【2022年版】脳梗塞リハビリにおける課題指向型訓練とは?【当事者の方にもわかるように効果と注意点を解説】

課題指向型訓練は、日常生活に近いシチュエーションで手を動かしたり、歩いたりするリハビリです。

脳梗塞や脳出血(以下、脳卒中といいます)を発症された方のリハビリのひとつで、世界的に有効性が確認されています。

本記事では、脳卒中当事者の方へ向けて課題指向型訓練について紹介します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/脳卒中認定理学療法士の針谷が執筆しています(筆者情報は記事最下部)。
・リハビリの効果や注意点に関しては、海外の信頼性が高い情報を引用しています。

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脳卒中リハビリにおける課題指向型訓練とは?

最初に、本記事のまとめです。

  • 課題指向型訓練は世界的に有効性が報告されているスタンダードなリハビリ
  • 課題指向型訓練は手のリハビリとしても歩行のリハビリとしても有効性が報告されている
  • メリットは『有効である可能性が高いこと』デメリットは『担当セラピストの知識・スキルによる可能性があること』

以下、説明します。

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YouTubeでも同じ内容を解説しています。

課題指向型訓練とは?

課題指向型訓練は、手のリハビリとしても、歩行のリハビリとしても有効なリハビリです。

わかりやすい特徴としては、『動作の練習をする』ところです。

手のリハビリでは、『ドアを開ける』『ブラシで髪をとかす』『ボールを持つ』『ブロックをつまむ』『コーンを積み上げる』などの練習を行います。

腕や手のリハビリとしての課題指向型訓練を説明する図
課題指向型訓練(腕・手)のイメージ

歩行のリハビリでは『段差を上る』『椅子から立ち上がる』『線を跨ぐようにして足を前に出す』などの練習を行います。

脚や足のリハビリとしての課題指向型訓練を説明する図
課題指向型訓練(脚・歩行)のイメージ

筋力トレーニングとの違い

課題指向型訓練のイメージを深めるために、イメージのしやすい筋力トレーニングと比較します。

課題指向型訓練筋力トレーニング
ドアを開ける手をグーパーする
ブラシで髪をとかす手首をぐるぐる回す
ボールを持つ腕を挙げたり下げたりする
ブロックをつまむ腕を外に開く
コーンを積み上げる足首を動かす
段差を上る膝の曲げ伸ばしをする
椅子から立ち上がる体幹をひねる
課題指向型訓練で実施すること・しないこと

上記のように、課題指向型訓練は筋トレのようなシンプルな関節運動だけの練習をしません。

物品を使いながら実施するリハビリです。

これによって、実生活で使える動作の獲得を目指します。

課題指向型訓練の誤解

課題指向型訓練について、下記のようなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

  • 同じことを何回もやるだけのリハビリ
  • 当事者さんの個別性を無視する機械的なリハビリ

これらは誤解です。

課題指向型訓練は当事者さんの個別性に合わせて、“必要な運動” を “必要な分だけ” 行うリハビリです。

脳卒中患者さんへの課題指向型訓練の効果

課題指向型訓練は、世界的にその有効性が広く知られています。

脳卒中治療ガイドライン2021では、課題指向型訓練は日常生活動作障害や、上肢機能障害に対するリハビリの方法として推奨されています。

脳卒中治療ガイドラインに沿ってリハビリを進めるのが有益な理由はこちら

課題指向型訓練の効果【手】

腕や手のリハビリとしての課題指向型訓練を説明する図

課題指向型訓練は、物品に手を伸ばす動作や、物品をつかむ動作などの改善を目指す場合に有効であることが報告されています(French B, 2016)。

発症からの経過によって効果が変わる

腕・手のリハビリとしての課題指向型訓練の病期による効果の違い

なお、発症からの経過によってその効果は異なると考えられており、『発症から16日〜6ヶ月において有効』という報告がなされています。

日本であれば、回復期病院に入院している頃です。

回復期に入院しているとき、課題指向型訓練を行うことは適切な判断であると言えます。

慢性期でも条件によっては有効とされる

French B(2016)らの研究によると、発症から6ヶ月以上経過した方々に対しては有効とは言えない結果になっています。

一方で、データをひとつひとつ確認すると、慢性期の脳卒中患者さんに対しても課題指向型訓練が有効であるケースも報告されています。

有効なケースは、下記の通りです。

①重度の運動障害を持つ患者さんに対しては腕や手の運動機能を向上させる
②週5回以上の集中的な課題指向型訓練はリーチ動作などを向上させる
③軽度の運動障害を持つ患者さんに対しては日常生活での麻痺手の使用状況を改善させる

