脳卒中患者さんに行なわれる歩行練習として、トレッドミルトレーニングは一般的な方法です。
歩行練習は大きく分けてトレッドミルトレーニング、免荷式トレッドミルトレーニング、平地歩行練習、に分けられます。
平地歩行練習というのは、病院の敷地内やリハビリ室などを普通に歩くことです。
一方でトレッドミルトレーニングはスポーツジムなどに置いてあるトレッドミルマシンを使って歩行練習をすることです。
免荷式トレッドミルトレーニングは、トレッドミルマシンに免荷装置を加え、体重を軽くした状態で歩行を行うものです。
いずれの方法も歩行能力向上に有効なのですが、トレッドミルトレーニングは運動強度の管理を行いやすいというメリットがあります。
近年は高強度トレーニングの有効性が報告されるようになってきています。
高強度トレーニングというのは、名前の通り、強度の高いトレーニングをすることです。
歩行練習で言えば、研究によって若干異なりますが、70%HRRで歩くようにするなど、かなりハードなトレーニングをすることになります。
高強度トレーニングは低強度トレーニングよりも有効であることが報告されており、どちらか選べる状況なのであれば基本的には高強度トレーニングを実施した方が望ましいです。
トレッドミルトレーニングだと、手すりを掴みながら歩くことができるので、セラピストが脈拍などを測定し運動強度の管理を行えるので、高強度トレーニングをやりやすいです。
その他にも理由がありますが、こういった背景から、基本的に歩行練習ではトレッドミルトレーニングが望ましいと考えています。
近年はこのトレッドミルトレーニングに+αの要素を組み合わせて、歩行練習をより効果的なものにできないかと探求する研究が増えています。
その一つに、全身振動刺激を組み合わせたら効果が上がるかどうかを検証した研究がありますので、今回はその研究を紹介します。
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Choi W (2017) のランダム化比較試験
まず、Choi W (2017) のランダム化比較試験の概要を紹介します。
この研究では、慢性期の脳卒中患者さん30人を2つのグループに分けています。
ひとつ目のグループは「全身振動刺激+トレッドミルトレーニング」をやるグループです。
20分間のトレッドミルトレーニングの前に、4.5分の全身振動刺激を行います。
全身振動刺激、というとイメージが湧きにくいかもしれませんが、大きい機械の上に人が立ち、機械が振るえることで身体全体に振動刺激を与える、というものです。
日本ではパワープレートという機械があります。
4.5分間ただ全身振動刺激装置の上に立っているだけではなく、左右の体重移動をしたり、スクワットをするなど6種類の運動を行なっています。
全身振動が終わったらトレッドミルトレーニングを20分行います。
もう一つのグループは「偽全身振動刺激+トレッドミルトレーニング」グループです。
こちらは全身振動の効果をのぞくため、装置の上に立って6種類の運動を行うのですが、全身振動刺激を与えない、というグループです。
トレッドミルトレーニングも同様に行います。
なので、二つのグループの違いは「全身振動刺激が与えられるかどうか」だけになります。
このリハビリを週3回、6週間実施しています。
歩行能力がより向上するという結果に
結果として、全身振動刺激+トレッドミルトレーニングは、偽刺激群と比べると、歩行速度や両側のステップ長、ストライド長、などがより大きく向上しました。
もちろんトレッドミルトレーニング自体も有効なので、偽刺激群も各種アウトカムがよくなっています。
ただ、全身振動刺激群はそれよりも大きな向上を示した、という結果になったということです。
ひとつだけアウトカムを紹介しますが、歩行速度においては偽刺激群の平均歩行速度がおよそ0.53 m/ sからリハビリ後に0.58 m/ sになったのに対し、全身振動群は 0.52 m/s から0.67 m/s 程度まで向上しています。
全身振動刺激装置があるなら有効活用しよう
まとめます。
● トレッドミルトレーニングは脳卒中患者さんの歩行練習に有効
● 近年、トレッドミルトレーニング+αの効果を検証した研究が増えている
● 全身振動刺激+トレッドミルトレーニングは歩行能力をより向上させる
全身振動刺激の装置は高額なので簡単に導入することはできないと思いますが、病院・施設に置いてある場合は、5分程度でより高い効果を期待できることになりますので、ぜひ、導入の検討をしてみてください!
セラピストの皆さま、そして患者さんの役に立つ情報になれば嬉しいです。
参考文献
Choi W, Han D, Kim J, Lee S. Whole-Body Vibration Combined with Treadmill Training Improves Walking Performance in Post-Stroke Patients: A Randomized Controlled Trial. Med Sci Monit. 2017 Oct 14;23:4918-4925.