糖尿病があると脳卒中になりやすい――そう聞いて不安を感じている方は少なくありません。

実際、2010年に公開された約70万人の追跡データをまとめた大規模分析では、糖尿病がある方の脳梗塞リスクは、糖尿病がない方の約2.3倍と報告されています(Sarwar, 2010)。

しかし、これは「糖尿病があるから脳卒中は避けられない」という意味ではありません。

血糖を適切にコントロールし、必要な薬を使うことで、脳卒中の発症・再発リスクは大きく下げられることが近年の研究でわかってきました。

この記事では、なぜ糖尿病があると脳卒中になりやすいのか、どんな症状や予後に違いが出るのか、そして再発を防ぐために何ができるのかを、脳卒中専門リハビリ施設BRAINの代表で理学療法士の針谷が、臨床経験と研究論文に基づいて解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、信頼性の高い研究論文から得られたデータを中心に引用しています。

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⚠ 今すぐ医療機関への相談を検討してください
以下の症状が突然出た場合は、様子を見ずに救急要請(119番)を検討してください。
・顔のゆがみ(片側が下がる)
・片腕の脱力(腕が上がらない)
・言葉のもつれ(ろれつが回らない)

また、糖尿病がある方は以下の症状にも注意が必要です。早めにかかりつけ医にご相談ください。
・手足のしびれや感覚の鈍さが急に強くなった
・視野の一部が見えにくい/目がかすむ
・意識がもうろうとする、強い眠気が続く
・血糖値が急に大きく変動している(低血糖・高血糖症状)
目次
  1. 脳卒中と糖尿病の関係|まず知っておきたいこと
    1. 糖尿病があると脳卒中リスクはどれくらい高まるのか
    2. なぜ糖尿病が脳卒中を引き起こすのか(3つの機序)
    3. 糖尿病がある方は脳卒中の再発率・予後も悪い
  2. こんな状況に心当たりはありませんか?
  3. 血糖コントロールで脳卒中再発を防ぐ|HbA1c目標と治療薬
    1. HbA1cはどこまで下げるべきか
    2. 脳卒中再発を減らすエビデンスがある治療薬
      1. GLP-1受容体作動薬(セマグルチド・リラグルチド等)
      2. SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン・ダパグリフロジン等)
      3. ピオグリタゾン(IRIS試験)
      4. メトホルミン
    3. 入院中の血糖管理(急性期)は「強めに下げる」必要はない
  4. 日常生活でできる血糖コントロールと脳卒中予防
    1. 食事|「野菜先・主食後」で食後血糖を抑える
    2. 運動|「ちょっと息が弾む」程度を週150分
    3. 禁煙・節酒|糖尿病とセットで必ず取り組む
  5. ご家族ができるサポート
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 糖尿病でなくても、血糖値が少し高いだけで脳卒中リスクは上がりますか?
    2. Q2. HbA1cは低ければ低いほどよいのですか?
    3. Q3. 糖尿病と脳卒中では心臓病リスクも上がりますか?
    4. Q4. 脳卒中を発症した直後、入院中に血糖が急に上がったら重症なのですか?
    5. Q5. 運動で血糖が下がるなら、薬をやめてもよいですか?
  7. まとめ|血糖コントロールは脳卒中再発予防の要
  8. 参考文献

脳卒中と糖尿病の関係|まず知っておきたいこと

糖尿病は、血液中の糖(ブドウ糖)の濃度が高いまま続く病気です。

この「高血糖」の状態が長年続くと、全身の血管が傷ついていきます。

傷ついた血管は詰まりやすくなり、脳の血管が詰まると脳梗塞、破れると脳出血が起こります。

つまり、糖尿病は脳卒中の土台となる血管の病気を進めるのです。

糖尿病があると脳卒中リスクはどれくらい高まるのか

結論から言うと、糖尿病がある方の脳卒中リスクは、糖尿病がない方のおよそ1.5〜3倍と報告されています(Jerkins, 2025)。

2010年に公開された102の研究・約70万人のデータをまとめた分析では、糖尿病ありでの脳梗塞リスクは約2.3倍、脳出血リスクは約1.6倍と報告されています(Sarwar, 2010)。

