電気刺激療法は、脳卒中リハビリのひとつです。

あらゆる症状に対して有効とされており、リハビリで幅広く使用されます。

本記事では、脳卒中患者さんに向けて、リハビリにおける電気刺激の種類や効果について紹介します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN運営責任者で理学療法士の針谷が執筆しています(筆者情報は記事最下部)。
・リハビリの効果や注意点に関しては、信頼性の高いシステマティックレビュー研究、ランダム化比較試験から得られたデータを引用しています。

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脳卒中リハビリにおける電気刺激療法とは?

最初に本記事のまとめです。

  • 電気刺激療法は電気刺激を神経や筋肉に与えるリハビリ
  • 脳卒中リハビリでは神経筋電気刺激、経皮的電気刺激、筋電トリガー式電気刺激が使われることが多い
  • 国内で主に使われる機器はエスパージとIVES
  • 通常のリハビリに+αとして使うことでより大きな効果を期待できる
  • 腕や手の運動障害、下肢の痙縮(筋肉の強ばり)、歩行障害に対して有効

電気刺激療法は、電気刺激を神経や筋肉に与えるリハビリ方法で、世界中で脳卒中患者さんに対する有効性が報告されています。

また、日本脳卒中学会が発行している脳卒中治療ガイドライン2021では、上肢機能障害や痙縮、歩行障害に対して電気刺激療法を行うことが推奨されています。

腕や手へ電気刺激をしている図
腕や手への電気刺激
脚へ電気刺激をしている図
脚への電気刺激

脳卒中リハビリにおける電気刺激の種類

電気刺激にはいろいろな種類がありますが、脳卒中リハビリでは下記の3つが使用されることが多いです。

  • 神経筋電気刺激(NeuroMuscular Electrical Stimulation:NMES)
  • 経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)
  • 筋電トリガー式電気刺激

その他、フットスイッチ型、電気鍼などがあります。

神経筋電気刺激(NMES)

電気刺激が流れる(オン)・電気刺激が止まる(オフ)があるタイプの電気刺激です。

筋活動や運動障害の改善を目的に使用されることが多いです。

経皮的電気刺激(TENS)

NMESがオン・オフを繰り返すタイプの電気刺激であるのに対し、TENSはオン状態が続くタイプの電気刺激です。

鎮痛を目的に使用されることが多いです。

筋電トリガー式電気刺激

患者さんが手や足を動かそうとした時、その動きをアシストするように自動的に電気が流れるタイプの電気刺激です。

運動障害の改善を目的に使用されることが多いです。

どのような機器が使われるか?

病院によって置いてある機器は異なりますし、『この機器が正解!』という答えはないですが、多く使われていると思われるものを2つ紹介します。

エスパージ(伊藤超短波社製)

エスパージは、神経筋電気刺激と経皮的電気刺激を与えることができる機器です。

周波数、パルス幅、刺激強度、ランプアップ・ランプダウン時間といった刺激条件を細かく設定できるので、大抵のエビデンスに基づく電気刺激を行うことが可能であり、とても利便性の高い機器です。

エスパージの詳細はこちら(伊藤超短波株式会社のホームページ)

IVES(オージー技研株式会社)

IVESは、筋電トリガー式電気刺激を与えることができる機器です。

複数の刺激パターンを持っており、電気のオン・オフのスイッチを人間が操作できるようになっているため、エスパージとは違うタイプの電気刺激を与えることができます。

IVESの詳細はこちら(オージー技研株式会社のホームページ)

家庭用電気刺激機器は有効か?

患者さんから家庭用電気刺激機器の有効性について質問いただくことがあります。

電気刺激療法で効果を期待するために大事なポイントは下記の3つです。

  • 刺激条件が適切か?
  • 適切な運動と組み合わされているか?
  • 適切な時間、頻度、期間で行われているか?

電気刺激は流せばいいというものではなく、リハビリの目的や患者さんの状態などによって適切な刺激条件、適切な運動、適切な時間・頻度・期間があります。

家庭用の電気刺激機器でも医療用と同じような刺激条件をセッティングすることで有効な電気刺激を利用できる可能性はありますが、適切な運動と組み合わせる、適切な時間・頻度・期間を設定するという点で専門家の判断が必要になります。

また、後述しますが電気刺激には禁忌という『電気刺激を実施すべきでない患者さんやその状態や部位』があり、場合によっては事故につながる可能性があります。

そういったことを踏まえると、ご自身の判断で家庭用電気刺激を購入するよりは、担当セラピストや医師に相談した上でどの機器を使うべきか、どのようなリハビリを行うべきか、を検討した方がよいと思います。

