「PubMedで検索したら200件以上ヒットした。どこから手をつければいいんだろう?」

文献検索でヒットした数十〜数百件の論文を、全部読む時間はありません。

そこで必要になるのが「スクリーニング」——読む価値がある論文と、そうでない論文を2段階で選別するプロセスです。

スクリーニングをしっかり行わないと、関係のない論文を大量に読んで時間を無駄にしたり、逆に重要な論文を見落として誤った結論を出したりするリスクがあります。

本記事では、PT・OT・STが日常的なEBP実践でスクリーニングを正確に行えるよう、一次スクリーニング(タイトル・抄録での選別)と二次スクリーニング(全文での選別)の2段階を体系的に解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事はPRISMA 2020(Page MJ et al., BMJ 2021)・PRISMA-LSR(BMJ 2024)・Rayyan(Ouzzani et al., Syst Rev 2016)等、システマティックレビュー方法論の国際標準文献に基づいて解説しています。

本記事の結論

  • スクリーニングは一次(タイトル・抄録)と二次(全文)の2段階で行う
  • 一次スクリーニングでは研究デザイン・対象者・介入が取り込み基準に合うかを素早く判断する
  • 二次スクリーニングでは全文を読み、除外理由を明確に記録する
  • PRISMA 2020に準拠したフロー図を作成することで、選別プロセスの透明性が高まる
  • RayyanなどのAIツールは補助として活用できるが、最終判断は必ず人間が行う

論文スクリーニングとは|2段階で論文を絞り込む

論文スクリーニングとは、文献検索でヒットした候補論文の中から、自分の臨床疑問(PICOまたはPECO)に合致する論文を選び出す作業のことです。

スクリーニングは大きく2段階に分かれています。

第1段階の「一次スクリーニング」では、論文のタイトルと抄録(アブストラクト)だけを見て、取り込み基準・除外基準に照らし合わせます。

第2段階の「二次スクリーニング」では、一次スクリーニングを通過した論文の全文(フルテキスト)を読み、より詳細な基準で最終的な採否を判断します。

この2段階構造があることで、最初から全ての論文を全文精読するよりもはるかに効率よく、かつ再現性のある方法で文献選別ができるようになります。

なお、スクリーニングは取り込み除外基準を事前に定めておくことが大前提です。

取り込み除外基準の作り方については、取り込み除外基準の設定方法の記事で詳しく解説しています。

なぜスクリーニングが必要か|PubMed検索結果の膨大さ

たとえば「脳卒中 上肢 課題指向型トレーニング」というテーマでPubMedを検索すると、数百件単位でヒットすることは珍しくありません。

PubMedの使い方についてはPubMedの使い方の記事を参照していただけますか。

これら全てを最初から全文で読もうとすると、膨大な時間がかかります。

しかも、ヒットした論文の多くは自分の臨床疑問とは微妙にずれていたり、研究デザインが目的に合わなかったりします。

スクリーニングを2段階で行うことで、最終的に精読すべき論文を10〜30件程度に絞り込み、EBP実践の効率を大幅に高めることができます。

論文検索の全体像は論文検索7ステップの記事でまとめていますので、流れを把握したい方はそちらも参照していただけますか。

一次スクリーニング|タイトル・抄録での選別

論文スクリーニング2段階フロー:検索結果200件から一次スクリーニング(タイトル・抄録判定)40件、二次スクリーニング(全文判定)を経て最終採用10件まで
一次・二次スクリーニングの2段階フロー

