退院されてから歩きのリハビリについて悩まれている方は多いと思います。
専門家に聞いても『たくさん歩いた方がいいですよ』と言われるだけで、
- 公園で歩くだけでいいのか?何か特殊な機器を使った方がいいのか?
- 1日何分歩けばいいのか?
- 毎日歩かないといけないのか?
など、具体的なところまでは教えてくれないケースもありますよね。
2022年、脳梗塞や脳出血を発症してから6ヶ月以上経過した患者さんに対して、どういう歩行練習をするのが効果的なのかを調べた研究論文が公開されました。
一般的に、脳梗塞や脳出血を発症された患者さんは3〜4ヶ月は病院に入院してリハビリを受けます。
その後ご自宅に退院するのですが、退院されたときには発症6ヶ月くらいになっていることが多いです。
つまり、この2022年の研究論文を読むことによって、ご自宅に退院された患者さんがどういう歩行練習をすれば効果的なのかがわかる、ということです。
今回は、この研究論文の情報をもとに、ご自宅に退院された患者さんがどのような歩行練習をすればよいのかを解説します。
情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、基本的に信頼性の高いシステマティックレビュー研究から得られたデータを引用しています。
リハビリの無料体験を実施中!
といった方から選ばれています!
脳梗塞・脳出血発症6ヶ月以降の歩行練習の効果を調査した2022年の研究
最初に今回紹介する研究論文の紹介です。
この研究では、発症6ヶ月以降の脳梗塞・脳出血患者さんに対して、歩行練習をすることが、歩行練習をしないときと比べて、歩くスピードや歩ける距離、バランスなどがよくなるのかどうかを調べています。
そして、歩行練習の中には
- トレッドミルトレーニング
- 平地歩行練習
- ロボットアシストトレーニング
- 水中ウォーキング
の4つが含まれていました。
この4つの歩行練習の中で、どれがよいのか、ということまで調べられています。
そして研究結果として、『歩行スピードを速くする、歩ける距離を伸ばすなら平地歩行練習がよい』『バランスをよくするならトレッドミルトレーニングがよい』ことが報告されました。
平地歩行練習というのは、平らなところを歩く練習です。
病院の中ではリハビリ室や廊下を使って歩くことが多く、また退院後は近所の公園を使って歩くことが多いです。
また、歩行スピードが速くなったり、歩ける距離が伸びると、ひとりで移動できる範囲が広がる可能性が高くなります。
例えば、お家の近所しか歩けなかったのが、駅まで歩けるようになったり、ひとによっては電車・バスに乗れるようになることもあります。
つまり、ご自宅に退院した後、公園を歩く練習をすることによって、歩行スピードや歩行距離が改善し、ひとりで遠くまで行けるようになる可能性が高くなるということです。
一方で、トレッドミルトレーニングというのは、スポーツジムなどに置いてあるようなトレッドミルマシンを使って歩く練習をするものです。
BRAINの店舗にも置いてあります。
歩くときに伴うリスクのひとつに転倒、転んでしまうこと、があります。
転んでしまうと、高齢者の方だと10回に1回くらいの割合で骨折してしまうというデータがあります。
そのため転ばないようにする必要があるのですが、そのためにバランスをよくすることは大事なポイントです。
トレッドミルトレーニングはバランス向上に有効であることが報告されています。
つまり、トレッドミルトレーニングをすることによって、転倒のリスクを減らし、安全に移動できるようになる可能性が高くなるということです。
このように、平地歩行練習、トレッドミルトレーニングをすることによって、ご自宅に退院されたあとも歩行能力(スピード・距離)とバランス能力を改善させることが可能です。
効果的な平地歩行練習のポイントとは?
さて、平地歩行練習で効果を出すためのポイントを紹介します。
今回の研究で報告された平地歩行練習のプログラムはこちらの通りでした。
ですので、目安としては
1回あたり30分、週3〜5回、4週間以上、合計720〜1200分
になるように、公園を歩く練習をしていただけると、歩行能力が上がる可能性が高いです。
歩く練習をするとき、バランスに自信がある方はおひとりで歩くこともできますが、基本的にはどなたかの付き添い、できれば担当セラピストさんと一緒に歩いていただけると安全だと思います。
もし歩く練習中に転倒してしまうと大変なので、ご自身のバランス能力や心血管系のリスクなどを専門家に確認した上で実施いただければと思います。