
失語症のリハビリは、言語療法を続けることで多くの方の会話やコミュニケーションが改善します。
言葉が出にくい、人の話が理解しにくい――。
そんな失語症(しつごしょう)の症状に、不安を感じている方やご家族は少なくありません。
この記事は、脳卒中(脳梗塞・脳出血)のあとに失語症がある方と、そのご家族に向けた内容です。
回復率や経過、自宅でできる失語症 リハビリの方法、家族の声かけのコツまで、わかりやすく解説します。
この記事は、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて執筆しています。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
失語症の改善には、ご本人やご家族に合った言語リハビリを続けることが大切です。
BRAINではご自宅からオンラインで受けられる言語リハビリを提供しています。
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・Face(顔):顔の片側がゆがむ、下がる
・Arm(腕):片方の腕に力が入らない、上がらない
・Speech(言葉):言葉が出ない、ろれつが回らない、話が通じない
・Time(時間):ひとつでも当てはまれば、すぐに119番
すでに脳卒中を発症された方で、急に言葉の症状が悪化した場合も、早めにかかりつけ医にご相談ください。
失語症とは?運動性・感覚性などのタイプ
失語症は、脳卒中によって言葉に関わる脳の領域が傷つくことで起こる症状です。
言葉が出にくくなったり、人の話を理解しにくくなったりして、コミュニケーションに影響が出ます。
失語症は大きく以下の3つのタイプに分かれます。
運動性失語(ブローカ失語=うまく話せないタイプ)
運動性失語は、言葉が出にくくなるタイプの失語症です。
医学的には「ブローカ失語」とも呼ばれます。
人の話は比較的よく理解できる一方で、自分の言いたい言葉がなかなか出てこないのが特徴です。
頭の中では言いたいことがはっきりしているのに、口から言葉にならず、もどかしさを感じる方が多くいらっしゃいます。
感覚性失語(言葉を理解しにくいタイプ)
感覚性失語は、言葉を理解することが難しくなるタイプの失語症です。
言葉自体はなめらかに出るものの、相手の話や自分の言い間違いに気づきにくいのが特徴です。
混合性失語・その他のタイプ
混合性失語は、話すことも理解することも難しくなるタイプです。
このほかにも、伝導失語や健忘失語(物の名前が出にくいタイプ)などがあります。
失語症は、タイプや脳の傷の程度によって表れ方が大きく異なる、複雑な症状です。
失語症は、言葉の問題だけでなく、社会的な孤立や気分の落ち込み、生活の質(QOL)にも影響します。気持ちの面については脳卒中後のうつ・無気力とご家族の支え方でくわしく解説しています。
失語症の主なタイプ
| タイプ | 話す | 理解する | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|
| 運動性失語(ブローカ失語) | 言いたい言葉が出にくい | 比較的よく理解できる | うまく話せないタイプ |
| 感覚性失語 | 言葉はなめらかに出る | 話や言い間違いに気づきにくい | 言葉を理解しにくいタイプ |
| 混合性失語 | 難しい | 難しい | 話す・理解の両方が難しい |
| その他(伝導失語・健忘失語など) | 物の名前が出にくい 等 | タイプにより異なる | 上記以外のタイプ |
失語症は治る?回復率と回復の経過
↑失語症の一般的な回復のしかたをYouTubeでも紹介しています。
多くの方がいちばん知りたいのは、「失語症は治るのか」ということだと思います。
結論として、個人差はありますが、失語症は多くの方で改善します。
回復が期待しやすい人の特徴
2021年に公開された大規模な研究(959名の失語症の方のデータをまとめた分析)では、回復を予測する要因として「若いこと」と「発症から日が浅いこと」が示されました(RELEASE Collaboration 2021)。
具体的には、55歳より若い方や、発症からの期間が短い段階で取り組み始めた方ほど、改善しやすい傾向があると報告されています。
これは「年齢を重ねた方や慢性期の方が改善しない」という意味ではありません。
あくまで「早く始めるほど有利」という目安であり、発症からしばらく経っても改善は期待できます。
失語症はタイプが変化しながら回復していく
失語症は、回復の過程でタイプが変わっていくことがよくあります。
たとえば、最初は話すことも理解することも難しかった方が、理解は戻ってきて「話しにくさ」だけが残る、という変化です。
つまり、今の状態がずっと続くわけではなく、変化していくのが一般的です。
そのため、リハビリの内容も、その時々の状態に合わせて見直していくことが大切になります。
回復には時間がかかることもあり、途中でくじけそうになる方もいらっしゃいます。気持ちの保ち方についてはリハビリのモチベーションを保つコツもあわせてご覧ください。

失語症のリハビリ(言語療法)は効果がある?
