公開された18の研究をまとめた最新分析でも再確認されています(Saragih, 2025)。

2025年の分析によると、効果を最大にするのは「週5回以上・4週間以内の集中的な実施」でしたSaragih, 2025)。この頻度は、自宅でも十分に実施できる現実的な設定です。

日常動作・ADLへの効果

腕の動きそのものだけでなく、着替え・食事・歯みがきなどの日常動作(ADL)にも効果が確認されています。2018年に公開された分析では、ADLへの効果量は SMD 0.48(95%信頼区間 0.30〜0.65)で、腕の運動機能と同じくらいの改善が見られました(Thieme, 2018)。

2025年に発表された120名の亜急性期の方を対象とした研究では、ミラーセラピーに課題指向型訓練を組み合わせることで、腕を実際に日常生活で使う頻度(Motor Activity Log)と、生活の質(SS-QoL)が3か月後にも改善が維持されていました(Fernández-Solana, 2025)。

片側型と両側型――どちらを選ぶべきか(2026年新知見)

ミラーセラピーには、麻痺していない側の手だけを動かす「片側型」と、両手を同時に動かす「両側型」の2種類があります。従来は「どちらでも効果はあるが、片側型のほうがやや有利」と考えられてきました。

2026年に公開された19の研究をまとめた分析では、この差が明確に数値で示されました。片側型は効果量 SMD 0.48 と中等度の改善を示した一方、両側型は SMD 0.15 で有意な効果は確認できませんでしたBoening, 2026)。

ただし、一方で2025年に発表された亜急性期546名を対象とした別の分析では、亜急性期に限れば両側型のほうが有利という逆の結果も報告されています(Hsieh, 2025)。つまり、どちらが有利かは発症からの時期で変わる可能性があります。

BRAINの判断!
BRAINでは、発症から数か月以上経った慢性期の方には「片側型」を基本として取り入れ、亜急性期(発症数週〜数か月)の方には両手を意識しつつ、麻痺側に負担をかけすぎない「修正型両側型」を使い分けています。2025〜2026年の最新の分析結果が、この使い分けの根拠になります。

脚・歩行への効果|下肢にも使えるミラーセラピー

ミラーセラピーは上肢(腕)のリハビリというイメージが強いですが、下肢(脚)にも有効なエビデンスが揃っています。結論として、2023年の分析では「歩行速度」「バランス」「下肢の運動機能」に効果があると示されましたKundi, 2023)。

歩行速度・歩行距離への効果

2019年に公開された複数の研究をまとめた分析では、ミラーセラピーは歩行速度と歩行距離の両方を改善することが示されました(Louie, 2019)。2018年の別の分析でも、歩行速度・バランス・下肢の運動機能すべてで有意な改善が報告されています(Li, 2018)。

一方で、「歩行の自立度(杖なしで歩けるかどうか)」については、ミラーセラピーだけで改善するという明確な結論はまだ出ていません。自立度を上げるには、歩行練習そのものと組み合わせることが必要です

バランス・下肢の運動機能への効果

立っているときのバランス能力(Berg Balance Scale)や、下肢の運動機能(Fugl-Meyer下肢版)にも、中等度の改善が示されています(Broderick, 2018)。2023年に公開された電気刺激とミラーセラピーを組み合わせた複数研究の分析でも、下肢の運動機能とバランス、歩行速度の改善が確認されました(Oh, 2023)。

BRAINでも、足首の背屈(かかとを持ち上げる動き)や膝の動きの練習にミラーセラピーを取り入れています。特に足首の動きを鏡で確認できると、「動いている」という感覚が強まり、本人のモチベーションにつながりやすいです。

痙縮(筋肉のつっぱり)への影響

痙縮(麻痺側の筋肉が常につっぱっている状態)への効果については、結論が分かれています。2025年に公開された分析では、上肢・下肢ともに痙縮の指標(Modified Ashworth Scale)が有意に改善したと報告されました(Tekeoğlu Tosun, 2025)。一方で、2023年の別の分析では、ミラーセラピーと他の運動療法の差はなく、「同等」という結論も出ています(Muñoz-Gómez, 2023)。

つまり現時点では、ミラーセラピーは痙縮に対して「効果がある可能性は高いが、決定的な結論はまだ出ていない」と見るのが妥当です。BRAINでは、痙縮が強い方には経頭蓋磁気刺激(TMS)との併用を優先し、ミラーセラピーは補助的に使うようにしています。

