コロナ禍で自宅から出る機会が減った、という方は多いのではないでしょうか。

これが若い人とか健常者であればまだ自分で運動の機会を作ったりできますが、高齢者や障害のある患者さんはリハビリの機会が少なくなっているはずです。

お医者さんの領域では遠隔診療が試験的に開放されていたりしますし、リハビリの領域でも遠隔リハビリを行っているクリニックや民間の会社もあります。

また、先生方も患者さんから「遠隔リハビリってどうなの?」と聞かれることもあるのではないでしょうか。

本記事では、2020年に出版されたLaver KE (2020) のコクランレビューを参考に、遠隔リハビリの効果について考えたいと思います。

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Laver KE (2020) のコクランレビューの概要

まず、Laver KE (2020) のコクランレビューの概要を紹介します。

研究のリサーチクエスチョンは「脳卒中患者さんに対する遠隔リハビリは、対面リハビリや通常ケアと比べて、日常生活の自立度やバランス、上肢機能などに有効であると言えるか」でした。

対象になった研究デザインは、ランダム化比較試験でした。

最終検索日は2018年9月で、使用された電子データベースはCENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、REHABDATAなど、複数のデータベースが使用されていました。

2018年9月なので、コロナ前に発表されていた論文が取り込まれていることになります。

これから結果について紹介するのですが、コロナ禍で遠隔リハビリのランダム化比較試験はたくさん増えています。

そちらについても今後紹介したいと思いますが、本日紹介するのは、コロナ前に発表されていた論文を集めて解析した結果であるということにご注意ください。

最終的にメタアナリシスに取り込まれた研究数は14件でした。

それではメタアナリシスの結果についてお伝えします。

対面リハビリと同等の効果と言えるが…

メタアナリシスは大きく2種類行われていました。

1つ目は「遠隔リハビリ vs 対面リハビリ」で、2つ目は「遠隔リハビリ vs 通常ケア」です。

「遠隔リハビリ vs 対面リハビリ」では、対面リハビリと比べて遠隔リハビリの方が効果が高いか、あるいは低いか、それとも同等の効果なのかを判断するわけですが、対面リハビリと同等以上の効果なのであれば、対面リハビリよりも遠隔リハビリの方がいいよね、と言えます。

コロナ禍で出歩くのが嫌だ、という患者さんに対しては、「遠隔リハビリは対面リハビリと同じくらいかそれ以上の効果が期待できるので、遠隔でもいいですよ」と言えるからです。

こちらの結果ですが、日常生活動作の自立度、バランス、上肢の運動機能の3つのアウトカムに対しては、遠隔リハビリは対面リハビリと同等の効果、という結果になりました。

なお、このメタアナリシスに取り込まれた個々の研究を見てみると、Virtual Realityや電気刺激など、特殊なデバイスを使っている研究が多いです。

なので、私たち一般のセラピストがこれを再現することは難しいかもしれません。

そして、2つ目の「遠隔リハビリ vs 通常ケア」の結果です。

「遠隔リハビリ vs 通常ケア」の結果としては、日常生活動作の自立度、移動性、上肢の運動機能などのアウトカムに対して、優位性を示しませんでした。

通常ケア、というのは “研究による介入はしませんが、病気の予防または治療のために患者さんが受ける日常的なケアは受けていいですよ” ということを意味します。

例えば、高血圧の薬を飲むとか、自分で毎日ウォーキングするとか、そういう習慣を元々持っている人いますよね。

そういう人には研究に参加してもらうけど、研究に参加することでそういった普段からしている、通常で行っているケアを継続してもらって構いません、というのが通常ケアです。

なので、普通の日常生活を送っているだけ、ということになるのですが、これと比べて遠隔リハビリが日常生活動作の自立度、移動性、上肢の運動機能などのアウトカムに対して、優位性を示さなかったというのは、「遠隔リハビリをやってもやらなくても変わりませんよ」という解釈もできます。

この2つ目の「遠隔リハビリ vs 通常ケア」のメタアナリシスに含まれた個々の研究では、看護師さんが電話で状況確認しているとか、そういうものが多いので通常ケアと比べて優位性を示さなかった、という可能性があります。

もしかしたら、1つ目の「遠隔リハビリ vs 対面リハビリ」に含まれた研究と同様に、ゴリゴリにデバイスを使ったり、しっかり運動を促す介入をしているのであれば効果の優位性が示されることになったかもしれないです。

まとめると、

①脳卒中患者さんに対する遠隔リハビリは、通常ケアや対面リハビリと比べて日常生活動作の自立度、移動性、上肢の運動機能などのアウトカムに対して優位性を示さなかった
②何らかのデバイスを使うなどして、患者さんに運動をしっかり促すことができれば結果が変わるかもしれない

となります。

2020年以降のランダム化比較試験を含めれば結果が変わるかも

個人的には、遠隔リハビリは、効果があるのであれば積極的に推進していきたいと思います。

一方、今回紹介したコクランレビューでは対面リハビリと同じような効果を期待するためにはデバイスを使わないといけないとか、再現性が低そうです。

私たち一般のセラピストが遠隔リハビリを行うとしたらZOOMなどのビデオ通話を患者さんとつないで課題指向型訓練を行うとか、家族の方に付き添ってもらってバランス練習や歩行練習をする、というような形式になると思います。

今回紹介したコクランレビューにはそういった介入の効果を検証したものがほとんど入っていなかったので、私たちができる遠隔リハビリが有効かどうか、という点はまだなんとも言い難いです。

ただ、先にもお伝えしましたが、コロナ禍で遠隔リハビリのランダム化比較試験は増えています。

その中で私たちが再現可能な遠隔リハビリの研究もあるので、そちらについてはまた別の機会で紹介させていただこうと思います。

参考文献

Laver KE, Adey-Wakeling Z, Crotty M, Lannin NA, George S, Sherrington C. Telerehabilitation services for stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Jan 31;1(1):CD010255.