短下肢装具の作製について悩まれている方は多いのではないかと思います。

『装具を履けば歩きやすくなるけど、一生外せないんじゃないか』
『装具ってたくさん種類があるけど、自分が作る装具で本当に正解なのだろうか』
『装具ってオーダーメイドらしいけど、いくらするんだろう』

筆者自身もこれまで多くの短下肢装具を作製する現場に携わってきましたが、みなさん何かしらの不安を抱えていらっしゃいました。

本記事では、脳梗塞や脳出血を発症された患者さんが短下肢装具を作製するときに役立つ情報を紹介します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、基本的に信頼性の高いシステマティックレビュー研究から得られたデータを引用しています。

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目次
  1. 脳梗塞における短下肢装具のメリットとデメリット
  2. 短下肢装具とは
  3. 短下肢装具の種類
    1. Rigid AFO
    2. Metal AFO
    3. オイルダンパーAFO
  4. 短下肢装具の効果
    1. 歩行自立度は向上するか?
    2. 歩行速度は向上するか?
    3. 歩きかたはよくなるか?
    4. バランスはよくなるか?
    5. オイルダンパーAFOの効果
    6. 効果には個人差がある
  5. 短下肢装具のメリット
  6. 短下肢装具のデメリット
    1. 麻痺側下肢の筋力が低下する?
    2. 作製に費用がかかる
    3. 基本的に装具ありきの生活になる
  7. 短下肢装具 選び方|どの装具が自分に合うのか
    1. ①重症度で選ぶ|麻痺の強さ
    2. ②歩行能力で選ぶ|屋内中心か屋外中心か
    3. ③足の状態で選ぶ|内反尖足の強さ・むくみ・感覚障害
    4. ④生活シーンで選ぶ|服装・履きやすさ・通勤通学
    5. 既製品とオーダーメイドはどちらがいい?
  8. AFOの費用と補装具費支給制度|申請の流れ
    1. AFOの一般的な費用相場
    2. 主な制度①|健康保険(治療用装具)
    3. 主な制度②|補装具費支給制度(身体障害者手帳)
    4. 申請の流れ
    5. 耐用年数と作り替えのタイミング
  9. AFOで失敗しないために|よくある落とし穴と対処法
    1. 失敗①|試着・試歩行をせずに作ってしまう
    2. 失敗②|支持性が強すぎて足首が動かない
    3. 失敗③|装着方向・締め具合の確認不足
    4. 失敗④|装具に合う靴を選んでいない
    5. 失敗⑤|「装具をつけたら一生外せない」と諦める
  10. 装具を外せるようになるためのリハビリ|外せる人・外せない人の違い
    1. 装具を外せる可能性が高い人
    2. 装具を継続したほうがよい人
    3. 装具とAFO以外の選択肢|機能的電気刺激(FES)
    4. 装具を卒業するためのリハビリのポイント
  11. 相談窓口・地域の支援先
  12. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 装具は寝るときもつけたほうがいいですか?
    2. Q. AFOで歩き方が悪くなることはありますか?
    3. Q. 装具のメンテナンスはどのくらいの頻度ですか?
    4. Q. 装具を使っていると疲れやすくなりますか?
    5. Q. 装具をつけると皮膚が赤くなります。大丈夫ですか?
  13. 近年注目されている短下肢装具の代替としての電気刺激
  14. 本記事のまとめ
  15. 参考文献

脳梗塞における短下肢装具のメリットとデメリット

最初に本記事のまとめです。

  • 短下肢装具は膝下〜つま先にかけて装着する装具のこと
  • 短下肢装具のメリットは『すぐに歩行がよくなること』
  • 短下肢装具のデメリットは『費用がかかる』『装具を外しにくくなる』こと

以下、詳しく説明します。

短下肢装具とは

短下肢装具とは、膝下〜つま先にかけて装着する装具のことです。

短下肢装具には色々なタイプがありますが、それらの総称として短下肢装具と呼ばれます。

なお、短下肢装具は英語でAnkle-Foot Orthosesと表記され、略して “AFO” と呼ばれることが多いです。

本記事でも、これ以降、短下肢装具を “AFO” と表記して進めていきます。

短下肢装具の種類

AFOにはたくさんの種類があります。

Daryabor Aら(2018)は、AFOについて下記のように分類しています。

短下肢装具の分類

脳卒中を発症された患者さんが日本国内で短下肢装具を作製する場合、Passive(他動)型に含まれるRigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOのいずれかになることが多いです。

