脳卒中患者さんとのリハビリで、電気刺激は使っていますか?

電気刺激には禁忌があり、取り扱いに注意を要する物理療法ですが、世界的に効果が実証されています。

今回は、脳卒中患者さんの上肢リハビリにおいて、電気刺激が何に対して有効なのか、4つのシステマティックレビューから紹介させていただきます。

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脳卒中後の上肢リハビリ:電気刺激が効果的な4つのアウトカム

電気刺激が効果的な4つのアウトカムは以下の通りです。

① 運動パフォーマンス
② 運動機能
③ 肩の亜脱臼
④ 肩の痛み

いずれもシステマティックレビューで有効性が報告されています。

4つのアウトカムについて解説

① 運動パフォーマンス

Howlett OA (2015) はシステマティックレビューにて、電気刺激が上肢の運動パフォーマンス向上に対して有効であることを報告しています。

運動パフォーマンスというのは、上肢の複数の関節を使った運動を通し、課題を達成させる動作です。

リーチ動作やグラスプ動作、ピンチ動作などが含まれます。

上肢の運動パフォーマンスをみる検査としてはAction Research Arm Test(以下、ARAT)やWolf Motor Function Test(以下、WMFT)、Box and Block Test(以下、BBT)が代表的です。

こういったアウトカム指標でみたとき、上肢への電気刺激が有効であるということが報告されています。

② 運動機能

Yang JD (2019) はシステマティックレビューにて、電気刺激が上肢の運動機能向上に対して有効であることを報告しています。

先程紹介した運動パフォーマンスが複合的な関節運動を意味するのに対し、運動機能というのは、単関節運動や分離運動など、単純な運動のことを指します。

上肢の運動機能をみる検査としてはFugle-Meyer Assessment Upper Extremity(以下、FMAUE)や自動関節可動域、筋力などが代表的です。

このYang JD (2019) のシステマティックレビューでは、FMAUEをアウトカムにしたときのメタアナリシスで、電気刺激が有効であることを報告しています。

③ 肩の亜脱臼

Lee JH (2017) はシステマティックレビューにて、電気刺激が肩の亜脱臼に対して有効であることを報告しています。

亜脱臼は急性期で特に問題になることが多いですが、重度の弛緩性麻痺を呈する患者さんであれば、生活期まで亜脱臼が残存するケースがあります。

そのため、亜脱臼は急性期〜生活期まで問題になりうる症状と言えます。

Lee JH (2017) の研究では、メタアナリシスの結果、急性期の亜脱臼に対しては電気刺激は有効であるものの、生活期の亜脱臼に対しては有効であるとは言えない、と報告しています。

生活期では亜脱臼の改善が難しくなるので、急性期、回復期初期にしっかりと治療しておきたい症状です。

④ 肩の痛み

Qiu H (2019) はシステマティックレビューにて、電気刺激が肩の痛みに対して有効であることを報告しています。

肩の痛みがあると上肢の運動を行うことが難しくなります。

特に痛くて肩関節の外旋が行えなくなってしまうことが多いのですが、この研究では、”痛みのない肩関節外旋可動域” についても効果が検証されており、電気刺激はこの可動域に対しても有効であるということが報告されています。

つまり、痛みが改善するし、それに伴って痛くなく腕を動かせる範囲も広がる、ということを意味しています。

電気刺激を使わない理由が見当たらない

電気刺激は、世界的にシステマティックレビューのレベルで有効性が報告されています。

また、代表的な上肢リハビリに “課題指向型訓練” がありますが、この課題指向型訓練に加えて電気刺激を行うことでより高い効果を報告したランダム化比較試験もあります(Kim TH, 2013)。

病院や施設に電気刺激装置がない場合は仕方ないですが、病院や施設に置いてあるのであれば使わない手はないです。

病院や施設に置いてあるけど誰も使っていない、という場合は改めて操作方法を確認し、患者さんが禁忌に該当しないか判断した上でどんどん使っていきましょう!

まとめます。

電気刺激は脳卒中リハビリにおいて有効であるというコンセンサスが得られている
電気刺激は運動パフォーマンス、運動機能、肩の亜脱臼、肩の痛みに対して有効
● 病院や施設に電気刺激装置があるなら使わない手はない

皆様のリハビリに役立つ情報になれば嬉しいです。

参考文献

Howlett OA, Lannin NA, Ada L, McKinstry C. Functional electrical stimulation improves activity after stroke: a systematic review with meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2015 May;96(5):934-43.

Yang JD, Liao CD, Huang SW, Tam KW, Liou TH, Lee YH, Lin CY, Chen HC. Effectiveness of electrical stimulation therapy in improving arm function after stroke: a systematic review and a meta-analysis of randomised controlled trials. Clin Rehabil. 2019 Aug;33(8):1286-1297.

Lee JH, Baker LL, Johnson RE, Tilson JK. Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for management of shoulder subluxation post-stroke: a systematic review with meta-analysis. Clin Rehabil. 2017 Nov;31(11):1431-1444.

Qiu H, Li J, Zhou T, Wang H, Li J. Electrical Stimulation in the Treatment of Hemiplegic Shoulder Pain: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Phys Med Rehabil. 2019 Apr;98(4):280-286.

Kim TH, In TS, Cho HY. Task-related training combined with transcutaneous electrical nerve stimulation promotes upper limb functions in patients with chronic stroke. Tohoku J Exp Med. 2013 Oct;231(2):93-100.