本日のテーマは「英語論文を読めるようになるための4つのステップ Part.3」です。
昨日までのおさらいをさせていただきます。
英語論文を読めるようになるための4つのステップとして、「自分が知りたい情報を臨床疑問として整理する」、「情報を得るためにどの英語論文を読むか決める」、「英語論文の中のどの情報を得るべきか知る」、「ひたすら読み続ける」を紹介させていただきました。
前回まで、ステップ1「自分が知りたい情報を臨床疑問として整理する」とステップ2「情報を得るためにどの英語論文を読むか決める」を紹介させていただきました。
今回はステップ3「英語論文の中のどの情報を得るべきか知る」を紹介させていただきます。
英語論文に取り組む人の代表的な失敗例は「最初から最後まで読もうとする」です。
私も英語論文を読み始めたときは要旨(Abstract)から読み始めて、要旨を読むのに1週間かけたりしてました。
でも今は1編あたり5分とか10分で必要な情報を入手することができるようになりました。
これは英語を早く読めるようになったというよりも、読むべきところ、読まなくていいところを見分けることができるようになったので1編あたりの読む文章量が少なり、結果として読む時間が短くなったということです。
私は英語論文を読み始めたのは2年目〜3年目の頃で、今は11年目になりましたが、今でも全文読んだらすごく時間がかかると思います。
今回は、論文の構成と読むべきポイント、読まなくていいところについて解説します。
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論文の読むべき項目は2つだけ
最初に結論ですが、英語論文の読むべき項目は「方法(Methods)」「結果(Results)」の2箇所だけです。
論文は「要旨(Abstract)」「諸言(Introduction)」「方法(Methods)」「結果(Results)」「考察(Discussion)」「結論(Conclusion)」から構成されています。
それぞれについて解説します。
要旨(Abstract)というのは、その論文全文を要約した文章です。
この論文にはこういうことが書いてありますよ、という情報や、論文をギュッと400字程度に要約した情報が記載されています。
ここを読むだけである程度情報が得られて有用ではあるのですが、要旨にはSPINという問題が潜んでいます。
SPINというのは、実際に研究論文内で示された結果を誇張して要旨に記載してしまうことです。
簡単に説明すると、要旨の情報は誤った情報である可能性があるということです。
ですので基本的には、要旨で済ませるのではなく、本文を読む必要があります。
次に「諸言(Introduction)」です。
ここにはその研究の背景や必要性について書かれています。
今、世界的にはこういう問題があって、現状の科学でここまで明らかになっているけど、ここから先はまだわかっていないから、この研究が必要なんですよ、というのが書かれています。
その研究テーマの領域における基礎知識が詰まっていて読んでいて勉強になるのですが、先日の記事で紹介した総説論文に似ているところがあって、網羅的な情報になっているとは言い難いです。
その研究テーマについて全く知らないのであれば読んだ方がいいかもしれませんが、ある程度知識があるのであれば特に読む必要はないです。
次に「方法(Methods)」と「結果(Results)」です。
ここにはその研究をどのように行ったか、そしてその結果はどうだったかということが書いてあります。
あとで詳細にお伝えしますが、ここは読むべきポイントです。
次に「考察(Discussion)」です。
ここには、研究結果について考察がされています。
なぜそのような結果になったか、先行研究と比べてどうか、といったことが書かれていますが、基本的には結果を読んでおけば考察を読む必要はないです。
最後に「結論(Conclusion)」です。
ここには、その研究の結論が書いてあります。
これも方法と結果を読んでおけば、読む必要がありません。
「考察(Discussion)」と「結論(Conclusion)」を読む必要がない理由は「要旨(Abstract)」の理由と似ていて、結果が誇張されている恐れがあるからです。
また、方法と結果で確認できるデータを考察や結論で改めて確認するのは二度手間になってしまうので、効率がよくないです。
論文を読んで得るべき情報は、「誰に、どういうことをしたら、どういう結果になったか」というデータだけです。
そしてそれを教えてくれるのが方法と結果、です。
方法から得るべき情報
さて、方法から得るべき情報についてお伝えします。
①PICO/PECO情報
まず論文のPICO/PECO情報を確認して、論文が何を調べようとしたのかを把握します。
