脳梗塞や脳出血(以下、脳卒中と言います)によって歩行障害(ほこうしょうがい)が表れます。

歩きやすくするために、杖を使うことがあります。

しかし、杖にはメリットとデメリットがあります。

杖のメリットとデメリットを把握することによって

  • そもそも杖を使うべきか?
  • 杖を使うならどの杖がベストか?
  • 杖を卒業するタイミングはいつか?

…といった判断ができるようになります。

本記事では、脳卒中における杖のメリットとデメリットについて、エビデンスをもとに徹底解説します。

情報の信頼性について
・本記事はBRAIN代表/理学療法士の針谷が執筆しています(執筆者情報は記事最下部)。
・本記事の情報は、基本的に信頼性の高いシステマティックレビュー、ランダム化比較試験得られたデータを中心に引用しています。

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脳卒中における杖のメリットとデメリット

最初に本記事のまとめです。

  • 杖のメリットは『歩行速度を上げる』『歩きかたがよくなる』『バランスがよくなる』
  • 杖のデメリットは『麻痺側の筋活動が低下する』『非麻痺側の末梢神経障害や痛みが起こる』『合わない杖はむしろバランスを悪くする』『注意機能に対する負荷がかかる』『杖の管理が煩わしい』
  • 専門家の指導のもと、ひとりひとりに合った杖を選定すべき

以下、詳しく解説します。

杖の基本的な知識

まず、杖の基本をお伝えします。

杖のタイプ

脳卒中を発症された方が使う杖を紹介します。

  • T字杖(1点杖)
  • 4点杖
  • ロフストランド杖
  • 特殊杖

T字杖(1点杖)

T字の形状をした杖です。

T字杖(1点杖)

T字杖にはいくつかもタイプがありますが、1点で支えるシンプルな杖はT字杖と総称されます。

左からステッキ、折りたたみ式の杖、グリップ部分が特殊な形状の杖が並んだ画像
色々な杖の種類

T字杖はもっとも一般的な杖で、よく使われます。

4点杖

地面につく部分が4点になっている杖です。

4点杖

近年は、4点以外の杖も開発され、『多脚杖』と呼ばれることもあります。

4点杖は、バランスを向上させるのに役立ちます。

ロフストランド杖

前腕(肘から先の腕)で体重を支える杖です。

ロフストランド杖

T字杖や4点杖は、杖を持つ手(非麻痺側)に痛みや末梢神経障害などの問題を起こすことがあります。

ロフストランド杖は前腕で支えるため、こういった問題が起こりにくいのが特長です。

特殊杖

上記のいずれにも分類できない、特殊なタイプの杖です。

サイドケイン、ローリングケインなどが該当します。

バランスが著しく低かったり、リハビリの経過の中で目的を持って使われることがあります。

退院後の生活で使われることはあまりありません。

杖のタイプごとの効果

杖のタイプによって得られる効果が異なります。

Jeong YG(2015)は、慢性期脳卒中患者さんを対象に、T字杖、4点杖、手すり杖それぞれの効果を調査しました。

結果として、T字杖は4点杖と比べて

  • エネルギー消費が小さい(楽に歩ける)
  • 6分間歩行距離が長い(長く歩ける)
  • 歩行速度が速い

ことが明らかになりました。

つまり、T字杖は4点杖よりも『楽に、長く、速く歩ける』ということです。

同研究チームの別の研究によると、杖の効果は『バランス能力によって異なる』ことが示唆されています。

こちらの研究ではバランスが良好な人たちとバランスが不良な人たちとにグループを分け、それぞれのグループでT字杖、4点杖、手すり杖の効果を検証しました。

結果として、バランスが良好な人たちは1点杖を使うことによって

  • エネルギー消費が小さい(楽に歩ける)
  • 6分間歩行距離が長い(長く歩ける)
  • 歩行速度が速い

といった上記の研究同様の結果が得られたものの、バランスが不良な人たちはT字杖を使っても上記の効果は得られませんでした。

一方、バランスが不良な人たちは4点杖を使うことによって

  • エネルギー消費が小さい(楽に歩ける)

