
片麻痺患者さんの着替えは、服の選び方・着脱の順番・自助具の3つを工夫すれば、介助なしで自分でできるところまで戻せる方が多いことが研究で示されています(Legg, 2017)。
「ボタンが留められない」「ズボンが片足ずつ上げられない」「家族の手を借りないと靴下も履けない」――。
そんな悩みは、片麻痺による更衣動作(着替え)の難しさとして、退院後の生活でいちばん最初にぶつかる壁です。
けれど、片麻痺の着替えには「やりやすい服の選び方」「着る順番のルール」「自立するための練習法」という、確立された工夫があります。
この記事では、片麻痺 着替えのコツを、衣服の選び方・上着とズボンの着脱手順・自助具・自立への練習方法まで、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。
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・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない・突然力が抜けた)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)
また、以下のような変化が新しく現れた場合は、早めに主治医・リハビリ担当者にご相談ください。
・麻痺側の肩を動かすと強い痛みが走る
・着替えの途中で何度も転倒しそうになる
・着替えに30分以上かかり疲労が抜けない
・以前できていた動作が急にできなくなった
片麻痺 着替えがむずかしくなる理由
脳卒中による片麻痺のあと、着替えがむずかしくなる理由は1つではありません。
片手しか自由に動かせない・肩や手指の動きが制限される・バランスを崩しやすい・着る手順を忘れる、といった複数の要因が重なって起こります。
下の表は、よくある「困りごと」と背景にある体の状態をまとめたものです。
| 着替えの困りごと | 背景にある体の状態 |
|---|---|
| ボタン・ファスナーが留められない | 麻痺側の手指で細かい操作ができない |
| 袖に腕が通せない | 麻痺側の肩が上がりにくい・肘が伸びにくい |
| ズボンが片足ずつ通せない | 座ったまま片足を持ち上げて差し入れる動作が不安定 |
| 立ち上がってズボンを引き上げられない | 立位バランスが取れない・転倒の不安 |
| 靴下を履けない | 麻痺側の足を反対の膝に乗せる姿勢が取れない |
| 着る順番がわからなくなる | 脳卒中後の高次脳機能の影響(段取りの低下) |
2014年に公開された複数の研究をまとめた分析では、脳卒中後の患者さんの自立した日常生活動作の獲得には、課題そのものをくり返し練習することが効果的と報告されています(Veerbeek, 2014)。
つまり、着替えがうまくできないからといって、「腕の力をつける筋トレ」ばかり繰り返しても、着替え自体は上達しにくいということです。
着替えがうまくなりたいなら、着替えそのものを練習するのが近道です。
片麻痺 更衣 自立のための「やりやすい服の選び方」
着替えを自分でできるかどうかは、リハビリの腕前だけで決まりません。
選ぶ服のかたち1つで、着替えの難易度は大きく変わります。
ここでは、退院後の生活を見据えて片手でも着脱しやすい服の条件を整理します。
上着・トップスの選び方
- 前開きシャツ(ボタンやファスナー付き)が、かぶり物より着脱しやすい
- 袖口は広め・ゆとりのあるもの(腕が通しやすい)
- 身ごろもややゆったり(肩関節の可動域が狭くてもひっかからない)
- 素材は伸縮性のあるもの(ストレッチ・ニット系)
- ボタンは大きめ(直径15mm以上)・少なめ
- ボタンの代わりにマグネット式・面ファスナー(マジックテープ)の前開きシャツも市販されている
かぶり物のセーターやTシャツは、首・肩・腕の3か所を同時に通す必要があり、麻痺側の肩が上がりにくい方には負担が大きいです。
どうしてもかぶり物にしたい場合は、首回りが大きく開いたタイプ(Vネック・ボートネック)を選ぶと、頭が通しやすくなります。
ズボン・下衣の選び方
- ウエストはゴム(ベルト不要)
- 素材はストレッチ素材・スウェット・ジャージタイプ
- 裾はゆとりのあるストレートまたはテーパード(細すぎは足首が通らない)
- ジーンズ・スキニーは着脱に時間がかかるため日常着では避ける
- ベルトが必要な場合は伸縮ベルト・マグネットバックルが便利
ウエストにゴムが入っているだけで、着脱の難しさは大幅に減ります。
