電気刺激の有効性は以前から報告されていて、先生方もご存知の通りだと思います。

脳卒中治療ガイドライン2015では、痙縮に対するリハビリテーションのところで高頻度の経皮的電気刺激(Transcutaneou Electrical Nerve Stimulation: TENS)がグレードB、歩行障害に対するリハビリテーションのところで下垂足がある患者さんに対する機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation: FES)がグレードB、になっています。

また、システマティックレビュー研究においては、痙縮や下垂足だけでなく、歩行速度やバランスなどへの効果も報告されています。2)-4)

電気刺激にはいくつかオプションがあります。

例えばFESを使うかTENSを使うか、という電気刺激のタイプのオプションや、電極を神経の走行に沿ってつけるか、筋をねらってつけるか、という電極の場所のオプションなどです。

今回は、電極の場所を筋にしたときに、下肢への電気刺激が歩行やバランスに対して有効かどうかを調べたBusk H (2020) のシステマティックレビューを紹介します。

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Busk H (2020) のシステマティックレビューの概要

研究のリサーチクエスチョンは「発症6ヶ月以内の脳卒中患者さんに対する下肢の電気刺激+リハビリは、リハビリ単独を行う場合と比べて、日常生活や歩行能力へ有効か?」でした。

2016年3月までに出版されたランダム化比較試験と準ランダム化比較試験を対象に、複数のデータベースを使って網羅的に検索されています。

下肢の電気刺激ですが、筋のモーターポイントや、筋腹を狙って電極を装着した研究を取り込んでいます。

結果として8件の研究が取り込まれました。

メタアナリシスの結果を紹介します。

歩行速度の向上に貢献する

メタアナリシスは歩行速度、日常生活動作の自立度(Barthel Index)、バランス(Berg Balance Scale)のアウトカムに対して行われました。

結果として、歩行速度においては、電気刺激+リハビリはリハビリ単独の場合と比べると効果的であるという結果になりました。

一方で、日常生活動作の自立度やバランスに対しては電気刺激のないリハビリ単独と比べて効果的であるとは言えないという結果になりました。

このことから、歩行速度の向上を目的にする場合は、リハビリ単独で行うよりも筋をターゲットに電極を貼る場合の電気刺激+リハビリが有効であることが示されました。

モーターポイントを押さえておく

目的別・電気刺激の電極を貼る位置の使い分け

目的電極を貼る位置組み合わせ根拠
歩行速度を上げる筋のモーターポイント・筋腹電気刺激+リハビリBusk 2020
痙縮をやわらげる神経の走行に沿って電気刺激(TENS)+リハビリMahmood 2019
Busk 2020のシステマティックレビューでは、筋を狙った電気刺激+リハビリが歩行速度に有効(日常生活の自立度・バランスには効果ありといえず)。目的により適した電極位置が異なる。

これは別の研究ですが、Mahmood A (2019)が同じようなシステマティックレビューを公表しています。

この研究では、様々な条件でのTENSが痙縮に対してどのような効果があるか、やTENSのオプションは何が適切か、といったことを報告しています。

その中で、「TENSを他のリハビリと併用する場合は、神経の走行に沿った電極装着がより効果的である」という結果を報告しています。

今回のシステマティックレビューと相反するような印象を受けるかもしれませんが、Mahmood A (2019)の研究では痙縮がアウトカムになっており、今回のシステマティックレビューでは歩行速度がアウトカムになっています。

ですので、

①痙縮をよくしたいなら神経の走行に沿って電極を装着しリハビリと組み合わせる
②歩行速度をよくしたいなら筋のモーターポイントや筋腹を狙って電極を装着しリハビリと組み合わせる

というのがいいかもしれません。

もちろん、痙縮が改善することで歩行速度が向上する場合もありますので、それは患者さんの病態に応じて判断できたらいいのかなと思います。

いずれにせよ、電気刺激を行うセラピストは電気刺激を装着するために神経の走行も、モーターポイントも、筋の位置もしっかり把握しておく必要があるかなと思います。

https://youtu.be/YALpUXBjp6Q

歩行の変化、実際にあった方がいます

リハビリで歩行が変わった方がいます。

BRAINでは、その変化の様子(ビフォーアフター)を公開しています。

▶ 足・歩行の変化事例を見る

参考文献

1) 脳卒中治療ガイドライン2015

2) Lin S, Sun Q, Wang H, Xie G. Influence of transcutaneous electrical nerve stimulation on spasticity, balance, and walking speed in stroke patients: A systematic review and meta-analysis. J Rehabil Med. 2018 Jan 10;50(1):3-7.

3) Kwong PW, Ng GY, Chung RC, Ng SS. Transcutaneous electrical nerve stimulation improves walking capacity and reduces spasticity in stroke survivors: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2018 Sep;32(9):1203-1219.

4) Sharififar S, Shuster JJ, Bishop MD. Adding electrical stimulation during standard rehabilitation after stroke to improve motor function. A systematic review and meta-analysis. Ann Phys Rehabil Med. 2018 Sep;61(5):339-344.

5) Busk H, Stausholm MB, Lykke L, Wienecke T. Electrical Stimulation in Lower
Limb During Exercise to Improve Gait Speed and Functional Motor Ability 6 Months
Poststroke. A Review with Meta-Analysis. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020
Mar;29(3):104565.

6) Mahmood A, Veluswamy SK, Hombali A, Mullick A, N M, Solomon JM. Effect of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation on Spasticity in Adults With Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2019 Apr;100(4):751-768.

最終更新:2026年7月27日