さらに、2014年に公開された64の研究・約78万人のデータをまとめた分析では、女性の方が男性より糖尿病による脳卒中リスクの上がり方が大きく、女性は男性の1.27倍とされていますPeters, 2014)。

日本人を対象とした研究でも同じ傾向が確認されています。

1996年に公開された福岡県久山町の住民2,427人を対象にした研究では、糖尿病ありの方の脳梗塞の発症率は、正常な方のおよそ3倍と報告されました(Fujishima, 1996)。

BRAINでも、ご利用者の中に糖尿病をお持ちの方は少なくありません。「脳卒中の再発だけは避けたい」と強く思われている方が多く、血糖管理への意識は総じて高い印象です。

なぜ糖尿病が脳卒中を引き起こすのか(3つの機序)

糖尿病が脳卒中を引き起こすしくみは、主に3つあります。

機序わかりやすく言うと何が起こるか
動脈硬化の加速太い血管の壁が硬く・厚くなる頸動脈・脳の太い血管にプラーク(こぶ)ができ、詰まりやすくなる
微小血管障害(さいしょうけっかんしょうがい)細い血管が傷む脳の奥にある細い血管が詰まり、小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)が多発する
内皮機能障害・炎症血管の内側がうまく働かなくなる血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなる

2024年に公開された43の観察研究をまとめた分析では、糖尿病患者の脳卒中リスクを押し上げる要因として、糖尿病網膜症・腎症といった微小血管合併症がもっとも強く関与していると報告されています(Zhao, 2024)。

つまり、すでに目や腎臓に糖尿病の合併症が出ている方は、脳の血管も同時に傷んでいる可能性が高いということです。

BRAINでも、糖尿病網膜症や腎症をお持ちの方は、歩行練習や筋力訓練の強度設定を慎重に行っています。

糖尿病がある方は脳卒中の再発率・予後も悪い

糖尿病は、脳卒中を「起こしやすくする」だけでなく、「再発しやすくする」ことも明らかになっています。

2024年に公開された159の研究・最大約116万人のデータをまとめた分析では、糖尿病がある方は脳卒中後の再発リスクが約1.42倍、全死亡リスクが約1.56倍高いと報告されています(Kaynak, 2024)。

注目すべきは、糖尿病と診断される一歩手前の「プレ糖尿病」の段階でも、脳卒中再発リスクが約1.50倍に上がっていることです(Kaynak, 2024)。

これは、2019年に公開された8研究・約11,000人のデータをまとめた分析でも同様で、プレ糖尿病での新規脳卒中リスクは約1.42倍、回復が不良(障害が残りやすい)になりやすい傾向(オッズ比1.33)も報告されています(Pan, 2019)。

「まだ糖尿病とは言われていない」段階でも、血糖は脳卒中リスクに影響しているのです。

こんな状況に心当たりはありませんか?

以下に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

ひとつでも当てはまる場合は、早めに主治医と血糖管理について相談することをおすすめします。

  • 脳卒中を発症したときに「血糖値が高いですね」と言われた
  • 健康診断でHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が6.5%以上を指摘されたことがある
  • 空腹時血糖が126mg/dL以上と言われたことがある
  • 糖尿病網膜症や腎症を指摘されている
  • 糖尿病の内服薬やインスリン注射を使っている
  • 「プレ糖尿病」「境界型」と言われたことがある
  • 親・兄弟姉妹に糖尿病の人がいる

BRAINに来られる方でも、「脳卒中のあとに糖尿病があるとわかった」というケースが一定数あります。

入院中の血液検査で初めて気づくこともあれば、脳卒中をきっかけに生活習慣全体を見直し、本格的な治療が始まる方もいらっしゃいます。

血糖コントロールで脳卒中再発を防ぐ|HbA1c目標と治療薬

脳卒中を一度経験した方にとって、もっとも大きな不安は「再発」です。

研究データは、血糖を適切に管理することで、再発リスクを下げられることを示しています。

HbA1cはどこまで下げるべきか

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月の平均的な血糖値を反映する数値です。

2018年に公開された29の観察研究・約53万人のデータをまとめた分析では、HbA1c 6.5%以上の群では、5.7%未満の群と比べて、初回脳卒中リスクが約2.15倍高いと報告されています(Mitsios, 2018)。

