
ご家族が脳梗塞になり、「これからリハビリはどう進んでいくのだろう」と不安に感じていませんか。
脳梗塞のリハビリは、「急性期 → 回復期 → 生活期」という時期ごとに目的が変わりながら進みます。
この記事では、脳梗塞 リハビリの全体像を、回復の見通し・時期別の進め方・使われる治療法・復職・保険と自費の違いまで、順を追って整理します。
それぞれのテーマは、この記事の中で要点をわかりやすくお伝えしたうえで、さらにくわしい個別の記事へリンクでご案内します。
執筆は、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて担当しています。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
・片方の腕に力が入らない、上がらない(Arm)
・ろれつが回らない、言葉が出ない(Speech)
・これらが急に起きたら、すぐに救急要請を(Time=時間が勝負)
脳梗塞は再発することがあります。上の症状が突然出たら、リハビリよりもまず救急受診を優先してください。
まずは、リハビリの流れや見通しについて、専門スタッフに直接相談したい方へご案内です。
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脳梗塞のリハビリとは?まず全体像をつかむ
脳梗塞は、脳の血管が詰まって血液が届かなくなり、その部分の脳の働きが失われる病気です。
血液が届かなくなった脳の細胞は短時間で傷つき始めるため、発症したらできるだけ早く治療を受けることが大切です。
リハビリの目的は、失われた脳の働きを補い、できる動作を増やして生活を取り戻していくことにあります。
そのために、リハビリは病気になってからの時間(時期)に合わせて、内容と目的が少しずつ変わっていきます。
ここで知っておいていただきたいのは、脳梗塞の後遺症は手足の麻痺だけではない、ということです。
言葉が出にくくなる失語症、段取りが立てにくくなる高次脳機能障害、強い疲れやすさ、気分の落ち込みなど、外からは見えにくい後遺症も、リハビリや支援の対象になります。
これらの見えにくい後遺症は、あとで説明する「復職(仕事に戻ること)」にも影響することがわかっています。
脳梗塞そのものの原因や症状は脳梗塞とは|原因・症状・後遺症をわかりやすく解説、脳出血との違いは脳出血とは|脳梗塞との違いでくわしく説明しています。
手足の運動麻痺のしくみは脳梗塞による運動麻痺 -7つのメカニズム-、言葉の問題は失語症のリハビリ、段取りの立てにくさは脳卒中後の遂行機能障害、疲れやすさは脳梗塞後の疲れやすさで解説しています。
脳梗塞リハビリ 時期別の早見表
| 時期 | いつ | 主な目的 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 発症〜約2週間 | 廃用を防ぎ動ける体を保つ | 起き上がり・座位・立位、関節を動かす、飲み込みの確認 |
| 回復期 | 約2週間〜6か月 | 集中的に機能を取り戻す | 1日最大3時間の集中リハビリ(入院はおおむね150〜180日) |
| 生活期 | 6か月以降 | 改善を続け体力を保つ | 強めの歩行練習・有酸素運動、再発予防 |
脳梗塞の回復はどう進む?経過・見通しと歩行の予後

脳梗塞のあとの回復は、多くの場合、発症からの数か月でいちばん大きく進みます。
回復のペースは発症からおよそ3か月までが最も速く、その後6か月ごろにかけてゆるやかになっていくのが一般的な経過です。
2023年に公開された欧州の専門家グループによる分析でも、脳卒中後の運動の回復は、時期に応じた計画的なリハビリで支えていくことが重要だと整理されています(Kwakkel, 2023)。
多くの方が希望を持てるのは、脳には回復する力(神経可塑性)がある、という点です。
脳は傷ついた後、残った神経のつながりを組み替えて働きを補おうとする性質があり、リハビリはこの脳の回復力を後押しします。
2015年に日本で公開された解説や、2020年に発表された回復の考え方をまとめた解説でも、この脳の可塑性を活かすことがリハビリの土台になると述べられています(Hara, 2015/Grefkes, 2020)。
入院中にいちばん気になるのは、「歩けるようになるか」という点だと思います。
発症したばかりの時期に歩けなかった方でも、多くの方が数か月のうちに歩く力を取り戻していくことが報告されています。
2022年に公開された複数の研究をまとめた分析では、発症してまもない時期に歩けない方について、その後3〜6か月で自分で歩けるようになるかを予測できる要素が整理されています(Preston, 2022)。
