課題指向型訓練はこれまでの研究数が多く、シンプルな課題指向型訓練に加えて、ミラーセラピーと併用するもの、電気刺激と併用するものなど数多くのパターンがあります。

課題指向型訓練のみを行うのではなく、課題指向型訓練を他の療法と併用するものをここでは「課題指向型訓練+α」とし、筆者が厳選した10件の研究をもとに、この記事でまとめます。

なお、課題指向型訓練のみの効果はこちらの記事にまとめています。

課題指向型訓練+αによって、課題指向型訓練単独よりも大きな効果を報告しているものもあります。

自分が提供できる治療のオプションとして、課題指向型訓練も、課題指向型訓練+αも持っておきたいところです。

目次
  1. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果①
  2. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果②
  3. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果③
  4. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果①
  5. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果②
  6. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果③
  7. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果④
  8. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢のロボット+課題指向型訓練の効果
  9. 慢性期の脳卒中患者に対する重錘を用いた上肢の課題指向型訓練の効果
  10. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練+有酸素運動+ホームエクササイズの効果
  11. 慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練+αの効果まとめ
    1. 慢性期脳卒中患者の上肢運動障害に対する課題指向型ミラーセラピーの効果
    2. 慢性期脳卒中患者の上肢運動障害に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果
    3. 課題指向型訓練+α vs 他のリハビリ方法
      1. 課題指向型訓練+α vs ブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法
      2. 課題指向型訓練+α vs 課題指向型訓練のみ・偽電気刺激+課題指向型訓練・課題指向型訓練+ホームエクササイズ
  12. 結論
  13. 参考文献

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果①

Arya KNら(2015)は、発症から12.88 (8.05)ヶ月、年齢48.76 (13.58)歳の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピーの効果を検証しました。

課題指向型ミラーセラピーとは、ミラーボックスなどのミラー環境下で課題指向型訓練を実施するものです。

一般的な課題指向型訓練に比べ、ミラー環境下で行う課題指向型訓練は麻痺手が動いているような錯覚が起こるため、錯覚による付加的な効果を期待することができます。

麻痺手を非麻痺手と一緒に動かすパターン、麻痺手を動かさないパターンがありますが、この研究では麻痺手は動かさないでおいたようです。

一方で、非麻痺側を動かさざるを得なくなる、課題の種類がミラー環境下で行えるものに制限されてしまう、といったデメリットもあります。

介入前のFugl-Meyer Assessment Upper Extremity (以下、FMAUE)スコアは19.71 (7.22)だったことから、重度の運動麻痺を有する人が対象だったようです。

Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity: FMAUE
脳卒中患者の麻痺側上肢・手の運動機能の評価です。4つの下位項目から成り(A. 肩/肘/前腕関節、 B. 手関節、 C. 手指、 D. 上肢全体の協調性や速度)、全33項目について評価します。それぞれについて0〜2点の3段階で点数をつけ、0〜66点で評価します。66点が満点(最も状態が良い)です。

この研究では、課題指向型ミラーセラピーを90分、週5回、8週間実施しています。

結果として、上肢運動機能(FMAUE)が30.41 (9.07)まで大きく改善しています。

また、対照群としてブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法が設定されていますが、対照群と比べても有意な成績向上を示しました。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果②

Rodrigues LCら(2016)は、発症から33.5 ± 22.6ヶ月、年齢58.4 ± 8.3歳の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピーの効果を検証しました。

介入前のFMAUEは36.3 (5.6)点であり、中等度の運動障害を持つ人が対象になったようです。

課題指向型ミラーセラピーは1時間、週3回、4週間実施されました。

結果として、FMAUEは36.3(5.6)点から41.4(8.1)点へ向上しました。

この研究では対照群に課題指向型訓練のみが設定されており、群間の比較もされていますが、課題指向型訓練のみの群もFMAUEスコアの向上を示しており、群間の統計的有意差はありませんでした。

つまり、この研究では課題指向型ミラーセラピーは課題指向型訓練と比べるとFMAUEに対する優位性があるとは言えない結果になりました。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果③

Li YCら(2019)は発症から57.92(29.92)ヶ月、年齢50.72(10.75)歳の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピー+課題指向型訓練の効果を検証しました。