国内では、Rigid AFOは “シューホンブレース”、Metal AFOは “金属支柱”、オイルダンパーAFOは “ゲイトソリューション” というイメージで差し支えありません。

Rigid AFO

足関節を90°(底背屈0°)にしっかりと固めてくれるAFOで、安定性が大きく向上します。

Rigid AFOのイメージ図はこちら

完全な下垂足(足首がだらんとぶらさがってしまう状態)、弱い背屈や底屈、軽度の膝の不安定性、および外反・内反がある場合に適用されることが多いです。

Metal AFO

金属支柱で足部と下腿とをつなげるタイプのAFOです。

Metal AFOのイメージ図はこちら

足関節の角度(底背屈角度)を調整することが可能で、患者さんの歩き方に合わせたセッティングができます。

オイルダンパーAFO

油圧式足継手、というサポート部品をもつAFOで、より正常な歩行を獲得することを目的に使用されます。

オイルダンパーAFOのイメージ図はこちら

日本でよく研究・開発されており、ゲイトソリューションデザインが有名です。

歩行ではヒール・ロッカーやアンクル・ロッカーという動きが起こります。

これによって効率的に歩くことができるようになっています。

オイルダンパーAFOはこのヒール・ロッカーやアンクル・ロッカーをサポートすることが可能と考えられています。

短下肢装具の効果

エビデンスをもとに、短下肢装具の効果を紹介します。

歩行自立度は向上するか?

歩行自立度とは、『ひとりで歩けるかどうか』を指します。

『歩行自立度が向上する』とは、ひとりで歩けるようになっていくことを意味します。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩行自立度が向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具は歩行自立度の向上に有効である』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着することでひとりで歩けるようになる可能性が高いということです。

歩行速度は向上するか?

歩行速度とは、『速く歩けるかどうか』を指します。

『歩行速度が速くなる』とは、歩くスピードが上がることを意味します。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)Wada Yら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩行速度が向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具は歩行速度の向上に有効である』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着することで歩くスピードが速くなる可能性が高いということです。

歩くスピードが速くなれば、周りの人のペースに合わせて歩けたり、横断歩道を渡るのに余裕が出たりするので、外出が楽になります。

歩きかたはよくなるか?

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩きかたがよくなるかどうかを文献調査しました。

結果として、

  • ケイデンス(1分間あたりの歩数)
  • ストライド長(一歩の大きさ)
  • ステップ長(一歩の大きさ)

などがよくなることが報告されました。

簡単に言えば、歩幅が大きくなる、脚の回転数が上がる、という効果があったということです。

また、Daryabor Aら(2018)Wada Yら(2021)も同様に歩きかたの変化について文献調査を行い、まとめました。

結果として

  • Rigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOともに踵から足をつけるようになることをサポートする
  • Rigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOともに足の引っかかりが少なくなるようサポートする
  • Metal AFO、オイルダンパーAFOは麻痺側の脚が後ろにいったとき(立脚後期〜遊脚期)に足関節背屈を維持させるようサポートする

という効果を期待できることが報告されました。

エビデンスから言うと、装具の種類によって歩きかたが大きく変わることはありません。

どの種類にせよ、AFOを装着することで歩きかたがよくなるのは間違いなさそうです。

一方で、近年はオイルダンパーAFOの有効性を検証した研究が増えてきており、Rigid AFOよりもオイルダンパーAFOが優れているというデータが続々と報告されています(詳細は下記をご覧ください)。

バランスはよくなるか?