市販のジーンズ風スウェットや、片麻痺・脳卒中の方向けに設計された「ユニバーサルファッション」「アダプティブウェア」のラインも各社から発売されています。
下着・靴下・靴の選び方
- 下着の上は前開きタイプ(後ろホックは片手で留めにくい)
- 靴下は履き口がゆるめ・伸びのよい素材・短めのソックス
- 5本指ソックス・厚手のソックスは履きにくいため避ける
- 靴は紐ではなく面ファスナー(マジックテープ)タイプかスリッポンタイプ
- 装具(短下肢装具)を使う場合は装具に合うサイズ・形を選ぶ
装具との相性については、別記事の片麻痺の階段昇降|転ばないコツと自宅でできる練習でも触れています。
着る順番の基本ルール|「患側から着て、健側から脱ぐ」
片麻痺の着替えでいちばん大切なのは、動きにくい側(患側)から着て、動かしやすい側(健側)から脱ぐという順番です。
これは作業療法の現場で長く使われてきた基本原則で、麻痺側の腕や足を最初に通すことで、無理なく服に体を入れていけるからです。
逆に、動きやすい健側を先に袖に入れてしまうと、後から麻痺側を通すときに服が引っかかり、肩を痛めるリスクが上がります。
| 場面 | どちらから? | 理由 |
|---|---|---|
| 着る | 麻痺側(患側)から | 動かしにくい側を先に通し、後で健側を入れるほうが楽 |
| 脱ぐ | 健側から | 先に健側を抜けば、最後に麻痺側だけを引き出せばよくなる |
この「患側から着る・健側から脱ぐ」のルールは、上着・ズボン・靴下・靴のすべてに共通します。
退院後の日常生活で迷ったら、この1行だけ覚えておけば大きな失敗はありません。
上着(前開きシャツ)の着脱手順
前開きシャツは、片麻痺の方にとっていちばん着やすい上着です。
手順を1ステップずつ守れば、片手だけでも自分で着られるようになる方がほとんどです。
前開きシャツの「着る」手順
- イスに深く座り、シャツを膝の上に裏返して広げる(襟を手前・袖口は前を向ける)
- 麻痺側の手を膝の上に置き、健側の手でシャツの袖を肩までたぐる
- 麻痺側の腕を袖の中に通し、肩までしっかり上げる
- シャツの背中側を健側の肩越しに後ろに回す
- 健側の腕を後ろのもう一方の袖に通す
- 前のボタン・ファスナーを下から順に留める
麻痺側の手を膝に置いたまま動かさないのがコツです。
麻痺側の手を浮かせると、肩が引っ張られて痛みの原因になります。
前開きシャツの「脱ぐ」手順
- ボタン・ファスナーを上から順に外す
- 健側の肩の襟をつかみ、後ろに引いて健側の腕を抜く
- 抜いた健側の手で麻痺側の袖口をつかみ、そっと引き抜く
脱ぐときは「健側から抜く・最後に麻痺側」というルールを守ると、肩関節への負担を減らせます。
麻痺側の肩の痛みについては、別記事の脳卒中後の肩の痛み|原因と対処法・予防のコツでも詳しく解説しています。
片麻痺 ズボン 履き方|座って履く方法と立って引き上げる方法
ズボンの着脱は、座位と立位を組み合わせて行います。
立位が不安定な方は、座ったままでも着脱できる方法から始めるのが安全です。
ズボンを履く手順(座位スタート)
- イスに深く座り、麻痺側の足を健側の太ももの上に乗せる(足を組む姿勢)
- 健側の手でズボンを持ち、麻痺側の足を先にズボンの中に通す
- 麻痺側の足を床に戻し、健側の足をズボンに通す
- 座ったままズボンを太ももの中ほどまで引き上げる
- 手すりや家具につかまって立ち上がり、健側の手でウエストを引き上げる
- 体をやや左右にゆすって位置を整え、座ってベルト・ボタンを留める
足を組む動作がむずかしい方は、床に片足を置いたまま、ズボンの裾を手で広げてつま先を入れる方法でも構いません。
大切なのは、立ち上がる前にズボンを太ももまで上げておくことです。
立ったまま片手でズボンを引き上げようとすると、バランスを崩して転倒する危険があります。
ズボンを脱ぐ手順
- 座った状態でボタン・ファスナーを外す
- 立ち上がって、ウエストを太もも・膝まで下ろす
- イスに座り直す
- 健側の足を先にズボンから抜く
- 健側の足を麻痺側の太ももに乗せ、麻痺側の足をズボンから抜く
立ち上がる回数は1回で済むようにすると、転倒の機会も減らせます。
靴下と靴の履き方
靴下と靴の着脱は、ズボンと同じく「足を組む姿勢」を取れるかどうかがポイントです。
靴下を履く基本手順
- イスに深く座り、麻痺側の足を健側の太ももの上に乗せる
- 健側の手で靴下の口を大きく広げる(親指と他の指で挟む)