プログラムはやや複雑になっており、

①ROM ex. 10分
②ミラーセラピー(物品を使わない手の運動) 10分
③課題指向型ミラーセラピー(物品を使う手の運動) 35分
④課題指向型訓練 45分

上記を週3回、4週間実施するのに加え、ホームエクササイズを30〜40分、週5回、4週間実施しています。

なお、対照群は課題指向型訓練のみ(ミラーの影響を除いている)となっており、こちらも介入群と同量が提供されています。

こちらの研究では、Arya KNら(2015)と異なり、麻痺手も最大限動かすことが指示されています。

なお、介入前のFMAUEスコアは課題指向型ミラーセラピー+課題指向型訓練群が33.42(7.48)点、課題指向型訓練のみ群が33(9.74)点となっていましたので、中等度運動障害を持つ人が対象になったようです。

Arya KNら(2015)の研究対象者はもう少し重度の麻痺を持つ人だったので、Arya KNら(2015)の対象者はそもそも手を動かせない、Li YCら(2019)の対象者は手を動かすことができる、という状況だったのかもしれないですね。

結果として、両群ともに上肢機能(FMAUE)、日常生活での手の使用(Motor Activity Log: MAL)成績が若干向上しているのですが、MCIDを超えるほどの変化ではありませんでした。

Motor Activity Log: MAL
実生活における脳卒中患者の麻痺側上肢の使用状況に関する評価。14項目の日常生活動作について、どれくらい使用しているか(Amount of use)、そして動作の質(Quality of Movement)について評価し、得点をつける。

群間の統計的有意差もなく、どちらの方が有益であるという結論は出ませんでした。

なお、この研究ではそれぞれの群の介入前後の統計的検定がなされておらず、それぞれの群の介入前後の検査結果の変化が統計的に有意なものなのかは不明です。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果①

Carrico Cら(2018)は、発症から7.48 (2.48)ヶ月、年齢58 (12.10)歳の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果を検証しました。

介入前のFMAUEは18.48 (12.75)点、ARATは11.58 (12.80)点と、重度の運動障害を持つ人が対象になったようです。

電気刺激はErb’s point、橈骨神経、正中神経に、感覚閾値以下の刺激が2時間与えられました。

その後、課題指向型訓練を4時間、週3回、6週間実施しています。

結果、上肢運動パフォーマンス(WMFT、ARAT)、上肢の運動機能(FMAUE)、SISの成績が向上しました。

Stroke Impact Scale: SIS
9つの大項目の質問 (筋力、手の運動機能、ADL/ IADL、移動、コミュニケーション、感情、記憶と思考、参加、回復)からなる脳卒中患者のための評価指標。

なお、上肢運動パフォーマンス、上肢の運動機能はそれぞれMDCを超える変化を示しています。

この研究では、介入群に電気刺激+課題指向型訓練、対照群に偽電気刺激+課題指向型訓練が設定されており、上記のような介入前後の比較だけでなく、群間の比較もしています。

群間の比較では、WMFT、ARATの成績に統計的な有意差を認めており、電気刺激+課題指向型訓練は偽電気刺激+課題指向型訓練と比べると上肢運動パフォーマンスの向上に有益であると言えるでしょう。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果②

Sullivan JEら(2012)は、発症から7.7 (1–29)年、年齢61.6 (37–88)歳、介入前FMAUE 29.1 (15–45) 点の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果を検証しました。

電気刺激はグローブ型の電気刺激装置を手に装着し、感覚閾値での刺激を与えています。

課題指向型訓練は患者さん個人の目標を設定し、目標に基づいて個々人に10種類以上の課題を提供しました。

介入は1日2回、各30分、週5回、4週間実施しました。

結果としてArm Motor Ability Test(以下、AMAT)の平均時間、FMAUEの成績は統計的に有意な向上を示しました。

Arm Motor Ability Test: AMAT
日常生活動作課題で構成された麻痺側上肢、手の検査。AMAT-13は13項目の動作から、AMAT-10は10項目の動作から構成される。各動作を所要時間、動きの質の2つの側面から評価する。動きの質は0〜129点で評価される。満点は129点。

AMATはMCIDを大幅に超える変化を示しましたが、FMAUEはMDCを超える変化ではありませんでした。

また、MALスコアは統計的に有意な変化を示しませんでした。

これらのことから、運動機能は大きな変化がないものの、できるADLレベルの運動パフォーマンスは向上すること、しているADLレベルの運動パフォーマンスは向上しないことが示唆されます。