という結果を報告しています。

つまり、

  • バランスが良好(BBS 49点以上)→T字杖
  • バランスが不良(BBS 49点未満)→4点杖

が適していると言えます。

『4点杖はバランスを向上させる』効果があると考えられています。

Laufer Y(2002)は発症から2〜3ヶ月くらいの回復期脳卒中患者さん30人と、健常高齢者20人を対象に、T字杖や4点杖を使っているときのバランスのとりかたを調査しました。

結果として、1点杖よりも4点杖の方がバランスを向上させる効果が大きいことを報告しました。

バランスが不安定な方には4点杖が適していると言えるでしょう。

また、同研究チームは、ステップポジションにおいても同様の研究結果を報告しており、立位・歩行における4点杖のバランス効果を強調しています。

近年、T字杖にはグリップ部分に工夫が凝らされたタイプが開発されています。

Allet L(2009)は発症から1ヶ月くらいの回復期脳卒中患者さん25人を対象に、

  • 人工工学に基づいて開発されたT字杖
  • ノルディック杖
  • 4点杖

それぞれの効果を検証しました。

人工工学に基づいて開発されたT字杖とは、下記のようにグリップ部分に工夫がされた杖です。

人工工学に基づいて開発されたT字杖の画像。グリップ部分が特殊な形状をしている。

こちらの杖専門店で取り扱われている『パワーステッキ2G』が人工工学に基づいて開発されたT字杖です。

結果として、人工工学に基づいて開発されたT字杖は4点杖と比べ、

  • 歩行速度を速くする
  • 歩行距離を長くする

という特長があることが明らかになりました。

T字杖を検討されている方は、こういったタイプの杖を選んでもよいかもしれません。

杖の入手方法

杖は、福祉用品店で購入したり、介護保険でレンタルする方法が一般的です。

近年は杖専門店で購入される方も増えています。

上記の杖専門店には理学療法士が在籍しており、専門家のアドバイスを受けながらひとりひとりに合った杖を選定してくれます。

杖を使う3つのメリット

以下、杖のタイプにかかわらず、杖全体でみたときのメリット・デメリットをお伝えします。

杖を使うメリットは以下の通りです。

  • 歩行速度を速くする
  • 歩きかたをよくする
  • バランスをよくする

以下、詳しく説明します。

杖のメリット①:歩行速度を速くする

杖を使うことによって、歩行速度が速くなります。

Avelino PR(2021)は、歩行速度0.6m/sくらいの慢性期脳卒中患者さん50人を対象に、T字杖の効果を検証しました。

結果として、T字杖を1ヶ月間使うことによって、『T字杖を使っているときの歩行速度が速くなった』ことを報告しました。

また、Nascimento LR(2015)は、慢性期脳卒中患者さん24人を対象に、T字杖を持つことですぐに歩行が変化するかどうか調査しました。

先のAvelino PR(2021)研究は1ヶ月の長期効果を検証しているのに対し、Nascimento LR(2015)の研究は『杖を持った直後』の即時効果を検証しています。

結果として、歩行速度が0.8m/s未満の人たちは、T字杖を持つことによってすぐに歩行速度が速くなることが報告されました。

これらの研究結果から、『T字杖を持つことによって即時的にも長期的にも歩行速度が速くなる』と言えます。

屋外歩行(外出)をするための歩行速度として、0.61m/sや0.85m/sというカットオフ値があります。

外出できるようになるために歩行速度を上げる、そして歩行速度を上げるために杖を使うのは妥当であると言えます。

杖のメリット②:歩きかたをよくする

杖を使うことによって、歩きかた(歩容)がよくなります。

Kuan TS(1999)は、主に回復期脳卒中患者さん15人(1人のみ発症6ヶ月以降、14人は発症6ヶ月以内)を対象に、杖(T字杖・4点杖)が歩きかたに与える影響を調査しました。

結果として、杖を使うことにより

  • 歩幅が大きくなる
  • 重心移動がスムーズになる
  • ぶん回し歩行が軽減する

…といった歩きかたの改善を報告しました。

また、Beauchamp MK(2009)は、左右非対称な歩きかた(Symmetry Ratioにて>1.1)をしている回復期脳卒中患者さん14人を対象に、杖(T字杖・4点杖)の効果を検証しました。