さらに、HbA1cが1%上がるごとに、虚血性脳卒中リスクは糖尿病がない方で約1.49倍、糖尿病がある方で約1.24倍上昇しますMitsios, 2018)。

日本人のデータでも同じ傾向が確認されています。

2013年に公開された福岡県久山町の2,851人を7年追跡した研究では、HbA1c 6.5%以上の方の心血管疾患リスクは、5.0%以下の方のおよそ4.4倍と報告されました(Ikeda, 2013)。

ただし、低すぎる血糖も良くありません。

2015年に公開されたJPHC研究(日本人約29,000人)では、HbA1cが5.0%未満の方も心血管リスクが1.50倍に上がる「Jカーブ」型の関係が報告されています(Goto, 2015)。

つまり、「血糖は低ければ低いほどよい」わけではなく、安全に到達できる適切なゾーンにコントロールすることが大切です。

米国AHA/ASAの脳卒中二次予防ガイドライン(2021年)では、低血糖のリスクと個々の状況を踏まえたうえで、HbA1cの目標値を個別に設定することが推奨されています(Kleindorfer, 2021)。

具体的なHbA1c目標は年齢・合併症・低血糖リスクによって変わります。日本糖尿病学会のガイドラインでも、一般的には7.0%未満を目安に、高齢者や重症低血糖のリスクが高い方は緩めの目標(例:7.5%〜8.0%未満)を設定することが推奨されています。必ず主治医と相談して決めてください。

脳卒中再発を減らすエビデンスがある治療薬

糖尿病治療薬のなかには、血糖を下げるだけでなく脳卒中や心血管イベントそのものを減らすことが確認されている薬があります。

主な4種類の薬について、研究データをまとめます。

GLP-1受容体作動薬(セマグルチド・リラグルチド等)

注射または内服で使う薬で、食欲を抑えて血糖を下げる作用があります。

2024年に公開された11の大規模研究・約82,000人のデータをまとめた分析では、GLP-1受容体作動薬は脳卒中リスクを約15%低下(相対リスク0.85)させると報告されました(Adamou, 2024)。

さらに、2025年に公開された11研究・約85,000人の分析では、脳卒中の既往がある方に限定すると、GLP-1受容体作動薬による再発予防効果はさらに強く、ハザード比0.73と報告されています(Alammari, 2025)。

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン・ダパグリフロジン等)

尿から糖を排出することで血糖を下げる薬です。心不全や腎臓病にも効果があります。

2024年に公開された79研究・約20万人のネットワーク分析では、SGLT2阻害薬は脳卒中リスクを約19%低下(相対リスク0.81)させると報告されました(Kim, 2024)。

特筆すべきは、2021年に公開された分析で、SGLT2阻害薬は出血性脳卒中を半減(ハザード比0.50)、心房細動を約19%低下させると報告されていることです(Zhou, 2021)。

ピオグリタゾン(IRIS試験)

インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を改善する薬です。

2016年に公開された「IRIS試験」と呼ばれる研究では、インスリン抵抗性があるけれど糖尿病にはなっていない、脳梗塞やTIA(一過性脳虚血発作)の既往がある3,876人を対象に、ピオグリタゾンが脳卒中・心筋梗塞の再発を約24%減らす(ハザード比0.76)ことが確認されましたKernan, 2016)。

同じ研究で、糖尿病への進行も半減(ハザード比0.48)しました(Kernan, 2016)。

ただし、ピオグリタゾンには体重増加・むくみ・骨折リスクの上昇という副作用もあり、全員に使える薬ではありません。

メトホルミン

糖尿病治療の第一選択薬として長く使われてきた薬です。

2025年に公開された10のコホート研究をまとめた分析では、脳卒中発症前からメトホルミンを服用していた方は、脳卒中の重症度(NIHSS)が軽く、90日後の死亡が少なく(オッズ比0.52)、良好な回復に至りやすい傾向(オッズ比1.45)が報告されています(Mohammadi, 2025)。

意見:BRAINの臨床でも、メトホルミン・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬のいずれかで血糖管理をしている方は、脳卒中後のリハビリで体重や血圧のコントロールもしやすく、運動耐久性も安定している印象があります。