元々持っていた運動機能を、動作の中で使えるようになった、という解釈ができそうです。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果③

Gharib NM(2015)らは、発症から10.95±4.81ヶ月、年齢54.85±6.41歳の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果を検証しました。

取り込み基準として下記の条件が設定されていました。
・痙縮MAS 1か2
・自動肩関節屈曲・外転60度以上、手関節伸展10度以上

電気刺激+課題指向型訓練は下記のように実施されました。

①電気刺激 30分
電気針を背側骨間筋と短母指外転筋に持続時間が0.1msの方形波電気パルスと20Hzに変調された2500HZの搬送周波数
②課題指向型訓練 45分
1) 抵抗に対する手首と指の伸展
2) 書き込み
3) ボックス内のオブジェクトの把持と解放
4) 押す:セラピストが手首を支えている間に、指を拳の位置から押してペンを押す

合計75分、週3回、8週間実施されました。

結果として、示指・中指・環指のROM(PIP伸展、MCP伸展、外転)が拡大し、Jebsen Taylor Hand Function Test(以下、JTHFT)の所要時間が減少しました。

Jebsen Taylor Hand Function Test: JTHFT
麻痺手と非麻痺手で行われる日常生活で使用される7つの課題を実施し、上肢運動パフォーマンスを評価する。課題における動作の質ではなく、動作の速度を評価するもの。

また、この研究では対照群に偽電気刺激+課題指向型訓練が設定されていました。

群間の比較では、示指・中指・環指のROM、JTHFTのいずれも電気刺激+課題指向型訓練の方が、偽電気刺激+課題指向型訓練よりも統計的に大きな変化があったことを示しました。

ただ、この研究の電気刺激は針を用いて実施されており、セラピストが臨床で応用することには高い障壁がある点に留意しておきましょう。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の電気刺激+課題指向型訓練の効果④

Carrico Cら(2016)は、発症から39.2±34.6ヶ月、年齢58.7±12.1歳の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果を検証しました。

介入前のFMAUEは25.7±13.3点、WMFT-FASは1.71±0.41点、ARATは13.9±12.3点だったこと、また取り込み基準に中手指節関節(CM関節)を10°、手関節を20°伸展することができない人が設定されていることから、中等度〜重度の運動障害を持つ人が対象になったようです。

プログラムは下記の通りでした。

①電気刺激 2時間
・Erb point、橈骨神経、正中神経を刺激
・筋収縮が起こる程度
②課題指向型訓練 4時間
・繰り返し麻痺側上肢を使用
・課題の難易度調整を実施

合計6時間、週5回、2週間実施されました。
※本文中には、”平日連続10日実施”と記載されています。

結果として、介入の前後でARATは6.4(1.1)点、WMFT平均時間は-0.18(0.03)秒、FMAUEは7.4(1.0)点の向上、またそれぞれに統計的な有意差を示しました。

また、この結果は、1ヶ月後のフォローアップ時にも概ね維持されていました。

この研究では対照群に偽電気刺激+課題指向型訓練が設定されており、群間の比較もされていますが、それぞれのアウトカムにおいて介入群の方が大きな変化を示し、統計的な有意差を認めました。

このことから、電気刺激+課題指向型訓練は、偽電気刺激+課題指向型訓練と比べると優位性があることが示唆されています。

効果量も大きいので臨床応用したいところではありますが、合計6時間の介入が求められるという点が日本では障壁になりそうですね。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢のロボット+課題指向型訓練の効果

Timmermans AAら(2014)は、発症から2.8 (2.9)年、年齢61.8 (6.8)歳の脳卒中患者に対するロボット+課題指向型訓練の効果を検証しました。