↑脳梗塞による失語症のリハビリについてYouTubeでも紹介しています。
「言語のリハビリは、本当に効果があるの?」という疑問を持つ方は多いと思います。
結論から言うと、失語症のリハビリ(言語療法)には効果があることが、信頼性の高い研究で示されています。
2016年に公開された、57の研究(合計3,002名)をまとめた大規模な分析では、言語療法を受けた方は、受けなかった方に比べて、日常生活でのコミュニケーションがはっきりと改善したと報告されています(Brady 2016)。
これは「失語症に対する言語のリハビリには意味がある」という、現時点でもっとも信頼できる根拠のひとつです。
さらに2025年に公開されたヨーロッパの公式なガイドラインでも、失語症のある方には言語療法を行うことが推奨されています(Brady 2025)。
どのくらいやればいい?訓練の量と頻度
「どのくらいの量・頻度でやればいいの?」というのも、よくいただく質問です。
2022年に公開された959名のデータをまとめた研究では、週あたり9時間以上、合計で20〜50時間ほどの言語療法を行った方で、より良い結果が報告されています(RELEASE Collaboration 2022)。
同じ研究では、生活の場面に沿った練習に加えて、自宅での課題(宿題のような自主練習)を組み合わせた方が、もっとも良い結果につながったことも示されています。
「多ければ多いほどいい」わけではない
ただし、ここで注意が必要です。
量を増やせば増やすほど効果が伸び続けるわけではなく、ある程度以上はメリットが小さくなっていくことが報告されています(Harvey 2022)。
また、もともとの失語症の重さによって、効果の出方には個人差があることも示されています。
無理に量を増やしすぎると、疲労やストレスで続かなくなってしまうこともあります。
大切なのは、「続けられる量」で「生活に役立つ練習」を継続することです。
短期集中で取り組むプログラムもある
一定期間に集中して、まとまった量の言語療法と活動を組み合わせて行うプログラムもあります。
2024年に公開された研究では、こうした集中的なプログラムによって、言葉を思い出す力(呼称)や生活の質(QOL)が改善したと報告されています(Monnelly 2024)。
失語症の改善に向けて、ご自宅から続けられる言語リハビリにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
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自宅でできる失語症の訓練(教材・絵カード・アプリ・タブレット・オンライン)
「病院やリハビリの時間以外に、自宅でも何かできないか」と考える方はとても多いです。
研究でも、自宅での練習を組み合わせることが、良い結果につながると報告されています(RELEASE Collaboration 2022)。
ここでは、自宅で取り組める失語症の訓練を、方法ごとに紹介します。
絵カード・教材を使った練習
もっとも身近なのが、絵カードや市販の教材を使った練習です。
絵を見て名前を言う、文字と絵を結びつける、といった課題を、毎日少しずつ繰り返します。
道具の準備がしやすく、ご家族と一緒に取り組みやすいのが利点です。
どんな課題をどの順番でやるかは、担当の言語聴覚士に決めてもらうのが安心です。
アプリ・タブレット・パソコンを使った練習
近年は、アプリやタブレット、パソコンを使った言語の練習が広がっています。
専門家の練習を、自宅で自分のペースで補えるのが大きな利点です。
2021年に公開された研究では、パソコンを使った言語の練習が、対面での練習に劣らない結果を示しました(Spaccavento 2021)。
2024年に公開された研究では、スマートフォンのアプリを使った練習で、言葉の機能や呼称(物の名前を言う力)が改善したと報告されています(Jiang 2024)。
2025年に公開された104名を対象にした研究では、タブレットを使った言語療法が、軽度から中等度の失語症の方で役立ったと示されています(Wischmann 2025)。
また、自分で進める形のパソコン練習について調べた研究(Big CACTUS)では、軽度〜中等度の方では費用に見合う効果が示された一方、重度の方では効果がはっきりしなかったと報告されています(Latimer 2021)。
オンラインで受ける言語リハビリ
自宅にいながら、言語聴覚士の練習を受けられるのがオンライン言語リハビリです。
テレビ電話をつなぎ、お互いの顔を見て声を聞きながら、対面と同じように練習を進めます。
2021年に公開された研究では、オンラインで行う言語リハビリは、対面で行うものと同等の効果があると報告されています(Cacciante 2021)。