Symmetry Ratioとは?
Symmetry Ratio(以下、SR)とは、歩行の左右対称性を表す指標です。算出方法は研究によってそれぞれですが、麻痺側立脚時間/非麻痺側立脚時間などで算出されます。なお、Beauchamp MK(2009)の研究では『(麻痺側遊脚時間/麻痺側立脚時間)/(非麻痺側遊脚時間/非麻痺側立脚時間)』にて算出されています。いずれにせよ、完全な左右対称であれば数値は1になります。数値が1から離れるほど、左右非対称性が強いことを意味します。

結果として、T字杖を使うことによって左右対称性が改善したことが報告されました。

これらのデータより、歩きかたをよくするために杖を使うのは妥当であると言えます。

杖のメリット③:バランスをよくする

杖を使うことによりバランスが向上することが報告されています。

上述しましたが、Laufer Y(2002)は、回復期脳卒中患者さんを対象にした研究で、4点杖によって重心動揺が減少することを報告しました。

Maeda A(1999)は、慢性期脳卒中患者さん41人と健常高齢者36人を対象にし、杖の使用により重心動揺が減少することを報告しました。

このように、回復期でも慢性期でも、杖を使うことによって重心動揺が減少することが報告されています。

重心動揺とは?
重心動揺とは、バランスをとっているときのふらつきのことです。簡単に言うと、ふらふらしてしまう状態は『重心動揺が大きい』、ふらふらしていない状態は『重心動揺が小さい』です。

バランスは転倒せずに歩けるようになるために必要です。

バランスの検査であるBerg Balance Scaleでは35点、BESTestでは69.44%が転倒を予測するカットオフ値として報告されています。

バランス向上のために杖を使うのは妥当と言えるでしょう。

一方で、『杖を使えば転ばない』わけではありません。

Soyuer F(2007)は、慢性期脳卒中患者さん100人を調査した結果、47人が過去6ヶ月以内に転倒を経験していたことを報告しました。

杖の使用と転倒との関係を調べたところ、杖の使用は転倒と関係があるとは言えないという結論に至っています。

脳卒中患者さんの39.1%が退院後6ヶ月以内に転倒するというデータがあります川上, 2012)。

このように、杖は重心動揺を減少させ、バランスを向上させるために有用であるものの、転倒を完全に防げるわけではない点に注意が必要です。

杖を使う5つのデメリット

杖を使うことのデメリットは以下の通りです。

  • 麻痺側の筋活動が低下する
  • 非麻痺側の末梢神経障害や痛みが起こる
  • 合わない杖はむしろバランスを悪くする
  • 注意機能に対する負荷がかかる
  • 杖の管理が煩わしい

以下、詳しく説明します。

杖のデメリット①:筋活動低下

杖を使うことによって麻痺側下肢の筋活動が低下することが報告されています。

Maguire C(2010)は、脳卒中患者さん13人を対象にした研究で、杖の使用によって大殿筋の活動が21.86%、大腿筋膜張筋の活動が19.14%減少したことを報告しました。

また、Buurke JH(2005)は、脳卒中患者さん13人を対象に、杖(T字杖・4点杖)の使用により脊柱起立筋、外側広筋、前脛骨筋の活動が低下することを報告しました。

いずれの筋肉も立脚期(脚で体重を支えるとき)に必要な筋活動です。

病前の歩行や脚(足)の運動機能を取り戻すことを目標にされているのであれば、麻痺側下肢の筋活動が低下してしまうことはデメリットであると言えます。

近年では、杖への荷重状況をフィードバックできる杖を使うことにより、麻痺側下肢の筋活動や歩行能力を向上させることができると報告されています(Kang YS 2021, Jung K 2015)。