介入前のFMAUEは50点前後、ARATは31点前後、MALは3.7点前後と、軽度〜中等度の運動障害を持つ人が対象になったようです。

ロボットはHapticMasterという、3次元空間での到達、把握、および物品の移動を含む課題のトレーニングを行えるものです。

HapticMasterを装着した状態で課題指向型訓練を30分を1日2回、週4回、8週間実施しました。

課題指向型訓練は下記の4つの動作の中から2つの目標動作を選択して実施しました。

①カップから飲む
②ナイフとフォークで食べる
③財布からお金を取る
④トレイを使用する

結果として、介入の前後では上肢運動パフォーマンス(ARAT)、日常生活での手の使用(MAL)、上肢運動機能(FMAUE)は統計的に有意な変化を示しませんでした。

また、この研究では介入群にロボット+課題指向型訓練が、対照群に課題指向型訓練のみが設定されていましたが、群間の有意差もありませんでした。

ロボットを使用することの優位性があるとは言えない結果になりました。

慢性期の脳卒中患者に対する重錘を用いた上肢の課題指向型訓練の効果

da Silva PBら(2015)は、発症から41.4 (11.89) ヶ月、年齢70.4 (7.83)歳の脳卒中患者に対する重錘負荷+課題指向型訓練の効果を検証しました。

重錘の重さは60%MVCに設定し、重錘を前腕に付けながら訓練を実施していました。

重錘負荷+課題指向型訓練群に割り当てられた人たちの介入前のFMAUEスコアは34.5(9.0)だったので、中等度の運動麻痺を持つ人が対象になったようです。

重錘負荷+課題指向型訓練は30分、週2回、6週間行われました。

結果として、上肢運動機能(FMAUEスコア)は41.7 (10.4)点まで向上したことを報告しています。

また、この研究では課題指向型訓練のみを実施した群も設定されており、こちらは介入前が35.0(11.8)点、介入後が36.6(11.2)点となっており統計的に有意な改善を示したもののMCIDを超えるほどの変化ではありませんでした。

群間比較では、重錘負荷+課題指向型訓練が、課題指向型訓練のみと比べて肩関節筋力、自動肩関節可動域(Active ROM)、上肢運動機能(FMAUE)において有益であることを示唆しています。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練+有酸素運動+ホームエクササイズの効果

Valkenborghs SRら(2019)は、発症から34.6 (46.3)ヶ月、年齢62.1 (11.7)歳の脳卒中患者に対する有酸素運動+課題指向型訓練+ホームエクササイズの効果を検証しました。

介入前のAction Research Arm Test(以下、ARAT)成績は9.7 (12.4)点であり、重度の運動障害を持つ人が対象になったようです。

Action Research Arm Test: ARAT
麻痺側上肢の運動パフォーマンスの評価。下位項目4つ(つかみ、握り、つまみ、粗大運動)、全19項目から成り、それぞれに得点をつける。最低が0点、最高が57点。

プログラムは下記のようになっていました。

①高強度有酸素運動 30分
・エルゴメーター
・85%HRmax
・1セット: 4分ペダリング+3分休憩
②課題指向型訓練 100〜300回 60分
・ADL動作を難易度調整しながら実施
合計90分、週3回、10週間
③ホームエクササイズ
10週間の中で30時間

結果として、ARAT成績が2.1(3.5)点、WMFT平均時間が-34.5(170.6)秒向上したことを報告しています。

※この記事では運動障害に関連するアウトカムのみ報告していますが、その他にも向上したアウトカムがありますので、気になる方は原著へアクセスしてみてください。

一方で、WMFTの動きの質、MAL-AOU、MAL-QOMについては統計的な有意差が認められませんでした。

運動パフォーマンス(ARAT)、動作の速度(WMFT平均時間)は改善するものの、日常生活で手が使えるようになる(MAL-AOU、MAL-QOM)とは言えなさそうです。

対照群には課題指向型訓練+ホームエクササイズが設定されているのですが、この研究は後の大規模研究の実現可能性を調査したパイロット試験であるためか、統計的な群間比較がなされておらず、どちらの方がどのアウトカムに有益かというところまではわかりません。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練+αの効果まとめ

以上の結果を簡潔にまとめます。

発症から12.88 (8.05)ヶ月、年齢48.76 (13.58)歳、FMAUE 19.71 (7.22)点の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピー(90分、週5回、8週間)は上肢の運動機能(FMAUEスコア)向上に寄与する(Arya KN, 2015)

発症から33.5 ± 22.6ヶ月、年齢58.4 ± 8.3歳、FMAUE 36.3 ± 5.6点の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピー(1時間、週3回、4週間)は上肢の運動機能(FMAUE)の向上に寄与する(Rodrigues LC, 2016)