私たちが歩く上で、バランスは欠かせない要素です。

バランスが悪いと歩いているときに転んでしまうリスクが高くなります。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、バランスが向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具はバランスの向上に有効とは言えない』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着してもバランスがよくなることは期待できない、ということです。

Nevisipour M(2022)は、AFOを装着した脳卒中患者さんは、AFOを着用していない患者さんと比べ、転倒リスクが2.5倍高いことを報告しています。

このことから、AFOを作製しても転倒には引き続き注意をしていただく必要があると言えます。

脳卒中後のバランス練習について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください

オイルダンパーAFOの効果

オイルダンパーAFOの代表格は “ゲイトソリューションデザイン” です。

近年、日本を中心に、オイルダンパーAFOの有効性が報告されています。

Yamamoto S(2011)は、オイルダンパーAFOが、脳卒中患者さんの歩行に与える即時および短期的な影響を、ロッカーファンクションの観点から検証しました。

結果として、以下の変化が報告されました。

オイルダンパーAFOを装着した直後の即時的な変化は以下の通りです。

  • 歩行速度の向上
  • 時間空間パラメータ(ステップ長、歩行周期など)の改善
  • 足関節背屈角度の増加

また、オイルダンパーAFOを3週間継続して使用した後の変化は以下の通りです。

  • 歩行速度のさらなる向上
  • 時間空間パラメータのさらなる改善
  • 足関節の背屈角度の増加および立脚期の足関節の底屈モーメントの増加

また、オイルダンパーAFOを着用することによって、ロッカーファンクションに以下の変化が認められました。

  • ヒールロッカー(Heel Rocker):かかとからつま先へのスムーズな体重移動が可能になり、歩行の安定性と効率が向上
  • アンクルロッカー(Ankle Rocker):足関節の背屈角度と底屈モーメントの改善により、地面反力を効率的に利用して前進する力が増加
  • フォアフットロッカー(Forefoot Rocker): いくつかの改善が見られたものの、完全には改善されなかった

なお、Ling H(2023)の研究では、Rigid AFOは立脚期における脛骨前傾角度が減少したのに対し、オイルダンパーAFOは脛骨前傾角度が増大したことを報告しました。

Yamamoto S(2011)の研究と同様に、オイルダンパーAFOはアンクルロッカーの生成に貢献しているということです。

また、Kimura N(2021)は、脳卒中患者さんがオイルダンパーAFOを着用した直後、

  • 歩行速度の向上
  • 全体的な垂直方向の地面反力(vGRF)の改善
  • 垂直方向の骨盤変位(vPD)の変化

といった変化があったことを報告しました。

簡単に説明すると、オイルダンパーAFOの装着によって、

  • 歩く速度が速くなる
  • 重心(CoM)を効率的に持ち上げることができるようになる
  • 麻痺側の推進力が増加する
  • エネルギー効率が向上する
  • 歩行の安定性が向上する

という効果があるということです。

Yamamoto S(2015)は、脳卒中患者さん8人を対象に、オイルダンパーAFOの有効性を検証しました。

結果として、オイルダンパーAFOを装着すると、オイルダンパーAFOを外したときでさえもpre-swing時間の短縮と立脚期の足関節の正の力の増加が認められたことを報告しました。

簡単に説明すると、オイルダンパーAFOは、AFOなしのときの歩行周期をスムーズにし、麻痺側の推進力を向上させる治療的効果を持つ可能性があるということです。

このように、近年はオイルダンパーAFOを支持する研究が増えてきています。

短下肢装具はRigid AFOとMetal AFOが主流でしたが、近年のエビデンスも踏まえ、オイルダンパーAFOを選択肢に入れるべきでしょう。

効果には個人差がある

ここまで、短下肢装具の効果についてエビデンスに基づいて紹介しました。

もちろん、これは一般的にみたときの効果であって、個人差はあります。

ですので、可能であれば一度試着してみて、試着前後で歩きやバランスがどう変化するのかをチェックし、作製するかどうか判断した方がよいでしょう。

短下肢装具のメリット

AFOのメリットについてまとめます。

  • 歩行の自立度が上がる
  • 歩行速度が上がる
  • 歩きかたが正常に近づく
  • 装着すればこれらの効果がすぐに現れる

上述したように、AFOによって歩行自立度や歩行速度、歩きかたが向上する効果を期待できますが、それは装着すればすぐ獲得できます。

人によって、慣れるまでに時間を要することがありますが、早い人では装着して1時間くらいで1人で歩けるようになったり、速く歩けるようになったりします。

このような即効性は他のリハビリにはなく、AFOを作製・装着する大きなメリットであると言えます。

短下肢装具のデメリット

次に、AFOのデメリットです。

  • 麻痺側下肢の筋力が低下する?
  • 作製に費用がかかる
  • 基本的に装具ありきの生活になる

麻痺側下肢の筋力が低下する?