もちろん、どの薬が向いているかは腎機能・心機能・年齢・体重などで決まります。必ず主治医の判断に従ってください。

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入院中の血糖管理(急性期)は「強めに下げる」必要はない

脳卒中で入院した直後、血糖値が高い状態になることがよくあります。

「血糖を厳しく下げた方が回復がよいのでは」と思われるかもしれませんが、近年の研究はむしろ逆の結論を示しています

2019年に公開された「SHINE試験」と呼ばれる1,151人を対象にした研究では、入院中の血糖を厳しく管理する群(80-130mg/dL)と標準管理する群(80-179mg/dL)で、90日後の回復に有意な差はありませんでしたJohnston, 2019)。

むしろ、厳しく管理する群では重度の低血糖が2.6%に発生し、リスクが上回る結果となりました(Johnston, 2019)。

2024年に公開された15研究・2,957人のデータをまとめた分析でも、急性期の厳しい血糖管理は回復・再発に有益ではなく、低血糖リスクを約9.5倍に増やすと結論づけられました(Wu, 2024)。

急性期の血糖管理については、2026年に改訂されたAHA/ASAの急性虚血性脳卒中ガイドラインでも最新の推奨が示されています(Prabhakaran, 2026)。

意見:BRAINでも、退院したばかりの方から「入院中の血糖が高くて心配」という相談を受けることがあります。急性期に血糖が一時的に上がることは珍しくなく、退院後に外来でじっくり整えていくのが一般的な流れです。

日常生活でできる血糖コントロールと脳卒中予防

薬の効果を最大限に引き出すためには、日常生活の工夫が欠かせません。

ここでは、脳卒中・糖尿病の両方に共通して効果がある習慣を3つに絞ってご紹介します。

食事|「野菜先・主食後」で食後血糖を抑える

食事のポイントは、食後血糖のピークを抑えることです。

具体的には、以下の工夫が推奨されています。

  • 野菜・タンパク質(魚・豆腐・肉)を先に食べ、ご飯やパンは最後に
  • 1日3食、特に朝食を抜かない(食事間隔が空きすぎると血糖が乱れやすい)
  • ゆっくりよく噛む(早食いは食後血糖を急上昇させる)
  • 食塩は1日6g未満を目安に(高血圧は糖尿病と合併しやすく、脳卒中リスクを倍増させる)
  • 清涼飲料水・菓子パン・加糖ヨーグルトなどの「隠れ糖分」に注意

BRAINでも、麻痺の影響で食べやすいものに偏ってしまい、菓子パン中心の食事になっているケースを見かけます。

片手でも食べやすい工夫をしながら、バランスを保てるよう担当管理栄養士や医師と相談することが大切です。

運動|「ちょっと息が弾む」程度を週150分

運動は、筋肉でのブドウ糖の取り込みを増やし、インスリンの効きをよくする効果があります。

2021年に公開されたAHA/ASAのガイドラインでも、週に150分以上の中強度有酸素運動(または75分以上の高強度)が脳卒中後の方に推奨されています(Kleindorfer, 2021)。

片麻痺がある方には、以下のような工夫が現実的です。

  • 1日10分×3回など、分けて合計を確保する
  • 屋内での足踏み、座ったまま行う「シッティングエアロ」も有効
  • 安全のため、装具・杖を使い、可能なら家族が見守れる時間帯に
  • 血圧・脈拍のチェックを習慣にする

BRAINでも、運動の頻度・強度を数値で管理できるよう、通所のセッションとご自宅での運動を組み合わせてプログラムを作っています。

禁煙・節酒|糖尿病とセットで必ず取り組む

喫煙は動脈硬化を強く進行させます。

糖尿病と喫煙が重なると、脳卒中リスクはさらに跳ね上がります。

また、多量の飲酒も血圧と血糖を乱し、脳卒中リスクを高めます。

糖尿病がある方が脳卒中の再発を防ぐうえで、禁煙と節酒は必ずセットで取り組む必要があります。

ご家族ができるサポート

糖尿病と脳卒中を両方抱える方は、覚えること・気をつけることがとても多く、ご本人だけでは管理が追いつかないことがあります。

ご家族ができるサポートとして、次の5つが特に重要です。

  • 薬の飲み忘れを防ぐ:曜日別の薬ケースや服薬アプリを活用
  • 血糖測定・血圧測定を一緒にチェック:記録を共有し、主治医面談に持参
  • 食事の工夫を一緒に楽しむ:家族全体の食事を見直すきっかけに
  • 運動の声かけ:「散歩行こう」と誘うだけで継続率は大きく上がる
  • 低血糖への備え:ブドウ糖タブレット・ジュースを常備し、対処法を共有

BRAINでも、ご家族と一緒にリハビリや面談に来てくださるご家庭ほど、生活習慣の改善が進みやすい傾向があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 糖尿病でなくても、血糖値が少し高いだけで脳卒中リスクは上がりますか?

