リハビリの時間内における屋外歩行については肯定派・否定派の意見が分かれやすいところかと思います。

病院の中で安全に歩けているからといって、外を歩いたときにも安全に歩けるとは限りません。

実際の凸凹のある地面を歩くことによって得られる経験や、新しく浮かび上がる問題点もあると思います。

一方、屋外歩行はただの “散歩” になってしまうこともあり、リハビリとしていかがなものかと否定的な意見もあります。

今回は屋外歩行と、屋内で行うトレッドミルトレーニングについて効果を比較した、Langhammer B (2010) のランダム化比較試験を紹介させていただきます。

Langhammer B (2010)の研究の概要

まず Langhammer B (2010)の研究の概要を紹介します。

こちらは年齢75歳前後、歩行速度0.8 m/sくらいの慢性期脳卒中患者さんに対して、トレッドミルトレーニングが屋外歩行と比べて歩行能力に与える影響について調査したランダム化比較試験です。

介入群はトレッドミルトレーニングと通常の理学療法を、コントロール群は屋外歩行と通常の理学療法を受けました。

各群ともに、1回あたり最大30分、週5回、2週間実施しました。

アウトカムとして歩行速度、6分間歩行試験、歩行の運動学的パラメータなどを設定していました。

なお、バイアスリスクは比較的低いランダム化比較試験になっています。

トレッドミルの方が効果的だったという結果に

結果として、歩行速度、ストライド長、ステップ幅のアウトカムにおいて、トレッドミルトレーニングは屋外歩行よりも大きい改善を示しました。

なので、この研究の結果から、歩行能力を高めたいのであれば、屋外歩行よりも屋内でのトレッドミルトレーニングを行うべき、と言えるでしょう。

また、もう一点興味深い結果をお伝えします。

この研究では1回あたり最大30分とされていましたが、実際はトレッドミルトレーニングは平均すると1回あたり12分程度しか行われていませんでした。

一方、屋外歩行は平均すると30分程度行われました。

つまり、トレッドミルトレーニングは短い時間で屋外歩行よりも効果が大きかったという結果になっています。

時間対効果、という側面からもトレッドミルトレーニングの方が有益と言えそうです。

屋外歩行ができる患者さんでもトレッドミルの利用を検討しましょう

もちろん、1本の研究で全てを決めつけることはできないです。

また、今回の対象者の元々の平均歩行速度も0.8m/sと、脳卒中患者さんの中では比較的速く歩ける方が集まっており、中等度障害を有する患者さんに対しては違う結果になる可能性もあります。

そういった注意点はありますが、屋外歩行よりもトレッドミルトレーニングの有効性が示されたのは事実なので、リハビリの参考にしてみてはいかがでしょうか。

誤解を防ぐためにお伝えしますが、決して屋外歩行練習が悪い、という訳ではありません。

リハビリプログラムは患者さんの価値観に基づいて決定されるべきだと思います。

歩行能力向上の効果がトレッドミルの方が高いとしても、例えば「これ以上は改善しなくていい」とか、「自分は実地練習派だ」とか、それぞれのリハビリのメリットとデメリットを理解した上で屋外歩行を選択されるのであれば、それはむしろ歓迎すべきことだと思います。

ただ、セラピストが屋外歩行とトレッドミルの効果の関係について理解しないままなんとなく「今日は外歩きにいきましょう!」というのは患者さんに不利益になる可能性があるので、気をつけた方がいいと思います。

本日は「トレッドミル vs 屋外歩行のエビデンス〜Langhammer B 2010から〜」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習プログラムを運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月〜8月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

参考文献

Langhammer B, Stanghelle JK. Exercise on a treadmill or walking outdoors? A randomized controlled trial comparing effectiveness of two walking exercise programmes late after stroke. Clin Rehabil. 2010 Jan;24(1):46-54.