一次スクリーニングは、論文のタイトルと抄録だけを見て「この論文は全文を読む価値があるか」を判断するプロセスです。

一次スクリーニングで確認する主な項目は以下の4点です。

①研究対象者は自分のPICOに合っているか

たとえば「慢性期脳卒中患者の上肢機能」をテーマにしているなら、急性期患者や脊髄損傷患者を対象にした論文は除外します。

PICO・PECOの設定方法についてはPICO/PECOの設定方法の記事で詳しく解説しています。

②介入または曝露は一致しているか

「課題指向型トレーニング」を調べているのに、電気刺激単独の研究であれば除外の対象になります。

ただし、タイトルや抄録だけでは介入の詳細が判断しにくい場合もあります。

その場合は「全文確認」のフラグを立て、一次スクリーニングの段階では積極的に除外しないほうが安全です。

③アウトカムは自分の疑問に関連しているか

上肢機能の改善を調べたいのに、QOLや生活満足度のみを測定している論文は、一次スクリーニングで除外候補になります。

④研究デザインは取り込み基準を満たしているか

RCT(無作為化対照試験)のみを対象にすると事前に決めているなら、症例報告や横断研究はタイトルだけで除外できます。

一次スクリーニングの重要なルールは「迷ったら残す」です。

タイトルや抄録では判断が難しい場合、安易に除外すると本来採用すべき重要論文を見落とすリスクがあります。

不明確な論文は二次スクリーニングに回す習慣をつけることで、見落としを防ぐことができます。

一次スクリーニングと二次スクリーニングの違い
項目一次スクリーニング二次スクリーニング
読む対象タイトル+抄録のみ全文(フルテキスト)
判断の粒度大枠(PICO一致・研究デザイン)詳細(取り込み除外基準フル適用)
所要時間/論文1分前後10〜30分
通過率の目安10〜30%30〜70%
重要ルール迷ったら残す除外理由を明確に記録する

二次スクリーニング|全文での選別

PRISMA 2020準拠の二次スクリーニング除外理由:対象者不一致・介入不一致・アウトカム不一致・データ不十分・重複論文の5カテゴリ別件数
PRISMA 2020準拠 除外理由カテゴリ別件数

二次スクリーニングは、一次スクリーニングを通過した論文の全文(フルテキスト)を入手して精読し、最終的な採否を決定するプロセスです。

二次スクリーニングでは、一次スクリーニングよりも詳細な基準で判断を行います。

全文取得の方法

PubMedでオープンアクセスの論文であれば、そのままPDFをダウンロードできます。

有料論文は所属機関のライブラリ経由で入手するか、著者に直接メールで依頼する方法があります。

著者メール依頼は「Request PDF」とPubMedのリンクを添えて送ると、多くの場合数日以内に返信があります。

全文で確認すべき項目

二次スクリーニングでは以下の項目を全文で確認します。

  • 対象者の選択基準・除外基準の詳細(発症後期間・重症度・合併症など)
  • 介入プロトコルの詳細(頻度・強度・期間・内容)
  • 評価指標と測定時点(介入直後のみか、追跡期間があるか)
  • サンプルサイズと統計解析方法
  • バイアスリスク(randomization、allocation concealment、blindingなど)

除外理由の記録

二次スクリーニングで最も重要なのは、除外した論文について「なぜ除外したか」を明確に記録することです。

PRISMA 2020では、全文確認後に除外した論文について、除外理由ごとの件数を報告することが求められています。

主な除外理由のカテゴリとしては、対象者不一致・介入不一致・アウトカム不一致・データ不十分・重複論文などが挙げられます。

この記録を残しておくことで、後から自分のスクリーニングプロセスを見返したり、他者が再現したりすることができます。

PRISMA 2020準拠のフロー記録

スクリーニングのプロセスを透明性高く報告するための国際標準が「PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)」です。

2021年にBMJに掲載されたPage MJらによる論文(Page MJ et al, 2021)では、PRISMA 2020として改訂版のガイbダンスが提示されました。

PRISMA 2020では、スクリーニングプロセスを「フロー図」として視覚化することが推奨されています。

PRISMA 2020フロー図の構成要素

PRISMAフロー図には、以下の数値を記録します。

  • データベース検索でヒットした件数(データベース別)
  • 重複除去後の件数
  • 一次スクリーニング(タイトル・抄録)後の除外件数と残件数
  • 全文確認対象件数と除外件数(除外理由別)
  • 最終採用件数

たとえば脳卒中上肢介入のレビューであれば「PubMed 180件、CENTRAL 45件 → 重複除去後220件 → 一次スクリーニング後40件 → 全文確認後採用12件」のような流れが記録されます。

なお、2024年にBMJに掲載されたPRISMA-LSRは、継続的に更新される「リビングシステマティックレビュー」に特化した拡張版(PRISMA-LSR Working Group, BMJ 2024)、同じ検索式を定期的に再実行してスクリーニングをアップデートする場面に対応しています。

リハビリ分野でも、Evidence-based practiceを継続的に行う際にはこの概念が参考になります。

スポーツ・運動領域での実装事例

2022年にBr J Sports Medに掲載された論文では、スポーツ・運動領域でのPRISMA 2020の27項目の実装方法が具体的に示されています(Br J Sports Med, 2022)

