BRAINのリハビリでは、ご利用者様の安全を守るため、リハビリ開始前・終了時、状況に応じてリハビリ中に血圧や血中酸素飽和度、体温を測っています。
リハビリによって運動をすると、当然ですが心臓や血管に負担がかかり、場合によっては危険な状態に陥ることがあります。
リハビリには、中止基準という『この状態に該当する場合はリハビリをやってはいけない』という基準があります。
この中止基準を遵守することによって安全にリハビリを受けることが可能です。
リハビリ前やリハビリ中にこの中止基準に該当していないか確認します。
リハビリ前に血圧測定や酸素計測をするのはこのためです。
基本的にはセラピストによって管理されるものですが、患者様・ご利用者様・ご家族様の当事者の方もご自身の身の安全のために知っておいていただいて損はないと思います。
もしセラピストの安全管理が甘くて危険な状態になっていても、ご本人様やご家族様が中止基準を知っていれば、安全にリハビリを受けることができます。
本記事では、リハビリにおける中止基準を紹介します。
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リハビリにおける中止基準
以下、日本リハビリテーション医学会によるリハビリテーション中止基準です。
積極的なリハを実施しない場合
まずは『積極的なリハを実施してはいけない』基準を紹介します。
リハビリ前から以下の項目に該当する場合、原則的にはリハビリは行いません。
- 安静時脈拍 40拍/分以下または 120拍/分以上
- 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
- 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
- 労作性狭心症の方
- 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
- 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
- 著しい不整脈がある場合
- 安静時胸痛がある場合
- リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
- 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
- 安静時体温が 38 度以上
- 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下
途中でリハビリを中止する場合
リハビリ前は中止基準に該当していなくても、リハビリをやっていく中で身体に負担がかかり、中止基準に該当する場合があります。
- 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
- 脈拍が 140拍/分を超えた場合
- 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
- 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
- 運動により不整脈が増加した場合
- 徐脈が出現した場合
- 意識状態の悪化
いったんリハを中止し、回復を待って再開する場合
- 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
- 脈拍が 120拍/分を越えた場合
- 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
- 軽い動悸,息切れが出現した場合
その他の注意が必要な場合
- 血尿の出現
- 喀痰量が増加している場合
- 体重増加している場合
- 倦怠感がある場合
- 食欲不振時・空腹時
- 下肢の浮腫が増加している場合
以下、比較的身近なものをいくつかピックアップし、詳しく説明します。
血圧と脈拍
血圧と脈拍は、中止基準に引っかかることが多い項目です。
血圧や脈拍は、
- 薬の飲み忘れや変更
- トイレでの排泄
などによって変化しやすいためです。
薬の飲み忘れや変更
血圧に作用する薬として、降圧薬があります。
脳梗塞や脳出血の再発予防のため、血圧は130/80mmHg 以下にすることが推奨されています。
そのため、降圧薬を服用されている方は多いです。
基本的には毎日お薬を飲まれると思うのですが、場合によっては服薬を忘れてしまったり、あるいは面倒になってしまって服薬をやめてしまう方がいます。
これによって、血圧が上がります。
もし収縮期血圧(上の血圧)が200mmHgを超えていて、それに気づかずにリハビリをしてしまうと危険です。
また、お薬の変更に伴う血圧の変動があります。
これは血圧が下がり過ぎてしまう方です。
普段、降圧薬を飲んでいて血圧をコントロールされている方も、病院受診した際に何らかのお薬が追加される、ということがあります。
その追加された薬の副作用に『血圧の低下』があることがあります。
基本的にはお医者さんがみているはずですし、薬剤師さんも管理されているはずですが、稀に見落とされることがあったり、『予想以上に下がり過ぎた』ということがあります。
これによって収縮期血圧が70mmHgを下回ってしまい、リハビリ中止基準に該当することがあります。
ちなみに血圧が下がると、身体に血液を循環させようとして、脈拍が上がります。
トイレでの排泄
リハビリ前にトイレに行かれる方は多いと思います。
トイレで排便をすることによって血圧が一時的に上がります。
問題はここからで、ヒトの身体には『迷走神経反射』という、上がり過ぎた血圧を下げる作用があります。
これによって、血圧が下がり過ぎてしまうことがあります。
状況によっては迷走神経反射で失神してしまうケースがありますので、注意が必要です。
安静時酸素飽和度
身体に酸素がしっかり巡っているかどうかを判断します。
一般的には95%以上とされていますが、心肺機能が低下した方や、肺炎などがある方は酸素飽和度が低下することがあります。
90%を下回るとリハビリできません。
酸素飽和度が低下している状態というのは、身体に酸素がしっかり巡っていない状態です。
この状態で運動をしてしまうと酸欠になり、危険な状態に陥る可能性があります。
ですので、少なくともリハビリ前には酸素飽和度をチェックする必要があります。
その他の項目
その他の項目については、既往歴の聴取や状態観察によって判断します。
例えば、心房細動などの不整脈があるかどうかはご本人様・ご家族様に既往歴を聴取をしたり、かかりつけ医からの診療情報提供書を読んで確認します。
また、頻呼吸や息切れなどは、ご本人様の様子を観察して確認します。
このように、私たちセラピストは、上記のリスクを回避するために
- 血圧測定
- 酸素飽和度測定
- 体温測定
- 既往歴の聴取
- 状態の観察
…などを通して、ご利用者様の安全管理に努めています。
特に、リハビリ前の血圧測定、酸素飽和度測定、体温測定は必須です。
既往歴はあとから変わるものではないので最初に確認しておけば問題ありません。
状態の観察においても、異常があればすぐわかります。
ですが血圧、酸素飽和度、体温については一見するとわからず、かつ変化しやすいものです。
『昨日までは大丈夫だったけど今日は血圧が高い』ということはよくあります。
リハビリ施設や事業所によっては、血圧測定、酸素飽和度測定、体温測定を行わないところもあります。
ご自身の安全を守るために必ず行なった方がよいので、もし測定してくれない場合は、担当者の方に測定をお願いしてみてください。
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