また2022年に公開された研究では、発症からおよそ1週間ごろの足の力などをもとに、6か月後に自分で歩けるようになる時期をある程度予測できる方法(TWIST)が報告されています(Smith, 2022)。
歩行の予後の具体的なデータは脳卒中発症6か月までに多くの患者さんが歩けるようになるデータ、ひとりで歩ける目安はひとりで歩けるようになるための5つの条件、装具を外せる目安は装具なしで歩けるようになるための3つの条件でくわしく紹介しています。
麻痺が重い方は重度の片麻痺がよくなることを示す3つのデータ、回復が止まったように感じたときは回復が止まったと感じた時に読む記事もご覧ください。
リハビリは「量」と「強さ」で回復が変わる
脳梗塞のリハビリで近年はっきりしてきたのは、リハビリの「量」と「強さ」が回復に影響するということです。
同じ内容の練習でも、練習した量が多いほど、機能が回復しやすい傾向が報告されています。
2014年に公開された複数の研究をまとめた分析では、リハビリにかける時間が多いほど、日常動作の改善につながりやすいことが示されています(Veerbeek, 2014)。
また2016年に公開された国際的な分析では、目的の動作をくり返し練習する方法(反復課題訓練)が、手や足の動き・バランスの改善に役立つと報告されています(French, 2016)。
2025年に公開された国際的な分析でも、リハビリのやり方に唯一の正解があるわけではなく、ひとりひとりに合わせて十分な量を届けることが大切だと整理されています(Todhunter-Brown, 2025)。
ここで課題になるのが、保険のリハビリには時間や期間の上限がある、という点です。
退院後は必要な練習量を確保しにくくなり、「もっと練習したいのに機会が足りない」という状況が起こりやすくなります。
この「量の不足」を補う選択肢のひとつが、後半でご説明する自費リハビリです。
【急性期】発症〜2週間:命を守り、動ける体を保つ
急性期は、発症してからおよそ2週間ほどの、入院して治療を受ける時期です。
この時期のリハビリの目的は、寝たきりによる体力や筋力の低下(廃用)を防ぎ、動ける体を保つことです。
具体的には、ベッドから起き上がって座る、立つ、関節を動かす、飲み込みや口の動きを確認する、といったことから少しずつ始めていきます。
2023年に公開された複数の研究をまとめた分析では、早い時期からベッドの外で体を動かすこと(早期離床)が、機能の改善や合併症の予防に役立つと報告されています(de Aquino Miranda, 2023)。
ただし、早ければ早いほどよい、たくさん動かせばよい、というわけではありません。
2015年に公開された大規模な研究では、発症直後から強い負荷で起こす方法はかえってよい回復を減らす可能性が示され、「少しずつ・こまめに」始めるほうが安全だと考えられています(AVERT, 2015)。
急性期に入院中どんなことをするのかは、脳卒中急性期のリハビリ|入院中に何をする?期間と頻度を解説でくわしく説明しています。
【回復期】2週間〜6か月:集中的なリハビリで機能を取り戻す
回復期は、状態が落ち着いた後、集中的にリハビリを行う時期です。
多くの方が回復期リハビリテーション病棟に移り、1日に最大3時間ほどのリハビリを、毎日集中して受けます。
先ほどの「量が回復を左右する」という点から見ても、この時期にしっかり練習量を確保できることには大きな意味があります。
回復期リハビリ病棟に入院できる期間には上限があり、脳卒中の場合はおおむね150〜180日と定められています。
この期間をどう使うか、退院後にどうつなげるかが、その後の回復に大きく関わります。
病院の選び方や転院の手続きは回復期病院への転院|選び方と手続きの流れ、退院後を見すえた準備は退院後の脳卒中リハビリ完全ガイドで解説しています。
【生活期(慢性期)】6か月以降:改善を続け、体力を保つ
生活期(慢性期)は、退院して自宅での生活を送りながらリハビリを続ける時期です。
かつては「半年を過ぎると回復しない」と言われることもありましたが、いまはそう単純ではないとわかってきています。
2020年に公開された慢性期の歩行に関する国際的な指針では、発症から時間がたった後でも、強めの歩行トレーニングで歩く力が改善しうると報告されています(Hornby, 2020)。
この時期は、機能を伸ばすだけでなく、体力を保ち、再発を防ぐことも大切になります。
2024年に公開された複数の研究をまとめた分析では、有酸素運動が体力・歩く能力・血圧の改善に役立つことが示されています(Moncion, 2024)。
血圧の管理や体力づくりは、脳梗塞の再発を防ぐうえでも重要な意味を持ちます。
