反張膝というのは、膝を真っ直ぐ伸ばしたときに過伸展位、つまり膝が反り過ぎる状態になることです。

脳卒中の患者さんは、下肢の支持性を得るために膝関節を過伸展させることがあります。

結果として、反張膝が痛みを誘発してしまったり、膝が伸展しすぎて逆方向に変形してしまうことにつながったりします。

ですので反張膝を改善させるためのリハビリは、脳卒中患者さんの歩行に関わるセラピストにとっては重要な知識、技術です。

今回は、脳卒中後の歩行の反張膝に対するリハビリについて、2件のランダム化比較試験を紹介させていただきます。

固有感覚トレーニング

1件目の研究は、Dalal KK (2018) のランダム化比較試験です。

この研究は「固有感覚トレーニング」が脳卒中患者さんの反張膝を改善させるかどうか調べたものです。

固有感覚トレーニングという名前がついていますが、実際はスクワット動作をやっています。

おそらく、スクワット動作の中で固有感覚情報を脳に送る、という意味で固有感覚トレーニングとしているのだと思います。

この研究では、反張膝がある脳卒中患者さんに対し、通常理学療法を45〜60分、スクワットエクササイズを15〜20分、それを6セッション行った時の反張膝の変化を、3次元動作解析機を使用して検証しています。

スクワットエクササイズの中身は、スクワット、片足立ち、片足スクワット、フォームマットに立っての片足スクワット、最小15°から最大45°の両側膝屈曲を維持した歩行練習、でした。

結果として、脳卒中患者さんの歩行中の反張膝を4〜5° 程度改善させました。

また、この研究では対照群に標準的理学療法のみ群が設定されていたのですが、対照群と比較すると、スクワットエクササイズを加えた群の方が大きい改善を示しました。

このことから、スクワットエクササイズ(固有感覚トレーニング)は反張膝の改善に有効であることが示されています。

インソール

2件目の研究は、Ferreira LAB (2018) のランダム化比較試験です。

この研究は、インソールが脳卒中患者さんの反張膝を改善させるかどうか調べたものです。

平均年齢60歳くらいの慢性期の脳卒中患者さんに対して、内反足用インソールを3ヶ月装着した状態で日常生活を送ったり、理学療法を受けてもらいました。

なお、理学療法の内容はストレッチ、筋トレ、バランス練習とされています。

結果として、インソール着用により裸足歩行における足関節背屈角度、膝関節屈曲角度が拡大する、つまり反張膝が改善することを報告しています。

また、対照群にはプラセボインソールが装着された群が設定されていましたが、足関節背屈と膝関節屈曲角度はプラセボインソール群よりも大きく拡大していました。

このことから、内反足用インソールを3ヶ月着用することも反張膝を改善させることが示されています。

まとめると、反張膝を改善させるリハビリ方法として6セッションのスクワットエクササイズ、3ヶ月の内反足用インソール、がある、ということです。

ちなみに、システマティックレビューもあります。

ですが、私の知る限り最新のシステマティックレビューは2010年に出版されたBleyenheuft Cらの研究が最新で、そのシステマティックレビューに取り込まれた研究論文も、1992年の研究が最新という結果になっていました。

流石に30年前の医療と現状の医療は状況が異なっており患者さんへエビデンスを適用するときの非直接性の問題が大きくなると考え、今回は2018年のランダム化比較試験を紹介させていただきました。

システマティックレビューの方はまた機会がありましたら紹介させていただきます。

急性期や回復期では止むを得ず反張膝を許容することもあると思いますが、慢性期まで膝関節過伸展位の歩行を続けていると、膝関節が逆方向へ曲がってしまうような変形を起こすことがあります。

当然ながら痛みが出てきて、歩けなくなる、歩きにくくなることにつながりますので、反張膝へのケアは歩行に関わるセラピストにとってはとても大事なことだと思います。

今回は「脳卒中後の歩行の反張膝に対するリハビリと効果」というテーマで話をさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Dalal KK, Joshua AM, Nayak A, Mithra P, Misri Z, Unnikrishnan B. Effectiveness of prowling with proprioceptive training on knee hyperextension among stroke subjects using videographic observation- a randomised controlled trial. Gait Posture. 2018 Mar;61:232-237.

Ferreira LAB, Cimolin V, Neto HP, Grecco LAC, Lazzari RD, Dumont AJL, Galli M, Oliveira CS. Effect of postural insoles on gait pattern in individuals with hemiparesis: A randomized controlled clinical trial. J Bodyw Mov Ther. 2018 Jul;22(3):792-797.

Bleyenheuft C, Bleyenheuft Y, Hanson P, Deltombe T. Treatment of genu recurvatum in hemiparetic adult patients: a systematic literature review. Ann Phys Rehabil Med. 2010 Apr;53(3):189-99.