発症から57.92(29.92)ヶ月、年齢50.72(10.75)歳の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピー+課題指向型訓練(100分、週3回、4週間)+ホームエクササイズ(30〜40分、週5回、4週間)は、上肢機能(FMAUE)、日常生活での手の使用(MAL)の向上に寄与するかわからない(統計的な検定がなされていないため)(Li YC, 2019)

発症から7.48 (2.48)ヶ月、年齢58 (12.10)歳の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練(4時間、週3回、6週間)は上肢運動パフォーマンス(WMFT、ARAT)、上肢の運動機能(FMAUE)、SISの向上に寄与する(Carrico C, 2018)

発症から7.7 (1–29)年、年齢61.6 (37–88)歳、介入前FMAUE 29.1 (15–45) 点の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練(1日2回、各30分、週5回、4週間)は上肢運動パフォーマンス(AMATの平均時間)、上肢の運動機能(FMAUE)の向上に寄与するが、日常生活での手の使用(MAL)の向上には寄与すると言えない(Sullivan JE, 2012)

発症から39.2±34.6ヶ月、年齢58.7±12.1歳、FMAUE 25.7±13.3点、WMFT-FAS 1.71±0.41点、ARAT 13.9±12.3点の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練(合計6時間、週5回、2週間)は上肢運動パフォーマンス(ARAT、WMFT平均時間)、上肢の運動機能(FMAUE)の向上に寄与する(Carrico C, 2016)

発症から10.95±4.81ヶ月、年齢54.85±6.41歳の脳卒中患者に対する電気刺激+課題指向型訓練(合計75分、週3回、8週間)は示指・中指・環指のROM(PIP伸展、MCP伸展、外転)が拡大し、JTHFTの所要時間が減少した(Gharib NM, 2015)

発症から2.8 (2.9)年、年齢61.8 (6.8)歳、FMAUE 50点前後、ARAT 31点前後、MAL 3.7点前後の脳卒中患者に対するロボット+課題指向型訓練(30分を1日2回、週4回、8週間)は上肢運動パフォーマンス(ARAT)、日常生活での手の使用(MAL)、上肢運動機能(FMAUE)の向上に寄与するとは言えない(Timmermans AA, 2014)

発症から41.4 (11.89) ヶ月、年齢70.4 (7.83)歳、FMAUE 34.5(9.0)点の脳卒中患者に対する重錘負荷+課題指向型訓練(30分、週2回、6週間)は、上肢運動機能(FMAUE)の向上に寄与する(da Silva PB, 2015)

発症から34.6 (46.3)ヶ月、年齢62.1 (11.7)歳、ARAT 9.7 (12.4)点の脳卒中患者に対する有酸素運動+課題指向型訓練(合計90分、週3回、10週間)+ホームエクササイズ(10週間の中で30時間)は上肢運動パフォーマンス(ARAT、WMFT平均時間)の向上に寄与するものの、WMFTの動きの質、日常生活における手の使用(MAL-AOU、MAL-QOM)の向上に寄与するとは言えない(Valkenborghs SR, 2019)

2011〜2020年の研究で、筆者がバイアスリスクが低く信頼できると判断した研究は上記の10件でした。

課題指向型訓練に付加されるアプローチは、下記の通りでした。

ミラーセラピー 3件
電気刺激 4件
ロボット 1件
重錘 1件
有酸素運動・ホームエクササイズ 1件

いずれの方法も、上肢運動パフォーマンスや上肢の運動機能の向上に寄与するとした報告がほとんどでしたが、ロボットと組み合わせたTimmermans AAら(2014)の研究、有酸素運動とホームエクササイズを組み合わせたValkenborghs SRら(2019)の研究においては、向上に寄与するとは言えないアウトカムがありました。

ただし、大局的に見れば、慢性期脳卒中患者に対する課題指向型訓練+αの介入は、上肢運動パフォーマンスや上肢の運動機能の向上に寄与すると考えて良いでしょう。

慢性期脳卒中患者の上肢運動障害に対する課題指向型ミラーセラピーの効果

課題指向型ミラーセラピーの効果を報告した研究は3件あり、2件は上肢運動機能(FMAUE)の向上を報告しました。

もう1件の研究は、介入の前後で統計的な検定がなされていないため向上したかどうかはわかりません。少なくともMDCを超える変化ではなさそうです。

現時点ではArya KN(2015)、Rodrigues LCら(2016)の報告を根拠に、課題指向型ミラーセラピーは上肢の運動機能(FMAUE)の向上に寄与すると理解して差し支えないと考えます。

