脳卒中治療ガイドライン2021では、注意障害に対して “コンピュータを用いた訓練” が推奨されています。

ですが、コンピュータを使ったリハビリは一般的ではなく、どのようなリハビリをすればいいかわからないですよね。

本記事では、コンピュータを使ったリハビリのプログラムの例を2つ紹介します。

注意障害のリハビリに一工夫加えたいセラピストの方向けの情報です。

脳卒中EBPプログラム【嚥下・高次脳機能コース】
嚥下障害や失語症、注意障害の脳科学から各症状に合わせた検査、エビデンスに基づくリハビリプログラムの実際までを学ぶ、言語聴覚士さん向けのオンラインの学習プログラムです。週1回、6ヶ月にわたって集中的に学習します。
脳卒中EBPプログラム【嚥下・高次脳機能コース】はこちら

脳卒中後の注意障害に対するコンピュータを使ったリハビリプログラム

基本的には、下記で紹介するWebアプリを使って、患者さんに合わせた認知課題を行うだけです。

Lumosity

LumosityのWebサイトはこちら

全部で5つの領域、全49種類の課題から構成されるコンピュータベースの認知リハビリテーションです。

日本語で利用可能なので、私たちも扱うことが可能です。

Lumosityの有効性を調べたランダム化比較試験では、1回あたり15分、週5回実施されています(Hardy JL, 2015; Wentink MM, 2016)。

操作方法がわかれば患者さんもひとりで行えるので、自主トレーニングとしても有効かもしれません。

BrainGymmer

BrainGymmerのWebサイトはこちら

全部で30以上の課題があるコンピュータベースの認知リハビリテーションです。

こちらは日本語がありません。

英語を日本語訳しながら進めることになります。

課題自体は簡単なので、直感的に進めることが可能ではありますが、患者さんおひとりで実施するのは難しいかもしれません。

BrainGymmerの有効性を調べたランダム化比較試験では、1回あたり30分、週5回実施されています(van de Ven RM, 2017)。

いずれも有効性については意見が分かれていますが、慢性期の脳卒中患者さんに対して行われた研究では、これらのコンピュータベースの認知リハビリテーションを行う前後で注意機能の改善が報告されています。

コンピュータを使ったリハビリプログラムのエビデンス

注意障害に対するコンピュータを使ったリハビリプログラムのエビデンスは、意外と多く研究されています。

本記事で紹介したLumosityやBrainGymmerはその一部です。

有効性を報告している研究もあれば、有効とは言えない、としている研究もあり、意見が分かれています。

ただ、慢性期の脳卒中患者さんに対して、コンピュータベースの認知リハビリテーションを行う前後で注意機能の改善が報告されているのは事実であり、有効なケースがあることは間違いないです。

今後、どういう条件で行えば有効なのかが明らかになれば、より使いやすくなっていくと思います。

今後の研究に期待がかかります。

参考文献

Hardy JL, Nelson RA, Thomason ME, Sternberg DA, Katovich K, Farzin F, Scanlon M. Enhancing Cognitive Abilities with Comprehensive Training: A Large, Online, Randomized, Active-Controlled Trial. PLoS One. 2015 Sep 2;10(9):e0134467.

Wentink MM, Berger MA, de Kloet AJ, Meesters J, Band GP, Wolterbeek R, Goossens PH, Vliet Vlieland TP. The effects of an 8-week computer-based brain training programme on cognitive functioning, QoL and self-efficacy after stroke. Neuropsychol Rehabil. 2016 Oct;26(5-6):847-65.

van de Ven RM, Buitenweg JI, Schmand B, Veltman DJ, Aaronson JA, Nijboer TC, Kruiper-Doesborgh SJ, van Bennekom CA, Rasquin SM, Ridderinkhof KR, Murre JM. Brain training improves recovery after stroke but waiting list improves equally: A multicenter randomized controlled trial of a computer-based cognitive flexibility training. PLoS One. 2017 Mar 3;12(3):e0172993.