このPICO・PECOというのは、4つの言葉の頭文字をとったものです。
PはPatient(患者)、IはIntervention(介入)/Exposure(曝露)、CはComparison(比較)、OはOutcome(起結)、です。
論文のPICO/PECO情報を確認するというのは、「どういう患者さんにどういうリハビリを行うと、どういうリハビリを行う場合と比べて、何にどういう結果をもたらすのかを調べようとしたのか」ということです。
例えば、PTさん領域のランダム化比較試験であれば「脳卒中患者さん(平均年齢65歳、発症から平均1年、平均歩行速度0.7m/s)に対してトレッドミルトレーニングを行うのは、筋力トレーニングを行う場合と比べて、歩行速度にどういう結果を与えるのか」を調べようとしたとか。
あるいは、STさん領域であれば「脳卒中患者さん(平均年齢65歳、発症から平均1年)に対して、電気刺激を併用した嚥下訓練は、嚥下訓練単独と比べて、嚥下障害の重症度にどのような影響を与えるのか」を調べようとしたとか、です。
この論文のPICO/PECOが自分の臨床疑問のPICO/PECOと一致しているか確認します。
これがずれていると「自分が知りたい情報」と「論文に書いてある情報」とがずれる可能性が高くなります。
なので、まずはじめにこれを確認しましょう。
②バイアスリスク
バイアスリスクというのは、簡単にいうと研究の方法がよくないために結果が歪んでしまう危険性のことです。
私たち読者は、バイアスリスクに応じて結果を解釈する必要があります。
これについてはまた別の機会で話します。
以上、2点が方法のところで確認すべき情報です。
慣れてきたら、統計のところも読んで、どういう解析の仕方をしたのか知りましょう。
結果から得るべき情報
結果から得るべき情報についてお伝えします。
①対象者のデータ
これはPICO/PECO情報を得る時と重なるのですが、多くの場合、どういう人を対象にしたか、というデータは結果のところに記載されています。
平均年齢や発症からの期間、事前検査結果を読み、どういう人が対象になったのか把握しておきましょう。
②前後データ
システマティックレビューやランダム化比較試験、コホート研究やケーススタディといった経時的な変化を調査する研究では前後のデータを入手しましょう。
各グループの研究開始時と研究終了時の検査結果です。
データを読んで、何がどれくらい変化したのかを把握しましょう。
以前の配信でお伝えした通り、これは予後予測を行う上で大事なデータになります。
③グループ間のデータ
各グループの結果の比較です。
例えばランダム化比較試験でトレッドミルトレーニンググループと筋力トレーニンググループに分かれていた場合、トレッドミルトレーニングと筋力トレーニング、どちらのグループの方が大きい変化を示したのか、それとも変わらなかったのか確認します。
これによりどちらのリハビリの方が有効だと言えるのか判断します。
まとめ
それではまとめに入ります。
論文は「要旨(Abstract)」「諸言(Introduction)」「方法(Methods)」「結果(Results)」「考察(Discussion)」「結論(Conclusion)」から構成されていますが、読むべきなのは「方法(Methods)」「結果(Results)」の2つだけです。
論文というのは「誰に、どういうことをしたら、どういう結果になったか」というデータが書かれているものです。
そして、私たちセラピストが臨床において欲しい情報はこれです。
そしてそれを教えてくれるのが方法と結果、です。
その他の部分は偏った情報になっていたり、誇張された情報になっている可能性があります。
つまり誤った情報である可能性があります。
誤った情報をもとに自分の担当患者さんのリハビリを行うわけにはいかないですよね。
なので「方法(Methods)」「結果(Results)」以外は基本的に読む必要がありません。
方法では①PICO/PECO情報、②バイアスリスクを読んで把握し、結果のところでは①対象者のデータ、②介入前後のデータ、③グループ間のデータを読んで把握します。
論文の読むべきところを把握したらその情報だけ抜き取れるようになるので、スピードが速くなります!
今回は「英語論文を読めるようになるための4つのステップ Part.3」というテーマでお話しさせていただきました。
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2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月ごろから開始する予定です。
ご興味がある方はよかったら覗いてみてください。
それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!