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発症時期・重症度別に見るミラーセラピーの効果

ミラーセラピーは、どの時期から始めても効果があるのでしょうか。また、麻痺が重くて手がほとんど動かない方でも取り組めるのでしょうか。

発症時期別の効果

時期目安ミラーセラピーの位置づけ
急性期発症1か月以内際立った効果は確認されていない(Antoniotti, 2019
亜急性期発症1〜6か月運動機能・ADL・QoLすべてで改善(Hsieh, 2025
慢性期発症6か月以降片側型で中等度の改善効果(Boening, 2026

つまり、発症直後よりも、少し落ち着いた亜急性期以降に始めたほうが効果を実感しやすいと言えます。ただし、急性期での実施が「悪い」わけではなく、将来的な効果の下地づくりとして活用する考え方もあります。

重度の麻痺でも効果があるのか

手がほとんど動かない重度の麻痺の方にも、ミラーセラピーは実施できます。2018年に公開された研究では、重症例でもミラーセラピーとCIMT(麻痺していない側を使わないようにして麻痺側を強制的に使う訓練)を組み合わせることで、運動機能が改善したと報告されました(Chan, 2018)。

2020年に公開された中国の研究でも、中等症〜重症の亜急性期30名を対象に、課題指向型ミラーセラピーを5週間行うと、運動機能と日常生活動作が通常療法よりも大きく改善しました(Madhoun, 2020)。さらに2022年に発表された自宅での研究では、重症例には片側型が特に有利だったと示されています(Geller, 2022)。

BRAINでも、「まだ手がほとんど動かない」という方から、「指がわずかに動くようになってきた」という方まで、幅広い重症度の方にミラーセラピーを取り入れています。動かせる側を動かせば鏡の中で”動いている姿”が見えるため、重症の方でもすぐに始められるのが大きな利点です。

他のリハビリと組み合わせるとどうなるか(2026年最新)

近年の研究は、「ミラーセラピー単独」よりも「他のリハビリと組み合わせること」に注目しています。結論として、運動イメージ・電気刺激・ロボット・VR(バーチャルリアリティ)と組み合わせると、ミラーセラピー単独よりも大きな効果が得られることが次々と示されています。

運動イメージとの併用(プライミング効果)

運動イメージとは、実際には体を動かさず「自分が動かしている様子」を頭の中でイメージする方法です。これをミラーセラピーと組み合わせると、脳をあらかじめ”動かすモード”に準備できる効果(プライミング効果)があることが知られています。

2011年に公開された韓国の研究では、脳卒中当事者を対象に、運動イメージとミラーセラピーの併用による皮質脊髄路(脳から脊髄へ運動指令を送る神経回路)の興奮性の変化を調べたところ、両方を組み合わせたほうが、単独よりも脳の運動にかかわる神経の活動が高まることが示されました(Kang, 2011)。

BRAINでも、ミラーセラピーを始める直前に「これから動かす動きを頭の中でイメージしてください」とお声がけし、脳を準備させてから本練習に移る流れを取り入れています。特に重症の方では、この”準備”のひと手間で手の動き出しが変わる方がいらっしゃいます。

電気刺激(NMES)との併用

2024年に公開された16の研究・773名をまとめた分析では、ミラーセラピーと電気刺激を組み合わせると、腕の運動機能がミラーセラピー単独や電気刺激単独よりも有意に大きく改善しましたPan, 2024)。効果量 SMD 1.89(95%信頼区間 1.52〜2.26)は、リハビリの研究の中でも特に大きな数値です。

一方、2021年に公開された8つの研究・314名をまとめた別の分析では、ミラーセラピーと電気刺激を”同時に”行った場合の効果は、Fugl-Meyerや箱入れテスト(BBT)では有意差が出ず、Action Research Arm Test(ARAT)でのみ改善が認められる、とやや控えめな結論も示されています(Saavedra-García, 2021)。つまり「どのタイミングで組み合わせるか(連続/同時)」「どの動作を評価するか」で効果の出方が違う可能性があります。

電気刺激は、麻痺側の筋肉に電極を貼り、弱い電流で筋肉を収縮させる方法です。「鏡で見える動き」と「実際に筋肉が動いている感覚」が一致することで、脳の学習が強化されると考えられています。

経頭蓋磁気刺激(TMS)・tDCSとの併用

経頭蓋磁気刺激(TMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、頭の外から脳を刺激し、神経の活動を調整する方法です。2022年に公開された17の研究・628名をまとめた分析では、これらの脳刺激とミラーセラピーを組み合わせると、身体機能(Fugl-Meyer)が平均5.97点改善し、日常生活動作の改善も認められました(Zhao, 2022)。

2025年に発表された慢性期36名を対象とした研究では、tDCSをかける脳の部位によって効果が異なることも示されました。前運動野に刺激を加えると痙縮が低下し、一次運動野に刺激を加えると体幹の代償動作(肩や腰で補ってしまう動き)が減るという結果です(Liao, 2025)。

