
脳卒中後の睡眠障害は、脳梗塞・脳出血のあとに眠れない・夜中に何度も目が覚める・昼夜が逆転するといった形で現れ、脳卒中を経験した方の30〜60%以上に何らかの睡眠の不調が残ることが報告されています(Hasan, 2021)。
「夜に何度も目が覚めてしまう」「朝までずっと天井を見ている」「昼間にウトウトして夜眠れない」――。
そんな変化は、脳のダメージそのものや、入院中の環境、痛み、抑うつなどが重なって起こる脳卒中後の睡眠障害が原因かもしれません。
睡眠の問題は気合いで乗り切るものではなく、原因を分けて考えれば対処の道筋がはっきり見えてきます。
この記事では、脳卒中後に眠れない・昼夜逆転が起こる仕組み、自宅でできる対処法、医療機関を受診すべきタイミング、家族の関わり方を、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
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・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)
また、睡眠に関して以下のような症状がある場合は、早めに主治医・脳神経内科・睡眠外来にご相談ください。
・夜間に大きないびきと呼吸の止まり(無呼吸)を家族が目撃する
・日中の強い眠気で運転や仕事に支障が出る
・1週間以上、ほとんど眠れない日が続く
・「死にたい」「消えたい」という気持ちを伴う不眠
・睡眠薬を飲み始めてから足元がふらつく・転倒が増えた
脳卒中 睡眠障害とは|眠れない・昼夜逆転の正体
脳卒中後の睡眠障害は、脳梗塞や脳出血のあとに新しく現れる「眠りに関する困りごと全般」を指します。
ひと口に睡眠障害と言っても、症状はひとつではありません。
大きく分けると、「眠れない(不眠)」「呼吸が止まる(睡眠時無呼吸)」「日中眠い(過眠)」「昼夜が逆転する」の4つに整理できます(Rissardo, 2025)。
脳卒中後に多い睡眠障害の4タイプ
| タイプ | 主な訴え | 代表的な原因 |
|---|---|---|
| 不眠 | 寝つけない/夜中に何度も目が覚める/早朝に目が覚める | 脳の傷/痛み/抑うつ/薬/入院環境 |
| 睡眠時無呼吸 | 大きないびき/夜間に呼吸が止まる/朝の頭痛/日中の眠気 | のどの筋肉のゆるみ/脳幹の呼吸調節障害 |
| 過眠(強い眠気) | 日中ずっとウトウトしてしまう/会話中にも眠ってしまう | 視床・脳幹のダメージ/薬の副作用 |
| 昼夜逆転 | 夜に冴えて眠れず、昼に眠ってしまう/時間の感覚がずれる | 概日リズムの乱れ/日光不足/活動量低下 |
これらは別々に起こることもあれば、複数のタイプが重なって出ることも多いのが脳卒中後の特徴です。
どれくらいの人に起こる?頻度のデータ
脳卒中後の睡眠障害は、決してまれな症状ではありません。
2021年に公開された脳卒中後の睡眠障害をまとめた分析では、急性期から慢性期にかけて30〜60%以上の方に何らかの睡眠の不調が残ることが報告されています(Hasan, 2021)。
2020年に発表された不眠症だけに絞った分析では、脳卒中後に不眠症の診断がつく方の割合は約4割前後と報告されています(Baylan, 2020)。
2024年に公開された脳卒中後の不眠発症をまとめた分析でも、ほぼ同じ範囲の数字が出ています(Yang J, 2024)。
睡眠時無呼吸については、さらに高い頻度で見つかります。
2019年に公開された脳卒中・一過性脳虚血発作の方を対象にした分析では、何らかの睡眠時無呼吸が見つかる割合は7割前後と報告されています(Seiler, 2019)。
2024年に公開された有病率の時間トレンド分析でも、脳卒中後の睡眠時無呼吸の高頻度は変わっていないことが確認されています(Su X, 2024)。
つまり、脳卒中のあとに眠りの問題を抱えるのは「特別なこと」ではなく、むしろ多くの方に起こっている共通の問題です。
なぜ脳梗塞・脳出血のあとに眠れなくなるのか
脳卒中後の睡眠障害は、ひとつの原因では説明できません。
主な原因は、「脳のダメージそのもの」「身体の症状」「環境・生活リズムの変化」「心の問題」の4つが重なって起こります(Gottesman, 2024)。
原因① 脳の睡眠中枢のダメージ
睡眠と覚醒は、脳幹(のうかん)と視床(ししょう)、視床下部(ししょうかぶ)という脳の深い場所が司っています。
