脳卒中リハビリのひとつに運動イメージ療法があります。

頭の中で身体を動かしているところをイメージするリハビリです。

脳卒中治療ガイドライン2021では上肢機能障害に対して推奨されています。

また、2020年のコクランレビューによると、急性期や回復期の患者さんに対しては上肢の運動機能に、慢性期の脳卒中患者さんに対しては上肢の運動機能と運動パフォーマンスに対して有効であるとされています。

運動機能
Fugl-Meyer Assessmentなどで評価される、単関節の運動や分離運動を指します。

運動パフォーマンス
Action Research Arm TestやWolf Motor Function Test、Box and Block Testなどで評価される、複数の関節からなる運動(リーチ、グラスプ、ピンチなど)を指します。

しかし、運動イメージ療法は臨床でしっかりと使われることは少ないのではないかと思います。

課題指向型訓練の合間に、「頭の中でイメージを作ってからやってみましょう」と伝えることはあるかもしれません。

ですが、本来、運動イメージ療法は4週間や6週間など、一定の期間しっかりやり続けるものです。

運動イメージ療法が本格的に行われない原因として、「やり方がよくわからない」というのがあるのではないでしょうか。

本記事では、運動イメージ療法のやり方について、2件のランダム化比較試験をもとに、プログラムを紹介します。

「運動イメージが有効なのは知ってるけど、やり方がわからないからできない」という方向けの内容です。

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脳卒中リハビリにおける運動イメージのやり方

上肢の運動イメージ療法は、原則的に他のリハビリと組み合わせて実施します。

運動イメージ療法のみで行ったとしても有効であるとは言えないというエビデンスがあるためです。

課題指向型訓練+運動イメージ療法

Page (2011) のランダム化比較試験で実施されたプログラムです。

①課題指向型訓練(30分)
個々の患者の状態に合わせて難易度調整し、課題を行う
②運動イメージ療法(60分)
1) リラックス
2) リラックスできる場所にいることを想像させる
3) 筋を収縮させて弛緩する
4) 課題指向型訓練で実施した課題を行う運動イメージを実施
5) 今いる部屋に焦点を合わせて終了
※20分1セットとし、1日3回に分けて合計60分実施した
合計90分、週3回、10週間

運動イメージ療法では「どの運動をイメージすればいいか?」が悩むポイントのひとつですが、事前に行われた課題指向型訓練の運動課題であれば、イメージしやすいですよね。

修正CI療法+運動イメージ療法

Kim H (2018) のランダム化比較試験で実施されたプログラムです。

①修正CI療法(60分)
1) 非麻痺側の拘束(6時間以上、週5回、2週間)
2) 運動課題(60分)
日常生活動作に関わる5〜6種類の課題を実施
②運動イメージ療法(10分)
1) 食事をしている場面の動画を見る(4分)
2) リラックス(2分)
3) 食事場面の運動イメージを行う(4分)
合計70分、週5回、2週間

食事場面の動画を観て、それから頭の中でイメージします。

こちらも、一度視覚的にイメージを作ってから始めるので、患者さん自身もやりやすいのではないかと思います。

「頭の中でイメージしてください」で終わらせない

本記事で紹介したプログラムはいずれも、事前に行われた課題指向型訓練や、食事場面の動画を観ることで「どの運動をどういうふうにイメージすればいいか?」というガイドがしっかりしています。

このように、本来は、患者さんが運動イメージを作りやすいように、セラピスト側が工夫する必要があります。

運動イメージを患者さんにしていただくとき、「頭の中でイメージしてください」で進めていくのではなく、ちゃんとイメージが作りやすいようこちらで準備しましょう。

臨床で活躍されるセラピストの皆さんの役に立つ情報になれば嬉しいです。

参考文献

Barclay RE, Stevenson TJ, Poluha W, Semenko B, Schubert J. Mental practice for treating upper extremity deficits in individuals with hemiparesis after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2020 May 25;5(5):CD005950.

Page SJ, Dunning K, Hermann V, Leonard A, Levine P. Longer versus shorter mental practice sessions for affected upper extremity movement after stroke: a randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2011 Jul;25(7):627-37.

Kim H, Yoo EY, Jung MY, Kim J, Park JH, Kang DH. The effects of mental practice combined with modified constraint-induced therapy on corticospinal excitability, movement quality, function, and activities of daily living in persons with stroke. Disabil Rehabil. 2018 Oct;40(20):2449-2457.