このたび、株式会社BRAINの取り組みから生まれた研究論文が、国際的な学術雑誌に掲載されましたので、ご報告いたします。

脳卒中のあとに残る「重度の上肢(腕・手)の麻痺」に対して、これまでどのようなリハビリが研究されてきたのかを整理・分類した論文です。

当事者やご家族の方にも意味が伝わるよう、専門用語にはやさしい説明をつけてご紹介します。

掲載された論文の基本情報

項目内容
タイトルRehabilitation methods for severe upper limb motor impairment in patients with chronic stroke
(和訳:慢性期の脳卒中患者における、重度の上肢運動麻痺に対するリハビリ手法)
著者Ryo Harigai(針谷 遼)/Shohei Shimizu(清水 翔平)/Katsuya Sakai(酒井 克也)
所属株式会社BRAIN(針谷・清水)/東京都立大学 健康福祉学部(酒井)
掲載誌Physiotherapy Practice and Research(発行:SAGE Publications)
論文の種類スコーピングレビュー
オンライン公開日2026年7月17日
DOI10.1177/22130683261462472
著者ORCID針谷 遼:0009-0001-3948-1177/酒井 克也:0000-0002-5708-9769
論文の基本情報(引用情報)

掲載誌のPhysiotherapy Practice and Researchは、理学療法(リハビリ)の研究を専門にあつかう国際的な学術雑誌です。

今回の論文は「スコーピングレビュー」という種類の研究です。あるテーマについて「これまでにどんな研究が、どれくらい、どんな方法で行われてきたか」を、地図を描くように広く整理する研究方法のことです。

どんな研究をしたのか

脳卒中のあとの「重度の上肢麻痺」は、リハビリの中でもとくに回復がむずかしいとされる分野です。

そこで私たちは、この分野で世界的にどのようなリハビリが研究されているのかを、もれなく整理することを目的にしました。

医学論文のデータベースであるPubMedとWeb of Scienceを使って検索を行いました。

集まった論文は全部で802本にのぼりました。

そのうち、あらかじめ決めた基準を満たした16本の論文をくわしく分析しました。

論文の選定は、2人の研究者がそれぞれ独立して確認する方法をとり、判断がかたよらないようにしています。

脳卒中の重度上肢麻痺リハビリに関するスコーピングレビューの文献選定フローを示す図。2つのデータベースから802本を集め、段階的に絞り込み16本を採択した流れ
図1:文献の選定フロー。PubMedとWeb of Scienceで集めた802本を、重複除去(660本)→一次選定(421本除外)→二次選定(223本除外)と段階的に絞り込み、最終的に16本を採択しました(PRISMA-ScR準拠、2名の独立レビュー+3人目で判定)。

わかったこと

分析した16本のうち、87.5%が「ランダム化比較試験(RCT)」という、信頼性の高いとされる研究方法で行われていました。

(RCT=参加者を偶然に近い形でグループ分けし、リハビリの効果を公平に比べる方法です)

よく用いられていたリハビリの手法は、次の3つでした。

  • 電気刺激(まひした筋肉などに電気を流す方法)…31.3%
  • ロボットを使った訓練(ロボット装置が腕の動きを助ける方法)…25%
  • 非侵襲的な脳への刺激(体を傷つけずに、頭の外から脳へ刺激を与える方法)…25%
重度上肢麻痺へのリハビリ手法を示す図。中央の腕を囲んでロボット支援訓練・非侵襲的脳刺激・電気刺激・ミラーセラピー・VRを配置
図2:本レビューで見つかった、重度上肢麻痺への主なリハビリ手法。電気刺激(5本・31.3%)、ロボット支援訓練(4本・25%)、非侵襲的脳刺激(4本・25%)が中心で、VR・ミラーセラピー・自助具を使った運動療法が各1本(6.3%)でした。※イラストは各手法のイメージです。

このほか、鏡を使った訓練(ミラーセラピー)や、まひした手を積極的に使うよう促す訓練なども取り上げられていました。

多くの研究で「運動機能が良くなった」という報告が見られました。

一方で、比較対象のグループとくらべて「はっきりとした差(統計的に意味のある差)」まで示せた研究は、まだ限られていました。

つまり、有望なリハビリ手法はいくつも存在するものの、その効果を厳密に証明する研究はこれから積み重ねていく段階にある、というのが現状です。

さらに、超重度麻痺とされる66点満点の運動機能検査「FMA-UE」で1桁台の点数(つまり10点未満の点数)に対する有効なリハビリは、世界的に報告されていないということも明らかになりました。

この研究がもつ意味(BRAINの見解)

以下は、論文の結果をふまえたBRAINとしての考え(意見)です。

重度の上肢麻痺は「もう良くならない」と受け止められてしまうことが少なくありません。

しかし今回の整理を通して、世界中で多くのリハビリ手法が研究され、可能性が探られ続けていることが確認できました。

同時に、「どの方法が、どんな方に、どれくらい効果があるのか」はまだはっきりしていない部分も多い、ということも見えてきました。

だからこそ私たちは、目の前の一人ひとりの状態にていねいに向き合い、最新の研究(エビデンス)を参考にしながらリハビリを組み立てていくことが大切だと考えています。

私たち BRAIN では、重度運動麻痺の方に対して、TOT-S というリハビリ手法を開発し、BRAINのご利用者様へ提供しています。

BRAIN | 重度運動麻痺のリハビリ
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BRAINでは、重度の運動麻痺の方に向けて、独自のリハビリ手法「TOT-S」を用いたプログラムをご用意しています。まずは、どのような進め方なのかをご覧ください。
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TOT-S については、まだ開発段階の治療法であり、有効性が科学的に認められたわけではございませんが、当施設のご利用者様においては、一定の数値の変化が起こるということを確認しております。

今後はこの TOT-S の研究を進めていき、重度運動麻痺の患者さんの手が動くようになる社会の実現に向けて、邁進いたします。

※本記事は研究論文の内容を紹介するものであり、特定のリハビリによる効果や回復を保証するものではありません。効果の現れ方には個人差があります。

著者について

針谷 遼(はりがい りょう)

株式会社BRAIN 代表取締役。脳卒中を専門とする認定理学療法士。

保険外リハビリの現場に立ちながら、重度の上肢まひへのアプローチや、根拠(エビデンス)にもとづくリハビリの研究・発信に取り組んでいます。

本研究は、東京都立大学 健康福祉学部の酒井克也氏との共同研究として実施しました。

結びとご案内

私たちBRAINは、これからも臨床(現場)と研究の両方から、脳卒中リハビリの可能性を広げていきます。

論文という形で成果を世に問い、その学びを日々のリハビリに還元していくことを大切にしています。

重度の上肢まひでお悩みの方、ご家族の方は、どうぞお気軽にご相談ください。