発症1年以降の改善は生活期のリハビリ|発症1年以降でも改善する科学的根拠、再発を防ぐ生活は脳梗塞の再発を防ぐ食事の基本、杖を卒業できる目安は杖を卒業するタイミングで解説しています。
脳梗塞リハビリで使われる主な治療法とBRAINのリハビリ
脳梗塞のリハビリでは、運動の練習に加えて、さまざまな治療法が組み合わせて使われます。
電気刺激は、麻痺して動きにくくなった筋肉に電気を流し、動きを引き出す方法で、手や足の運動の改善に使われます。
短下肢装具(足首を支える装具)は、足が下がってつまずきやすい方の歩行を安定させ、より安全に歩けるようにします。
ロボットや、脳波を使って動きを助けるBMI(ブレインマシンインターフェイス)など、比較的新しい技術も使われるようになっています。
2024年に公開された解説でも、こうした新しい技術やバーチャルリアリティ(VR)が、脳の回復力を引き出す選択肢として期待されていると述べられています(Marín-Medina, 2024)。
各治療法のくわしい効果と注意点は、電気刺激は電気刺激療法とは、装具は短下肢装具のメリットとデメリット、ロボットはHALリハビリ、BMIはブレインマシンインターフェイス(BMI)とはで解説しています。
BRAINでは、これらを組み合わせ、rTMS(磁気による刺激)・電気刺激・BMI・重度の麻痺向けのTOT-Sなどを、おひとりの状態に合わせて提供しています。
重い麻痺のリハビリは重度片麻痺に対して有効なリハビリ11選、歩行リハビリ全体はエビデンスに基づく歩行リハビリまとめでくわしくご覧いただけます。
BRAINでどんなリハビリが受けられるか、専門スタッフに直接ご相談いただけます。
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脳梗塞のあとの復職(仕事に戻る)はできる?
働く世代で脳梗塞になった方にとって、仕事に戻れるか(復職)は大きな関心事です。
復職できる割合は研究によって幅がありますが、脳梗塞のあと、時間をかけて仕事に戻る方は少なくありません。
2024年に公開された複数の研究をまとめた分析では、復職に影響する要素として、年齢・麻痺の重さ・脳のダメージの程度などが挙げられています(Orange, 2024)。
とくに大切なのは、手足の麻痺だけが復職を左右するのではない、という点です。
2019年に公開された若い世代の分析では、見た目には回復していても、注意力・記憶・段取りといった高次脳機能の問題や疲れやすさが、復職の妨げになりやすいと報告されています(Edwards, 2019)。
復職率・影響する要因・使える支援制度は脳卒中後の復職ガイド|復職率・影響する要因・リハビリと支援制度でくわしく解説しています。
復職の背景にある疲れやすさは脳梗塞後の疲れやすさ、段取りの立てにくさは脳卒中後の遂行機能障害もあわせてご覧ください。
保険リハビリと自費リハビリ|脳梗塞後の「第3の選択肢」
退院後にリハビリを続けたいと思っても、保険のリハビリには時間や回数の上限があります。
この記事の前半で見たとおり、回復には練習の「量」が大切なため、保険だけでは練習量が足りないと感じる方が少なくありません。
その不足を補う選択肢が、自己負担で受ける自費リハビリです。
自費リハビリの費用・保険との違い・施設の選び方は自費リハビリとは|費用・保険との違い・脳卒中に有効な理由と選び方、東京での費用相場は自費リハビリ 東京|23区の費用相場・比較軸で解説しています。
保険リハビリと自費リハビリの違い
| 項目 | 保険リハビリ | 自費リハビリ |
|---|---|---|
| 費用の負担 | 軽い | 全額自己負担 |
| 期間・回数 | 上限あり | 上限なし |
| 練習量 | 確保しにくいことがある | 柔軟に確保しやすい |
| 位置づけ | リハビリの基本の土台 | 足りない量・機器を補う第3の選択肢 |
BRAINの脳梗塞リハビリ|料金・対応エリア・体験
BRAINは、東京都世田谷区・成城にある脳卒中専門の自費リハビリ施設です。
脳卒中を専門とする理学療法士・作業療法士が、おひとりの状態と目標に合わせたリハビリを、じっくり時間をかけて行います。
「自分の場合はどのくらい回復が見込めるのか」「どんな練習が合うのか」を知りたい方には、体験リハビリをご用意しています。
体験では、いまの状態の評価と、これからのリハビリの進め方のご提案までを受けていただけます。
まずはお気軽にご相談ください。
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よくあるご質問(FAQ)
脳梗塞のリハビリはいつまで続けられますか?