短下肢装具を装着することによって、麻痺側下肢の筋力が低下する可能性が指摘されています。

Sherk KA(2015)は、脳卒中発症14年、短下肢装具を7年間着用した患者さん9人を対象に、麻痺側の下肢筋力と筋肉の大きさ(断面積)を調査しました。

結果として、非麻痺側下肢の筋力や断面積と比べると、麻痺側下肢の筋力や断面積が低下していることが明らかになりました。

このことから、短下肢装具を長期間着用することによって、筋力が低下したり、筋肉が小さくなってしまう可能性があると言えます。

一方、この研究では「短下肢装具を着用していたから筋力低下が生じたのか?」「短下肢装具を着用していなくても筋力低下が生じていたのではないか?」という疑問に答えることができません。

もしかしたら、短下肢装具を装着していなくても、筋力低下や断面積の減少は起こっていたかもしれず、あくまでも “可能性” でしかない点に注意が必要です。

作製に費用がかかる

AFOの種類や業者によって値段は異なりますが、数万円〜十数万円の費用がかかります。

東京都の義肢装具製作所一覧

ただし、身体障害者手帳や医療保険を利用することによって費用負担は1割〜3割程度になります。

自費で作製することもできますが、こういった制度を活用することによって費用を抑えることは可能です。

基本的に装具ありきの生活になる

『一回作ったら一生装具』ということはなく、いつでもご自身の使いたい時に使えますし、外したいときに外せます。

ただ、上述の通りAFOは歩きがよくなる効果があります。

AFOを着けているときは歩きやすいのですが、AFOを外すと基本的には歩きづらくなるため、結果として装具を装着したままにしておくことを選ぶ方が多いです。

リハビリのときだけでなく日常生活でもAFOを着用して生活することになるので、

  • 着脱に手間がかかる
  • AFO用の靴しか履けなくなる

といった問題が生じます。

なお、リハビリによって脚・足の運動機能や歩行能力が向上すればAFOを外しても歩きやすいままで生活できるようになる可能性もあります。

担当のセラピストに相談しながらリハビリを進めてください。

短下肢装具 選び方|どの装具が自分に合うのか

「装具のタイプはわかったけれど、結局どれを選べばいいのか」――。

判断のポイントは「重症度」「歩行能力」「足の状態」「生活シーン」の4つです。

①重症度で選ぶ|麻痺の強さ

麻痺が軽く、足首の動きが少し残っている方は、シューホーン型・タマラック関節付・オルトップAFOで十分対応できます。

麻痺が中等度〜重度で、足首が大きくねじれる方は、金属支柱付きAFOが第一選択です。

2019年に公開された25の研究をまとめた分析では、AFOの剛性(硬さ)が大きいほど足首の可動範囲は減るが、支持性は上がると報告されていますTotah, 2019)。

つまり、装具は「強く支えるほど自然な足首の動きを犠牲にする」ため、必要最小限の支持性を選ぶのが基本です。

②歩行能力で選ぶ|屋内中心か屋外中心か

屋内が中心で短い距離しか歩かない方は、軽量・着脱しやすさを重視します。

屋外で長い距離を歩く方は、6分間歩行距離が伸びるエビデンスがあるカーボン製AFOやゲイトソリューションを検討する価値があります(Rimaud, 2024)。

③足の状態で選ぶ|内反尖足の強さ・むくみ・感覚障害

内反尖足が強い方は、プラスチック型では押さえきれず、金属支柱付きAFOが必要になります。

むくみがある方は、サイズ調整がしやすい既製品(オルトップAFOなど)が向いている場合があります。

足の感覚が鈍い方は、皮膚トラブル(傷・水ぶくれ)に気づきにくいため、当たりの少ない柔らかい素材や、見た目で確認しやすいデザインを選びます

④生活シーンで選ぶ|服装・履きやすさ・通勤通学

仕事に行く方、人前で見られたくない方は、ズボンの下に隠れる薄型のプラスチック製AFOが向いています。

畳の生活が中心の方は、靴を脱ぐ機会が多いため、着脱しやすい設計のAFOを選びます。

既製品とオーダーメイドはどちらがいい?

