BRAINで脳卒中EBPプログラムという6ヶ月のオンライン学習プログラムを運営しています。

その中で言語聴覚士さん向けの「嚥下・高次脳機能障害コース」があり、海外で行われている失語症のリハビリについてシステマティックレビューを行い、まとめています。

システマティックレビューをやっている中で、2017年にLancetに掲載されたランダム化比較試験を見つけました。

失語症を持つ慢性期の脳卒中患者さんに対する、集中的言語聴覚療法の効果を調べた研究です。

みなさまご存知の通りだと思いますが、LancetはJAMA、BMJ、NEJMと並び、世界四大医学雑誌と呼ばれる、国際的に信頼されている医学雑誌です。

リハビリ系の論文がLancetに掲載されるというのは珍しいので読んでみたのですが、その研究の中でANELTというアウトカム指標が使われていました。

Lancetに掲載された貴重な研究ですが、ANELTというアウトカム指標がわからないと読解できないので、今回はANELTについて紹介します。

ANELTは日常生活におけるコミュニケーションを評価する検査

ANELTの正式名称は、Amsterdam-Nijmegen Everyday Language Test です。

“Everyday Language Test”という名前の通り、日常生活におけるコミュニケーション能力を評価するものです。

失語症の検査としては国内ではStandard Language Test of Aphasia(SLTA)が、海外ではWestern Aphasia Battery(以下、WAB)、Aachen Aphasia Test (以下、AAT)がよく使われます。

これらは失語症の重症度やタイプを分類するための検査です。

成績が良くなれば失語症がよくなっていることを示します。

ただ、失語症がよくなったからといって日常生活でうまくコミュニケーションを取れるようになるとは限りません。

検査上、成績はよくなっているけど日常生活は変わっていない、というケースもあります。

これは理学療法領域でも作業療法領域でも同じことがあります。

例えば、歩行速度が速くなったからといって、日常生活で外出できるようになるとは限らないですし、あるいは麻痺手の運動機能が良くなったからといって、日常生活で麻痺手を使えるようになるとは限りません。

このように、ICFでいう心身機能・身体構造レベルと活動・参加レベルは解離することがあります。

結局、日常生活が変わらなければ意味がないので、心身機能・身体構造レベルの検査・測定とともに活動・参加レベルの検査・測定も行い、ちゃんと生活が変わったのかを評価する必要があります。

なので、歩行であれば歩行速度だけでなくFunctional Ambulation Category(以下、FAC)をとる必要がありますし、麻痺手であればFugl-Meyer AssessmentだけでなくMotor Activity Log(以下、MAL)をとる必要があります。

この構図が失語症においても当てはまります。

WABやAATが心身機能・身体構造レベルの検査・測定で、ANELTが活動・参加レベルの検査・測定です。

Communicative Abilities of Daily Living (以下、CADL)というアウトカム指標がありますが、このCADLと似ています。

ANELTの中身を紹介

では、ANELTの中身を紹介します。

医療者が10項目の質問を行い、それに対する患者さんの回答をもとに、点数をつけます。

10項目の質問を紹介します。

脳卒中EBPプログラム「嚥下・高次脳機能コース」資料より抜粋

これらの質問に対する回答に対し、0・1・2・3・4・5の6段階の点数づけを行います。

0が重度であることを示し、5が問題ないことを示します。

ANELT-AとANELT-Bという2種類のスコアシートを使い、各シートで0点が最低点、50点が最高点になります。

ANELT-Aは、患者さんの言語表出について「発言内容を解釈できるか?」そしてANELT-Bは「発言された単語は明確に理解できるか?」を基準に点数づけを行います。

結局、日常生活が変わったのか?という視点を

まとめます。

● ANELTの正式名称は、Amsterdam-Nijmegen Everyday Language Test
● ANELTは日常生活におけるコミュニケーション能力の検査
● WABやAATに加え、ANELTのような検査をとることが大事

職種に問わず言えることですが、心身機能・身体構造レベルの検査・測定だけでなく、日常生活でどう変わったのかをしっかり評価していきましょう!

本日は「日常生活でのコミュニケーション評価:ANELTを紹介」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

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