日本国内でも、2025年に公開された研究で、録画などを使った遠隔の言語療法が、言葉の機能に有効だったと報告されています(Kodani 2025)。
通院や外出の負担が少なく、続けやすいのがオンラインの大きな利点です。
専門的なアプローチ(CIAT・MIT・会話グループ療法)
言語聴覚士が行う専門的な訓練には、いくつかの代表的な方法があります。
CIAT(制約誘導型の言語療法)
CIATは、ジェスチャーなどに頼らず、できるだけ言葉を使ってやりとりすることを集中的に練習する方法です。
もともとは、短い期間に毎日まとまった時間、言葉だけでのコミュニケーションを練習する形で行われます。
2022年に公開された216名の慢性期の方を対象にした研究では、CIATを発展させた方法と、複数の手段を使う方法を比べたところ、どちらの方法でも参加者の言葉が改善し、方法どうしの差は明確ではなかったと報告されています(Rose 2022)。
つまり、「どの方法か」よりも「しっかり取り組むこと」が大切とも考えられます。
MIT(メロディックイントネーション療法)
MITは、メロディーやリズムに乗せて言葉を発する練習を行う方法です。
歌うように言葉を出すことで、話す力を引き出すことをねらいます。
2022年に公開された分析では、MITは話す力(言語表出)に対して、小さめから中くらいの効果があると報告されています(Popescu 2022)。
一方で、別の2021年の分析では、効果は限定的で、さらなる研究が必要とも指摘されています(Haro-Martínez 2021)。
研究によって結果に幅があるため、合うかどうかは専門家と相談しながら判断するのが安心です。
会話グループ療法
会話グループ療法は、失語症のある方が複数人で集まり、実際の会話を通じて練習する方法です。
同じ立場の方と話す場は、言葉の練習だけでなく、気持ちの支えにもなります。
2025年に公開された研究では、慢性期の失語症の方に対して、会話グループ療法が効果を示したと報告されています(Hoover 2025)。
自宅でできる練習・専門的なアプローチの整理
| 方法 | 内容 | 向いている人・特徴 |
|---|---|---|
| 絵カード・教材 | 絵を見て名前を言う/文字と絵を結びつける | 準備しやすく家族と取り組みやすい |
| アプリ・タブレット・パソコン | 自分のペースで補える練習 | 軽度〜中等度で有益(重度ははっきりしないことも) |
| オンライン言語リハビリ | テレビ電話で言語聴覚士の練習を受ける | 対面と同等の効果。通院負担が少ない |
| CIAT(制約誘導型) | ジェスチャーに頼らず言葉で集中的にやりとり | 短期集中。方法どうしの差は明確でない |
| MIT(メロディックイントネーション療法) | メロディー・リズムに乗せて言葉を発する | 話す力に小〜中程度の効果(研究で幅あり) |
| 会話グループ療法 | 複数人で実際の会話を通じて練習 | 気持ちの支えにもなる |
家族ができること・声かけのコツ
失語症の回復には、ご家族の関わり方も大きな力になります。
研究でも、ご家族が「話しやすい関わり方」を学ぶことで、ご本人の会話への参加が改善すると報告されています(Simmons-Mackie 2016)。
2023年に公開された研究でも、ご家族へのコミュニケーション支援が支持されています(Shrubsole 2023)。
会話のときに心がけたい5つのこと
- ゆっくり、短く、はっきり話す
一度にたくさん伝えず、短い文に区切って話すと伝わりやすくなります。 - 答えを急かさない
言葉が出るまで、少し待つ時間をつくってください。先回りしすぎないことが大切です。 - 言葉以外の手段も使う
絵・写真・ジェスチャー・指さしなど、言葉以外の手がかりも活用してください。 - 「はい・いいえ」で答えられる質問にする
選びやすい聞き方にすると、ご本人が答えやすくなります。 - 間違いを強く訂正しすぎない
言い間違いをその都度直すより、伝わった内容を受け止めることを優先してください。
こうした関わり方は「コミュニケーションパートナー訓練」と呼ばれ、言語聴覚士からご家族へ伝えられることもあります。
ご家族自身が疲れてしまわないことも大切です。ご家族の心構えや支え方については家族が脳卒中になったとき、入院から退院までにできることもあわせてご覧ください。
BRAINのオンライン言語リハビリ実践例
BRAINでは、ZOOMを活用したオンライン言語リハビリサービスを提供しています。
オンライン言語リハビリは、下記の手順で行われます。
- ① 担当者よりミーティングURLを送信
- ② 時間になったらミーティングルームへ入室
- ③ オンライン言語リハビリを60分実施
- ④ 終了とともにミーティングルームを退室
着替えや外出が一切必要ないので、ご負担が少なくリハビリをお受けいただけます。