2018年に公開された139名の研究では、既製品AFOとオーダーメイドAFOで歩行能力に差はありませんでした(Tyson, 2018)。

むしろ短期では既製品グループのほうが転倒不安が有意に低かったと報告されていますTyson, 2018)。

既製品はサイズが合えば短納期で入手でき、価格も抑えられるメリットがあります。

足の形が特殊・むくみが大きい・内反尖足が強いなど、既製品では対応できない場合にオーダーメイドが選ばれます。

BRAINの判断!
BRAINでは、「まずは既製品で歩行を試してから、必要に応じてオーダーメイドに切り替える」という二段構えを提案することがよくあります。最初からオーダーメイドにすると、装具が完成するまで2〜4週間かかり、その間の歩行練習がストップしてしまうためです。

AFOの費用と補装具費支給制度|申請の流れ

AFOは数万円から十数万円する高額な医療機器ですが、公的な制度で多くが助成されます。

制度の使い方を知っておくと、自己負担を最小限にできます。

AFOの一般的な費用相場

装具のタイプによって価格は大きく異なります(2026年時点・税抜の目安)。

  • シューホーン型・オルトップAFO(既製品):約2〜5万円
  • タマラック関節付AFO:約4〜8万円
  • 金属支柱付き両側支柱AFO(靴型):約8〜15万円
  • ゲイトソリューションデザイン:約10〜15万円
  • カーボン製・3DプリントAFO:約10〜20万円

正確な費用は装具製作所により異なりますので、見積もりを依頼してください。

主な制度①|健康保険(治療用装具)

入院中・通院中の脳卒中の方が、医師の指示で初めて装具を作る場合は、健康保険の「治療用装具」として扱われます。

窓口でいったん全額を支払い、後日健康保険組合に申請して7〜9割が払い戻される仕組みです

申請には、医師の装具装着証明書、装具製作所の領収書・装具明細書が必要です。

主な制度②|補装具費支給制度(身体障害者手帳)

身体障害者手帳をお持ちの方は、補装具費支給制度で装具を作成・更新できます。

世帯の所得に応じて自己負担は原則1割(月額上限37,200円)です(厚生労働省・補装具費支給制度の概要、2026年時点)。

所得が一定以上の場合は支給対象外になることもあるため、市区町村の障害福祉窓口で確認が必要です。

申請の流れ

  1. 市区町村の障害福祉窓口で「補装具費支給申請書」を入手
  2. 主治医に「補装具意見書」を作成してもらう
  3. 装具製作所で見積書を作成(複数社で比較も可能)
  4. 市区町村に書類一式を提出し、判定機関の審査を受ける
  5. 支給決定後、装具製作所で採型・仮合わせ・本納品
  6. 受領後、自己負担分(原則1割)を装具製作所に支払う