ロボット・VR(バーチャルリアリティ)との併用

2026年に公開された16の研究・736名をまとめた分析では、ロボットとミラーセラピーを組み合わせることで、腕の運動機能が平均7.52点改善しましたGao, 2026)。この改善幅は、日常生活の動きに違いが出てくるレベルとされる「臨床的に意味のある最小の変化(MCID)」を上回る大きな効果です。

同じく2025年に公開された14の研究・475名をまとめた分析では、VR(ヘッドセットや画面を使った仮想空間の映像)とミラーセラピーの併用でも、腕の運動機能と手の器用さが有意に改善しています(Gao, 2025)。

BRAINの判断!
BRAINでは、ミラーセラピーを単独で使うことは少なく、電気刺激(NMES)・TMS・ロボット装具と組み合わせて実施しています。特に「麻痺が重くて自主練ではモチベーションが続かない」という方には、電気刺激との併用が相性が良いと感じています。単独でできる自宅リハビリとしても有効ですが、プロと一緒に行うときは必ず他の介入と組み合わせたほうが効率が上がります。

自宅で続けるためのポイント

ミラーセラピーは、特別な機器を必要とせず、鏡さえあれば自宅でも始められるのが大きな特徴です。2018年に公開された日本・台湾の研究でも、自宅で行うミラーセラピーと施設で行うものとで、ほぼ同等の効果が認められました(Hsieh, 2018)。

推奨される頻度・時間の目安

  • 1回の時間:15〜30分(集中できる範囲で調整)
  • 頻度:週5回以上が目安。2025年の分析では週5回・4週間で最大の効果(Saragih, 2025
  • 期間:最低4週間は続ける。長期的な効果には8〜12週の継続がおすすめ
  • 基本型:慢性期の方は「片側型」、亜急性期の方は両手を意識する

2022年に公開された高齢者40名を対象とした研究では、週5回・6週間の集中的なミラーセラピーのほうが、週3回の分散型より筋肉の活動・筋力・日常動作の自立度すべてで有意に上回ったと報告されています(Gámez Santiago, 2022)。「まとめて集中する」ほうが効率がよいと言えます。

安全に続けるための注意点

  • 鏡を立てる位置は、体の正中線に垂直にする(ななめに置くと錯覚が起こりにくい)
  • 鏡の大きさは、腕や脚が全部映る大きさを選ぶ(最低30cm × 40cm程度)
  • 目の疲れ・めまい・気分が悪くなったらすぐに中止する
  • 半側空間無視(麻痺側の空間を認識できない状態)がある場合は、担当のセラピストに相談する
  • 動かす側(麻痺していない側)だけを動かし、麻痺側を無理に動かそうとしない

ミラーセラピーのメリットとデメリット

項目内容
メリット・鏡さえあれば始められる(費用がかからない)
・重度の麻痺でも実施できる
・痛みや疲労が少ない
・自宅でも取り組める
・運動機能・日常動作・生活の質すべてに効果が示されている
デメリット・集中力が続かないと効果が出にくい
・半側空間無視がある方は向かない場合がある
・痛みや痙縮に対する効果は限定的
・歩行の自立度を上げる力は強くない
・単独では大きな効果が出にくく、他のリハビリとの組み合わせが推奨される

ミラーセラピーはどこで受けられるか

場所特徴
回復期リハビリ病院入院中に導入している病院が増えています。退院前にやり方を習うことで、退院後の自宅リハビリにつなげやすくなります。
訪問リハビリ・デイケア担当のセラピストにリクエストすれば、自宅や施設でも取り入れてもらえます。介護保険内での実施が可能です。
自費リハビリ施設(BRAIN等)ミラーセラピーを電気刺激・TMS・ロボットと組み合わせて使うことができます。集中的な介入を希望される方に向きます。
ご自宅鏡(大きめのもの)があれば開始可能です。まずは担当のセラピストに正しいやり方を習うのがおすすめです。

BRAINでのミラーセラピーの使い方

BRAINでは、ミラーセラピーを単独ではなく、以下のように他の最新リハビリと組み合わせて使っています。

  • 電気刺激との併用:動かしにくい指や足首の筋肉に電気刺激を加え、鏡の中の”動く姿”と感覚を一致させる
  • 経頭蓋磁気刺激(TMS)との併用:麻痺側の脳の活動を高めた状態でミラーセラピーを行い、学習効果を最大化する
  • 課題指向型訓練との併用:ペットボトルをつかむ、スプーンを持つなど、実際の生活に近い動作と組み合わせる
  • 自宅プログラムへの展開:鏡の使い方を指導し、セッション以外の日にも自宅で続けられる形に落とし込む