- つま先からゆっくり差し入れ、かかとを通す
- 履き口を引き上げ、足首の位置を整える
- 麻痺側の足を床に戻し、健側の靴下を履く
足を組む姿勢が取れない方には、「ソックスエイド」と呼ばれる靴下用の自助具を使う方法があります。
ソックスエイドは、半円形のプラスチック板に靴下をかぶせて床に置き、足を入れてからひもで引き上げる仕組みです。
靴を履く手順
- 面ファスナータイプの靴をひらき、つま先で広げて足を入れる
- 長柄の靴ベラがあれば、かかとを入れるときに使う
- 麻痺側の足を先に履いてから健側を履く(座位で安定した状態で)
- 面ファスナーを留め、立ち上がる前に必ず確認する
装具を使う方は、装具→靴下→靴の順に履く方法もあれば、靴下→装具→靴の順の方もいます。
担当のリハビリ専門職に、装具の種類に合った履き順を確認しておきましょう。
ボタン・ファスナーが片手で扱えないときの工夫
ボタンを留める動作は、両手の細かい操作を必要とするため、片麻痺の方にとっていちばん時間のかかる動作のひとつです。
そんなときは、片手でも扱えるよう設計された自助具や、服そのものの工夫で乗り切れます。
ボタンエイド(ボタン通し具)の使い方
ボタンエイドは、針金の輪をボタンに通してボタン穴から引き抜く、シンプルな自助具です。
- ボタンエイドの輪をボタン穴の外側から差し込む
- 輪にボタンをひっかける
- 輪ごとボタン穴を通してそのまま引き抜く
1,000〜2,000円で介護用品店や通販で買えるため、退院前にひとつ用意しておくと便利です。
ボタンを使わずに済ます工夫
- ボタンの裏に面ファスナー(マジックテープ)を縫い付け、見た目はボタン留めのまま使えるよう改造する
- マグネット式ボタンに置き換える(近づけるだけで留まる)
- シャツのボタンは下2つだけ実際に外し、上は留めたままかぶる(かぶりやすい服の場合)
ファスナーが上げにくいときの工夫
- ファスナーの引手(つまみ)に大きめのリングやストラップを付けて、片手でも引きやすくする
- 「ジッパープル」と呼ばれる自助具(輪付きの引き具)を装着する
- ファスナー下のかみ合わせ部分が固定された片手用ファスナー服を選ぶ
家族・介助者のサポートのコツ
ご家族が手伝う場合は、「全部やってあげる」より「最後の1工程だけ手を貸す」のがいちばん大切です。
2017年に公開された複数の研究をまとめた国際的な分析では、作業療法が脳卒中後の方の身の回り動作の自立度を改善できると報告されています(Legg, 2017)。
逆にいうと、ご家族が先回りしてすべて代行してしまうと、本人が動作を獲得する機会を失ってしまいます。
介助の3原則
- 本人ができる工程は手を出さず見守る(時間がかかってもよい)
- つまずく場面だけピンポイントで手を貸す(袖通し・ボタンなど)
- 声かけは「次は○○ですよ」と段取りを伝える(手順を覚えてもらう)
2022年に公開された複数の研究をまとめた国際的な分析では、作業療法による認知機能の支援が日常生活動作の遂行を改善すると報告されています(Gibson, 2022)。
つまり、着替えの「動作」だけでなく「段取り」のつまずきにも、声かけや見守りが役立ちます。
麻痺側の肩を守る介助のコツ
- 麻痺側の腕を引っぱって袖を通そうとしない(手首ではなく肘から肩を支える)
- 腕を上げてもらう前に、肩甲骨が動くか確認する
- 痛みが出たらすぐ動作を止め、無理に通さない
- 麻痺側の手が机から落ちないよう、安定した位置に置く
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片麻痺 着替えの自立への練習方法
着替えを「介助なしでできる」レベルまでもっていくためには、着替えそのものをくり返し練習することが研究でも示されています。
2024年に公開された研究をまとめた分析では、日常生活そのものを題材にしたくり返しの練習(課題指向型訓練)が、脳卒中後の腕の機能と身の回り動作の両方を改善すると報告されています(Lee, 2024)。
2023年に公開された複数の研究をまとめた分析でも、課題指向型訓練が脳卒中後の身の回り動作と生活機能の自立度を高めることが示されています(Geller, 2023)。
自宅でできる練習の組み立て方
- 朝晩2回の着替えを練習の機会にする(普段の生活のなかで自然に回数を積む)
- 最初は時間を計らず、ゆっくり最後まで完了することを優先する
- 1週間ごとに「同じ動作の所要時間」を測ってメモする