脳梗塞や脳出血でこの領域がダメージを受けると、眠るためのスイッチがうまく入らなくなったり、逆に強い眠気が続いたりします(Rissardo, 2025)。
特に視床の脳卒中では、過眠(日中の強い眠気)が出やすいことが知られています。
原因② 概日リズム(体内時計)の乱れ
人の体には、約24時間の周期で活動と休息を切り替える「体内時計」があります。
2021年に発表された概日リズムと脳卒中の総説では、脳卒中そのものが体内時計を乱し、夜間の血圧・ホルモン分泌・睡眠のパターンに影響を与えることが報告されています(Lo, 2021)。
2024年に発表された脳卒中×概日医学の総説でも、夜間と早朝に脳卒中が起こりやすいこと、回復過程で体内時計が乱れやすいことが整理されています(Mergenthaler, 2024)。
2026年に公開された脳卒中後の体内時計の乱れに関する分析では、概日リズムの乱れが大きい方ほど回復の予後が悪い傾向が示されました(Zhang M, 2026)。
入院中はカーテンの中の生活で日光を浴びにくく、検査や処置で深夜にも起こされやすいため、体内時計が「ずれっぱなし」になりやすい環境です。
原因③ 身体の症状(痛み・尿意・けいれん)
麻痺した肩や手の痛み、けいれん性のこわばり、頻尿、足のむずむず感などは、夜間に何度も目を覚まさせる原因になります。
2024年に公開された脳卒中後の不眠の予測因子に関する分析では、痛み・抑うつ・脳卒中の重症度が不眠と強く関連していたと報告されています(Mohandas, 2024)。
2023年にインドの病院で行われた横断研究でも、痛み・抑うつ・睡眠時無呼吸が脳卒中後の睡眠の質を下げる主な要因として挙げられています(Tayade, 2023)。
肩の痛みについては、別記事の脳卒中後の肩の痛み|原因と治療の選び方もあわせてご覧ください。
原因④ 抑うつ・不安などの心の問題
脳卒中のあとには、抑うつや不安が起こりやすくなります。
抑うつ症状そのものが「眠れない」「早朝に目が覚める」を強く引き起こし、睡眠が崩れるとさらに抑うつが悪化するという悪循環が起こります。
脳卒中後のうつについては、別記事の脳卒中後うつ|原因とリハビリでできる対策で詳しく解説しています。
原因⑤ 入院環境・退院後の生活リズム
入院中は、夜間の見回り・ナースコール・同室の方の物音などで睡眠が分断されやすくなります。
退院後も、外出の機会が減ったり、家事や仕事から離れて活動量が落ちると、「夜眠るための疲れ」が溜まらず昼夜が逆転しやすくなります。
睡眠時無呼吸(SAS)と脳卒中の深い関係
脳卒中後の睡眠で、特に見落とされやすいのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
これは、寝ているときにのどが塞がって呼吸が止まったり浅くなったりする病気で、夜間に何度も酸素が下がり、脳と心臓に大きな負担をかけます。
2019年に公開された脳卒中・一過性脳虚血発作の方を対象にした分析では、何らかの睡眠時無呼吸が見つかる割合は約7割と報告されています(Seiler, 2019)。
SASが脳卒中の回復・再発に与える影響
2026年に公開された脳卒中後の睡眠時無呼吸とアウトカムの分析では、SASがあると機能予後・認知機能・抑うつのいずれも悪化しやすい傾向が示されました(Gu, 2026)。
同じく2023年に公開された脳卒中後の睡眠障害と再発の分析でも、睡眠障害がある方は心血管・脳血管イベントの再発が増えることが報告されています(Hale, 2023)。
2022年に公開された慢性不眠症と脳卒中の関係をまとめた分析では、慢性的な不眠が将来の脳卒中の独立した危険因子であることも示されています(Silva, 2022)。
つまり、睡眠の問題は「眠れないだけ」では済まず、再発予防の観点からも放置できないテーマです。
再発予防全般については、脳卒中の再発予防|食事・運動・薬で何ができるかで別途まとめています。
SASを疑うサインのチェックリスト
- 家族に大きないびきを指摘される
- 夜中に「呼吸が止まっていた」と目撃されたことがある
- 朝起きたときに頭が痛い・口の中がカラカラ
- 日中、会議中や運転中にも眠気が襲ってくる
- 夜間に何度もトイレに起きる
- 体型が太めで首が短い/顎が小さい
3つ以上当てはまる場合は、主治医に「睡眠時無呼吸の検査を受けたい」と相談する目安になります。
検査は、簡単な機器を自宅で一晩つけて寝るタイプ(簡易検査)から始まり、必要があれば1泊入院で詳しく調べる検査に進みます。
CPAP(シーパップ)治療でどのくらい改善する?
