
脳卒中のあと、家の中でヒヤッとした経験はありませんか?
段差につまずく、立ち上がったときにふらつく、夜トイレに行こうとして足がもつれる――。脳卒中を経験した方は、そうでない方に比べて転倒する可能性が非常に高いことが報告されています。
2022年に公開された39の研究をまとめた分析では、脳卒中後の方の転倒は入院中・退院後を通じて非常に多く、片麻痺・バランス障害・認知機能の低下が主なリスク因子とされています(Abdollahi, 2022)。
この記事では、脳卒中のあとになぜ転びやすくなるのか、家の中のどこが危ないのか、そしてどうすれば転倒を減らせるのかを、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
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・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)
また、転倒したあとに以下の症状がある場合は、すぐに受診してください。
・頭を打った、または打った可能性がある
・立ち上がれない・足に体重がかけられない(骨折の可能性)
・転倒後に頭痛・吐き気・意識のもうろうが出た(頭蓋内出血の可能性)
脳卒中後になぜ転倒しやすいのか
脳卒中のあとに転倒しやすくなる理由はひとつではありません。体と心の両方に、複数の要因が重なります。
どのくらいの人が転ぶのか(発生率のデータ)
2025年に公開された16の研究をまとめた分析(約5,857名が対象)では、脳卒中後の方の中で、一度転倒した方がくり返し転ぶ「再発転倒」が多いことが示されています。年齢、過去の転倒歴、バランスの低下、うつ状態、多くの薬を飲んでいることが主なリスク因子として報告されました(Xie, 2025)。
2019年に公開された日本の研究(東京ベイリハビリテーション病院、対象144名)では、地域で生活している片麻痺の方が転倒する場所は、大半が屋内(家の中)だったと報告されています(Goto, 2019)。日本の住環境でも、家の中が最も危ない場所であるということです。
BRAINに通われる方にお話を聞いても、「一度転んで怖くなって、外出を控えるようになった」とおっしゃる方が少なくありません。転倒はケガだけでなく、その後の活動量そのものを減らしてしまう点でも深刻な問題です。
脳卒中後に転びやすくなる理由
脳卒中の後遺症が重なって、体は転びやすい状態になります。主な要因は以下の通りです(Abdollahi, 2022)。
| 要因 | わかりやすく言うと | 転倒につながる場面 |
|---|---|---|
| 片麻痺 | 体の片側が動きにくい | 麻痺側につまずく、足が引っかかる |
| バランス障害 | 体のかたむきを立て直す力の低下 | 方向転換、立ち上がりでふらつく |
| 感覚障害 | 足の裏の感覚が鈍い | 段差・敷居の高さに気づけない |
| 筋力低下 | 特にお尻・太もも・足首の筋肉 | 立ち上がれない、踏ん張れない |
| 注意・認知の低下 | ふたつのことを同時にしにくい | 会話しながら歩くとつまずく |
| 転倒への恐怖感 | 「また転ぶかも」という不安 | 体がこわばり、動きがぎこちなくなる |
| 多剤服用・うつ | 複数の薬・気分の落ち込み | めまい、注意力の低下 |
2024年に公開された研究データをまとめた分析では、「また転ぶかもしれない」という転倒への恐怖感が強い方は、実際に転倒する可能性が約2倍に高まると報告されています(Pin, 2024)。体の問題だけでなく、気持ちの面も転倒と強く関係しています。
転倒リスクの評価について
医療現場では、転びやすさを評価するためのチェックリストやバランス検査がいくつも使われています。2016年に公開された10の研究をまとめた分析では、高齢者向けに作られた既存の転倒リスクスコアを脳卒中の方に当てはめた場合、予測精度は中くらい(決して高くはない)と報告されています(Walsh, 2016)。
BRAINでは、この背景をふまえて、「点数ひとつ」で判断せず、実際の歩行・立ち上がり・バランスの動きを観察して評価するようにしています。数字だけでは見えないリスクがあるためです。
家の中で特に危ない場所
結論から言うと、脳卒中の方の転倒の大半は「家の中」で起きています。2019年に公開された日本の研究(東京ベイリハ、144名)でも、地域で暮らす片麻痺の方の転倒の多くは屋内で発生したと報告されています(Goto, 2019)。
特に危ない場所と、その理由を以下にまとめます。
| 場所 | 転倒が起きやすい理由 | よくある場面 |
|---|---|---|