申請から納品まで通常1〜3か月かかるので、早めに動くのが安心です。

耐用年数と作り替えのタイミング

補装具費支給制度では、AFOの耐用年数は3年と定められています。

3年を経過すると新しいAFOへ作り替えの申請ができます。

ただし、体重の変化、足の形の変化、装具の破損などがあれば3年経つ前でも作り替えが認められる場合があります

AFOで失敗しないために|よくある落とし穴と対処法

装具を作ったのに「結局使わなくなった」というケースは少なくありません。

ありがちな失敗パターンを5つ紹介し、それぞれの対処法を説明します。

失敗①|試着・試歩行をせずに作ってしまう

装具製作所での仮合わせは、必ず実際に歩いて確認してください。

立っている状態だけで「合っている」と感じても、歩くと当たる場所が出てくることがあります。

仮合わせの段階で10分以上歩いて違和感がないかを確認するのが理想です

失敗②|支持性が強すぎて足首が動かない

「不安だから支持性が強いものを」と選びすぎると、足首が動かず歩行がぎこちなくなります。

2019年に公開された25の研究をまとめた分析でも、装具の剛性が大きいほど足首の動きが制限されることが報告されています(Totah, 2019)。

必要最小限の支持性に絞ることで、自然な歩行に近づきます。

失敗③|装着方向・締め具合の確認不足

装具のベルトの締め具合・足のかかとの位置・靴下の厚みは、毎日の装着で歩きやすさに影響します。

装具製作所で「正しい装着の手順」を写真付きで残してもらうと安心です。

失敗④|装具に合う靴を選んでいない

AFOは靴の中に入れて使うので、サイズが合わない靴では装具の効果が出ません。

装具をつけた状態で片足のサイズが0.5〜1.0cm大きい靴を選びます

左右で違うサイズの靴を片方ずつ買えるサービスもあります(パシフィックサプライ「ハーフサイズシューズ」など)。

失敗⑤|「装具をつけたら一生外せない」と諦める

「一度装具をつけたらもう外せない」と思い込んでしまう方は多くいます。

しかし、麻痺の改善や歩行能力の向上に応じて、より軽いタイプにサイズダウンしたり、最終的に外せたりするケースも実際にあります

装具の使用は「一度きりの選択」ではなく、回復に応じて見直していく前提で考えてください。

BRAINの判断!
BRAINでは、装具を作る前に必ず「現状の歩行動画を撮影して、装具の必要性を客観視する」ことを大切にしています。装具で何が変わるのか、変わらないのかを動画で確認すると、納得感のある選択ができます。

装具を外せるようになるためのリハビリ|外せる人・外せない人の違い

装具を早く外したい人のための裏ワザ

「装具を外して歩きたい」というのは、多くの方の希望です。

装具を外せるかどうかは、麻痺の重症度・足首の運動制御・転倒リスクの3つで判断されます。

装具を外せる可能性が高い人

  • 足首を自分で持ち上げられる(背屈の自動運動が出る)
  • 装具なしで10m以上連続して歩ける
  • 歩行中につま先が床に引っかからない
  • 歩行速度が0.8 m/s以上に達している
  • 転倒回数が過去6か月で0〜1回

これらの条件が複数当てはまれば、装具なしでの歩行への移行を検討できます。

装具を継続したほうがよい人

  • 足首の動きが出ず、つま先が引っかかりやすい
  • 内反尖足が強く、足首をひねるリスクがある
  • 過去6か月で転倒2回以上
  • 長距離を歩くと疲労や痙縮が強まる

これらに当てはまる方は、装具をつけて歩行を維持するほうが安全と考えられます。

装具とAFO以外の選択肢|機能的電気刺激(FES)

足首を持ち上げる電気刺激装置(FES)も、AFOの代替として研究されています。

2018年に公開された7つの研究をまとめた分析(464名)では、AFOとFESは歩行速度の改善で同等の効果を示しました(Prenton, 2018)。

2020年に公開された分析でも、AFOとFESは歩行速度・バランスの両方で同等と確認されています(Nascimento, 2020)。

FESはAFOよりも見た目が目立ちにくい一方、装着の手間や電池の管理、機器のコストの問題があります。

歩行のぶん回し(足を外に振り出す動き)の改善については、関連記事のぶん回し歩行の原因と改善|原因別に効果のあるリハビリでも詳しく解説しています。

装具を卒業するためのリハビリのポイント

装具を外すには、足首を自分で動かせるための運動制御の回復が必要です。

  • 前脛骨筋の促通:つま先を持ち上げる動きを繰り返す
  • 足部の感覚入力:足底をマッサージしたり、いろいろな床面を素足で踏む
  • 歩行練習:装具をつけた歩行と外した歩行を交互に行う
  • 段差・障害物の練習:つま先を意識的に持ち上げる練習
  • バランス練習:片脚立位、不安定な床面での立位

退院後のリハビリ全体の流れは、別記事の退院後の脳卒中リハビリ完全ガイド|在宅でできること、専門施設での選択肢もあわせてご覧ください。

相談窓口・地域の支援先

装具に関する相談先として、以下の窓口が利用できます。

  • かかりつけ医:装具の処方は医師が出すため、まずは主治医に「装具を作りたい」と伝えてください。
  • 装具製作所(義肢装具士):装具の採型・製作・調整を担当します。リハ病院から紹介されるか、補装具製作業者リストから選べます。
  • 市区町村の障害福祉窓口:補装具費支給制度の申請手続きを担当します。
  • 地域包括支援センター:訪問リハビリ・福祉用具レンタルの相談ができます。
  • 装具療法アドバイザー:日本リハビリテーション医学会等が認定する装具療法アドバイザーが在籍する施設では、より専門的な装具選定が受けられます。

よくある質問(FAQ)