睡眠時無呼吸と診断された場合、もっとも効果が確認されている治療がCPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)です。
夜寝るときに専用のマスクをつけ、軽い空気の圧でのどを開いた状態に保つ装置です。
2026年に公開された脳卒中後のSASへのCPAPをまとめた分析では、CPAPを続けた方は日中の眠気と神経機能の回復が改善する傾向が示されました(Suusgaard, 2026)。
2026年に公開された脳卒中後の陽圧呼吸療法をまとめた最新の分析でも、睡眠の質と昼間の眠気スコアの改善が報告されています(Sampsonas, 2026)。
2023年に公開された脳卒中×OSAでのCPAPの分析でも、CPAPを継続できた方は機能予後が改善したことが示されています(Fu, 2023)。
認知機能への効果については、2023年に公開された分析でCPAP使用群で注意・遂行機能の一部改善が見られたことが報告されています(Yang Y, 2023)。
CPAPの限界と続けるコツ
一方で、CPAPだけで脳卒中の再発が大幅に下がるとは現時点では言い切れません。
2026年の分析でも、再発予防効果については研究によって結果がばらついており、確定的な結論は出ていません(Sampsonas, 2026)。
これは、CPAPを途中でやめてしまう方が多いことも一因です。
マスクが合わない・寝苦しいといった理由で半数前後の方が脱落するため、長く続ける工夫がとても大切になります。
- マスクの種類(鼻だけ/鼻+口)を複数試して合うものを選ぶ
- 最初の1〜2週間は短時間(1〜2時間)から慣らす
- 装置のデータを担当医・臨床検査技師と一緒に毎月確認する
- 麻痺側でマスクの装着が難しい場合は家族に手伝ってもらう
- つらいときは1人で抱え込まず、医師にマスク変更・圧の再調整を相談する
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薬に頼る前に試したい睡眠衛生(自宅でできる対処)
睡眠時無呼吸が除外できた場合、まず取り組みたいのが「睡眠衛生」と呼ばれる生活習慣の整え方です。
2022年に公開された脳卒中・脳外傷後の睡眠障害への保存的介入をまとめた分析では、睡眠衛生や行動療法を含む非薬物的アプローチが、薬物療法と並ぶ第一の選択肢として支持されています(Lowe, 2022)。
朝・日中にやること
- 起床時間を毎日同じにする(休日も±1時間以内)
- 起きてから30分以内に窓ぎわで日光を5〜10分浴びる
- 朝食を決まった時刻にとる
- 午前中に外気にあたる活動を入れる(散歩・通院・買い物)
- 昼寝は午後3時までに30分以内にとどめる
夕方・夜にやること
- 就寝の3時間前以降はカフェイン(コーヒー・お茶・コーラ)を控える
- 夕食は就寝の3時間前までに済ませる
- 就寝の1〜2時間前にぬるめの入浴(38〜40℃)
- 寝る前のスマホ・タブレットの強い光を避ける
- 寝酒(飲酒)で眠ろうとしない(途中覚醒が増える)
- 寝室の明かりを暗めに、室温を快適に(夏25〜27℃/冬18〜20℃が目安)
布団に入ってからのルール
- 布団に入って20分眠れないときは、いったん起きて暗い別室で過ごす
- 「眠らなくては」と力まない(覚醒度が上がってしまう)
- 時計を頻繁に見ない(時刻確認が不安を悪化させる)
- 布団は「寝るためだけの場所」にし、テレビ・スマホ・読書は他の場所で
すべてを完璧にやろうとせず、まずは「朝の日光」と「同じ起床時間」の2つから始めるのが続きやすいです。
行動療法(CBT-I)と運動療法の効果
睡眠衛生だけでは改善が難しい不眠には、「不眠症のための認知行動療法(CBT-I)」と呼ばれる、考え方と行動を整える治療があります。
これは、眠れない夜に「眠らなくては」と力んでしまう悪循環を断ち切るための、医療者と一緒に行う行動の練習です。
2025年に公開された慢性疾患を抱える方を対象としたCBT-Iの分析では、薬を使わなくても不眠の重症度スコアが明らかに改善し、抑うつや不安も軽くなったと報告されています(Scott, 2025)。
ただし、これは慢性疾患全体を対象にした分析で、脳卒中だけに絞った大きな研究はまだ少ないのが現状です。
脳卒中・脳外傷の方への睡眠の保存的治療をまとめた分析でも、CBT-Iは有望ですが今後さらに研究が必要とされています(Lowe, 2022)。
運動でも睡眠は良くなる
2022年に公開された慢性期の脳卒中の方を対象とした分析では、運動を続けた方は睡眠の質と疲労感が改善したと報告されています(Tai, 2022)。
運動の種類は、ウォーキング・自転車・水中歩行・筋力トレーニングなど幅広く、「無理なく続けられるもの」を選ぶことがポイントです。
運動と疲労の関係については、脳卒中の疲労|疲れやすさの原因と対処法もあわせてご覧ください。