BRAINでも、鏡を見ながら動かすと「久しぶりに動く感覚が戻ってきた」とおっしゃる方が多いです。特に重症の方にとっては、わずかな変化に気づきやすくなる点が心理的にも大きな意味を持ちます。

よくある質問(FAQ)

Q. 鏡さえあれば、自分ひとりで始めてもいいですか?

始めることはできますが、まずは担当のセラピストや医師に一度相談してから始めることをおすすめします。やり方のちょっとした違い(鏡の角度・動かす速度・どこを見るか)で効果が変わります。最初に正しいやり方を習ったうえで、自宅で継続するのが最も効率的です。

Q. 片側型と両側型、どちらを選べばいいですか?

目安として、発症から6か月以降の慢性期の方は「片側型」、発症1〜6か月の亜急性期では両側型でも効果が示されていますBoening, 2026Hsieh, 2025)。迷ったらセラピストに相談してください。

Q. 自宅ではどのくらいの頻度でやればいいですか?

目安は「1回15〜30分・週5回以上・4週間以上」です。2025年に公開された18の研究をまとめた分析でも、週5回以上・4週以内の集中的な実施が最も大きな効果を出すと報告されています(Saragih, 2025)。毎日少しずつより、集中して取り組むほうが効率的です。

Q. ミラーセラピーだけで回復しますか?

ミラーセラピー単独でも効果はありますが、他のリハビリと組み合わせることで効果が大きくなります。2024年に公開された分析では、電気刺激との併用で腕の運動機能が大きく改善することが示されました(Pan, 2024)。「ミラーセラピー+他のリハビリ」の組み合わせを意識してください。

Q. 効果を感じられない場合はどうすればいいですか?

4週間続けても変化を感じられない場合は、やり方や組み合わせを見直す必要があります。考えられる理由は、(1)時間・頻度が足りない、(2)鏡の位置や動かす速度が合っていない、(3)他のリハビリとの組み合わせが不十分、(4)発症からの時期に合った選び方ができていない、などです。一度、担当のセラピストに動作を見てもらうことをおすすめします。

まとめ

  • ミラーセラピーは、鏡を使って麻痺側が動いているように錯覚させ、脳の運動領域を活性化させるリハビリ
  • 腕・手の運動機能は、2026年の19の研究をまとめた分析で中等度の改善効果が示されている
  • 慢性期では「片側型」、亜急性期では「両側型」が有利という、2025〜2026年の新しい知見
  • 脚の運動機能・歩行速度・バランスにも効果あり。ただし歩行の自立度には限定的
  • 重度の麻痺でも実施でき、鏡さえあれば自宅でも始められる
  • 週5回以上・4週間以上の継続が目安。電気刺激・TMS・ロボット等との組み合わせで効果が最大化する

次にやるべきこと:まずは鏡を用意し(大きめの姿見や卓上ミラー)、担当のセラピストに「ミラーセラピーを取り入れたい」と相談してみてください。正しいやり方を一度習えば、自宅での継続につながりやすくなります。

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この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。症状や治療については、必ず担当の医師や療法士にご相談ください。

参考文献

  1. Boening A, et al. Mirror therapy for upper-limb motor recovery after stroke: a systematic review and meta-analysis. J Physiother. 2026. PMID: 41423382
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  3. Zeng W, et al. Mirror therapy for motor function of the upper extremity in patients with stroke: A meta-analysis. J Rehabil Med. 2018;50(1):8-15. PMID: 29077129
  4. Hsieh YL, et al. Effects of mirror therapy on motor and functional recovery of the upper extremity in subacute stroke: Systematic review and meta-analysis. PM R. 2025. PMID: 39853944
  5. Saragih ID, et al. Effects of mirror therapy on upper limb motor function of patients with stroke: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Rehabil. 2025. PMID: 39834285
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  7. Gao C, et al. Combined Immersive and Nonimmersive Virtual Reality With Mirror Therapy for Patients With Stroke: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Med Internet Res. 2025. PMID: 41071983
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  16. Geller D, et al. Home mirror therapy: a randomized controlled pilot study comparing unimanual and bimanual mirror therapy for improved arm and hand function post-stroke. Disabil Rehabil. 2022;44(22):6766-6774. PMID: 34538193
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この記事の内容は、BRAINアカデミーの講義資料および査読付き学術論文に基づいています。

執筆・監修:針谷 遼(脳卒中専門リハビリ施設BRAIN 代表/理学療法士/認定理学療法士〈脳卒中〉)
最終医療レビュー日:2026年4月21日