| 浴室・脱衣所 | 床が濡れる・狭い・温度差 | 浴槽のまたぎ、立ち上がりでふらつく |
| トイレ | 狭い・夜間の急ぎ・立ち上がり | 夜中にトイレへ行く途中でつまずく |
| 階段・段差 | 高低差・麻痺側の足が上がりにくい | 敷居・玄関の上がり框(かまち)につまずく |
| 寝室・ベッド周り | 夜は暗い・眠気・急な立ち上がり | 起きたとたんにふらつく、布団でつまずく |
| キッチン・リビング | ラグ・電気コード・物の置きっぱなし | カーペットのふちにつまずく |
| 玄関 | 段差・靴の脱ぎ履き・荷物 | 片足で靴を履こうとしてバランスを崩す |
2021年に公開された310名を対象とした研究では、退院後の住環境に危険な要素(ハザード)がどれだけあるかを評価し、それを取り除く介入を行ったところ、転倒の発生率が38%減少したと報告されています(Stark, 2021)。家の中の「危ないポイント」を減らすことには、明確な効果があるということです。
BRAINでも、初回の評価時に「どの部屋で、どんな場面で、どの方向に転びそうか」をご本人とご家族にヒアリングしています。お住まいごとに危ない場所は違うため、一律の対策ではなく個別に考えることが大切です。
環境調整の具体策|手すり・段差・照明
結論から言うと、家の中の危ない場所を整える「環境調整」は、脳卒中後の転倒を減らす有効な手段です。2023年に公開された10の研究をまとめた分析では、住宅改修を中心とした環境調整によって、転倒が約21%減少したと報告されています(Lektip, 2023)。
ここでは、場所ごとに「まず手をつけるべき対策」をお伝えします。
手すりの設置
- 玄関:上がり框の上り下りで踏ん張る位置に、縦型の手すりを設置します
- トイレ:便座のわきに立ち上がりを補助する縦+横の「L字型手すり」が有効です
- 浴室:浴槽のまたぎ・洗い場への入り口・洗い場内に複数の手すりを配置します
- 階段:両側に手すりをつけることが理想。難しければ下りるときに麻痺側が壁となる側を優先します
- ベッドわき:立ち上がるときにつかまれる据え置き型のベッド柵(介護保険でレンタル可能)を活用します
意見:BRAINでは、手すりの「高さ」と「向き」をご本人に実際に使ってもらいながら決めることを勧めています。カタログ上の標準寸法では合わない方が多いためです。介護保険の住宅改修を使えば、費用の一部を自治体が負担してくれます。
段差・床面の対策
- 部屋と部屋のあいだの敷居には、スロープ(小さい坂)を取り付けます
- カーペット・ラグは、ふちがめくれないよう両面テープで固定するか、思いきって撤去します
- 電気コード・延長コードは、歩く動線(ルート)の上を通らないように配置します
- 浴室の床には滑り止めマットを敷きます(浴槽の中と洗い場、両方)
- 階段のふちには、滑り止めのテープを貼ります
照明の見直し
- 寝室からトイレまでの動線に、人が近づくと自動で点灯するセンサーライトを設置します
- 階段の上り口・下り口に手元スイッチを付け、上下どちらからでも点けられるようにします
- 夜間は常夜灯(足元を照らす小さな明かり)を複数配置します
- 電球が切れたままになっていないか、月に一度チェックします
環境調整だけでは不十分
2012年に公開された156名を対象とした研究では、退院直後に複数の要因に働きかける介入(環境調整+運動+教育)が行われました。結果、もともと転倒リスクが低かった方には環境調整の効果が出やすい一方、リスクが高い方には「環境調整だけ」では不足し、運動や習慣の見直しも一緒に行う必要があると報告されています(Batchelor, 2012)。
また、2026年に公開された12の研究をまとめた分析では、環境評価と住宅改修を組み合わせた介入は、特に転倒リスクが高い方に対して有効であったと示されています(Fauziningtyas, 2026)。
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歩行補助具と装具の選び方|杖・歩行器・AFO
結論から言うと、補助具と装具は「転倒を防ぐ目的」で使うものであり、自己判断で選ぶと逆効果になることがあります。必ず理学療法士や作業療法士、医師と相談して決めてください。
杖の種類と選び方
| 種類 | 特徴 | 向いている方 |
|---|---|---|
| T字杖(一本杖) | 先端が1点で、軽くて扱いやすい | ある程度バランスが保てる方 |
| 4点杖(多脚杖) | 先端が4点で、自立して立つ | より強い支えが必要な方 |
| ロフストランドクラッチ | 前腕にカフがあり握力が弱くても使える | 長距離を歩く方、握力が弱い方 |
