脳卒中患者さんへの上肢リハビリとして、CI療法は世界的に有効性が報告されています。
回復がプラトーに達すると言われる発症6ヶ月以降(生活期)においても上肢の機能が改善することが知られています。
ただ、CI療法といえば長時間、かつ集中的に行うのが特徴のひとつであり、日本では再現できないことが多い、という課題もあります。
CI療法や修正CI療法によって上肢の運動機能や運動パフォーマンスが改善したと報告している研究を読んでみると、1日あたり最低でも1時間以上、週5回程度実施されているものが多いです。
日本の場合、生活期のリハビリは医療保険を使った外来リハビリか、介護保険を使った訪問リハビリの2つがメインになります。
外来リハビリも訪問リハビリも、保険の利用上限が決まっており、多くの場合は1回あたり40〜60分、週2〜3回になります。
日本の生活期ではそもそもリハビリの機会が少ないので、この資源の中でCI療法を行うことが難しい、ということです。
でも、ホームエクササイズとしてCI療法を行えたらどうでしょうか。
セラピストがいないときに、患者さんが自分で自分をよくしていくことが可能になります。
実際、Barzel A (2015) のランダム化比較試験によると、ホームエクササイズとしてCI療法を行うことで上肢の運動パフォーマンスが向上することが報告されています。
今回はこの研究の中で行われたホームエクササイズのCI療法のプログラムを紹介します。
日本の生活期でも再現できるプログラムなので、特に訪問リハビリや外来リハビリを利用されている当事者の方やセラピストの皆さんの役に立てたら嬉しいです。
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脳卒中リハビリにおける上肢の自主トレ:ホームCI療法
プログラムを紹介します。
専門家による介入
①PTもしくはOTが最初の週(1週目)50〜60分、週2回の自宅訪問
1) CI療法の治療原則に関する情報と指示
2) 行動契約
3) ADLに関する目標設定(Goal Attainment Scaleを使用)
4) 非麻痺側の拘束具について教える
5) 介護者の責任について議論
②PTもしくはOTが2週目〜4週目に50〜60分、週3回の自宅訪問
1) 課題の練習の監督(合計10〜15種類)
2) 患者もしくは介護者の質問に答える、問題解決
介護者によるホームCI療法
①各課題は3〜15回、10セット
②ホームCI療法中は非麻痺側は拘束具着用
③日記:課題ごとの時間、繰り返し回数、練習時間
④非麻痺側の拘束具はCI療法外でも2〜4時間/日着用
時間と頻度と期間
平日2時間、4週間、20日間
実質、週5回のホームエクササイズを4週間実施するという流れです。
その中で、先程伝えた、専門家の介入が週に2〜3回あり、助言や監督をしながらうまくいくように誘導していきます。
結果として、Motor Activity Log やWolf Motor Function Testといった上肢の運動パフォーマンスを測定する検査において、成績が改善したことを報告しています。
生活期でも改善を希望されている患者さんの役に立てる
私自身、介護保険での訪問リハビリを実施していたことがあります。
多くは高齢者の方で、ご本人様もご家族様も、身体機能の改善は望んでおらず、現状の生活を維持できたらいい、という方が多かったです。
こういったこともあり、生活期でのリハビリは日常生活の維持が目標になることが多いです。
実際、ケアマネージャーさんが作ってくれるケアプランでは、ほとんど「日常生活の維持」が目標になっていました。
ただ、中にはお若くして脳卒中を発症された方もいらっしゃいました。
そういう方は、ケアプランの目標が「日常生活の維持」になっていても、ご本人様は日常生活の維持ではなく、身体機能と日常生活の向上を目指していました。
身体機能の改善を希望されている方に対して、改善を目指すリハビリプログラムを提供できるようにしておくのも、専門家としては大事なことです。
その上で、ホームエクササイズとしてのCI療法は選択肢になると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!
まとめます。
● ホームエクササイズとしてのCI療法は上肢の運動パフォーマンスに対して有効
● プログラムは専門家による介入+ホームエクササイズであり、日本でも再現可能
● 生活期のリハビリでも身体機能向上の選択肢を提案できるようにしておきたい
本日は「脳卒中リハビリにおける上肢の自主トレ:ホームCI療法」というテーマでお話しさせていただきました。
BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。
2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。
ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。
それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!
参考文献
Barzel A, Ketels G, Stark A, Tetzlaff B, Daubmann A, Wegscheider K, van den Bussche H, Scherer M. Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomised, controlled trial. Lancet Neurol. 2015 Sep;14(9):893-902.