- うまくいかない工程は、その動作だけ別に10回くり返す
- 体調が悪い日は無理せず、できるところまでで切り上げる
2022年に公開された研究では、慢性期の脳卒中の方を対象に課題指向型訓練を週5回・4週間続けたところ、腕の機能・日常生活動作・生活の質が有意に改善したと報告されています(Alsubiheen, 2022)。
つまり、毎日朝晩の着替えを練習として位置づければ、それだけでもしっかりとした訓練量になります。
頭の中でリハーサルする練習(運動イメージ)
実際に体を動かすだけでなく、「頭の中で着替えの手順をイメージする」練習も役立つことがわかっています。
2023年に公開された複数の研究をまとめた分析では、運動イメージ(頭の中で動作をリハーサルする方法)が脳卒中後の日常生活動作の改善に効果がある可能性が報告されています(Lambert, 2023)。
たとえば、夜寝る前に布団のなかで「明日の朝の着替えの手順」を頭の中で1回再生する、というシンプルな方法でも構いません。
自助具と組み合わせるかどうかの判断
ボタンエイドやソックスエイドなどの自助具は、「使う・使わない」で迷う方が多い道具です。
2023年に公開された複数の研究をまとめた分析では、脳卒中後の腕の機能訓練に自助具を組み合わせても、自助具を使わない通常の練習と効果に大きな差はなかったと報告されています(Rozevink, 2023)。
このため、自助具は「腕の機能を伸ばすための道具」ではなく「今日の生活を成り立たせる道具」と考えるとよいです。
毎日の着替えで疲れ切ってしまうなら、自助具で時間と体力を節約し、その分をリハビリ練習に回すほうが結果的に回復は早まります。
どこまで自立を目指せるか(回復の見通し)
「自分はどこまで一人で着替えられるようになるのか」――。
この問いは、退院後の方なら誰もが気になる点です。
2006年に公開された日本の研究では、脳卒中後の方の着替え(更衣)動作の自立度は、全体の身の回り動作の自立度ともっとも強く関係するもののひとつと報告されています(Koyama, 2006)。
つまり、着替えを自分でできるようになる方は、トイレ・入浴・移動など他の動作も自立しやすい傾向があるということです。
逆に、着替えだけは介助が残るというケースもあります。
その場合は、「100%自立」を目指すよりも「介助を必要とする工程を1つずつ減らす」視点で取り組むのが現実的です。
重度の更衣障害がある方の場合
麻痺が重度の方の場合、自立度の改善には時間がかかります。
2024年に公開された研究では、重度の更衣障害がある脳卒中後の方には、特定の補助技術や訓練法だけでは大きな改善が得られにくいことが報告されています(Ertas-Spantgar, 2024)。
これは「重度の方は回復しない」という意味ではなく、1つの方法だけに頼らず、自助具・服の工夫・家族のサポート・専門職の訓練を組み合わせることが大切という意味です。
入院中・退院直後の方の場合
2025年に公開された研究のプロトコルでは、入院中の早い段階から着替え・歯磨き・食事などの活動を介入として用いることで、自立度が高まる可能性が検討されています(Grant, 2025)。
つまり、退院後の自宅生活でも、「着替え=リハビリ」ととらえて取り組むことが理にかなっています。
専門職への相談タイミング
次のような状態があれば、自己流で頑張り続けず、専門職への相談をおすすめします。
- 着替えに30分以上かかり、終わったあとぐったり疲れる
- 麻痺側の肩に強い痛みが出るようになった
- 着替えのときにバランスを崩しそうになる場面が増えた
- 退院後から数か月、自己流でやってきたが進歩しない
- 家族の介助負担が重く、続けるのが難しくなってきた
相談先としては、次のような窓口があります。
- かかりつけ医・リハビリテーション科:作業療法士の評価とリハビリが受けられる
- 訪問リハビリ・通所リハビリ:自宅環境に合わせた着替えの練習ができる
- 地域包括支援センター:介護保険サービスや福祉用具の相談先を紹介
- 自費の脳卒中専門リハビリ施設:保険外で長時間の個別練習が受けられる
退院後の生活全般の組み立て方については、退院後の脳卒中リハビリ完全ガイドもあわせてご覧ください。
また、トイレ動作の自立については、別記事の片麻痺のトイレ動作|自立するための工夫と練習のコツで詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 着替えの練習はどれくらいの頻度ですればよいですか?