杖は「麻痺していない側の手」で持つのが基本です。長さは、杖を持ったときに肘が軽く曲がる(およそ30度)高さが目安です。理学療法士に実際の歩行を見てもらい、適切な長さに調整してもらってください。
歩行器・歩行車の使い分け
- 固定式歩行器:持ち上げて前に進める。屋内の短距離向き
- キャスター付き歩行器(シルバーカー含む):押して進むため負担が少ない。屋外向き
- 歩行車(座れるタイプ):座面付きで疲れたら休める。屋外の長距離向き
意見:BRAINに来られる方でも、「杖だけでは不安だけど歩行器は抵抗がある」という方が多くいらっしゃいます。その場合は「家の中は杖」「外出時は歩行車」のように場面で使い分けることを提案しています。
AFO(短下肢装具)で転倒を減らせる根拠
AFO(短下肢装具)は、麻痺側の足首を支える装具です。つま先が引っかかりやすい方(いわゆる「下垂足」)に特に有効です。
事実:2013年に公開された13の研究をまとめた分析では、AFOを装着することで、立っているときのバランス(Berg Balance Scale)が平均で3.4点改善し、歩行速度と歩幅も改善したと報告されています。根拠:Tyson, 2013。対象者:脳卒中後の方。介入内容:AFO装着あり/なしの比較。効果:立位バランス・歩行速度・歩幅のいずれも向上。
事実:2022年に公開された日本の研究データをまとめた分析(昭和大学横浜市北部病院リハビリセンター)では、AFOを使うことで、足首を上に曲げる動き(背屈)と、左右の足の動きのそろい方(対称性)が改善したと報告されています。根拠:Wada, 2022。日本人を対象にした分析で、日本の臨床現場でも同じ効果が期待できることを示しています。
意見:BRAINでは、「装具は歩けるようになるまでの一時的なもの」と考えず、転倒予防の観点から長期的に活用することを勧めています。歩行が安定している方でも、疲れて集中力が落ちる夕方や、長距離を歩く場面ではAFOの効果が大きいです。
靴選びのポイント
- かかとがしっかり覆われるもの(スリッパ・サンダルは室内でも避ける)
- 靴底は滑りにくく、ほどよい硬さがあるもの
- AFOを使う方は、装具が入るサイズ・形の靴を選ぶ
- マジックテープ・面ファスナーの開閉だと、片手でも履きやすい
- 重すぎる靴は足が上がりにくくなるため避ける
転倒を減らす簡単トレーニング
結論から言うと、運動は脳卒中後の転倒を減らす、最も根拠のある方法のひとつです。ただし、どんな運動でもよいわけではありません。
2021年に公開された13の研究データをまとめた分析(合計1,916名)では、脳卒中後の方に運動を行ったところ、転倒の発生が約27%減少したと報告されています(Yang, 2021)。バランス運動・筋力トレーニング・歩行練習を組み合わせた内容が中心でした。
一方で、2010年に公開された13の研究データをまとめた分析では、運動だけを単独で行った場合に転倒が減った研究は少なく、運動に加えて環境調整や教育などを同時に行うほうが効果的と指摘されています(Batchelor, 2010)。
家でできる3つのトレーニング
トレーニング1:椅子からの立ち座り
- 安定した椅子に腰掛け、両足を肩幅に開きます
- 前のテーブルに手を添え、ゆっくり立ち上がります(3秒かけて)
- ゆっくり座ります(3秒かけて)
- 10回×3セットを目安に、1日1〜2回行います
- 慣れてきたら、手を添えずにできるか挑戦します(後ろに椅子があるので安全)
トレーニング2:台所で片足立ち
- 流し台の前に立ち、両手を台にそえます
- 麻痺していない側の足を少しだけ浮かせ、麻痺側の足で立ちます
- 10〜20秒キープ、3回くり返します
- 反対の足でも同じようにします
- 慣れてきたら、手を台から離す時間を少しずつ延ばします
トレーニング3:後ろ歩き・横歩き
- 手すりや壁に手を添え、後ろ向きに5歩ゆっくり進みます
- 次に、横歩き(カニ歩き)で左右に5歩ずつ進みます
- 前後・左右3往復を目安にします
- 視線は下を見すぎず、前方の壁など一点に合わせます
「2つのことを同時にする」トレーニング
実際の生活では、歩きながら会話したり、何かを考えたりします。これを「二重課題(にじゅうかだい)」と呼びます。日常で転びやすい場面の多くは、この「ながら動作」で起きています。
事実:2018年に公開された84名を対象とした研究では、バランス練習と同時に簡単な計算や記憶課題を組み合わせた「二重課題トレーニング」を行ったところ、6か月後の転倒発生が通常のリハビリ群に比べて約25%減少したと報告されています。根拠:Pang, 2018。対象者:地域で生活する脳卒中後の方。介入内容:バランス+認知課題を同時に行う訓練、8週間。効果:6か月後の転倒数が有意に減少。