電気刺激のリハビリ効果

電気刺激は腕や手のリハビリとしても、脚・歩行のリハビリとしても有効であることが知られています。

腕・手のリハビリ効果

腕の図

運動パフォーマンスへの効果

リーチ動作(手を前に伸ばす動作)、グラスプ動作(ものを掴む動作)、ピンチ動作(ものをつまむ動作)、などの複数の関節を使う運動を運動パフォーマンスと言います。

電気刺激療法は、腕や手の運動パフォーマンスを向上させる上で有効とされています(Howlett OA, 2015)。

運動機能への効果

指を開く・握る、指を1本ずつ動かすなどの細かい動作、単純な動作を行う機能のことを運動機能と言います。

電気刺激療法は、運動機能の向上に対しても有効とされています(Yang JD, 2019)。

痙縮への効果

筋肉の緊張が高くなり、麻痺した側の身体がこわばってしまう症状を痙縮と言います。

電気刺激療法は、肘関節や手関節の痙縮に対しては有効とは言えないと報告されています(Stein C, 2015)。

脳卒中治療ガイドライン2021では痙縮に対し電気刺激が推奨されていますが、上肢に対する有効性はまだはっきりしていません。

なお、肘関節や手関節の痙縮に対しては局所的振動刺激が有効とされており(Avvantaggiato C, 2021)、肘・手関節の痙縮を改善させたい場合は振動刺激を用いる方が良いでしょう。

肩の亜脱臼への効果

脳卒中を発症すると、麻痺した側の肩まわりの筋肉が弱くなってしまい、肩関節が亜脱臼してしまうことがあります。

肩の亜脱臼に対し、電気刺激は有効であることが報告されています(Lee JH, 2021)。

ただし、有効なのは急性期であり、慢性期では有効とは言えないとされています。

肩の痛みへの効果

脳卒中発症後は、肩の痛みを感じることがあります。

電気刺激療法は、肩の痛みを改善させる上で有効と報告されています(Qiu H, 2019)。

また、肩の痛みがあると腕を外に開く(外旋させる)ことが難しくなるのですが、痛みが緩和すると同時に、痛みなく腕を外に開くことができる範囲も広がると報告されています。

脚や歩行のリハビリ効果

脚の図

歩行への効果

脳卒中を発症すると脚・足の運動障害やバランスの低下が生じ、それにより歩行障害(歩きにくさ)が生じます。

電気刺激は、歩行速度を向上させる上で有効であることが報告されています(Howlett OA, 2015; Lin S, 2018)。

なお、歩くのが速い人は歩行自立しやすいことが知られており、歩行速度が向上していく中で歩行が自立する可能性も上がります。

バランスへの効果

脳卒中を発症すると、脚・足の運動障害や感覚障害などの理由により、バランスの低下が生じます。

バランス障害に対する電気刺激の有効性については、発症6ヶ月以降であれば有効(Hong Z, 2018)とされているものの、発症6ヶ月未満であれば有効とは言えない(Busk H, 2020)とされています。

また、細かいレベルのバランスをみる『重心動揺検査』で見たときにも、回復期〜慢性期の患者さんに対して電気刺激が有効という報告があります(Lin S, 2018)。

痙縮への効果

足の痙縮に対する効果ですが、電気刺激は痙縮の改善に有効であるとされています(Lin S, 2018; Stein C, 2015)。

なお、電気刺激の種類によって刺激の条件を変えることを推奨する研究も報告されており、経皮的電気刺激を単独で行う場合は30分、経皮的電気刺激と運動療法を組み合わせる場合は、60分かつ神経に走行に合わせて電極を装着すると効果的であることが報告されています(Mahmood A, 2019)。

なお、神経とは『総腓骨神経』を指すことが多いです。

脚の電気刺激でよく使われる刺激ポイント

電気刺激における禁忌

電気刺激には、禁忌という『電気刺激を実施すべきでない患者さんやその状態や部位』があります。

つまり、禁忌に該当する状態の患者さんや、禁忌に該当する身体部位には原則的に電気刺激を実施してはいけません。

禁忌は電気刺激機器によって異なる場合がありますので、まずは使用する予定の機器の取り扱い説明書を読む必要があります。

また、禁忌でないかどうかは担当セラピストに確認してみてください!

禁忌対象者

心臓ペースメーカーなど体内に医療機器を埋め込んでいる人
悪性腫瘍がある人、感染症がある人
皮膚知覚障害の人
幼児または意思表示ができない人

禁忌部位

心臓の上

感覚が損なわれている部位
頸動脈洞上
静脈や動脈の血栓症または血栓性静脈炎の領域の近く
体内に金属・プラスチックを埋め込んである部位
妊婦の腹部、腰部、骨盤部

詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

電気刺激療法のメリット・デメリット

メリットとデメリットは患者さんの状況や価値観などによって異なりますが、一般的なメリットとデメリットを紹介します。

メリット

  • 幅広い症状に対し有効である
  • 他のリハビリ+αで実施できる

電気刺激療法は、上述の通り、幅広い症状に対して有効性が報告されています。

また、電気刺激療法は腕や手の課題指向型訓練、脚・歩行のためのバランス練習や歩行練習と併用して実施することが可能です。

他のリハビリ+電気刺激療法の有効性を報告した研究もあります(Kim TH, 2013; Carrico C, 2016; Lee HJ, 2013)。

デメリット

  • 事故のリスクがある
  • 電気のセッティングに時間がかかる

先述の通り、電気刺激療法には禁忌があります。

禁忌に該当する場合、怪我などのアクシデントが起こる可能性がありますので、電気刺激を避ける必要があります。

また、電気刺激はセッティングに時間が少々かかります。

特に一番最初に電気刺激療法を行う場合は、電極を身体に貼る作業をする際に、電気刺激が反応しやすいポイントを探すのに時間がかかることがあります。

とは言え、2回目以降は1〜2分でセッティングできますので、それほど大きなデメリットに感じないかもしれません。

電気刺激療法はどこで受けられる?