こういった杖を入手できれば、歩行中の麻痺側下肢の筋活動を改善させられるかもしれません。

杖のデメリット②:末梢神経障害と痛み

杖を使うことによって、杖を持っている非麻痺側上肢の問題が生じることが報告されています。

Kwon YH(2014)は、脳卒中患者さん229人を対象にした研究で、27%の人に非麻痺側上肢の痛みがあることを報告しました。

痛みの発生は

  • 女性
  • 杖を使用している人
  • 麻痺側下肢の筋出力低下が大きい人

でよく起こることも明らかにされました。

運動障害(うんどうしょうがい)が重度で、麻痺側の脚でうまく支えられずに杖に頼っている場合、杖を持っている非麻痺側の上肢に痛みを生じる可能性があります。

Dozono K(2022)は、脳卒中患者さん28人を対象にした研究で、12人(43%)に非麻痺側上肢の末梢神経障害があったことを報告しました。

末梢神経障害とは?
末梢神経が機能低下するものです。主な症状には、痛み、しびれ、筋力の低下、感覚の喪失などが含まれ、これらが日常生活に影響を与えることがあります。なお、上肢を使いすぎることによって筋肉が末梢神経を圧迫してしまう場合、「巻き込み神経障害(entrapment neuropathies)」と言います。

なお、1日あたりの歩行時間が長い人ほど末梢神経障害の有病率は高く、

  • 1日あたり1〜2時間歩く人は50%
  • 1日あたり2時間以上歩く人は63.4%

だったことを報告しています。

このことから、日常的に杖を長時間使っている人は非麻痺側上肢の末梢神経障害が起こりやすいと考えられています。

末梢神経障害が起こる原因のひとつに『末梢神経の肥大』があります。

Jeong YS(2020)は回復期脳卒中患者さん30人を対象にし、3週間、日常的に杖を使った後、非麻痺側上肢の正中神経や尺骨神経が肥大していたことを報告しました。

このことから、『非麻痺側で杖を使う→非麻痺側の末梢神経が肥大する→周囲組織に圧迫されやすくなる→末梢神経障害が起こる』可能性があります。

Son SM(2012)は、慢性期脳卒中患者さん40人を対象にし、杖の使用が非麻痺側上肢の巧緻性に与える影響ついてNine Hole Peg Test(以下、NHPT)や深部感覚検査を使って調査しました。

NHPTとは?
小さいペグ(棒)を小さい穴に入れる動作を9回行い、指先の細かな動き(巧緻性)をみる検査です。

結果として、日常的に杖を使っている人たちは非麻痺側の巧緻性と深部感覚が低下していることが明らかになりました。

このように、杖を使うことによって非麻痺側の運動障害が生じる可能性があります。

以上、4つの研究から、杖を日常的に使用することによる非麻痺側上肢への影響をお伝えしました。

非麻痺側の痛みや運動機能の低下があれば、それは杖に頼りすぎているからなのかもしれません。

杖のデメリット③:合わない杖はバランスを悪くする

杖の高さを間違えてしまうと、むしろバランスを低下させることが報告されています。

Camara CTP(2020)は、地域在住高齢者18人を対象に、杖の高さを変えることがバランスにどのような影響を与えるか調査しました。

一般的に、杖の長さは『大転子〜床までの距離』もしくは『立位における手関節のしわ〜床までの距離』が望ましいとされています。

この研究では、以下の3条件で重心動揺を記録しました。

  • 条件①:杖の高さ=『手関節のしわ〜床までの距離』
  • 条件②:杖の高さ=『手関節のしわ〜床までの距離』+7.5cm
  • 条件③:杖の高さ=『手関節のしわ〜床までの距離』+10.0cm