事実:2021年に公開された37名を対象とした研究では、トレッドミル歩行に認知課題を組み合わせたトレーニングにより、転倒への自信を表す評価指標(FES)が有意に改善したと報告されています。根拠:Baek, 2021。
家でできる二重課題の例:歩きながら「7の倍数を数える」「しりとりをする」「色の名前を挙げる」。最初は止まってもよいので、慣れてきたら歩行を途切れさせずに行うのが目標です。
「転びそうになっても立て直す」練習
実生活では、誰かにぶつかったり、床が滑ったりと、とっさにバランスを崩す場面があります。このときに一歩踏み出して立て直す力を「リアクティブバランス」と呼びます。
2023年に公開された文献をまとめた分析では、体を意図的に押したり、床を動かしたりして「転びそうな状況」を作り、そこから立て直す練習(外乱応答訓練)を行うことで、とっさのバランスを立て直す力が向上すると報告されています(Brown, 2023)。
この練習は専門家のいない環境で行うと危険です。必ず理学療法士などの指導のもとで行ってください。
転倒への恐怖感を和らげるために
「また転ぶかも」という気持ちは、じつはそれ自体が転倒リスクを高める要因になります(Pin, 2024)。
2023年に公開された11の研究をまとめた分析では、運動プログラムが転倒への恐怖感を和らげる効果がある(中等度の改善、標準化平均差 約-0.58)と報告されています(Chiu, 2023)。小さな成功体験を積み重ねると、自信が回復し、結果として活動量も上がります。
2025年に公開された研究では、高齢者を対象に、短時間・反復的なバランストレーニングでもバランス能力が改善すると報告されています(Medina-Rincón, 2025)。「長時間できないから意味がない」と考えず、1回5〜10分でも継続することが大切です。
・まずは担当の理学療法士・作業療法士にご相談のうえで開始してください。
・強いめまい・胸の痛み・呼吸の苦しさがある日は、運動を控えて医師に相談してください。
・ひとりのときは、必ず近くに椅子・手すり・壁があり、万が一倒れても安全な位置で行ってください。
BRAINの取り組み|転倒予防を「数値」で追う
BRAINでは、転倒予防のリハビリを「なんとなく」で進めることはしません。研究論文で効果が確認された方法を組み合わせ、その効果を国際的に使われている評価指標(ものさし)で数値化して確認していきます。
4つのステップで進める転倒予防
- ステップ1:転倒リスクの要因を特定する
Berg Balance Scale(立位バランスの評価)、歩行速度、片足立ち時間、過去の転倒歴を数値で記録します。さらにお住まいの間取りや、普段の生活動作もヒアリングします。 - ステップ2:エビデンスに基づいて内容を組み立てる
運動(Yang, 2021)、二重課題(Pang, 2018)、装具の活用(Tyson, 2013)、環境調整(Stark, 2021)の4本柱を、その方の状況に合わせて配合します。 - ステップ3:自宅での生活をシミュレーションする
施設内で「浴室に入る」「夜中のトイレ」などの場面をできるだけ再現し、実際の生活で使える動きに落とし込みます。 - ステップ4:再評価で効果を数値で確認する
一定期間ごとに同じ評価指標を測り、改善の有無を数値で確認します。改善していなければ内容を見直します。
実際にBRAINで取り組まれた方の事例
初回評価:Berg Balance Scale 38点(56点満点中)、快適歩行速度 0.6m/秒、片足立ち3秒未満、転倒への恐怖感を示す指標(FES-I)が高値。
エビデンスに基づく介入:
・運動プログラム(Yang, 2021):立ち座り・片足立ち・バランス練習
・二重課題(Pang, 2018):歩きながらの計算・しりとり
・AFOの再調整(Tyson, 2013):つま先の引っかかり対策
・環境調整(Stark, 2021):寝室からトイレへの動線にセンサーライト、浴室のL字手すり追加
を4か月間実施。
再評価:Berg Balance Scale 46点(初回38点 → 4か月後46点)、快適歩行速度 0.9m/秒、片足立ち10秒、FES-Iも低下。
生活の変化:4か月間で転倒ゼロ。ご家族と近所のスーパーまで歩いて買い物に行けるようになりました。
※ これは個人の経験です。回復の経過には個人差があります。
BRAINでも、転倒されていた方の多くが「運動」「装具」「環境」「生活習慣」のどれか1つだけでは不十分で、複数を組み合わせて初めて転倒がゼロに近づくケースを何度も経験しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 転んでしまったら、まず何をすべきですか?
