半側空間無視は脳卒中後に生じる高次脳機能障害のひとつで、定義としては「脳病変の反対側に提示された新規または意味のある刺激を報告、応答、または方向付けることができない症状」とされています。

多くは右の大脳半球にダメージを受けてしまうことによって、左側の空間を認識できなくなってしまいます。

左側の空間を認識できないことで、食事をするときに左側の食べ物を見落としてしまったり、歩くときに左側の壁にぶつかってしまうことで日常生活に支障が出ます。

今回は、2013年のコクランレビューをもとに、半側空間無視に対する認知リハビリテーションの効果を紹介します。

Bowen A (2013) のコクランレビューの概要

まず、Bowen A (2013) のコクランレビューの概要を紹介します。

研究のリサーチクエスチョンは「半側空間無視を有する脳卒中患者に対する認知リハビリテーションは、何もしないもしくは他の治療を実施する場合と比べて日常生活の自立度や半側空間無視へ有効か」でした。

2012年6月までに公表されたランダム化比較試験を対象に、MEDLINE、EMBASE、CINAHLなど複数の電子データベースを用いて網羅的に検索されています。

認知リハビリテーションというのは、認知機能障害が人の日常生活の遂行能力、社会的役割への参加、生活の質に及ぼす悪い影響を軽減することを目的とした、幅広い介入の総称です。

検索の結果、23件の研究論文が収集されました。

23件の研究論文の中では様々なリハビリ方法が採用されており、色々なアプローチが半側空間無視に対して行われていました。

Bowenらはこれらを “トップダウンアプローチ” と ”ボトムアップアプローチ” に大別しました。

トップダウンアプローチは無視を運動イメージ療法、視覚探索、キューイング、などが含まれました。

ボトムアップアプローチにはプリズムアダプテーション、アイパッチ、などが含まれました。

それでは結果について紹介します。

ボトムアップアプローチが半側空間無視への有効性を示した

まず、これらのリハビリ方法全体で見ると、「半側空間無視を有する脳卒中患者さんに対する認知リハビリテーションは、何もしないもしくは他の治療を実施する場合と比べて日常生活の自立度の向上に寄与するとは言えないものの、半側空間無視の向上には有益である」という結果になりました。

半側空間無視の程度は、行動性無視検査、線分二等分線などの評価バッテリーを使って、評価されています。

認知リハビリテーションを行うことでこれらの検査結果が向上したので、半側空間無視に対して有効であろうとされています。

興味深いことに、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチを分けて解析してみると、違う結果が報告されていました。

半側空間無視に対して、ボトムアップアプローチは有益であると言えるものの、トップダウンアプローチは有益であるとは言えないという結果になりました。

繰り返しになりますがトップダウンアプローチには運動イメージ療法、視覚探索、キューイング、などを、ボトムアップアプローチにはプリズムアダプテーション、アイパッチ、などを指しています。

そして、ボトムアップアプローチの中でも、アイパッチは有益であると言えるものの、プリズムアダプテーションなどその他の方法は有益であるとは言えないという結果になりました。

つまり、全体でみると半側空間無視に対して認知リハビリテーションが有効、という結果になったものの、中身を見てみるとほとんどアイパッチの効果であることがわかりました。

このことから、半側空間無視に対してリハビリを行う場合、2012年までのエビデンスをもとに基づくなら、アイパッチを使ったリハビリが第一選択になってくるかなと思います。

アイパッチの導入を検討しよう

今回紹介したコクランレビューは2012年までに出版された研究を収集したものになります。

現在は半側空間無視の病態の理解も進んでおり、アイパッチ以外の、半側空間無視の病態に基づくリハビリテーションというのも選択肢として考えられますが、アイパッチの有効性が報告されているのも事実です。

アイパッチを使ったリハビリテーションがどういうものかといいますと、ゴーグルの両目の右半分の視野だけアイパッチで見えなくさせたものを装着し、その状態で日常生活を送るとか、リハビリを行うものになります。

イメージとしては視野を制限する、CI療法の半側空間無視バージョンと捉えてもいいかもしれません。

右側からの情報をシャットアウトし、左側からの情報だけが入る様にする、そしてその情報に基づいて日常生活を送ったり、運動課題を行なったりします。

アイパッチ自体は手軽に購入できますので、ゴーグルは100円均一などで買ってきてこれらを組み合わせることで手軽に実施できる方法です。

アイパッチの導入を検討してみてはいかがでしょうか!

本日は「脳卒中後の半側空間無視に対する認知リハビリテーションの効果」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Bowen A, Hazelton C, Pollock A, Lincoln NB. Cognitive rehabilitation for spatial neglect following stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jul 1;(7):CD003586.