非侵襲的な脳への刺激(rTMS等)
2024年に公開された脳卒中後の睡眠障害への非侵襲的脳刺激の分析では、頭の外から脳に磁気を当てるrTMSなどで睡眠の質が改善する可能性が示されました(Huang, 2024)。
ただし、研究の数はまだ限られており、どの方に最適かはこれからの検証課題です。
脳梗塞 眠れないとき、薬はどう考える?
睡眠衛生・行動療法・運動を続けても改善しないときは、薬の選択肢が出てきます。
ただし、脳卒中後の方は通常の不眠の方より薬の影響を受けやすく、慎重な選択が必要です。
脳卒中後に注意が必要な薬
従来から使われてきたベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、ふらつき・転倒・認知機能の低下のリスクが上がることが知られています。
麻痺があってバランスが落ちている方では、これらの副作用が骨折につながりやすいため注意が必要です。
近年は、依存性が比較的少ないオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬といった選択肢も増えており、主治医・薬剤師と相談しながら自分に合った薬を選ぶことが大切です。
市販のサプリで安易に解決しない
市販のメラトニンサプリや「睡眠改善薬」と呼ばれる抗ヒスタミン系の市販薬は、持病の薬と相互作用したり、日中の眠気を強めたりすることがあります。
特に降圧薬・抗凝固薬・抗うつ薬を飲んでいる方は、新しいサプリを始める前に必ず主治医か薬剤師に確認してください。
脳卒中 昼夜逆転をリセットする1週間プラン
退院直後など昼夜が逆転してしまった場合は、1週間単位で計画的にリセットするのが現実的です。
無理に「今夜から夜型をやめる」とすると逆効果になりやすいため、段階的に進めます。
| 日 | 起床のゴール | 日中のポイント |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 今の起床時刻から30分早く | 起床後すぐに日光を5分/昼寝は15分以内 |
| 3〜4日目 | さらに30分早める | 朝食を必ずとる/午前中に外出または窓ぎわで30分過ごす |
| 5〜6日目 | 目標時刻の前後に近づける | 夕方以降のうたた寝を避ける/カフェイン午後3時まで |
| 7日目 | 目標時刻で固定 | 週1回は同じ生活リズムを家族と確認 |
ポイントは「就寝時刻を早めようとしない」「起床時刻を先に固定する」ことです。
起床時刻を整えると、自然と夜の眠気が前倒しになっていきます。
このリセットの間は「7時間きっちり眠ること」ではなく「同じ時刻に起きること」をゴールにしてください。
家族の関わり方|支える人ができること
睡眠障害は、本人だけでなくご家族の負担も大きい問題です。
同じ部屋で寝ているご家族の睡眠も削られ、結果として共倒れになりやすいテーマでもあります。
家族がやって良いこと
- 起床時間を一緒に固定する(声かけ・朝食の準備)
- 朝の散歩や日光浴に同行する
- 夜間のいびきや無呼吸を1〜2週間記録する(簡易な睡眠日記)
- 本人を責めず「眠れないのは脳の影響もある」と伝える
- 主治医の診察に同行し、夜間の様子を客観的に伝える
避けたほうがよい関わり方
- 「気持ちの問題」「気合いで眠りなさい」と責める
- 日中に長時間寝かせ続けてしまう
- 夜中に何度も「眠れた?」と声をかけて起こす
- 家族の判断で市販薬・サプリを始める
記録のおすすめは、就寝・起床・夜間に目覚めた回数・昼寝の時間を1〜2週間メモすることです。
これがあると、診察での医師の判断が格段に正確になります。
受診すべきタイミングと相談先
自宅での工夫だけで様子を見てよい場合と、すぐに医療機関に相談したほうがよい場合があります。
判断の目安を整理します。
すぐに相談したいサイン
- 家族にいびき・呼吸停止を指摘される
- 日中の眠気で運転・仕事・家事に支障が出ている
- 1週間以上、ほとんど眠れない日が続いている
- 抑うつ気分が強い/「死にたい」気持ちがある
- 睡眠薬を飲み始めてからふらつき・転倒が増えた
- 夜間に何度もトイレに起きて生活に支障が出る
どこに相談すればよいか
- かかりつけ医・脳神経内科:まず最初の相談窓口。必要に応じて専門科に紹介してもらえる
- 睡眠外来・呼吸器内科:睡眠時無呼吸の検査・CPAP導入を担当
- 精神科・心療内科:抑うつや不安が強い場合の不眠の治療
- リハビリテーション科:痛み・けいれん・活動量の低さによる不眠の対策
- 薬局・かかりつけ薬剤師:睡眠薬・サプリの相互作用の確認
退院後の生活リズムを整える視点全般については、退院後の脳卒中リハビリ完全ガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 脳梗塞後の不眠は時間が経てば治りますか?