頭を打ったかどうかを最優先で確認してください。頭を打った場合や、頭痛・吐き気・意識のもうろうがある場合はすぐに救急要請(119番)を検討してください。立ち上がれない、足に体重をかけられないときは骨折の可能性があるため無理に動かず、救急相談ダイヤル(#7119)や主治医に連絡してください。ケガがなさそうに見えても、転倒はバランス能力が下がっているサインなので、担当の療法士や医師に必ず報告しましょう。
Q. 転倒予防の運動は、毎日しないと意味がないですか?
毎日である必要はありませんが、「週に2〜3回以上」を目安に続けることが大切です。2021年に公開された13の研究をまとめた分析では、週2〜3回以上・数か月間の継続で転倒の減少が確認されています(Yang, 2021)。短時間でもよいので、継続できる頻度から始めてください。
Q. 手すりは賃貸でも取り付けられますか?
賃貸住宅でも、工事不要の「据え置き型手すり」や「突っ張り式手すり」が使えます。介護保険の「福祉用具レンタル」の対象になる製品も多く、月額数百円程度から利用できます。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。
Q. 装具(AFO)は一生着けないといけませんか?
必ずしも一生ではありません。足の機能が改善すれば、より軽い装具に切り替えたり、屋内では外したりすることも可能です。ただし、「転倒予防」の観点では、歩行が安定している方でも長距離・疲れる場面ではAFOが有効です(Tyson, 2013、Wada, 2022)。担当の理学療法士や医師と相談しながら、段階的に調整してください。
まとめ
- 脳卒中後の転倒の多くは家の中で起きており、特に浴室・トイレ・寝室・玄関がリスクの高い場所です
- 片麻痺・バランス障害・感覚障害・注意の低下・恐怖感など、複数の要因が重なって転倒が起きます
- 住宅改修を中心とした環境調整で、転倒は約21〜38%減ることが報告されています
- AFOは立位バランス(約3.4点)と歩行を改善し、日本人対象の分析でも効果が確認されています
- 運動プログラムは転倒を約27%減らし、二重課題を組み込むとさらに効果的です
- 環境・運動・装具・生活習慣の4本柱を組み合わせることが、転倒予防のカギです
次にやるべきこと:まずは夜中にトイレへ行く動線を、今夜チェックしてみてください。暗くないか、つまずく物がないか、手すりがない場所はないか。そこが最初の改善ポイントです。
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最終医療レビュー日:2026年4月17日
参考文献
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- Abdollahi M, et al. Fall risk assessment in stroke survivors: A systematic review. Front Bioeng Biotechnol. 2022;10:910698. PMID: 36003532
- Goto Y, et al. Incidence and circumstances of falls among community-dwelling ambulatory stroke survivors: A prospective study. Geriatr Gerontol Int. 2019;19(3):240-244. PMID: 30623545
- Walsh ME, et al. Fall risk factors and falls prevention tools among stroke survivors: a systematic review. J Epidemiol Community Health. 2016;70(5):513-519. PMID: 26767405
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最終更新:2026年4月