保険のリハビリには期間や回数の上限がありますが、生活期に入ってからも改善の可能性は残ります。
自費リハビリを使えば、期間の上限を気にせずに続けることもできます。
発症から半年を過ぎても回復しますか?
半年を過ぎても、練習の内容と量を見直すことで、歩行や手の動きが改善する例が報告されています。
くわしくは生活期のリハビリ|発症1年以降でも改善する科学的根拠をご覧ください。
歩けるようになりますか?
麻痺の重さや時期によって見通しは変わりますが、多くの方が発症から数か月のあいだに歩く力を取り戻していきます。
目安はひとりで歩けるようになるための5つの条件で整理しています。
仕事に戻れますか?
時間をかけて復職される方は少なくありませんが、手足の麻痺だけでなく、疲れやすさや段取りの立てにくさが影響することがあります。
くわしくは脳卒中後の復職ガイドをご覧ください。
保険リハビリと自費リハビリはどう違いますか?
保険リハビリは費用の負担が軽い一方で、時間や期間に上限があります。
自費リハビリは費用はかかりますが、練習量や内容を柔軟に確保しやすいという違いがあります。
参考文献
- Kwakkel G, Stinear C, et al. Motor rehabilitation after stroke: European Stroke Organisation (ESO) consensus-based definition and guiding framework. Eur Stroke J. 2023;8(4):880-894. PMID: 37548025
- Grefkes C, Fink GR. Recovery from stroke: current concepts and future perspectives. Neurol Res Pract. 2020;2:17. PMID: 33324923
- Hara Y. Brain plasticity and rehabilitation in stroke patients. J Nippon Med Sch. 2015;82(1):4-13. PMID: 25797869
- Veerbeek JM, van Wegen E, et al. What is the evidence for physical therapy poststroke? A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014;9(2):e87987. PMID: 24505342
- French B, Thomas LH, et al. Repetitive task training for improving functional ability after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11(11):CD006073. PMID: 27841442
- Todhunter-Brown A, Sellers CE, et al. Physical rehabilitation approaches for the recovery of function and mobility following stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2025;2(2):CD001920. PMID: 39932103
- AVERT Trial Collaboration group. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. PMID: 25892679
- de Aquino Miranda JM, Mendes Borges V, et al. Early mobilization in acute stroke phase: a systematic review. Top Stroke Rehabil. 2023;30(2):157-168. PMID: 34927568
- Preston E, Ada L, et al. Prediction of Independent Walking in People Who Are Nonambulatory Early After Stroke: A Systematic Review. Stroke. 2022;52(10):3217-3224. PMID: 34238016
- Smith MC, Barber AP, et al. The TWIST Tool Predicts When Patients Will Recover Independent Walking After Stroke: An Observational Study. Neurorehabil Neural Repair. 2022;36(7):461-471. PMID: 35586876
- Moncion K, Rodrigues L, et al. Aerobic exercise interventions for promoting cardiovascular health and mobility after stroke: a systematic review with Bayesian network meta-analysis. Br J Sports Med. 2024;58(7):392-400. PMID: 38413134
- Hornby TG, Reisman DS, et al. Clinical Practice Guideline to Improve Locomotor Function Following Chronic Stroke, Incomplete Spinal Cord Injury, and Brain Injury. J Neurol Phys Ther. 2020;44(1):49-100. PMID: 31834165
- Orange C, Lanhers C, et al. Determinants of Return to Work After a Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2024;105(2):359-368. PMID: 37797913
- Edwards JD, Kapoor A, et al. Return to work after young stroke: A systematic review. Int J Stroke. 2019;13(3):243-256. PMID: 29189108
- Marín-Medina DS, Arenas-Vargas PA, et al. New approaches to recovery after stroke. Neurol Sci. 2024;45(1):55-63. PMID: 37697027

