脳卒中患者さんへホームエクササイズを提案されていますか?

日本の場合、生活期の脳卒中患者さんはよくならない、というのが定説ですよね。

ですが、世界的には生活期(発症6ヶ月以降)の患者さんに対し、リハビリを行うことで何らかのアウトカムが改善したという報告はたくさんあります。

つまり、本当はもっとよくなるはずなのに良くなれない患者さんがいる可能性があるということです。

その要因のひとつにリハビリの量があります。

日本では、生活期の個別リハビリは、医療保険の外来リハビリか介護保険の訪問リハビリになります。

これによりリハビリの機会は週1回〜週3回になります。

また、週3回にすると1回あたりの時間が20〜40分になるため、まとまった時間を確保できません。

海外で生活期の脳卒中患者さんのアウトカムが改善したと報告しているランダム化比較試験はたくさんありますが、多くの研究は週3〜5回、1回あたり60分以上行っているものが多いです。

つまり、日本ではリハビリの量が少ないせいで良くなる機会が奪われてしまっている可能性があります。

そして、量を確保するための手段のひとつにホームエクササイズがあります。

所謂、自主トレーニングですが、みなさん活用されていますでしょうか?

あまり効果を感じないので提案しない、というセラピストが多いのではないかと思います。

ですが、脳卒中リハビリにおいては、ホームエクササイズの有効性がシステマティックレビューやランダム化比較試験で報告されています。

例えば、Vloothuis JDら(2016)のコクランレビューでは、脳卒中患者さんに対するホームエクササイズは外来リハビリなどと比べて、次のアウトカムで同等の効果であることを報告しています。

● ADL(BADL、IADLどちらも)
● 介護負担感
● 歩行能力(歩行速度、歩行距離)
● 上下肢運動機能
● 日常生活での上肢の使用量(MALAOU)
など

また、次のアウトカムではホームエクササイズの方が効果的であることを報告しています。

● バランス
● 上肢の日常生活での使用の質(MALQOM)
など

このように、大局的にみたときにはホームエクササイズは有効であることが報告されています。

生活期の患者さんに対してホームエクササイズを有効活用すれば、外来リハビリを行うくらいの効果を期待できそうです。

今回は、歩行とバランスにおいて、ホームエクササイズ が外来リハビリと同じくらい効果的だったという研究を紹介します。

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Nordin NAM (2019)のランダム化比較試験

まずはNordin NAM (2019)のランダム化比較試験の概要を紹介します。

この研究では慢性期の脳卒中患者さん91人を、2つのグループに分けました。

ひとつ目のグループは「ホームエクササイズ 」グループです。

運動のホームエクササイズと、認知機能のホームエクササイズ を行なっています。

運動のホームエクササイズにはストレッチング、バランス練習、上肢のエクササイズ、歩行、部屋の掃除などが含まれています。

認知機能のホームエクササイズ にはクロスワード、ジグソーパズル、読書、日記を書く、などが含まれています。

運動のホームエクササイズは週3回以上、認知機能のホームエクササイズは週1回以上行うよう指示されていました。

1回あたり45〜60分、12週間実施しています。

もうひとつのグループは「外来リハビリ」グループです。

こちらのグループは外来リハビリで有酸素運動、サーキットトレーニングなどを1回2時間、週1回、12週間実施しています。

アウトカムとしてBerg Balance Scale(以下、BBS)や歩行速度などが取られています。

ホームエクササイズ は外来リハビリと同等の効果

結果として、両グループともにバランス(BBS)、歩行速度が向上しました。

また、グループ間の統計的な有意差はありませんでした。

つまり、バランス能力や歩行速度に対してはホームエクササイズ と外来リハビリは同等の効果があったことを示しています。

ホームエクササイズを有効活用し、生活期の患者さんの支援を!

まとめます。

● 日本では生活期の脳卒中患者さんがリハビリの量が少ないために良くなるはずなのによくなれないという可能性がある
● ホームエクササイズはエビデンスレベルの高い研究で有効性が報告されている
● バランス・歩行に対する週3回以上のホームエクササイズは週1回の外来リハビリとおよそ同等の効果

自主トレで効果を感じられないのは、自主トレの中身や時間、頻度などのせいかもしれません。

しっかりやれば効果は期待できますので、よかったらホームエクササイズ の提案について検討してみてください!

参考文献

Vloothuis JD, Mulder M, Veerbeek JM, Konijnenbelt M, Visser-Meily JM, Ket JC,
Kwakkel G, van Wegen EE. Caregiver-mediated exercises for improving outcomes after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Dec 21;12:CD011058.

Nordin NAM, Aziz NA, Sulong S, Aljunid SM. Effectiveness of home-based carer-assisted in comparison to hospital-based therapist-delivered therapy for people with stroke: A randomised controlled trial. NeuroRehabilitation. 2019;45(1):87-97.