結果として、杖の長さが長くなるほど重心動揺が増大することが明らかになりました。

つまり、適正な長さよりも長い杖を使うと、バランスをむしろ低下させると言えます。

加えて、Cha YJ(2017)は、脳卒中患者さんは適正な長さよりも2cm以上長い杖を使っている人がほとんどである(62〜88%)ことを報告しました。

適正な長さを間違え、杖の『バランスを向上させる』というメリットを受けられていない方が多いのかもしれません。

上述の通り、杖の適正な長さは

  • 『大転子〜床までの距離』
  • 『立位における手関節のしわ〜床までの距離』

のいずれかが望ましいとされています。

ただし、『大転子〜床までの距離』の長さに合わせた方が歩行がよくなることが報告されています。

Cha YJ(2014)は、16人の脳卒中患者さんを対象に、杖の長さによる歩きかたの変化を調査しました。

結果として、『大転子〜床までの距離』の長さに合わせた方が

  • 中足部接触面積が19.7%拡大
  • 前後圧中心軌跡が9.7%拡大
  • つま先圧が26.7%増大
  • 中足部圧が14.3%増大

…することを報告しました。

つまり、『大転子〜床までの距離』の長さに合わせることによって歩きをより正常化させることが可能であるということです。

杖は基本的には大転子の高さに合わせてセッティングするのがよいと言えるでしょう。

杖のデメリット④:注意機能に対する負荷が大きい

杖を操作しなければならない分、注意機能に負荷を与えてしまうことが報告されています。

Chen HY(2021)は、杖なしで歩けるようになってから1ヶ月以内の脳卒中患者さん9人に対し、杖あり/杖なしの2つの条件で歩きながら引き算をすることによって、注意機能への影響を調査しました。

結果として、杖あり歩行ではより多くの注意が必要とされることが明らかになりました。

外出するときは人にぶつからないように避けたり、信号を見ながら横断歩道を渡ったりする必要があります。

杖に意識が集中してしまい、人にぶつかったり横断歩道を安全に渡れなくなってしまうリスクがあります。

杖のデメリット⑤:面倒くさい

杖のデメリットのひとつに『煩わしさ』があります。

Nascimento LR(2019)は、慢性期脳卒中患者さん24人を対象にした研究で、歩行速度が速い人ほど杖に対してネガティブな意見を持っていることを報告しました。

BRAINのご利用者様からも『杖は面倒くさい』と、杖を使うことの煩わしさが聞かれることがあります。

実際、退院後の生活では

  • 杖を持っていると他の物を持てない、買い物に行けない
  • 杖を家のどこかに置いてきてしまった
  • 杖が倒れると拾うときに転びそうになる

といったお困りごとを聞くことがあります。

しかし、煩わしいからといって杖を手放してしまうと、歩行速度やバランスなど、杖のメリットも手放してしまうことになります。

Polese JC(2012)の研究では、普段から杖(T字杖か松葉杖)を使っている慢性期脳卒中患者さん19人における『杖あり/杖なし』の歩行速度の変化を調査しました。

結果として、普段から杖を使っている人が杖なしで歩くと、いつもよりも歩行速度が低下することが報告されました。

同様に、Ijmker T(2013)は、普段から杖を使っている人が杖なしで歩くと、いつもよりエネルギーコストが大きくなる(歩くのが大変になる)ことを報告しました。

このことから、杖を手放してしまうことによる歩行能力が低下したり、歩くのが大変になる可能性を加味し、慎重に判断する必要があると言えます。

【2024年版】脳卒中における杖のメリットとデメリットまとめ

最後に本記事のまとめです。

  • 杖のメリットは『歩行速度を上げる』『歩きかたがよくなる』『バランスがよくなる』
  • 杖のデメリットは『麻痺側の筋活動が低下する』『非麻痺側の末梢神経障害や痛みが起こる』『合わない杖はむしろバランスを悪くする』『注意機能に対する負荷がかかる』『杖の管理が煩わしい』
  • 専門家の指導のもと、ひとりひとりに合った杖を選定すべき

杖にはメリットだけでなく、デメリットがあります。

BRAINでは、これらのエビデンスをもとに『杖なしで歩くための5つの判断基準』を設けています。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

近年は、オンラインショップでも100円ショップでも購入できるようになってきていますが、患者さんひとりひとりに合った杖でなければむしろ逆効果になることもあります。

  • 歩行速度は?
  • バランスは?
  • 日常でどれくらい使うのか?

…など細かいアセスメントをしてくれる専門家にアドバイスを受けるのが望ましいと言えるでしょう。

また、近年は杖の開発・研究も進んでおり、色々なタイプの杖が販売されるようになってきています。

杖のタイプによって得られる効果が異なります。

これらのことから、脳卒中患者さんが杖を使うときは

  • 理学療法士などの専門家にアドバイスを受ける
  • さまざまな杖の選択肢の中からあなたに合ったものを選ぶ

…の2点が重要になります。

▶︎杖の種類・タイプについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください(杖専門店近江一文字豊橋店様のホームページへつながります)

あなたに合った杖が見つかり、よりよい歩きの獲得につながることを祈っております。

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