短下肢装具の作製について悩まれている方は多いのではないかと思います。

『装具を履けば歩きやすくなるけど、一生外せないんじゃないか』
『装具ってたくさん種類があるけど、自分が作る装具で本当に正解なのだろうか』
『装具ってオーダーメイドらしいけど、いくらするんだろう』

筆者自身もこれまで多くの短下肢装具を作製する現場に携わってきましたが、みなさん何かしらの不安を抱えていらっしゃいました。

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本記事では、脳梗塞や脳出血を発症された患者さんが短下肢装具を作製するときに役立つ情報を紹介します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、基本的に信頼性の高いシステマティックレビュー研究から得られたデータを引用しています。

脳梗塞における短下肢装具のメリットとデメリット

最初に本記事のまとめです。

  • 短下肢装具は膝下〜つま先にかけて装着する装具のこと
  • 短下肢装具のメリットは『すぐに歩行がよくなること』
  • 短下肢装具のデメリットは『費用がかかる』『装具を外しにくくなる』こと

以下、詳しく説明します。

短下肢装具とは

短下肢装具とは、膝下〜つま先にかけて装着する装具のことです。

短下肢装具には色々なタイプがありますが、それらの総称として短下肢装具と呼ばれます。

なお、短下肢装具は英語でAnkle-Foot Orthosesと表記され、略して “AFO” と呼ばれることが多いです。

本記事でも、これ以降、短下肢装具を “AFO” と表記して進めていきます。

短下肢装具の種類

AFOにはたくさんの種類があります。

Daryabor Aら(2018)は、AFOについて下記のように分類しています。

短下肢装具の分類

脳卒中を発症された患者さんが日本国内で短下肢装具を作製する場合、Passive(他動)型に含まれるRigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOのいずれかになることが多いです。

Rigid AFO

足関節を90°(底背屈0°)にしっかりと固めてくれるAFOで、安定性が大きく向上します。

Rigid AFOのイメージ図はこちら

完全な下垂足(足首がだらんとぶらさがってしまう状態)、弱い背屈や底屈、軽度の膝の不安定性、および外反・内反がある場合に適用されることが多いです。

Metal AFO

金属支柱で足部と下腿とをつなげるタイプのAFOです。

Metal AFOのイメージ図はこちら

足関節の角度(底背屈角度)を調整することが可能で、患者さんの歩き方に合わせたセッティングができます。

オイルダンパーAFO

油圧式足継手、というサポート部品をもつAFOで、より正常な歩行を獲得することを目的に使用されます。

オイルダンパーAFOのイメージ図はこちら

日本でよく研究・開発されており、ゲイトソリューションデザインが有名です。

歩行ではヒール・ロッカーやアンクル・ロッカーという動きが起こります。

これによって効率的に歩くことができるようになっています。

オイルダンパーAFOはこのヒール・ロッカーやアンクル・ロッカーをサポートすることが可能と考えられています。

短下肢装具の効果

エビデンスをもとに、短下肢装具の効果を紹介します。

歩行自立度は向上するか?

歩行自立度とは、『ひとりで歩けるかどうか』を指します。

『歩行自立度が向上する』とは、ひとりで歩けるようになっていくことを意味します。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩行自立度が向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具は歩行自立度の向上に有効である』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着することでひとりで歩けるようになる可能性が高いということです。

歩行速度は向上するか?

歩行速度とは、『速く歩けるかどうか』を指します。

『歩行速度が速くなる』とは、歩くスピードが上がることを意味します。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)Wada Yら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩行速度が向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具は歩行速度の向上に有効である』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着することで歩くスピードが速くなる可能性が高いということです。

歩くスピードが速くなれば、周りの人のペースに合わせて歩けたり、横断歩道を渡るのに余裕が出たりするので、外出が楽になります。

歩きかたはよくなるか?

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、歩きかたがよくなるかどうかを文献調査しました。

結果として、

  • ケイデンス(1分間あたりの歩数)
  • ストライド長(一歩の大きさ)
  • ステップ長(一歩の大きさ)

などがよくなることが報告されました。

簡単に言えば、歩幅が大きくなる、脚の回転数が上がる、という効果があったということです。

また、Daryabor Aら(2018)Wada Yら(2021)も同様に歩きかたの変化について文献調査を行い、まとめました。

結果として

  • Rigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOともに踵から足をつけるようになることをサポートする
  • Rigid AFO、Metal AFO、オイルダンパーAFOともに足の引っかかりが少なくなるようサポートする
  • Metal AFO、オイルダンパーAFOは麻痺側の脚が後ろにいったとき(立脚後期〜遊脚期)に足関節背屈を維持させるようサポートする

という効果を期待できることが報告されました。

エビデンスから言うと、装具の種類によって歩きかたが大きく変わることはありません。

どの種類にせよ、AFOを装着することで歩きかたがよくなるのは間違いなさそうです。

バランスはよくなるか?