Q. 装具は寝るときもつけたほうがいいですか?

原則として、AFOは歩くとき・立つときに使う装具で、寝るときは外すのが一般的です。

夜間に足首が固くなる方には、寝るとき専用の夜間装具(ナイトスプリント)が別途処方される場合があります

主治医・療法士にご相談ください。

Q. AFOで歩き方が悪くなることはありますか?

合っていない装具・支持性が強すぎる装具を使うと、ぎこちない歩行になることがあります。

2019年に公開された分析でも、AFOの剛性が大きいほど足首の自然な動きが減ると報告されています(Totah, 2019)。

装具は「歩行を助けるもの」であり、「歩行をすべて代行するもの」ではないので、必要な支持性に絞るのが大切です。

Q. 装具のメンテナンスはどのくらいの頻度ですか?

ベルクロ・ベルトの汚れは月1回程度の確認で十分です。

プラスチックのひび割れ・関節部の異音・金具の緩みは半年に1回、装具製作所で点検してもらうと安心です。

体重の変化・足のサイズの変化があった場合は、早めに装具製作所に相談してください。

Q. 装具を使っていると疲れやすくなりますか?

むしろ逆で、合った装具を使うと歩行のエネルギー効率が改善します。

2024年に公開された慢性期脳卒中の方15名対象の研究では、AFO装着で歩行のエネルギーコストが約15%減少しました(Rimaud, 2024)。

脳卒中後の疲れやすさは複数の原因で起こりますが、装具で歩行が楽になるのも有効な対処法のひとつです。

疲れやすさ全般の対処法は、関連記事の脳卒中の疲労|疲れやすさの原因と対処法もご参照ください。

Q. 装具をつけると皮膚が赤くなります。大丈夫ですか?

装具を外して15〜30分以内に赤みが消える程度であれば、軽度の圧迫であり許容範囲です。

30分経っても赤みが残る・水ぶくれや傷ができる場合は、装具のフィッティングを再調整する必要があります

そのまま使い続けると褥瘡(じょくそう=床ずれ)に発展することがあるため、早めに装具製作所に相談してください。

近年注目されている短下肢装具の代替としての電気刺激

近年、短下肢装具を電気刺激で代替しようとする動きが増えてきています。

Bethoux F(2014)は、AFOの代わりにウォークエイドという電気刺激装置を使うことで、AFOの代わりになるかどうかを検証しました。

ウォークエイドというのは、センサーを内蔵した電気刺激装置で、麻痺側の下腿に巻きつけて歩行をすることによって、遊脚期に自動で総腓骨神経を刺激し、足関節背屈を生じさせる機械です。

ウォークエイドについて詳しく知りたい方は帝人ファーマさんのホームページをご覧ください

この研究では、脳卒中患者さん495人を2つのグループに分け、1つ目のグループにはAFOを、2つ目のグループにはウォークエイドを装着し、6ヶ月の経過を調査しました。

結果として、歩行速度やバランス(BBS)、転倒などの有害事象において統計的な有意差を認めなかったことを報告しています。

つまり、電気刺激装置はAFOの代わりになるということです。

また、同研究チームが2015年に公開した研究では、1年間にわたるウォークエイド装着とAFO着用の効果を検証しました。

結果として、ウォークエイドを装着した人たちも、AFOを装着した人たちも、歩行速度が同等に改善していたことを報告しました。

これらの研究を踏まえると、脳卒中患者さんに対してはAFO作製だけを勧めるのではなく、別の選択肢としてL300などの電気刺激装置を装着する方法も紹介すべきでしょう。

AFOには、着用に手間がかかる、装具用の靴しか履けなくなるというデメリットがありますが、電気刺激装置であればこういったデメリットを解消できるため、有用と言えます。

なお、ウォークエイドは製造終了してしまっていますが、フランスベッドから販売・レンタルされているL300というシリーズがウォークエイドと同様の性能を持っています。

BRAINのご利用者様も、AFOではなくL300を着用して屋内・屋外歩行をされている方がいらっしゃいます。

ご興味がある方はよかったら問い合わせてみてください。

本記事のまとめ

最後に本記事のまとめです。

  • 短下肢装具は膝下〜つま先にかけて装着する装具のこと
  • 短下肢装具のメリットは『すぐに歩行がよくなること』
  • 短下肢装具のデメリットは『費用がかかる』『装具を外しにくくなる』こと

本記事がAFOを作製・装着に悩まれている方の役に立てましたら幸いです。

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