リハビリテーション分野でのシステマティックレビューにも共通して応用できる内容なので、参考にしていただけますか。

複数評価者によるスクリーニング|カッパ係数と不一致の解消

システマティックレビューでは、スクリーニングを複数の評価者が独立して行うことが推奨されています。

一人だけで判断すると、見落としや主観的バイアスが入りやすくなります。

カッパ係数とは

複数評価者間の一致度を数値化する指標が「カッパ係数(Cohen’s kappa coefficient)」です。

カッパ係数は0〜1の値をとり、0.6以上で「十分な一致」、0.8以上で「ほぼ完全な一致」と解釈されます(値が1に近いほど一致度が高い)。

スクリーニングでは、2人の評価者がそれぞれ独立して「採用・除外・不明」を判断し、その結果を照合してカッパ係数を算出します。

不一致が生じた場合の対処法

2人の判断が異なった論文は「不一致論文」として別途リストアップします。

解消方法は①2人の議論による合意形成、または②第三者(第3評価者)の判断を最終決定とする、の2通りが一般的です。

臨床現場の1人のセラピストがEBP目的でスクリーニングを行う場合は、2人体制が難しいこともあります。

その場合でも「期間をあけて2回スクリーニングする」「判断が難しい論文はメモを残す」といった工夫で、一定の再現性を確保できます。

AI支援スクリーニング|RayyanとNotebookLMの活用と限界

近年、スクリーニング作業をAIで補助するツールが普及しています。

Rayyanとは

Rayyanは、システマティックレビューのスクリーニングに特化したウェブ・モバイルアプリです。

2016年にSyst Rev誌に掲載されたOuzzaniらの論文(Ouzzani M et al, 2016)でその有用性が報告されており、現在では世界中のシステマティックレビュー研究者に使われているツールです。

Rayyanの主な機能は以下の通りです。

  • PubMedやCINAHLなど複数データベースの検索結果を一元管理
  • 複数評価者が共同でスクリーニングを行う機能(互いの判断を隠す「ブラインドモード」)
  • AI機能による「採用可能性スコア」の提示(参考値として活用)
  • ラベル付けやコメント機能で不一致論文を管理

NotebookLMでの活用

GoogleのNotebookLMは、複数の論文PDFをアップロードして横断的に情報を整理・検索できるツールです。

スクリーニング後の採用論文群をNotebookLMに読み込み、「この論文群の中で慢性期脳卒中患者を対象にしたものはどれか」などと問いかけることで、内容確認の効率を上げられます。

NotebookLMを活用した論文管理の詳細はNotebookLMを使った論文スクリーニングの記事で解説しています。

AIツール活用の限界と注意点

AI支援ツールはスクリーニングの効率化に役立ちますが、以下の点に注意が必要です。

まず、AIの「採用スコア」や「要約」はあくまで参考情報であり、最終的な採否判断は必ず人間が行います

次に、AIは抄録の表面的な語句に反応するため、取り込み基準の細かいニュアンス(たとえば「発症6ヶ月以上」という条件)を正確に判定できないことがあります。

また、AI生成の要約が原文と微妙に異なる場合があるため、判断に使う情報は必ず原文で確認します。

よくある失敗3パターン

失敗パターン①:基準を後から変える

スクリーニング中に「この論文を入れたいから基準を変えよう」と後付けで基準を修正するのは、EBPの大原則に反します。

取り込み除外基準は検索前に確定させ、スクリーニング開始後は変更しないことが原則です。

どうしても基準を変更する場合は、変更した理由と変更前後の基準を記録に残します。

失敗パターン②:除外理由を記録しない

「なんとなく関係なさそうだから除外」では、後から自分のスクリーニングを見直したときに根拠が不明になります。

除外した論文には必ず「対象者不一致」「介入不一致」などのカテゴリを記録する習慣をつけます。

簡単なExcelシートやスプレッドシートで管理するだけでも、後の振り返りに大きく役立ちます。

失敗パターン③:一次スクリーニングで厳しく絞りすぎる

一次スクリーニングの段階で厳しく絞りすぎると、重要な論文を見落とすリスクが高まります。

一次スクリーニングの目的は「明らかに関係ない論文を除外する」ことであり、「完璧に絞り込む」ことではありません。

判断に迷う論文は二次スクリーニングに回す「迷ったら残す」のルールを守ることが重要です。

まとめ

論文スクリーニングは、EBP実践において文献検索と同じくらい重要なステップです。

一次スクリーニング(タイトル・抄録)と二次スクリーニング(全文)の2段階で行い、各段階で除外理由を記録することで、透明性の高い文献選別ができます。

PRISMA 2020に準拠したフロー図を作成することで、自分のレビュープロセスを整理できるだけでなく、将来的に研究として発表する際にも活用できます。

AIツール(RayyanやNotebookLM)は効率化に役立ちますが、最終判断は人間が行うことを忘れずにいていただけますか。

スクリーニングを正確に行うことで、最終的に精読すべき論文が明確になり、エビデンスの質評価や統合へとスムーズに進むことができます。

EBPの基本的な流れを体系的に学びたい方は、論文検索7ステップの記事もあわせて参照していただけますか。

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