PubMedやJ-stageなど電子データベースを使って文献検索をするとき、全然ヒットしない、という経験はないでしょうか。

今週は脳卒中EBPプログラムのOTさんコースとPTさんコースで「文献検索・管理法」をテーマにWorkshopをやりました。

そこで、PTさんの方なのですが興味深い事例があったので共有させていただきます。

文献検索したいテーマとして、「脳卒中患者さんに対する長下肢装具が歩行能力や麻痺側下肢の運動機能に与える影響」を設定しました。

これをPICOに直して検索式を立て、PubMedを使って検索してみたのですが、ヒット件数がとても少なく、参考にできる文献も少ないという状況になってしまいました

こういうときの文献検索の工夫について、紹介させていただきます。

”検索に全然引っかからない” ときの文献検索のコツ

最初に結論ですが、”検索に全然引っかからない” ときの文献検索のコツは「検索用語を広げる」、です。

当たり前といえば当たり前なのですが、もう少し掘り下げていきます。

検索用語の広げ方には2通りありまして、1つ目は「検索用語の上位概念の用語に置き換える」、2つ目は「システマティックレビュー論文で用いられている検索用語に置き換える」です。

それぞれについて解説します。

掘り下げて解説

まず、1つ目の「検索用語の上位概念の用語に置き換える」です。

これは検索用語の上位概念の用語に置き換えて検索し直すことでヒット件数を増やし、先に調べた検索用語以外の用語で執筆されている論文を検索結果に含めさせる方法です。

例えば、長下肢装具は英語に直すと “Knee Ankle Foot Orthosis” とか “Long Leg Brace” とかって言いますよね。

これらをそのまま “Knee Ankle Foot Orthosis” とか “Long Leg Brace” で検索するとヒット数がとても少ないです。

これを上位概念に置き換えて “Orthosis” とか “Brace” とかで検索し直します。

“Orthosis” は装具という意味ですが、この装具という用語の下位概念に長下肢装具や短下肢装具などが含まれます。

そうすると当然ながらヒット件数が増えます。

同時に、短下肢装具(Ankle Foot Orthosis)なども検索結果に含まれてしまうので論文をひとつずつ読む作業は増えるのですが、長下肢装具を “Knee Ankle Foot Orthosis” や “Long Leg Brace” 以外の用語で記載している文献も引っかかってくれやすくなります。

実際あるかどうかわかりませんが、ある論文の中で長下肢装具を “Long Leg Orthosis” と記載していた場合、先ほどの “Knee Ankle Foot Orthosis” や “Long Leg Brace” で調べた場合は検索結果に出てきませんが、 “Orthosis” にすれば引っかかる可能性があります。

こういうふうに、用語が統一されていない場合は、上位概念の検索用語を使って検索し直すというのが一つの工夫です。

2つ目は「システマティックレビュー論文で用いられている検索用語に置き換える」です。

データベースを使って検索するとき、自分の頭の中で検索用語を考えて検索式を作るわけですが、「他の人はどういう検索式で検索しているのか?」という視点で、論文を参考にする方法です。

システマティックレビューというのは特定のテーマについて体系的・網羅的にエビデンスを収集するために、著者の方々によって考え込まれた検索式になっています。

例えば、脳卒中患者さんに対するミラーセラピーの効果について検証したコクラン・レビューの検索式を見てみると、”Mirror Therapy” という用語だけではなく、”illusion” とか “Visual” とか、ミラーセラピー に関連する別の用語が含まれていたりします。

これはミラーセラピーを別の用語で記載している論文があるからなのですが、このように別の用語で記載している論文も検索式に含めれば検索結果も広がります。

すでにシステマティックレビューが行われている分野というのはある程度研究が進んでいる分野になるので、ミラーセラピーとか、CI療法とか、コンセンサスが得られているリハビリについて調べるときには有効な手段です。

新しい研究分野だと用語が統一されていないことも多い

課題指向型訓練もそうだったのですが、昔は用語が統一されていませんでした。

“Repetitive Task Training(反復課題練習)” とか、 “Task Based Approach(課題に基づく介入)” とか、色々な用語が使われてきました。

今は”Task Oriented Training” という用語が主流になっています。

このように新しい分野の開発段階(初期段階)では用語が統一されていないこともあり、検索する際に自分が知っている用語で検索しても、論文では別の用語を使って記載しているため検索に引っかからないというケースがあります。

まとめになりますが、そういうときに「検索用語の上位概念の用語に置き換える」、「システマティックレビュー論文で用いられている検索用語に置き換える」といった方法を使って検索の範囲を広げ、論文の中身を読んでいくことで自分の臨床疑問を解決してくれる論文に行き当たるといいのではないかと思います。

本日は「”検索に全然引っかからない” ときの文献検索のコツ」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!