はい、上がります。

2012年に公開された15の研究・約76万人のデータをまとめた分析では、耐糖能異常(プレ糖尿病)の方も脳卒中リスクが約1.26倍高いと報告されています(Lee, 2012)。

「糖尿病と診断されていないから大丈夫」と油断せず、健康診断でHbA1cや空腹時血糖を確認しましょう。

Q2. HbA1cは低ければ低いほどよいのですか?

いいえ、低すぎても心血管リスクが上がります。

2015年に公開されたJPHC研究では、HbA1c 5.0%未満の方でも心血管リスクが1.50倍に上がることが確認されています(Goto, 2015)。

高齢者や重症低血糖のリスクがある方では、やや緩めの目標が安全とされています。必ず主治医と相談して個別に目標を決めてください。

Q3. 糖尿病と脳卒中では心臓病リスクも上がりますか?

はい、はっきりと上がります。

2010年に公開された大規模分析では、糖尿病ありでの冠動脈疾患(心筋梗塞など)のハザード比は2.00(95%CI 1.83-2.19)で、脳梗塞と同等のリスク上昇がありました(Sarwar, 2010)。

糖尿病は脳と心臓の血管を同時に傷めるため、心臓病予防も同じ戦略で取り組むことが大切です。

Q4. 脳卒中を発症した直後、入院中に血糖が急に上がったら重症なのですか?

入院直後の高血糖は、重症度や予後に関連することが知られていますが、「血糖が高い=すべて重症」という単純な話ではありません。

2019年のSHINE試験でも、強化インスリン療法で血糖を厳しく下げても90日後の回復に有意差はなく、低血糖リスクが上がるだけでした(Johnston, 2019)。

重要なのは急性期に急いで下げることではなく、退院後に落ち着いた環境で、無理なく血糖を整えていくことです。

Q5. 運動で血糖が下がるなら、薬をやめてもよいですか?

自己判断で薬を減らしたりやめたりすることは、絶対にしないでください。

運動や食事の改善で血糖が下がった場合、主治医の判断で薬の量が調整されることがあります。

運動が続いている実績を主治医に伝えることで、安全に薬を減らす判断材料になります。

まとめ|血糖コントロールは脳卒中再発予防の要

糖尿病と脳卒中の関係は、以下の5点にまとめられます。

  1. 糖尿病があると脳卒中リスクは約1.5〜3倍。女性は男性よりリスク上昇が大きい
  2. 糖尿病は動脈硬化・微小血管障害・内皮機能障害の3つの機序で脳卒中を引き起こす
  3. 糖尿病・プレ糖尿病は脳卒中の再発リスクも約1.4〜1.5倍高める
  4. GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬・ピオグリタゾン・メトホルミンは、脳卒中再発予防のエビデンスがある
  5. 急性期の厳しい血糖管理は有益でない。大切なのは退院後の継続的なコントロール

脳卒中と糖尿病は、どちらも「血管を守ること」で予防できる病気です。

血糖・血圧・脂質・体重・禁煙という5つの柱を主治医・ご家族と一緒に整えていくことが、再発予防のもっとも確かな道筋となります。

BRAINでは、糖尿病をお持ちの方のリハビリも数多く担当してきました。血糖や体力の状態に合わせて無理のないプログラムを作っていますので、「糖尿病と脳卒中の両方があって、どこまで動いていいか不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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※ 免責事項
本記事は脳卒中・糖尿病に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。薬の開始・中止・変更、HbA1c目標値の設定は、必ず主治医の判断に従ってください。緊急時は119番または主治医にご連絡ください。
最終医療レビュー日:2026-04-22