急性期から数か月の間に自然に改善する方もいますが、慢性期に入っても続く方が一定数います。
2021年に公開された脳卒中後の睡眠障害をまとめた分析でも、発症から1年以上経っても3〜4割の方に何らかの睡眠障害が残ることが示されています(Hasan, 2021)。
「時間が経てば治る」と放置せず、続いているなら一度きちんと評価してもらうことをおすすめします。
Q. 睡眠薬を飲み続けても大丈夫ですか?
薬の種類と量によります。
麻痺がある方は、ふらつき・転倒・骨折のリスクが上がる種類があるため、定期的に主治医・薬剤師に「今の薬は続けてよいか」を確認してください。
長く飲んでいる薬を自己判断で急にやめるのは、不眠の悪化やリバウンドの原因になるため避けてください。
Q. いびきが大きいだけで検査を受けたほうがいいですか?
脳卒中の既往がある場合は、いびきだけでも一度SAS検査を検討する価値があります。
脳卒中・一過性脳虚血発作の方では、何らかの睡眠時無呼吸が7割前後で見つかると報告されているためです(Seiler, 2019)。
自宅で行える簡易検査もあるので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
Q. 寝室の明かりは完全に真っ暗にしたほうがよいですか?
真っ暗が望ましい方もいますが、麻痺がある場合は転倒予防の観点で足元灯(フットライト)を使うことをおすすめします。
夜間にトイレに起きるときに視界が確保でき、転倒・骨折のリスクを下げられます。
枕元や天井からの強い光は避け、目線より下に控えめな明るさで配置するのがコツです。
Q. 不眠と疲労はどう違いますか?
重なって出ることが多いですが、別々の問題です。
不眠は「眠れない・睡眠の質が悪い」状態で、脳卒中後疲労(PSF)は「十分に休んでも疲れが取れない」状態を指します。
不眠と疲労は互いに悪化させ合う関係にあるため、両方を一緒に整えていくことが大切です。
詳しくは脳卒中の疲労|疲れやすさの原因と対処法もご覧ください。
まとめ
- 脳卒中後の睡眠障害は「不眠/睡眠時無呼吸/過眠/昼夜逆転」の4タイプに分かれる
- 脳卒中を経験した方の30〜60%以上に何らかの睡眠の不調が残る
- 睡眠時無呼吸は脳卒中後の方の約7割に見つかり、再発リスクとも関わる
- 原因は脳のダメージ・概日リズム・身体症状・抑うつ・環境の重なりで起こる
- まずは睡眠衛生(朝の日光・同じ起床時刻・カフェイン制限)から始める
- SASが疑われたらCPAP、不眠ならCBT-Iと運動を組み合わせる
- 薬は転倒リスクと相互作用があるため、主治医・薬剤師と相談の上で慎重に
- 家族の観察記録は診察の精度を大きく上げる
次にやるべきこと:まずはご家族と一緒に1〜2週間、就寝・起床・夜間覚醒・昼寝の時間をメモし、いびきや無呼吸が3項目以上当てはまる場合はかかりつけ医に「睡眠時無呼吸の検査を受けたい」と相談してください。
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参考文献
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最終更新:2026年5月