毎日朝晩の着替えを「練習」として取り組むだけで、十分な回数になります。
2022年に公開された研究でも、課題指向型訓練は週5回・4週間続けることで効果が確認されています(Alsubiheen, 2022)。
「練習のために特別な時間を作る」より、日常の着替えを丁寧にやることのほうが続けやすく、効果も出やすいです。
Q. 麻痺が重度でも自分で着替えられるようになりますか?
麻痺の重さによって、自立できる工程の数や所要時間は変わります。
重度の更衣障害がある方の場合は、1つの方法だけで劇的に改善するのは難しいことが報告されています(Ertas-Spantgar, 2024)。
けれど、服の工夫・自助具・家族のサポートを組み合わせれば、介助の量を減らすこと自体は可能です。
「全部一人で」ではなく「ここまで一人で」を少しずつ広げていく考え方が現実的です。
Q. ボタンを留める練習だけ別にしたほうがよいですか?
ボタンを留める動作だけを取り出して練習することは、手指の細かい動きを伸ばす目的では役立ちます。
ただし、練習用のボタンボードを使うより、実際に着る服のボタンで練習するほうが効果が日常生活に直結します。
これは、2014年に公開された複数の研究をまとめた分析でも、課題そのものをくり返し練習することが効果的と報告されているのと同じ考え方です(Veerbeek, 2014)。
Q. 着替えがうまくなれば腕の機能も改善しますか?
はい、その傾向はあります。
2024年に公開された複数の研究をまとめた分析では、日常生活の課題に取り組む練習が、腕の機能の改善にもつながると報告されています(Lee, 2024)。
着替えのなかでは、腕を上げる・肘を曲げ伸ばしする・指でつまむといった多様な動きが含まれており、自然な範囲で腕を使う練習になります。
Q. 介護保険で着替え用の福祉用具は借りられますか?
ボタンエイドやソックスエイドのような自助具は、介護保険のレンタル対象ではなく、購入が一般的です。
ただし、「介護保険の特定福祉用具購入費」として一部の用具(入浴・排泄関連など)は補助の対象になることがあります。
地域包括支援センターやケアマネジャーに、お住まいの地域の制度を確認してください。
まとめ
- 片麻痺の着替えは、服の選び方・着る順番・自助具の3つで難易度が大きく変わる
- 服は前開き・ゴム・伸縮素材・面ファスナーが扱いやすい
- 基本ルールは「患側から着て、健側から脱ぐ」
- ズボン・靴下はイスに深く座って、足を組む姿勢で行うのが安全
- ボタン・ファスナーが難しいときは、ボタンエイドや面ファスナー服で対応
- 家族の介助は「全部やる」より「最後の1工程だけ」、声かけと見守りで段取りを支える
- 練習は朝晩の着替えを「リハビリ」と位置づけ、毎日続けるのが効果的
- 自助具は「負け」ではなく、生活と回復の両立を助ける道具と考える
次にやるべきこと:まずは今お持ちの服のなかから、前開き・ゴム・面ファスナーのものを「日常着」として選び出してみてください。退院直後の方は、毎朝の着替えを「練習」と位置づけて、5分以上時間が増えても焦らずに自分で完了することを優先しましょう。
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参考文献
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最終更新:2026年5月