課題指向型訓練は国内・海外ともに有効性が報告されている優れたリハビリです。

しかし、『課題指向型訓練をやればなんでもOK』ではなく、有効な条件を確認して適切に行うことが大事です。

課題指向型訓練の効果【脚・歩き】

歩行の自立度、歩行距離、バランス、脚の運動機能に対して有効であることが報告されています(French B, 2016)。

また、腕や手に対して行う場合と同じく、発症からの経過によって効果が変わるとされています。

歩行・脚のリハビリとしての課題指向型訓練の病期による効果の違い

脚や歩行のリハビリとして行う場合は、発症から6ヶ月以上経過した脳卒中患者さんに対して有効です。

一方で、発症から6ヶ月未満の患者さんに対しては有効とは言えないと報告されていますので、注意が必要です。

豆知識:脚・歩行の課題指向型訓練について
課題指向型訓練は腕・手にも、脚・歩行にも有効であるというデータがあることは間違いのない事実です。一方、課題指向型訓練は腕や手のリハビリとして研究されることが多く、脚や歩行のリハビリとしてはまだ研究数が少ないのが現状です。今後の研究次第では有効性の解釈が変わる可能性があります。

なお、日本で広く行われているボバース・コンセプトに基づくリハビリよりは課題指向型訓練の方が有効であるという報告がなされています(Scrivener K, 2020)。

ボバース・コンセプトのエビデンスについて詳しく知りたい方はこちら

課題指向型訓練のメリットとデメリット

メリットとデメリットは患者さんの状況や価値観などによって異なりますが、一般的なメリットとデメリットを紹介します。

メリット

  • 世界的に有効性が広く報告されており、多くの患者さんに有効である可能性が高い
  • 実生活で使う動作” の獲得につながる
  • CI療法では適応にならない中等度の運動障害がある患者さんも実施可能

リハビリにはいくつもの方法がありますが、課題指向型訓練は手に対するリハビリとしても、歩行に対するリハビリとしても有効性が広く報告されています。

また、課題指向型訓練は『ものをつかむ』などの行為に必要な、リーチ動作・グラスプ動作・ピンチ動作の向上につながりやすいです。

筋力が上がったり、関節が柔らかくなったとしても、生活の中で物品をつかんだり、持ち上げたりできるようにならなければ意味がありません。

その点、課題指向型訓練は優れたリハビリであると言えます。

また、似たようなリハビリのひとつに “CI療法” があります。

CI療法について詳しく知りたい方はこちら

CI療法は手のリハビリのひとつです。

軽度の運動障害を持つ患者さんに対しては有効ですが、中等度〜重度の患者さんに対しては適応になりません。

中等度の運動障害をお持ちの患者さんであれば、CI療法はできなくても、課題指向型訓練を行うことができます。

豆知識:重度の運動障害がある患者さんへのリハビリ
なお、重度の運動障害をお持ちの患者さんに対しても課題指向型訓練を行うことは可能ですが、重度の運動障害に対しては電気刺激療法やミラーセラピー、運動イメージ療法など別の選択肢もあります。

デメリット

  • 発症からの経過によって効果が変わる
  • 効果の大きさが担当セラピストに依存してしまう部分がある

『やれば確実に効果が出る』のが望ましいですが、課題指向型訓練の効果は発症からの経過によって変わることが報告されています。

また、課題指向型訓練は、患者さんにとって必要な運動課題を準備できるか、課題の易しさ・難しさの調整を適切に行えるか、といったポイントがあります。

これらのポイントは患者さんご自身が気をつけるものではなく、担当セラピストが事前に準備したり、リハビリ中の患者さんの動きを確認しながら調整するものです。

したがって、効果の大きさが担当セラピストに依存してしまう可能性があります。

課題指向型訓練を有効活用しよう!

課題指向型訓練は脳卒中リハビリテーションの中でもとても有効なリハビリのひとつです。

ストレッチや筋力トレーニングは身体が柔らかくなったり筋力がつくことが報告されていますが、動作ができるようになることに対しては弱いです。

一方、課題指向型訓練は動作ができるようになることに強いリハビリになりますので、生活をよくしたいという方には有効なリハビリです。

課題指向型訓練を有効活用していきましょう!

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参考文献

French B, Thomas LH, Coupe J, McMahon NE, Connell L, Harrison J, Sutton CJ, Tishkovskaya S, Watkins CL. Repetitive task training for improving functional ability after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Nov 14;11(11):CD006073.

Cha HG, Oh DW. Effects of mirror therapy integrated with task-oriented exercise on the balance function of patients with poststroke hemiparesis: a randomized-controlled pilot trial. Int J Rehabil Res. 2016 Mar;39(1):70-6.

Wang RY, Tseng HY, Liao KK, Wang CJ, Lai KL, Yang YR. rTMS combined with task-oriented training to improve symmetry of interhemispheric corticomotor excitability and gait performance after stroke: a randomized trial. Neurorehabil Neural Repair. 2012 Mar-Apr;26(3):222-30.

Scrivener K, Dorsch S, McCluskey A, Schurr K, Graham PL, Cao Z, Shepherd R, Tyson S. Bobath therapy is inferior to task-specific training and not superior to other interventions in improving lower limb activities after stroke: a systematic review. J Physiother. 2020 Oct;66(4):225-235.