本日のテーマは「英語論文を読めるようになるための4つのステップ Part.2」です。
前回のおさらいになりますが、4つのステップとして「自分が知りたい情報を臨床疑問として整理する」、「情報を得るためにどの英語論文を読むか決める」、「英語論文の中のどの情報を得るべきか知る」、「ひたすら読み続ける」を紹介させていただきました。
昨日は1つ目のステップ、「自分が知りたい情報を臨床疑問として整理する」についてお伝えしました。
そもそも英語論文を読む前に、自分の知りたい情報を知ることから始めましょう、という内容でした。
臨床疑問というのは臨床で感じる疑問のことで、後景疑問(Background Question)と前景疑問(Foreground Question)とに分かれます。
前景疑問(Foreground Question)はPICOやPECOに直すことができます。
PICO・PECOというのは、4つの言葉の頭文字をとったものです。
PはPatient(患者)、IはIntervention(介入)、CはComparison(比較)、OはOutcome(起結)、です。
このように自分の知りたい情報、得たい情報を整理した上で、次のステップとして「情報を得るためにどの英語論文を読むか決める」、があります。
自分が知りたい情報を知るために、どの種類の英語論文を読むべきか判断するステップです。
英語論文にはいくつか種類があります。
総説論文とか、介入研究とか、観察研究とか、色々あります。
論文に何が書いてあるかという論文の “内容” ではなく、論文の “種類” によって得られる情報がそもそも異なっていたりします。
自分の疑問を解決するためにマッチした論文の種類を選べないと、疑問の解決までに時間がかかってしまうのですね。
ですので、臨床疑問に合わせて読む論文の種類を判断する必要があります。
本日は、論文の種類について解説し、どういう疑問の時はどの論文を選ぶべき、という判断の手助けになれればと思っています。
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5つの主要な論文を紹介
それでは、まず論文の種類について主要なものを紹介させていただきます。
それは、「総説論文」「ランダム化比較試験」「コホート研究」「横断研究」「ケースシリーズ・ケースレポート」の5つです。
それぞれのデザインの都合上、得られる情報が異なります。
自分の知りたい疑問に合わせて、読むべき論文タイプを選ぶことで情報にたどり着くまでの時間を短縮できます。
今回は総説論文ついて解説します。
総説論文を解説
それでは、まず総説論文について解説させていただきます。
総説論文
あるテーマにおいて現在までにわかっていることをまとめた論文です。
現在までに分かっていることというのは、あるテーマの先行研究から分かっていること、です。
総説論文にはそれらの情報が載るので、100遍前後の大量の参考文献が載ることがあります。
そして、多くの場合は、そのテーマの研究分野で実績を残されている先生が執筆されます。
ご高明な先生が執筆されることが多いので、総説論文は教科書や参考書のような勉強の仕方ができます。
特定の分野について知識の下地を作ったり、あるいは最新情報をざっとアップデートするときに有用です。
感の鋭い先生はお気付きになられたと思いますが、総説論文はBackground Questionを解決するためによく利用されます。
例えば「脳卒中後の運動障害について最新の情報を知りたい!」というときに、2020年くらいの総説論文を読むことで比較的新しい知識を収集することができます。
ただ、執筆される先生の意向に基づいて執筆されますので、網羅的な情報になっていないケースがあるというのは注意が必要です。
悪い例をひとつ紹介します。
著者の先生が支持している仮説があるとします。
総説論文を執筆するときに、著者の先生は自分の仮説を支持する先行研究のみを総説論文に載せることが可能になります。
そうすると、私たち読者は、仮説が正しいものと思い込みやすくなりますよね。
実際は、その仮説が反証されかけているものだとしても、正しいものと思い込みやすくなってしまいます。
ですので、総説論文は、このように著者の先生が載せる参考文献を選ぶことで偏った情報になっている可能性があるということを知っておく必要があります。
システマティックレビュー
一方で、先行研究を載せるプロセスを厳密に管理して、事実を客観的に正しく捉えようとする総説論文があります。
これはシステマティックレビューと呼ばれます。
あるテーマにおいて現在までに分かっていることを、体系的・網羅的にまとめた論文です。
これはForeground Questionを解決するために利用されることが多いですが、論文によってはBackground Questionを解決するために利用することも可能です。
普通の総説論文では、著者の先生の独断と偏見で記事を執筆することができます。
そのため、自分の仮説を支持する先行研究のみを載せる、ということが可能になります。
一方で、システマティックレビューは、仮説を支持する先行研究も、仮説を支持しない先行研究も網羅的に集めなければならないようになっています。
ですので、システマティックレビューの方が事実を客観的に、より正確に捉えることができます。
注意点としては、システマティックレビューだから良いというわけではなく、システマティックレビューで先行研究を集めてくるプロセスに問題がある場合は情報の信頼性が低下するということです。
論文によっては、システマティックレビューと書いてあっても、方法を読んでみると普通の総説論文と変わりないものも散見されます。
ここの判断をできるようになるためにはPRISMA声明を勉強する必要があります。
また機会があれば紹介します。
まとめると、特定のテーマについて一気に情報を得られてBackground Questionの解決に役立つ総説論文ですが、普通の総説論文は情報が偏っている可能性があるという注意点があります。
また、Foreground Questionの解決に役立つシステマティックレビューは、普通の総説論文よりも執筆プロセスが厳密に管理されるので、情報の偏りが少なく、網羅的な情報を得ることが可能です。
Background Questionの解決にも役立つ場合があります。
ただし、システマティックレビューの信頼性を担保しているのは執筆プロセスの厳密性なので、執筆プロセスがしっかりしていなければ情報の信頼性は低下します。
執筆プロセスについて理解するためにはPRISMA声明を学ぶことが必要です。
今回は「英語論文を読めるようになるための4つのステップ Part.2 〜総説論文編〜」というテーマでお話しさせていただきました。
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