参考文献

  1. Sarwar N, et al. Diabetes mellitus, fasting blood glucose concentration, and risk of vascular disease: a collaborative meta-analysis of 102 prospective studies. Lancet. 2010;375(9733):2215-22. PMID: 20609967
  2. Peters SA, Huxley RR, Woodward M. Diabetes as a risk factor for stroke in women compared with men: a systematic review and meta-analysis of 64 cohorts, including 775,385 individuals and 12,539 strokes. Lancet. 2014;383(9933):1973-80. PMID: 24613026
  3. Jerkins TW, Bell DSH. Stroke in the Patient With Diabetes (Part 1) – Epidemiology, Etiology, Therapy and Prognosis. Endocr Pract. 2025;31(5):650-656. PMID: 39914491
  4. Zhao M, Dong Y, Chen L, Shen H. Risk factors for stroke in type 2 diabetes mellitus: An umbrella review. PLoS One. 2024;19(6):e0305954. PMID: 38913694
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  7. Mitsios JP, Ekinci EI, Mitsios GP, Churilov L, Thijs V. Relationship Between Glycated Hemoglobin and Stroke Risk: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Am Heart Assoc. 2018;7(11):e007858. PMID: 29773578
  8. Kleindorfer DO, et al. 2021 Guideline for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack. Stroke. 2021;52(7):e364-e467. PMID: 34024117
  9. Prabhakaran S, et al. 2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke. Stroke. 2026. PMID: 41582814
  10. Zhou Z, et al. Effect of SGLT2 Inhibitors on Stroke and Atrial Fibrillation in Diabetic Kidney Disease: Results from the CREDENCE Trial and Meta-Analysis. Stroke. 2021;52(5):1545-1556. PMID: 33874750
  11. Wang F, Li C, et al. Clinical efficacy and safety of SGLT2 inhibitors in type 2 diabetes. Front Endocrinol. 2024;15:1436217. PMID: 39247919
  12. Adamou A, Barkas F, Milionis H, Ntaios G. GLP-1 receptor agonists and stroke prevention: A systematic review and meta-analysis of cardiovascular outcome trials. Int J Stroke. 2024;19(7):782-790. PMID: 38676552
  13. Alammari N, et al. GLP-1 receptor agonists and risk of stroke and myocardial infarction in type 2 diabetes. Diabetes Obes Metab. 2025. PMID: 40390279
  14. Mohammadi M, et al. Prestroke metformin use and stroke outcomes: a systematic review and meta-analysis. Clin Neuropharmacol. 2025. PMID: 40072880
  15. Kim JS, Lee G, Park KI, Oh SW. Anti-diabetic drugs and stroke prevention: a network meta-analysis. Diabetes Metab J. 2024;48(3):441-453. PMID: 38273787
  16. Kernan WN, et al. Pioglitazone after Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack (IRIS Trial). N Engl J Med. 2016;374(14):1321-31. PMID: 26886418
  17. Ridha M, et al. Silent Myocardial Infarction and Recurrent Stroke: A post hoc analysis of the IRIS Trial. J Am Heart Assoc. 2025. PMID: 39921499
  18. Johnston KC, et al. Intensive vs Standard Treatment of Hyperglycemia and Functional Outcome in Patients With Acute Ischemic Stroke: The SHINE Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;322(4):326-335. PMID: 31334795
  19. Wu S, et al. Tight versus loose glycemic control in acute stroke: systematic review and meta-analysis. Int J Stroke. 2024;19(6):621-631. PMID: 38472157
  20. Lee M, Saver JL, et al. Effect of pre-diabetes on future risk of stroke: meta-analysis. BMJ. 2012;344:e3564. PMID: 22677795
  21. Fujishima M, Kiyohara Y, et al. Diabetes and cardiovascular disease in a prospective population survey in Japan: The Hisayama Study. Diabetes. 1996;45 Suppl 3:S14-6. PMID: 8674881
  22. Ikeda F, et al. Haemoglobin A1c even within non-diabetic level is a predictor of cardiovascular disease in a general Japanese population: The Hisayama Study. Cardiovasc Diabetol. 2013;12:164. PMID: 24195452
  23. Goto A, et al. High hemoglobin A1c levels within the non-diabetic range are associated with the risk of all cancers. Medicine (Baltimore). 2015;94(17):e785. PMID: 25929925