先ほどお伝えしたとおり、オンラインの言語リハビリは対面と同等の効果があると報告されています(Cacciante 2021)。
外来や訪問でのリハビリをオンラインに切り替えても、これまでと同じように取り組んでいただけます。
また、BRAINでは、ご希望や状態に応じて、rTMS(磁気を使って脳をやさしく刺激する方法)と言語リハビリを組み合わせたリハビリも行っています。
これは、言葉に関わる脳のはたらきを整えたうえで言語リハビリに取り組む、という考え方にもとづくものです。
近年の研究でもこうした刺激と言語リハビリを組み合わせる方法が検討されており、BRAINでは保険外のリハビリとして、おひとりおひとりの状態を見ながらご提案しています。
まとめ
脳卒中後の失語症 リハビリについてまとめます。
- 失語症には運動性・感覚性・混合性などのタイプがあり、表れ方は人それぞれ
- 個人差はあるが、多くの方で改善する。若く・発症から早いほど回復しやすい傾向
- 言語療法には効果があることが、大規模な研究と公式ガイドラインで支持されている
- 量は週9時間以上が目安だが、多ければよいわけではなく「続けられる量」が大切
- 自宅では絵カード・アプリ・タブレット・オンラインを組み合わせると続けやすい
- 家族の声かけ(ゆっくり・短く・急かさない)が会話への参加を後押しする
次にやるべきこと:まずは担当の言語聴覚士に「自宅でできる練習」を相談してみてください。生活の中で続けられる小さな一歩が、回復を支えます。
失語症のリハビリを、ご自宅から続けたい方はお気軽にご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 失語症は治りますか?回復率はどのくらいですか?
個人差はありますが、多くの方で改善します。
研究では、若い方や、発症から早い段階で取り組み始めた方ほど回復しやすい傾向が示されています(RELEASE Collaboration 2021)。
発症からしばらく経っても、言語リハビリを続けることで改善が期待できます。
Q. 自宅でできる失語症の訓練はありますか?
絵カードや教材、アプリ・タブレット・パソコンを使った練習があります。
研究でも、自宅での練習を組み合わせることが良い結果につながると報告されています(RELEASE Collaboration 2022)。
どんな課題が合うかは、担当の言語聴覚士に相談して決めるのが安心です。
Q. オンラインの言語リハビリでも効果はありますか?
2021年に公開された研究では、オンラインの言語リハビリは対面と同等の効果があると報告されています(Cacciante 2021)。
日本国内でも、遠隔の言語療法が言葉の機能に有効だったと報告されています(Kodani 2025)。
通院の負担が少なく続けやすいため、選択肢のひとつになります。
Q. 家族はどんな声かけをすればいいですか?
ゆっくり・短く・はっきり話し、答えを急かさないことが基本です。
研究でも、家族が話しやすい関わり方を学ぶことで、ご本人の会話への参加が改善すると報告されています(Simmons-Mackie 2016)。
絵や写真、ジェスチャーなど、言葉以外の手段も合わせて使うと伝わりやすくなります。
参考文献
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- Jiang Z, et al. The efficacy of mobile application-based aphasia therapy: a meta-analysis. Front Neurol. 2024;15:1376177. PMID: 38933323
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- Kodani A, et al. Effectiveness of asynchronous telerehabilitation speech-language therapy for aphasia. 2025. PMID: 40132018
- Simmons-Mackie N, et al. Communication partner training in aphasia: An updated systematic review. Arch Phys Med Rehabil. 2016;97(12):2202-2221. PMID: 27117383
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- Hoover EL, et al. Group conversation therapy for chronic aphasia. 2025. PMID: 40209074
最終更新:2026年6月