電気刺激療法は、機器さえあれば受けることが可能です。

病院

入院リハビリを提供している病院では、電気刺激を受けられる可能性が高いです。

また、外来リハビリでも受けられる可能性は高いです。

ただし、電気刺激機器を置いていない病院もありますので、担当セラピストに確認してみてください!

訪問看護リハビリ

訪問看護リハビリでは電気刺激機器を持ち歩いているセラピストであれば、受けることが可能です。

ただし、多くの事業所では電気刺激機器の持ち歩きを行なっていないので、訪問看護リハビリで電気刺激療法を受けられることは稀でしょう。

自費リハビリ

自費リハビリを提供している施設でも電気刺激療法を受けられることがあります。

ただし、施設に置いてあるかどうかは確認してみないとわかりません。

予め確認しておくことをお勧めします。

電気刺激療法を有効活用しよう!

電気刺激療法は、脳卒中後の後遺症に幅広く対応可能なリハビリです。

受けられる環境なのであれば、有効活用していきましょう!

EBP東京自費リハビリ

東京23区内を対象にした訪問型自費リハビリサービスです。世界的には標準的に行われているEvidence Based Practice(科学的根拠に基づく実践)という手法、そして独自に開発したリハビリアルゴリズムを用い、脳卒中/神経系に特化したリハビリを提供します。
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参考文献

Howlett OA, Lannin NA, Ada L, McKinstry C. Functional electrical stimulation improves activity after stroke: a systematic review with meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2015 May;96(5):934-43.

Yang JD, Liao CD, Huang SW, Tam KW, Liou TH, Lee YH, Lin CY, Chen HC. Effectiveness of electrical stimulation therapy in improving arm function after stroke: a systematic review and a meta-analysis of randomised controlled trials.  Clin Rehabil. 2019 Aug;33(8):1286-1297.

Stein C, Fritsch CG, Robinson C, Sbruzzi G, Plentz RD. Effects of Electrical Stimulation in Spastic Muscles After Stroke: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Stroke. 2015 Aug;46(8):2197-205.

Avvantaggiato C, Casale R, Cinone N, Facciorusso S, Turitto A, Stuppiello L, Picelli A, Ranieri M, Intiso D, Fiore P, Ciritella C, Santamato A. Localized muscle vibration in the treatment of motor impairment and spasticity in post- stroke patients: a systematic review. Eur J Phys Rehabil Med. 2021 Feb;57(1):44-60.

Lee JH, Baker LL, Johnson RE, Tilson JK. Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for management of shoulder subluxation post-stroke: a systematic review with meta-analysis. Clin Rehabil. 2017 Nov;31(11):1431-1444.

Qiu H, Li J, Zhou T, Wang H, Li J. Electrical Stimulation in the Treatment of  Hemiplegic Shoulder Pain: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Phys Med Rehabil. 2019 Apr;98(4):280-286.

Lin S, Sun Q, Wang H, Xie G. Influence of transcutaneous electrical nerve stimulation on spasticity, balance, and walking speed in stroke patients: A systematic review and meta-analysis. J Rehabil Med. 2018 Jan 10;50(1):3-7.

Busk H, Stausholm MB, Lykke L, Wienecke T. Electrical Stimulation in Lower Limb During Exercise to Improve Gait Speed and Functional Motor Ability 6 Months Poststroke. A Review with Meta-Analysis. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Mar;29(3):104565.

Hong Z, Sui M, Zhuang Z, Liu H, Zheng X, Cai C, Jin D. Effectiveness of Neuromuscular Electrical Stimulation on Lower Limbs of Patients With Hemiplegia After Chronic Stroke: A Systematic Review. Arch Phys Med Rehabil. 2018 May;99(5):1011-1022.e1.

Mahmood A, Veluswamy SK, Hombali A, Mullick A, N M, Solomon JM. Effect of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation on Spasticity in Adults With Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2019 Apr;100(4):751-768.

Kim TH, In TS, Cho H. Task-related training combined with transcutaneous electrical nerve stimulation promotes upper limb functions in patients with chronic stroke. Tohoku J Exp Med 2013; 231:93-100.

Carrico C, Chelette KC 2nd, Westgate PM, Powell E, Nichols L, Fleischer A, Sawaki L. Nerve Stimulation Enhances Task-Oriented Training in Chronic, Severe Motor Deficit After Stroke: A Randomized Trial. Stroke. 2016 Jul;47(7):1879-84.

Lee HJ, Cho KH, Lee WH. The effects of body weight support treadmill training with power-assisted functional electrical stimulation on functional movement and gait in stroke patients. Am J Phys Med Rehabil. 2013 Dec;92(12):1051-9.