脳卒中患者さんへの歩行リハビリのひとつに、トレッドミルトレーニングがあります。

スポーツジムなどにも置いてある、トレッドミルマシンの上を歩くリハビリです。

トレッドミルトレーニングは、普段患者さんが歩いている速さよりも速い速度で歩くことが多いです。

そのため、患者さんは怖いと感じることがあります。

セラピストも、怖いと感じることがあるかもしれません。

ですが、本当にトレッドミルトレーニングは危険なのでしょうか?

危険性について把握しておくことで、患者さんへの説明や、転倒などを防ぐ工夫を事前に行うことができます。

本記事では、トレッドミルトレーニングは他のリハビリと比べて転倒などによる怪我の危険性が高いのかどうか解説します。

情報源は、主に2017年のコクランレビューです。

コクランレビューは方法が厳密に管理されたシステマティックレビューで、情報の信頼性がとても高いです。

脳卒中EBPプログラム【歩行障害コース】
歩行障害やバランス障害に対する検査、リハビリを行うためのエビデンスを学ぶオンライン学習プログラムを運営しています。6ヶ月にわたり、病態から臨床的な意思決定までお伝えします。
歩行障害コースの詳細はこちら

脳卒中リハビリでトレッドミルトレーニングを行うことによる怪我の可能性

リハビリによって生じる怪我や転倒など、患者さんにとって好ましくない事柄を「有害事象」といいます。

ここから先、有害事象という言葉を使って説明します。

本記事の結論は、「トレッドミルトレーニングは他のリハビリと比べて有害事象が多いとは言えない」です。

リハビリをすれば、必ず転倒や怪我のリスクがあります。

バランス練習をすれば転倒するリスクがありますし、ストレッチですら、伸ばしすぎによって筋肉を痛めてしまうことがあります。

つまり、どのリハビリであれ有害事象が生じるリスクを伴っている、と言えます。

トレッドミルトレーニングは速い速度で歩くので危険な印象があるかもしれませんが、2017年のコクランレビューによると、これら他のリハビリにおける有害事象が発生するリスクと比べて、統計的に有意にリスクが高いとは言えません。

トレッドミルトレーニングで有害事象が生じるリスクはもちろんあるのですが、他のリハビリをする場合と比べて特別リスクが高いわけではない、ということです。

トレッドミルトレーニングで起こりうる有害事象

とは言え、トレッドミルトレーニング中に有害事象が全くないわけではないので、不安を感じられる方もいると思います。

トレッドミルトレーニング中にどういう有害事象が起こるのかを知っておくと、対策が立てられるものもありますので、不安の解消になると思います。

コクランレビューでは、56件の研究から、生じ得る有害事象をまとめました。

  • 転倒
  • 膝の痛み
  • 筋肉の痛み
  • 頭痛、めまい など

トレッドミルトレーニングを行うと、リハビリ終了までにこれらの有害事象が起こる可能性があります。

注意点としては、トレッドミルトレーニングとの因果関係が必ずしもあるとは言えない、ということです。

これらの有害事象は、トレッドミルトレーニングを4週間なら4週間、12週間なら12週間行っている期間に生じたものです。

ですので、トレッドミルトレーニングを受けていない場面、例えば自宅で転倒してしまったというものも含まれています。

繰り返しになりますが、トレッドミルトレーニングは他のリハビリを行う場合と比べて、有害事象が発生するリスクが高いわけではないです。

ただ、起こり得る有害事象について把握しておけば、事前に患者さんに説明したり、痛みが出ていないか都度チェックするなどの対策を打てます。

そういう意味で、有害事象については把握しておいた方がいいと思います。

転倒を防ぐための工夫

近年では、免荷式トレッドミルトレーニングがあります。

これは、ハーネスをつけて身体を上から吊り上げた状態で歩くものです。

転倒を防ぐための工夫として、「ハーネスをつけた状態でトレッドミルトレーニングをする」という方法があります。

なお、免荷はしません。

ハーネスをつけていると、万が一転倒しそうになった時に、免荷装置が身体を持ち上げてくれるので、患者さんが怪我をしないで済みます。

免荷装置がある施設は、併用して使ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

● トレッドミルトレーニングは他のリハビリと比べて有害事象が生じるリスクは高くない
● 起こりうる有害事象は転倒、痛みなど
● ハーネスを装着することで転倒を防ぐことができる

参考文献

Mehrholz J, Thomas S, Elsner B. Treadmill training and body weight support for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Aug 17;8