EMSは電気的筋刺激(Electric Muscular Stimulation)の略です。

文献によって神経筋電気刺激(Neuro Muscular Electrical Stimulation:NMES)、機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)など様々な名称が用いられますが、いずれも同じものを意味します。

周波数は概ね20〜50Hz、パルス幅0.1〜0.4msとし、筋肉の収縮と弛緩を繰り返させるタイプの電気です。

電気刺激はパラメータを自由に設定できるため、リハビリの選択肢が広く、患者さんに合わせたカスタマイズができます。

一方、自由に設定できるため、最初使うときはパラメータ設定に悩むのではないでしょうか。

基本的には、参考にするエビデンスに基づいてパラメータ設定をすれば大丈夫です。

今回は、脳卒中患者さんのEMSのランダム化比較試験で使用される3つの刺激パターンを紹介します。

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脳卒中リハビリにおけるEMSの3つの刺激パターン

EMSの3つの刺激レベルを刺激の強さ順に示した図解。弱い順に①感覚閾値レベル(ピリピリ感じるだけ・筋収縮なし)②運動閾値レベル(わずかに筋肉が動く)③完全運動レベル(しっかり筋肉が収縮する)。
EMSの3つの刺激レベル(感覚閾値→運動閾値→完全運動)

EMSの3つの刺激パターンの違い

刺激パターン強さの目安身体に起こる反応主な確認方法・目的
感覚閾値レベル最も弱いピリピリと電気を感じるが筋肉は動かない患者さんに「電気を感じたら教えてください」と確認
運動閾値レベル中くらい筋肉が収縮し始めるセラピストが筋収縮を目視で確認
完全運動レベル最も強い強い筋収縮で関節が最大可動域近くまで動く筋トレに近い負荷。足関節背屈の運動麻痺に最も効果的(Wang 2016)
本文で紹介された3つの刺激パターンの違いを整理したものです。Wang(2016)では回復期脳卒中66名で完全運動レベルが足関節背屈の改善に最も効果的でした。

感覚閾値レベルの刺激

電気刺激を身体で感じるレベルの強度です。

EMSのスイッチを入れ、刺激強度を徐々に強くしていくと、まず最初にこの感覚閾値に到達します。

患者さんに、「電気が流れてピリピリするような感覚があったら教えてください」と伝えておき、教えてもらいましょう。

運動閾値レベルの刺激

電気刺激により、筋肉が収縮するレベルの強さです

感覚閾値から徐々に刺激強度を上げていくと、筋肉が収縮し始めます。

筋肉の収縮はセラピストが目視で確認できます。

完全運動レベルの刺激

運動閾値レベルを超え、さらに刺激強度を強くしていくと、筋肉が強く収縮し、関節が動きます。

関節の動きにも程度がありますが、その人が持つ最大関節可動域まで動くくらい、強い筋肉の収縮がおこるレベルが完全運動レベルです。

完全運動レベルでの電気刺激は、筋力トレーニングと同じような負荷がかかるので、疲労しやすくなります。

一方、廃用症候群の予防目的や、深部感覚を入力するという目的で、急性期の弛緩性麻痺が強い時期に使われることもあります。

足関節背屈に効果的なのは最大運動レベルの刺激

感じないくらい弱い電気(感覚閾値以下)を使うリハビリについては、感じられないくらい弱いTENSで解説しています。

電気刺激(EMS/NMES)の効果は、2024年に公開された複数の研究をまとめた分析でも、歩行能力・バランス・歩行の動きの質の改善が報告されています(Chen, 2024)。

3つの刺激パターンを紹介しましたが、どの刺激パターンが良いのでしょうか?

Wang YH (2016) は、刺激パターン別に、足関節の運動麻痺への効果を検証しています。

この研究では66人の回復期脳卒中患者さんを4つのグループに分けています。

ひとつ目は「感覚閾値レベル」グループ、ふたつ目は「運動閾値レベル」グループ、みっつ目は「完全運動レベル」グループ、よっつ目は「EMSなし」グループです。

名前の通り、それぞれのグループでパターンの違う電気刺激を行い、運動麻痺への効果を調べました。

なお、刺激の部位とパラメータ、時間・頻度・期間は下記の通りです。

刺激部位
長母趾伸筋、長趾伸筋、総腓骨神経(※腓骨頭の皮膚上に装着、と記載あり)

パラメータ設定
周波数=20Hz
パルス幅=0.2ms
オンタイム=5秒
オフタイム=5秒
波形=左右対称の2相性矩形波

時間・頻度・期間
30分、1日2回、週5回、4週間

周波数やパルス幅などのパラメータ設定は統一されているのですが、刺激強度を変えて、各グループに適した電気刺激を行っています。

結果として、完全運動レベルの刺激を行なったグループで、随意的な足関節背屈の最も大きい改善を示しました。

このことから、完全運動レベルのEMSを行うことが足関節の運動麻痺を改善させる上で最も効果的であると言えます。

経験年数1年目から効果的なリハビリを行えるのが電気刺激のメリット

電気刺激のメリットは、効果のある刺激を簡単に与えられるところにあります。

課題指向型訓練は、脳卒中リハビリでは有効であるとコンセンサスが得られていますが、良くも悪くも、セラピストの知識やスキルに依存します。

一方、電気刺激は、先行研究通りにパラメータ設定を行えば、効果的な刺激を誰でも与えることができます。

これは経験年数関係なく、パラメータ設定と電気刺激装置の操作方法がわかれば誰でもできることです。

最初は「どれくらいの刺激にすればいいの?」と悩むこともあるかもしれません。

基本的にはリハビリプログラムの参考にしたエビデンスで使用されているパラメータ設定をすればOKです。

今回お伝えしたリハビリプログラムも参考にしてみてください!

まとめます。

● 脳卒中リハビリにおける電気刺激はパラメータ設定が鍵を握る
● 感覚閾値レベル、運動閾値レベル、完全運動レベルの3つのパターンがある
● 足関節の運動麻痺に対しては完全運動レベルが最も効果的

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参考文献

Wang YH, Meng F, Zhang Y, Xu MY, Yue SW. Full-movement neuromuscular electrical stimulation improves plantar flexor spasticity and ankle active dorsiflexion in stroke patients: a randomized controlled study. Clin Rehabil. 2016 Jun;30(6):577-86.