脳卒中リハビリテーションにおける介入方法は無数に存在しますが、コンセンサスを得ている方法はいくつかに絞られます。

CI療法、ミラーセラピー、歩行練習、電気刺激などが挙げられますが、課題指向型訓練も外すことはできません。

課題指向型訓練は「集中的な訓練、可変練習、断続的なフィードバックを含む運動学習と運動制御の原則を適用する、高度に個別化されたクライアント中心のリハビリテーションアプローチ」(Almhdawi KA, 2016)とされており、派生型も存在しますが基本的に下記の4つの特徴を含みます。

①獲得を目標にしている課題が明確である
②課題の要素を細分化した下位課題の練習を行う
③課題の難易度調整を行う
④繰り返し実施する(反復)

CI療法と似ていますが、CI療法は基本的に麻痺側のみを使用するのに対し課題指向型訓練は両側を使用することもあります。

また、CI療法は「手指伸展10°が可能」などの適応がありますが、課題指向型には明確な適応が定められていません。

加えて、課題指向型訓練は上肢だけでなく下肢の運動性や歩行能力を向上させることを目的にするものもあります。

つまり、位置関係としてはCI療法は課題指向型訓練に包括される概念と理解して差し支えないでしょう。

課題指向型訓練の興味深い点は、明確なプロトコルがないにも関わらず多くの研究が有効性を報告しているところです。

電気刺激などであれば、論文中に刺激強度、パルス幅などプロトコルが明確に記載されていますよね。

プロトコルを忠実に再現することができるので、先行研究通りの結果も再現されやすいというのはイメージが湧きやすいです。

でも、課題指向型訓練にあるのは上記の原則のみ。研究によっては反復回数や1セットの時間などが書かれているものもありますが、研究の中で行われた訓練を再現できるほど明確にプロトコルが書かれた論文は筆者が調べる限りありません。

これはすなわち、上記の原則がいかに運動療法に必要な要素であるかということを示しています。

言い換えれば、多少技術の差があったとしても上記原則を守ればある程度結果が出るということです。

とはいえ、やはりどういう人たちに(PICOのP)どういった課題指向型訓練をどれくらい行えば(PICOのI)何と比べて(PICOのC)何にどれくらい効果があるのか(PICOのO)ということを知っておかなければ、目の前の患者さんに課題指向型訓練を行うべきか否か判断することはできません。

Best Available Evidenceを踏まえた上で意思決定する必要があります。

脳卒中患者に対する課題指向型訓練の効果

日本脳卒中学会による脳卒中診療ガイドライン2015では、上肢機能障害に対するリハビリテーションにおいてグレードBとされているだけでなく、世界中で数多くの報告がされていることもあり信頼性の高い研究が多く存在しています。

例えば、Arya KNら(2012)は発症から3ヶ月程度、年齢52歳前後の脳卒中患者51人に対する課題指向型訓練(60分/回、週4〜5日、4週間)は上肢運動機能の向上に寄与すること、またブルンストローム法やボバース・コンセプトに基づく介入に対して良い結果を示したことを報告しています。

また、Hornby TGら(2019)は、発症から60(14-106)ヶ月、年齢59歳前後の慢性期脳卒中患者に対する高強度トレッドミルトレーニング+課題指向型訓練が歩行速度、歩行サイクル中における立脚期が占める割合(%)、6分間歩行試験スコアの向上に寄与することを報告しています。

このように、課題指向型訓練は上肢に対しても下肢(歩行やバランス)に対しても有益性が報告されています。

エビデンス情報にて課題指向型訓練の効果を検証した研究の情報をアップしていきます。

脳卒中リハビリが必要な患者さん、セラピストのお役に立てましたら幸いです。

参考文献

1) Almhdawi KA, Mathiowetz VG, White M, delMas RC. Efficacy of Occupational Therapy Task-oriented Approach in Upper Extremity Post-stroke Rehabilitation. Occup Ther Int. 2016 Dec;23(4):444-456.
PMID: 27761966

2) Arya KN, Verma R, Garg RK, Sharma VP, Agarwal M, Aggarwal GG. Meaningful task-specific training (MTST) for stroke rehabilitation: a randomized controlled trial. Top Stroke Rehabil. 2012 May-Jun;19(3):193-211.
PMID: 22668675

3) Hornby TG, Henderson CE, Plawecki A, Lucas E, Lotter J, Holthus M, Brazg G, Fahey M, Woodward J, Ardestani M, Roth EJ. Contributions of Stepping Intensity and Variability to Mobility in Individuals Poststroke. Stroke. 2019 Sep;50(9):2492-2499.
PMID: 31434543