私たちが歩く上で、バランスは欠かせない要素です。

バランスが悪いと歩いているときに転んでしまうリスクが高くなります。

Tyson SFら(2013)Choo YJら(2021)脳卒中患者さんが短下肢装具を装着することによって、バランスが向上するかどうかを文献調査しました。

結果として、いずれの研究でも『短下肢装具はバランスの向上に有効とは言えない』と結論づけています。

つまり、短下肢装具を装着してもバランスがよくなることは期待できない、ということです。

効果には個人差がある

ここまで、短下肢装具の効果についてエビデンスに基づいて紹介しました。

もちろん、これは一般的にみたときの効果であって、個人差はあります。

ですので、可能であれば一度試着してみて、試着前後で歩きやバランスがどう変化するのかをチェックし、作製するかどうか判断した方がよいでしょう。

短下肢装具のメリット

AFOのメリットについてまとめます。

  • 歩行の自立度が上がる
  • 歩行速度が上がる
  • 歩きかたが正常に近づく
  • 装着すればこれらの効果がすぐに現れる

上述したように、AFOによって歩行自立度や歩行速度、歩きかたが向上する効果を期待できますが、それは装着すればすぐ獲得できます。

人によって、慣れるまでに時間を要することがありますが、早い人では装着して1時間くらいで1人で歩けるようになったり、速く歩けるようになったりします。

このような即効性は他のリハビリにはなく、AFOを作製・装着する大きなメリットであると言えます。

短下肢装具のデメリット

次に、AFOのデメリットです。

  • 作製に費用がかかる
  • 基本的に装具ありきの生活になる

作製に費用がかかる

AFOの種類や業者によって値段は異なりますが、数万円〜十数万円の費用がかかります。

東京都の義肢装具製作所一覧

ただし、身体障害者手帳や医療保険を利用することによって費用負担は1割〜3割程度になります。

自費で作製することもできますが、こういった制度を活用することによって費用を抑えることは可能です。

基本的に装具ありきの生活になる

『一回作ったら一生装具』ということはなく、いつでもご自身の使いたい時に使えますし、外したいときに外せます。

ただ、上述の通りAFOは歩きがよくなる効果があります。

AFOを着けているときは歩きやすいのですが、AFOを外すと基本的には歩きづらくなるため、結果として装具を装着したままにしておくことを選ぶ方が多いです。

なお、リハビリによって脚・足の運動機能や歩行能力が向上すればAFOを外しても歩きやすいままで生活できるようになる可能性もあります。

担当のセラピストに相談しながらリハビリを進めてください。

本記事のまとめ

最後に本記事のまとめです。

  • 短下肢装具は膝下〜つま先にかけて装着する装具のこと
  • 短下肢装具のメリットは『すぐに歩行がよくなること』
  • 短下肢装具のデメリットは『費用がかかる』『装具を外しにくくなる』こと

本記事がAFOを作製・装着に悩まれている方の役に立てましたら幸いです。

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参考文献

Daryabor A, Arazpour M, Aminian G. Effect of different designs of ankle-foot orthoses on gait in patients with stroke: A systematic review. Gait Posture. 2018 May;62:268-279.

Choo YJ, Chang MC. Commonly Used Types and Recent Development of Ankle-Foot Orthosis: A Narrative Review. Healthcare (Basel). 2021 Aug 13;9(8):1046.

Tyson SF, Kent RM. Effects of an ankle-foot orthosis on balance and walking after stroke: a systematic review and pooled meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2013 Jul;94(7):1377-85.

Choo YJ, Chang MC. Effectiveness of an ankle-foot orthosis on walking in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2021 Aug 5;11(1):15879.

Wada Y, Otaka Y, Mukaino M, Tsujimoto Y, Shiroshita A, Kawate N, Taito S. The effect of ankle-foot orthosis on ankle kinematics in individuals after stroke: A systematic review and meta-analysis. PM R. 2021 Aug 9.

Daryabor A, Arazpour M, Aminian G. Effect of different designs of ankle-foot orthoses on gait in patients with stroke: A systematic review. Gait Posture. 2018 May;62:268-279.