慢性期脳卒中患者の上肢運動障害に対する電気刺激+課題指向型訓練の効果

電気刺激+課題指向型訓練の効果を報告した研究は4件あり、運動パフォーマンス(ARAT、WMFT平均時間)、上肢の運動機能(FMAUE)、手指のROMの向上に寄与することが示唆されています。

電気刺激+課題指向型訓練は比較的に安定した向上が期待できそうです。

課題指向型訓練+α vs 他のリハビリ方法

また、課題指向型訓練+αの比較対象になっていた介入(PICOSのC)は、下記の通りでした。

ブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法 1件
課題指向型訓練のみ 4件
偽電気刺激+課題指向型訓練 4件
課題指向型訓練+ホームエクササイズ 1件

続いて、対照群に対する介入群の効果の有益性について検討します。

課題指向型訓練+α vs ブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法

課題指向型訓練+αとブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法とを比較した研究は1件(Arya KN 2015)あり、課題指向型ミラーセラピーは、促通手技と比べるとFMAUEにおいて有益であることを報告しました。

促通手技と比較した研究は1件のみであり研究数は少なく確かな効果はまだわかりませんが、現時点では促通手技を提供するよりは課題指向型ミラーセラピーを提供した方が上肢の運動機能を向上させる上では良さそうです。

課題指向型訓練+α vs 課題指向型訓練のみ・偽電気刺激+課題指向型訓練・課題指向型訓練+ホームエクササイズ

上肢運動パフォーマンスへの効果

ARATを評価した研究は3件(Carrico C 2018, Carrico C, 2016, Timmermans AA 2014)であり、全ての研究で介入群の方が大きい変化を示しました。

WMFTを評価した研究は2件(Carrico C 2018, Carrico C, 2016)であり、全ての研究で介入群の方が大きい変化を示しました。

AMATを評価した研究は1件(Sullivan JE, 2012)であり、介入群の方が大きい変化を示しました。

これらのことから、課題指向型訓練+αは、課題指向型訓練と比較すると上肢運動パフォーマンスの向上に有益であると考えられます。

日常生活における手の使用への効果

MALを評価した研究は3件(Li YC 2019, Sullivan JE 2012, Timmermans AA 2014)ありましたが、いずれの研究も介入群と対照群の結果の差に統計的な有意差を認めませんでした。

このことから、課題指向型訓練+αと課題指向型訓練は、日常生活における手の使用の向上において同等の効果を持つと考えられます。

上肢の運動機能への効果

FMAUEを評価した研究は7件あり、2件(Carrico C 2016, da Silva PB 2015)が介入群と対照群の結果の差に統計的な有意差を認め、5件(Rodrigues LC 2016, Li YC 2019, Carrico C 2018, Sullivan JE 2012, Timmermans AA 2014)が有意差を認めませんでした。

これらのことから、大局的に見れば課題指向型訓練+αと課題指向型訓練は、上肢の運動機能の向上において同等の効果を持つと考えられます。

有意差を認めた2件の研究では6時間の介入(Carrico C, 2016)、重錘負荷(da Silva PB, 2015)を利用している研究です。

6時間以上のリハビリを行ったり、あるいは30分程度でも重錘負荷によって上肢の運動機能が向上するという仮説は立てられますが、研究数がまだ少ないので、今後の研究が待たれます。

結論

以上をもとに、慢性期脳卒中患者に対する課題指向型訓練+αの効果についてまとめます。

慢性期の脳卒中患者に対する課題指向型訓練+αは、上肢の運動パフォーマンス、運動障害に対して有効である

課題指向型訓練と組み合わされるのはミラーセラピー、電気刺激が多く、概ね上肢の運動パフォーマンス、運動機能へ有効である

課題指向型訓練+αは、課題指向型訓練のみを行う場合や促通手技を行う場合よりも運動障害に対して有益である

ミラーや電気刺激を用意できるなら、課題指向型訓練に付け加え、より高い効果を期待したいですね!

参考文献

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